ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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第41話 水族館

 ~とある廃墟の外~

 

「うちの野郎共に任せる事はできなかったのか?」

 

「若、覚悟を決めて下さい。始めてではないでしょう?」

 

 そう、今から俺と鶫で、ちょっとした組織を潰す感じだ。

 俺の両腰には、刀の鞘が一つずつ下げられ、鶫は胸ポケットから取り出した拳銃のアンロックを解除していた。

 

「ビーハイブの皆さんは別任務に当たっているので、人手が足りないんですから。――それに狙いは、日本に来日した領主の捕獲と聞いてます」

 

 鶫のパートナーはポーラなのだが、そのポーラも別任務に当てっている為居ないのだ。なので、俺に白羽の矢が立ったのである。……つーか、羽姉の捕獲とか……。殺していいかな?

 

「……なあ鶫。そいつら殺していいかな」

 

 俺は若干、殺気を体から醸し出す。

 

「だ、ダメです。鎮圧だけにしてください!その後は、クロード様たちに任せましょう!」

 

「…………解ったよ。まあでも、二度とそう考えられないように痛みつけておけよ」

 

「了解しました。伝えておきます。それで、どのようなフォーメーションに致しましょうか?」

 

「そうだな。俺が突っ込んで、全員を峰打ちで気絶させるから、その間飛んでくる銃弾を鶫が弾く感じでいいか?」

 

 これが無難な戦術だろう。

 

「それでは私は、スナイパーライフルも用意しときます」

 

「ああ、そうしてくれ。――んじゃ、行きますか」

 

 そう言ってから、俺は二刀を抜き放ち、鶫が「お気をつけて」と言ってからスナイパーライフルを携え、配置に向かった所で作戦開始である。

 ――俺は、木製の入口の扉を右足で思いっ切り蹴り抉じ開ける。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「なっ!誰だ貴様!」

 

「いや待て!顔を隠して、二振りの刀と言ったら、あいつしか居ないだろうが!――ビーハイブの剣舞だ!」

 

 如何にも雑魚そうなチンピラ共が叫んでる。……てか、やっぱり剣舞の二つ名って、裏では有名なのね……。

 雑魚共は、刀や鉄パイプ、拳銃を携え迎え撃つ気が満々と見える。

 

「(……こうなるから裏の仕事は好きじゃないんだけど。ま、今回は事情が事情だし、仕方ないか……)」

 

 俺は刀を構え、迎え撃つ体勢を整え、一気に駆け抜け、峰打ちで一人の意識を狩り取る。

 奴らは反撃として拳銃を発砲するが、それは的確に撃ち落とされる。……あれだ。鶫の的確な射撃には舌を巻く。

 

「なっ!?全弾、弾いただと……」

 

 俺はチンピラが怯んだ隙に、舞うように刀や鉄パイプを弾き飛ばした後、腹に峰打ちを入れて意識を狩り取る。てか、雑魚すぎでしょこいつら。

 こいつらが羽姉に手を出そうとか、反吐が出る。

 

「(……まあいいや、潰せばいい話だし)」

 

 そして、最後のチンピラを気絶させた所で、任務完了である。

 俺は刀を鞘に仕舞い、軽く息を吐く。と、その時、俺の胸ポケットに仕舞ったスマホが震える。

 着信者は、

 

 

 ――小野寺春。

 

 

 まあ取り敢えず、電話に出ないと何も始まらない。

 俺はアジトを出て、電話に出た。

 

「春ちゃんか。どうしたんだ?」

 

『先輩。明日、用事とか入ってますか?』

 

「いや、特にはないぞ」

 

『そ、そうですか。実は――』

 

 春ちゃんの話によると、商店街の福引をした所水族館のチケットが二枚当たったが、小咲や風ちゃんが用事があるので行けないらしい。

 そこで、前のお礼も兼ねて一緒にどうですか?ということらしい。

 

「俺は構わないけど」

 

『それじゃあ、水族館前に14時集合でどうでしょうか?』

 

「了解だ。んじゃ、明日な」

 

『はい!また明日です!』

 

 こうして、通話が終了した。

 ともあれ、明日の予定が決定した俺だった。んでまぁ、鶫が報告すると言う事なので、俺は先に家に帰ったのだった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~水族館前 午後14時~

 

「お待たせしました、先輩」

 

「おー、待った待った。ちょー待ったな」

 

「……解った事ですけど、もうちょっと気の利いた言葉が欲しかったです……」

 

 肩を若干落とす春ちゃん。

 

「まあ俺だし。てか、その白いワンピース。小咲の奴か?」

 

 そう、春ちゃんの服は、小咲が前着ていたワンピースだった。ちなみに俺は、VネックのTシャツに、黒いジーパンだ。

 

「よくわかりましたね。昨日、お姉ちゃんから借りたんです」

 

