~とある廃墟の外~
「うちの野郎共に任せる事はできなかったのか?」
「若、覚悟を決めて下さい。始めてではないでしょう?」
そう、今から俺と鶫で、ちょっとした組織を潰す感じだ。
俺の両腰には、刀の鞘が一つずつ下げられ、鶫は胸ポケットから取り出した拳銃のアンロックを解除していた。
「ビーハイブの皆さんは別任務に当たっているので、人手が足りないんですから。――それに狙いは、日本に来日した領主の捕獲と聞いてます」
鶫のパートナーはポーラなのだが、そのポーラも別任務に当てっている為居ないのだ。なので、俺に白羽の矢が立ったのである。……つーか、羽姉の捕獲とか……。殺していいかな?
「……なあ鶫。そいつら殺していいかな」
俺は若干、殺気を体から醸し出す。
「だ、ダメです。鎮圧だけにしてください!その後は、クロード様たちに任せましょう!」
「…………解ったよ。まあでも、二度とそう考えられないように痛みつけておけよ」
「了解しました。伝えておきます。それで、どのようなフォーメーションに致しましょうか?」
「そうだな。俺が突っ込んで、全員を峰打ちで気絶させるから、その間飛んでくる銃弾を鶫が弾く感じでいいか?」
これが無難な戦術だろう。
「それでは私は、スナイパーライフルも用意しときます」
「ああ、そうしてくれ。――んじゃ、行きますか」
そう言ってから、俺は二刀を抜き放ち、鶫が「お気をつけて」と言ってからスナイパーライフルを携え、配置に向かった所で作戦開始である。
――俺は、木製の入口の扉を右足で思いっ切り蹴り抉じ開ける。
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「なっ!誰だ貴様!」
「いや待て!顔を隠して、二振りの刀と言ったら、あいつしか居ないだろうが!――ビーハイブの剣舞だ!」
如何にも雑魚そうなチンピラ共が叫んでる。……てか、やっぱり剣舞の二つ名って、裏では有名なのね……。
雑魚共は、刀や鉄パイプ、拳銃を携え迎え撃つ気が満々と見える。
「(……こうなるから裏の仕事は好きじゃないんだけど。ま、今回は事情が事情だし、仕方ないか……)」
俺は刀を構え、迎え撃つ体勢を整え、一気に駆け抜け、峰打ちで一人の意識を狩り取る。
奴らは反撃として拳銃を発砲するが、それは的確に撃ち落とされる。……あれだ。鶫の的確な射撃には舌を巻く。
「なっ!?全弾、弾いただと……」
俺はチンピラが怯んだ隙に、舞うように刀や鉄パイプを弾き飛ばした後、腹に峰打ちを入れて意識を狩り取る。てか、雑魚すぎでしょこいつら。
こいつらが羽姉に手を出そうとか、反吐が出る。
「(……まあいいや、潰せばいい話だし)」
そして、最後のチンピラを気絶させた所で、任務完了である。
俺は刀を鞘に仕舞い、軽く息を吐く。と、その時、俺の胸ポケットに仕舞ったスマホが震える。
着信者は、
――小野寺春。
まあ取り敢えず、電話に出ないと何も始まらない。
俺はアジトを出て、電話に出た。
「春ちゃんか。どうしたんだ?」
『先輩。明日、用事とか入ってますか?』
「いや、特にはないぞ」
『そ、そうですか。実は――』
春ちゃんの話によると、商店街の福引をした所水族館のチケットが二枚当たったが、小咲や風ちゃんが用事があるので行けないらしい。
そこで、前のお礼も兼ねて一緒にどうですか?ということらしい。
「俺は構わないけど」
『それじゃあ、水族館前に14時集合でどうでしょうか?』
「了解だ。んじゃ、明日な」
『はい!また明日です!』
こうして、通話が終了した。
ともあれ、明日の予定が決定した俺だった。んでまぁ、鶫が報告すると言う事なので、俺は先に家に帰ったのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
~水族館前 午後14時~
「お待たせしました、先輩」
「おー、待った待った。ちょー待ったな」
「……解った事ですけど、もうちょっと気の利いた言葉が欲しかったです……」
肩を若干落とす春ちゃん。
「まあ俺だし。てか、その白いワンピース。小咲の奴か?」
そう、春ちゃんの服は、小咲が前着ていたワンピースだった。ちなみに俺は、VネックのTシャツに、黒いジーパンだ。
「よくわかりましたね。昨日、お姉ちゃんから借りたんです」
「よく似合ってるよ。うん、可愛いよ」
