ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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今回は、急展開があるかも(笑)
では、どうぞ。


第47話 ミスコン#2

『それでは、準備の為一時休憩にしたいと思います。皆様、暫し御歓談を――』

 

 集がそう締め括り、一時休憩となり、俺は飲み物を買う為体育館を出た。先程カフェオレを飲んでいたが、250mlでは足りなかったからである。

 廊下を歩いていると、控室と思われる場所の扉が開き、誰かと衝突する。

 

「せ、先輩っ!」

 

「は、春ちゃんか。誰かと思ったわ。……なんつーか、春ちゃん元気ない?」

 

「そ、そんなことないと思いますが……」

 

 春ちゃんの話によると、小咲と勝負しても負けるのがオチなので、棄権しようか迷ってるという事らしい。

 

「……でもな、春ちゃん。俺からしたら、春ちゃんは十分魅力的だし、可愛いと思うぞ」

 

「……そう、でしょうか?」

 

「おう。……でもまあ、俺が言っても説得力はないかもしれんが」

 

「タラシ先輩ですもんねっ」

 

「……満面の笑みで言わなくてもよくね、春ちゃん」

 

 だが、否定できない俺である。まあ、本当の事だから仕方ないけど。

 

「ま、まあそういうこった。だから大丈夫だ」

 

 俺がそう言うと、春ちゃんはクスッと笑った。

 それから上目遣いで、

 

「……先輩、見ててくれますか?」

 

「お、おう。見てるぞ」

 

 もちろん、小咲もな。と付け加えると、春ちゃんは頬を膨らませる。

 

「……先輩。女の子と話てる時に、他の女の子を考えるのはどうかと思いますが。ポイント低いです」

 

「悪い悪い。てか、俺、ポイント付けられるようになったのかよ……」

 

 俺が項垂れていると、春ちゃんは、でもと前置きする。

 

「先輩と話して元気が出ました。負けると思いますが、お姉ちゃんと戦ってみます」

 

「その意気だ。小咲を倒しちゃえ」

 

「……先輩は、どっちの味方なんですか……」

 

「え、えーと……両方です」

 

 春ちゃんは、ぷっ、と噴き出す。

 

「票はお姉ちゃんでいいですけど、私の応援を許可してあげます」

 

「お、おう。じゃあ、そうさせてもらうよ」

 

 そう言って、俺は踵を返し片手を上げながらこの場を後にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 体育館に戻り、数分が経過した時、集の放送によって休憩が終わり、

 

『さあ、最終審査の時間が迫って参りました!それでは、優勝を争う美女に登場して頂きましょう!――まずは、小野寺小咲さんの登場です!』

 

 すると、舞台袖からは、黒のセーラ服に身を包んだ小咲が姿を現す。てか、歓声が凄い……。

 

『おおーと、これは意外!なんと、セーラー服!セーラー服です!特に着飾る事の無い、オーソドックスタイプ!』

 

 それから集は、セーラー服について熱弁していく。当の本人は「これのどこがいいんだろ……」てことを思っているはず。

 これに関しては、男心って言えばいいのか、そんな感じだからなぁ。

 

『さて、次はもう一人の小野寺さんこと。小野寺春さんです!ご入場して下さい!』

 

 と、集が言っても、春ちゃんが出て来る気配がない。

 ――――それから数秒後、ハァハァという息遣いが聞こえてくる。そして、春ちゃんの衣装は――――ウエディングドレス。

 俺から一言。姉に引けを取らない可愛さ。というのが、俺の感想である。それから始まる質問タイム。

 

『それでは最後の質問です。小野寺小咲さん。春さん。現在、好きな人はいますか?』

 

 ザワザワと騒がしくなる会場。

 

『では、小咲さん。最初にどうぞ』

 

 うん、今の小咲。顔が真っ赤だろうな。

 

『……わ、わたしは……居ます……大切な、大好きな人が居ます!』

 

『……お、おおー!これは何と、小野寺小咲さんには、意中の人が居るという事だー!』

 

 会場が「誰だ誰だ!」って凄い……。……いやね、俺もかなり恥ずかしかったりする。何で?と思うが、小咲は俺を見るようにして答えたからである。てか、よく見つけられたな、俺の事。

 

『その方とは付き合っているのですか!?』

 

『ご、ごめんなさい!それはノーコメントでお願いします!』

 