「よく似合ってるよ。うん、可愛いよ」

 

「……その言葉、私以外にも言ってるんですよね」

 

 あ、あれー、何かデジャブなんだけど、これ。まあいいけど。

 

「まあな。ある人からの教えでもある」

 

「そうなんですか。立ち話もアレですし、中に入りましょう」

 

 まあそういう事なので、入口でチケットを渡し内部に足を踏み入れる。

 そして、目の前にあったのは、巨大な水槽である。小魚やサメ、エイなどが泳いでいる。

 

「……いつも思ってるんだが、よく小魚はサメに食われないよな」

 

「そのように教えられてるんだと思います。飼育員さんとかに」

 

「……それ、迷信じゃね」

 

「そうでしょうか」

 

 春ちゃんは首を傾げる。

 その仕草は、小咲のものにそっくりであった。流石、姉妹である。つか、今になって混み出すとは、予想外である。

 

「春ちゃん。手を出して」

 

「はい?」

 

 春ちゃんは、疑問符を浮かべながら右手を出す。

 俺はその手を左手で握り、

 

「な、なっ!?」

 

 春ちゃんは顔を茹でダコのように赤くする。

 

「あれ?嫌だった?」

 

「た、ただ、ビックリだけです。は、ははは」

 

 

 Side 春。

 

 先輩、ビックリするに決まってるじゃないですか。私は女子中出身で、男性に免疫がないんですよ……。てか、そういう仕草で、女の子を落としていくんです。まったく、この先輩は。

 

「なあ、春ちゃん。行きたい所あるか?」

 

「えーと、そうですね。イルカショーとかどうでしょうか?これから開演らしいですし」

 

「ふむ。良いじゃないか」

 

 ……わ、私今気づいた。こ、これってデート、だよね?

 と、とにかく、私たちはイルカショーへ向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 スタジアムに向かうのに、そんなに時間は掛からなかった。

 私たちは幸運にも、最前列の席に座る事ができた。イルカショーは滞りなく進んでいったけど――、

 

『お次のショーは、お客様に手伝ってもらいたいと思います!』

 

 司会のお姉さんが周りを見渡しながら、そう呟いた

 そして――、

 

『では、そこのカップルお二方!こちらへ来ていただけませんか?』

 

 ……へ?カップル?誰と誰が?

 

「あーと、春ちゃん。俺たちの事らしい。どうする?行くか?」

 

「えっと、その……。先輩が嫌ではないなら……」

 

「俺は別に構わないけど。てか、カップルって見られるんだな。俺と春ちゃん」

 

 ……こ、この先輩は……私が意識しないようにしてる事を平然と言うんだから……。ひょっとして、女の子慣れしてるのかな?……うん、有り得そう……。タラシ先輩(私命名)だもんね。わ、私の心も盗む気ですか!?」

 

「ひでぇな。タラシ先輩とか。……まあ、否定できない俺だけど。つか、春ちゃんの心を盗むとか考えた事ないからね」

 

 私は、頬を膨らませた。

 

「知らず知らず盗もうとしてる人がよく言いますね」

 

「え?そうなの?初耳だわ」

 

「まったく、行きますよ」

 

 私は自然に先輩と手を繋いで、ステージに急いだ。先輩は、『ちょ、待て』って言ってたけど、無視である。……良いよね、こういう時だけは先輩をリードしても……。

 

『この旗をお持ちに。こちらの合図で旗を上げると、ルー君がジャンプしますので』

 

 司会のお姉さんは白い旗を私に、赤い旗を先輩に渡した。

 

『それでは二人共、手を繋いで下さ~い!……あ、ごめんなさい。既に繋いでますね』

 

 そんな事があり、私は白旗を上げ、イルカが大きくジャンプ。先輩も赤い旗を上げて、イルカがジャンプする。

 

『は~い、カップルさん。ご協力ありがとうございます!』

 

 このように、イルカショーが終了した。

 そして最後は、お土産屋さんだ。

 

「へぇ、和菓子とコラボしたキーホルダーね」

 

「そうです。珍しくないですか。私、スマホのストラップにしようかな。――先輩もどうですか?」

 

 そして、私は固まる事になる。私、今何て言った?『どうですか?』って言ったよね。

 やばいやばいやばい……。私、何を聞いてるんだろ……。先輩には、お姉ちゃんたちが居るのに……。

 

「構わないけど。……まあうん。何とかなるだろ」

 

 そう言って、先輩は私の手からキーホルダーを取った。

 それから会計を済ませ、私たちは水族館を出ました。先輩は水族館を出た後、スマホにキーホルダーをすぐに付けたけど。

 

「春ちゃん。今日は楽しかった」

 

「ええ、私も楽しかったです。先輩」

 

 きっと私は、今日という日を忘れないだろう。




次は、羽さんですね(笑)やっと出せますよ。

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