「……その言葉、私以外にも言ってるんですよね」
あ、あれー、何かデジャブなんだけど、これ。まあいいけど。
「まあな。ある人からの教えでもある」
「そうなんですか。立ち話もアレですし、中に入りましょう」
まあそういう事なので、入口でチケットを渡し内部に足を踏み入れる。
そして、目の前にあったのは、巨大な水槽である。小魚やサメ、エイなどが泳いでいる。
「……いつも思ってるんだが、よく小魚はサメに食われないよな」
「そのように教えられてるんだと思います。飼育員さんとかに」
「……それ、迷信じゃね」
「そうでしょうか」
春ちゃんは首を傾げる。
その仕草は、小咲のものにそっくりであった。流石、姉妹である。つか、今になって混み出すとは、予想外である。
「春ちゃん。手を出して」
「はい?」
春ちゃんは、疑問符を浮かべながら右手を出す。
俺はその手を左手で握り、
「な、なっ!?」
春ちゃんは顔を茹でダコのように赤くする。
「あれ?嫌だった?」
「た、ただ、ビックリだけです。は、ははは」
Side 春。
先輩、ビックリするに決まってるじゃないですか。私は女子中出身で、男性に免疫がないんですよ……。てか、そういう仕草で、女の子を落としていくんです。まったく、この先輩は。
「なあ、春ちゃん。行きたい所あるか?」
「えーと、そうですね。イルカショーとかどうでしょうか?これから開演らしいですし」
「ふむ。良いじゃないか」
……わ、私今気づいた。こ、これってデート、だよね?
と、とにかく、私たちはイルカショーへ向かった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
スタジアムに向かうのに、そんなに時間は掛からなかった。
私たちは幸運にも、最前列の席に座る事ができた。イルカショーは滞りなく進んでいったけど――、
『お次のショーは、お客様に手伝ってもらいたいと思います!』
司会のお姉さんが周りを見渡しながら、そう呟いた
そして――、
『では、そこのカップルお二方!こちらへ来ていただけませんか?』
……へ?カップル?誰と誰が?
「あーと、春ちゃん。俺たちの事らしい。どうする?行くか?」
「えっと、その……。先輩が嫌ではないなら……」
「俺は別に構わないけど。てか、カップルって見られるんだな。俺と春ちゃん」
……こ、この先輩は……私が意識しないようにしてる事を平然と言うんだから……。ひょっとして、女の子慣れしてるのかな?……うん、有り得そう……。タラシ先輩(私命名)だもんね。わ、私の心も盗む気ですか!?」
「ひでぇな。タラシ先輩とか。……まあ、否定できない俺だけど。つか、春ちゃんの心を盗むとか考えた事ないからね」
私は、頬を膨らませた。
「知らず知らず盗もうとしてる人がよく言いますね」
「え?そうなの?初耳だわ」
「まったく、行きますよ」
私は自然に先輩と手を繋いで、ステージに急いだ。先輩は、『ちょ、待て』って言ってたけど、無視である。……良いよね、こういう時だけは先輩をリードしても……。
『この旗をお持ちに。こちらの合図で旗を上げると、ルー君がジャンプしますので』
司会のお姉さんは白い旗を私に、赤い旗を先輩に渡した。
『それでは二人共、手を繋いで下さ~い!……あ、ごめんなさい。既に繋いでますね』
そんな事があり、私は白旗を上げ、イルカが大きくジャンプ。先輩も赤い旗を上げて、イルカがジャンプする。
『は~い、カップルさん。ご協力ありがとうございます!』
このように、イルカショーが終了した。
そして最後は、お土産屋さんだ。
「へぇ、和菓子とコラボしたキーホルダーね」
「そうです。珍しくないですか。私、スマホのストラップにしようかな。――先輩もどうですか?」
そして、私は固まる事になる。私、今何て言った?『どうですか?』って言ったよね。
やばいやばいやばい……。私、何を聞いてるんだろ……。先輩には、お姉ちゃんたちが居るのに……。
「構わないけど。……まあうん。何とかなるだろ」
そう言って、先輩は私の手からキーホルダーを取った。
それから会計を済ませ、私たちは水族館を出ました。先輩は水族館を出た後、スマホにキーホルダーをすぐに付けたけど。
「春ちゃん。今日は楽しかった」
「ええ、私も楽しかったです。先輩」
きっと私は、今日という日を忘れないだろう。
次は、羽さんですね(笑)やっと出せますよ。