『で、では、その方と出掛けた事は!?』

 

 ……マジで止めてくれ。俺のライフがゼロに近いからね。質問してる集。後で締める。

 

『……ま、まあ、それくらいなら、ありますけど……』

 

『そうですか。質問はこれくらいにしましょう。小野寺小咲さん。ありがとうございました!』

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

『次に小野寺春さん。好きな人はいますか?』

 

『……えっと……私は……その……居ます。――――私は今日、その人に見てもらいたくて、このコンテストに参加しました』

 

『おおーと!これは、小咲さんに続き、大胆発言!春さんには、現在想い人がいらっしゃるらしいです!どこの何方か存じませんが、羨ましいぞ、こんちきしょう!』

 

 ……マジか。春ちゃんには、好きな人が居るのか。誰だろうか?そして、アピールタイムが終了し集計がされた。

 

『では、集計結果が出たようです。お、これは僅差、僅差です。……第23回ミス凡矢理コンテスト、ミスの栄冠に輝いたのは……』

 

 暫しの沈黙。

 

 

 

 

 

 

 

『エントリー№12番――――小野寺春さんです!おめでとうございます!』

 

 「わああぁぁああ!」と会場が沸いた。投票用紙の感想は、まあ察してくれ。

 それから、優勝トロフィーが春ちゃんに渡される。付属として後夜祭のフォークダンスの男性パートナーを指名できるとは。にしても、毎年数々のロマンスを生み出してるとか、初耳である。

 

『毎年数々のロマンスを生み出してきた、この強制指名券!今年は誰が選ばれるのでしょう!?それでは春さん!ご指名ください!』

 

『……えっと』

 

 盛り上がりを見せていた会場が、急激に静まる。観客たちは、春ちゃんが誰を指名するのか、両耳に全神経を集中させているのだ。

 

『それじゃあ……。桐崎蓮先輩、お願いしていいですか?』

 

 ……はい?俺かい。つーか「ええぇぇぇえええ」「……桐崎弟か……。仕方ないか」って声が凄ぇ……。耳が悪くなるわ。

 

『な、なんと!春さんが指名したのは、我がクラス、2年C組の桐崎蓮さんです!……ま、まさか!?』

 

 すると、春ちゃんが苦笑した。

 

『あの、誤解しないでください。私、女子中出身で、あんまり男子の友達とか知り合いがいなくてですね。お姉ちゃん経由で知り合った、桐崎蓮先輩にお願いしたまで……』

 

 春ちゃんは言葉を続ける。

 

『ここで好きな人指名したら告白同然ですよ!?それに、私にそんな事が出来る訳ないですから!』

 

 春ちゃんの言葉を聞き、次第に「そりゃそうだ」とか「ごもっともです」とかの言葉が飛び交い、会場が笑いに包まれる。ともあれ、拍手と共に、ミス凡矢理コンテストは閉幕したのである。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

 Side 春

 

「お疲れ様、春」

 

 私が振り向くと、風ちゃんが微笑んでいた。

 

「まさか、優勝しちゃうとはね」

 

「あ、あははは、偶々だよ」

 

「私は、必然だったと思うよ。春ってば可愛いんだから、もっと自分に自信持った方がいいよ」

 

「うぅ……そんな事言われても……」

 

 風ちゃんの次の言葉で、私の心臓が飛び上がる感覚に襲われる。

 

「ねぇ春。あの時の言葉、本当は照れ隠しなんでしょ?」

 

「……風ちゃんは、何もかもお見通しなんだね……」

 

「……告白、するの?」

 

「う、うーん。微妙な所かな。先輩、彼女居るし」

 

 あ、口が滑ったかも……。風ちゃん、目を輝かせてるし。

 

「誰っ誰っ?蓮先輩の彼女って?」

 

 一人だけなら、いいよね……。先輩、お姉ちゃん。ごめんなさいっ!

 

「えっと、私のお姉ちゃん、かな……」

 

 目を丸くする風ちゃん。

 

「……蓮先輩やるね。小野寺姉妹を落とすなんて」

 

 うん、姉妹って似るのかもね。……告白かぁ。どうしよう。――――うん、決めた!

