ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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早めに更新ができました。


第42話 サプライズ#2

 ~夏休み最終日、とある一軒家~

 

 俺は、2LDKのリビングでのんびりとしていた。言わずとも、羽姉の家である。てか、女の子の特有の良い匂いが鼻腔を擽るんだが……。決して変態発言じゃないからね。

 

「明日から学校か。……メンドイ」

 

「もぉ、そんな事言わないの。明日サプライズがあるんだから」

 

 羽姉ちゃんは、笑みを浮かべる。

 

「サプライズねぇ。ま、楽しみにしてるよ」

 

「……だ・か・ら、今日はお泊まりなしね☆」

 

 羽姉は妖艶な笑みを浮かべた。だがまあ、いつもの事なので俺は平然と受け流す。

 

「はいはい。そういうのは、俺が高校を卒業してからな」

 

「ぶぅー、蓮ちゃんのケチ」

 

「ケチで結構。……ほら、おいで」

 

 俺が腕を広げると、羽姉は目を細めて胸の中に飛び込み、俺は優しく抱きしめる。いつも思うけど、こうなると羽姉は年下にしか見えない。

 

「……蓮ちゃんの胸の中、暖かいね」

 

「そうか?普通じゃね」

 

 それから、数秒の抱擁をした後、俺たちは離れた。てか、羽姉。名残惜しそうな顔しないでくれ。いつでもやってやるから。

 

「蓮ちゃん。ご飯食べてく?」

 

「うーん、そうだな。……うん、戴いていくよ」

 

「ホント!?お姉ちゃん、腕を振るちゃうぞ~!」

 

 そう言いながら、羽姉は立ち上がりキッチンへ向かった。

 最初、羽姉は餃子しか作る事ができなかったが、努力の末、中華料理全般は作れるようになったらしい。

 ともあれ、俺は羽姉の作った中華料理を御馳走になり、帰路に着いた。……まあ、玄関で深いキスをされたけど。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 次の日の新学期。

 俺はいつも通り登校し、退屈な始業式を受け、自身の席に座り、机の上で頬杖をしていた。クラスメイトは『担任が変わるらしいよ~』『しかも、美人らしい』『ずっと副担任で回してもんね~』と言う声が聞こえる。

 そして、その人が教室に入って来ると、俺は頬杖を崩し、顔面を机の上にぶつけてしまった。……サプライズってそういう事かよ。

 その人は教壇に上がり自己紹介を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日からこのクラスの先生になる――――奏倉羽(・・・)です。皆さん、よろしくね!」

 

 ちなみに、担当は英語らしい。

 ……つーか、俺を見てウインクするな……。

 

「ねぇねぇ、先生ってどこから来んですか?」

 

「これって、“(ユイ)”って読むんですか?」

 

 羽姉は、この質問に答えていく。

 ――俺は次の質問で、心臓が飛び上がる感じになる。

 

「先生が首から下げてる指輪って、何なんですか?」

 

「えっとね。この指輪は、婚y――」

 

「――羽先生。ちょっと来て」

 

 俺は立ち上がり、羽姉の右腕を優しく掴んで廊下に出る。『蓮ちゃんどうしたの~』っていう羽姉の声や、『蓮ちゃんだと!どういうことだ!桐崎弟!』って声が聞こえたが、無視である。今はこっちの方が重大事項だ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「蓮ちゃん、どうしたの?」

 

 キョトン顔をしないで羽姉さんや。

 

「あのままじゃマズイと思ったから、連れ出しただけ」

 

 羽姉は、『この事?』と言って、指輪を右手で取って持ち上げる。

 

「……ああ。その指輪の事は、上手く誤魔化して欲しいです……」

 

「もぉ、蓮ちゃんったらウブなんだからぁ」

 

「ウブじゃねからな。つーか、此処は学校だからね」

 

「そうでした」

 

 そう言って、羽姉は舌を出して笑った。その表情は、誰から見ても魅力的である。

 

「……ったく、頼んだよ。羽姉」

 

 うん、マジで頼んだ。俺の平穏な高校生活に関わるかもしれないからね。

 

「しょうがないな、わかりました」

 

