ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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第45話 文化祭

 涼やかな秋空の元、凡矢理高校は熱い盛り上がりを見せている。校舎は色とりどりの装飾が施され、生徒たちも、制服姿の者や、仮装してる者も窺える。そう、本日は凡矢理高校の文化祭である。

 そんな中、俺、桐崎蓮は開会式をサボり屋上のベンチで横になっていた。傍から見ると、完全に不良少年である。いやね、開会式とか面倒くさいじゃんか。

 ちなみに、俺の恰好は和服姿で、一言で表すと武士の恰好に近い。

 

「そろそろ開会式終わった頃か。……戻るか」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 教室に戻り、自身の椅子に着席すると、隣席に座る小咲が頬を膨らませながら俺を見る。いや、何。メチャクチャ可愛いんですが。

 

「蓮君。何処に行ってたの?」

 

「いや、開会式が面倒くさくてサボってた」

 

「……もう、そんな事だと思ったよ」

 

 そう、俺はサボり常習犯でもある。まあ、先生にはバレないようにサボっているが。

 

「悪い悪い。怒るなって」

 

「お、怒ってないもんっ」

 

「はいはい」

 

 俺は、小咲の頭をポンポンと撫でる。てか、これが日常になりつつあるんだよなぁ。

 また、俺たちのクラスの出し物は、コスプレ喫茶でもある。俺は厨房係だから、教室の端、青いビニールシートに囲まれた所から出ないけど。でもまあ、コスプレはしてくれとの御達しである。

 

「確か。小咲は俺と同じ、午前中のシフトだっけ?」

 

「うん、そうだよ。午後一緒に回ろうね」

 

「そうだな」

 

 それから、午前中の仕事に取りかかる俺たち。コスプレ喫茶の客足も上々だ。

 

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 午前中の仕事を終え、俺たちは約束通り文化祭を回る事になった。

 俺と小咲は、屋台で飲み物を買い、屋上へ続く階段に座り一休み。飲み物を一口飲み、俺が口を開く。

 

「そういや、小咲が家から出る時、春ちゃんから『お姉ちゃん、私のクラスの出し物に来てね』って言われたんだよな?てか、何の出し物だ?」

 

「う、うん。春のクラスの出し物はお化け屋敷らしいんだ……」

 

 俺は、あー、と声を上げる。小咲は、大のお化けが苦手でもある。

 

「まあでも、作り物だし大丈夫だろ」

 

「そ、そうだね」

 

 という事で、空になった紙コップをゴミ箱に捨て、一年の教室へ向かう。

 

「春ちゃんはA組だっけか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「お姉ちゃん!先輩!」

 

 俺と小咲が教室の前に到着すると、教室内から春ちゃんが出て来た。

 

「すいません、すぐに案内したいんですけど、結構並んじゃってて……」

 

 春ちゃんが指差した列には、ぱっと見、20人位が並んでいる。それだけ、盛況という事なのだろう。

 列に並び、10分程経過した頃か、俺たちの順番になった。にしても「……マジ怖かった……」とか「……あれ、怖すぎだろ……」とか、終わった客の声がかなりあった。

 

「次の人どうぞー」

 

 受付の人にそう言われ、俺と小咲は教室内部に入って行く。中は薄暗く、装飾もかなり凝っており不気味である。でもまあ、俺には全然怖くないが。血生臭い経験をしてるからだろうか?

 

「文化祭にしては、結構凝ってるな。小咲は大丈夫か?」

 

「……う、うん。何とか……」

 

 言葉とは裏腹に、俺の右腕をギュっと掴んでいるんですが。てか、女の子特有のアレがあってるんですが……。まあ、小咲は、そういうのを気にしてる余裕が無いんだと思うが。

 ともあれ、歩みを進める俺たち。歩いていると、近場に備え付けられていた障子から、複数の両手が飛び出した。

 

「きゃあああぁぁぁああッ!!」

 

「うぉっ」

 

 突然の事に驚き、小咲は俺の胸の中に飛び込んで来る。驚いたのを確認してか、障子から飛び出た両手が戻って行く。

 

「大丈夫だ。俺が傍に居るから」

 

 俺は小咲の頭を優しく撫でる。小咲は、

 

「……うん」

 

 と、頷いてくれた。

 とにかく、この場で足を止めてると他の人の邪魔になってしまうので先を目指す事にする。ちなみに、小咲は俺の右腕に抱きついてる。

 

「あれだな。林間学校の肝試しを思い出すな」

 

「うん、そうだね。確か、話てれば怖くない作戦。だっけ。安直な名前かも」

 

「……それは掘り起こさない方向でお願いします」

 

「ふふ、そうだね。あの時の蓮君。かなり眠そうだったね」

 

「いやまあ、疲れたからな」

 

 にしても、2人の空間といえばいいのか、それが構築されている為、お化けが脅かしに来ても全然怖くなく無くなった小咲である。

 

「((((イチャイチャしすぎで、もう、脅かす気にもなら(ないよ)(ねぇ)……))))」

 

 お化けたちはこう思っていたらしいが、俺が気づく事はなかった。

 ともあれ、話ていたら、いつの間にかゴールが見えてきた。俺たちは教室を出て、一息吐いた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「先輩、お姉ちゃん。お化け屋敷どうでしたか?」

 

 振り向くと、そこには春ちゃんの姿が映った。

 

「良く出来てたと思うぞ。文化祭の出し物にしては、かなりレベルが高い」

 

「うん、怖かったよ」

 

 春ちゃんは目を丸くする。それもそうだろう、お化け屋敷の苦手な小咲が平然と言ったのだから。

 

「お、お姉ちゃん。もっと怖がると思ってたのに。以外かも……」

 

「隣に蓮君が居てくれたから怖くなかったんだよ」

 

「……惚気、御馳走様だよ。お姉ちゃん」

 

「そ、そうかな」

 

 とまあ、このようにして文化祭が進んでいくのだった。




文化祭は、後一話くらい続くかも。

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