 それから、風ちゃんと話していたら後夜祭の時間になった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「先輩」

 

 俺が星を眺めていると、後方から声が届く。振り向くと、春ちゃんは此方に歩み寄る。

 

「踊りましょうか」

 

「そだな。んじゃ、行くか」

 

「はい」

 

 俺が春ちゃんと手で繋ぐと、ビクッと春ちゃんの肩が震える。

 

「あ、悪い。嫌だったか?どうせ繋ぐからと思ってな」

 

「い、いえ、嫌じゃないですけど、フォークダンスは繋ぐというか添えるというのが正しいかと」

 

「……マジか。フォークダンス小さい時からやってないからさ、ド忘れしててな」

 

「そうだったんですか。先輩、行きましょう」

 

「そだな」

 

 俺たちが向かう先は、燃え上がるキャンプファイヤーの周りであり、フォークダンスを踊る者は、男女ペアになり並んでいた。

 踊り方をド忘れした俺は、春からレクチャーを受けた。それから、BGMが流れフォークダンス開始である。

 

「こうか?」

 

「お、先輩上手いです。そんな感じです」

 

 話ている内に、フォークダンスが終わりを告げた。俺と春ちゃんは、キャンプファイヤーから離れ、少し奥の方で腰を下ろし星を見ていた。

 

「そういえば、先輩。お姉ちゃんはどこに行ったんですか?」

 

「ああ。小咲なら、るりと羽姉の所だな。3人で後夜祭じゃないか?」

 

 春ちゃんは、なるほど。と言い頷き、暫しの沈黙が流れる。

 それから、春ちゃんが意を決したように口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

「……先輩、あの時の私の言葉覚えてますか?」

 

「あの時?……ああ、体育館での事か。覚えてるよ」

 

「実はあれ、ある人に贈った言葉でもあるんです。――――先輩、あなたにです」

 

「俺?」

 

「そうです、先輩。先輩は鈍感なんで、私、ハッキリいいますね」

 

 春ちゃんの声は、僅かに震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――蓮先輩。大好きです。思えば、あの時からだったかも知れません」

 

 あの時とは、落し物の件の事だろう。また、周りは緊張に包まれている。

 

 

 

 

 

 

 

「―――俺も春ちゃんを嫌いじゃない。どちらかと言えば、好きだな。でもな、俺は最低野郎だぞ」

 

「構いませんよ。私は、先輩を好きになったんですから。――――先輩、私とも付き合ってください!」

 

「……三股野郎になるけど、いいのか?」

 

「さっきも言いましたが、構いませんよ。私、先輩がどんな人でも、この気持ちは変わりませんから。それと、お姉ちゃんたちより、メロメロにさせてあげますよ」

 

 ……何というか、女って強い生き物だな。って思い知らされた。それに、今のセリフも小咲にそっくりである。つか、最後の言葉は、ある意味宣戦布告に聞こえたんだけど、気のせいだよね?

 

「そっか。これからよろしくな、春ちゃん」

 

 春ちゃんは、「はい!」と頷いた。

 

「あと春ちゃん。先輩と敬語は止めにしないか?」

 

「じゃあ、蓮さん。これからよろしく。でどうかな?」

 

「いいと思うけど。蓮でいいぞ」

 

「えっと、そこはまだちょっとって感じかな……」

 

「まあ、そこは追々でいいか」

 

 学校とか、知人の前では敬語という事になった。

 それから、羽姉と小咲に報告した所、簡単にOKが返ってきた。遅かれ早かれ、こうなる事は予想してたらしい。なんつーか、女子って色々と凄いわぁ。って思った瞬間でもある。

 あとあれだ、将来の為にも、俺が“和菓子屋おのでら”を買っちゃおうかな。俺の傘下から経営する感じにしてさ。そうすれば、小咲も春ちゃんも色々と楽になりそうだしね。まあ、まだ買い取らないけど。

 ともあれ、こうして凡矢理高校の文化祭が終わりを迎えたのだった。うん、色々あった文化祭だった。




急展開でしたかね?でもまあ、春ちゃんも、蓮君と付き合うことになりました(^O^)/蓮君と春ちゃんは、これからお互いの事を知る感じですね。蓮君、春ちゃんにすぐに落とされそうですね(笑)

てか、ニセコイ小説(原作でいうと、現在は15巻)も、後、半分ちょっとって所ですかね。原作は25巻までなので。
ではでは、次回も宜しくです!

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