 ともあれ、教室に戻りました。

 ……まあ、それからの質問攻めは凄かったけど。難なく乗り越えたよ、俺。てか、姉貴と橘も羽姉と知り合いだったとは世の中狭いのね。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~屋上~

 

 放課後になり、屋上には羽姉、小咲、姉貴、橘、鶫、楽が集まっていた。どうやら。この5人は約束の場所に一緒に居たらしく集まったということらしい。……つーか、俺って呼ばれる理由あったのか?うん、早く帰りたいまである。

 

「……うそ。奏倉先生もあの場所にいて、鍵まで持ってるなんて……」

 

 姉貴がそう声を上げる。まあ確かに、約束の場に6人が居て、その4人が鍵を持ってるなんて、凄い偶然である。つか、本当に偶然なのか?まあどうでもいいけど。

 

「わたしも、ビックリしたんだよ~。あの場に皆が勢揃いしてるんだもん」

 

「……口を挟んで悪い。羽姉、俺って居る意味あんの?」

 

「あるよ、蓮ちゃん。約束の場所から数キロ離れた所に、蓮ちゃんが住むお家があったんだよ」

 

 ……マジか。初耳である。でもまあ、これなら辻褄も合う。何故、俺が小さい時に羽姉と姉貴に会えた。っていうのが。

 

「……なるほどな。俺はそのまま親父に引き取られたんだな」

 

 でもまあ、羽姉と姉貴が入れ替わりで遊んで感じになったけどね。

 羽姉は頷き、

 

「うん、大当たりだよ。蓮ちゃん」

 

 俺も若干関連してたとは、意外すぎる。下手したら、小咲と橘とも会ってるんじゃね。まあ、記憶に無いからそれはないと思うけどさ。

 それからはまあ、羽姉が皆について教えてくれた。んで、肝心の鍵の事に――、

 

「あの……先生は、鍵の事……。いえ、約束の事を覚えてるんですか?私たち皆、10年前に楽と何か約束したらしいんですけど、それについて何も思い出せないんです。先生は、何か覚えてませんか?」

 

 姉貴が羽姉にそう聞くが――、

 

「あー……約束ね」

 

 右拳を口元に当て、空を見上げる羽姉。つか、俺が中国に行った時、鍵の事を少し話してたよな?――自分の鍵は、絶対に開かないって事も。

 

「ごめん、全然覚えてない。――でもね。一つ言える事は、わたしが持ってる鍵じゃ、楽ちゃんのペンダントは絶対に開かない」

 

「「「「え?」」」」

 

 ポカンとする、姉貴、橘、小咲、楽。まあ確かに、鍵を持ってる女の子が、絶対に私のじゃ開かない。って言えばそうなるも無理もないと思う。

 

「それにわたしは、既に新しい恋が始まってるしねー。――だからはい。楽ちゃん」

 

 羽姉は、左ポケットから取り出した鍵を楽に渡し、楽はそれを受け取る。楽は、この場でペンダントに鍵を入れ、錠を開けようとしたが開く事はなかった。

 羽姉は、楽を見ながら、

 

「ねっ。開かないでしょ、楽ちゃん。わたしは、約束の女の子じゃないんだよ」

 

「お、おう。そ、それじゃあ、残りは3本って事になるな……」

 

 いや、実際には橘と姉貴。どちらかなんだけど……。

 ……この際だから、楽も2人と付き合っちゃえばいいのに……。はい、すいません。一方的な押し付けだよね。

 ――その時、

 

「じ、実はわたしも、新しい恋をしてるの……。だから一条君。もし、わたしの鍵で開いても、わたしの事は気にしちゃダメだよ」

 

 そう言って、小咲は首に下げた鍵を取り楽に渡した。……つーか、小咲の鍵でペンダントが開く感じが凄ぇするんですが……。

 ま、昔は昔。今は今だしね。なんつーか、いい訳みたくなってるけど、良しとしよう。

 その後は、小咲と羽姉は質問攻めにあってたけど上手く交わした。まあこれが、羽姉が凡矢理高校の担任に就任した日のできごとであった。




楽さんのペンダントの意味が……(苦笑)
ちなみに、その後は皆一緒に帰りました。

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