プレゼント選びから数ヵ月が経過し、今日は凡矢理高校で催される七夕イベントでもある。
まあ、笹に願いを書いた短冊かけるといった、季節特有の行事ともいえる。外では、教員たちが笹の木を運んでおり、学年全員には短冊が配られ願いを書く事になっていた。……つっても、願いは既に叶ってるし、ぶっちゃけ願い事なんてないのが俺の本音である。
俺がペンを左手で回して唸っていると、隣席の小咲が話しかけてくる。
「蓮君は、お願い事決まった?」
「いや、決まってない。てか、願う事がないしな。……いや、あれにしよう」
そう言って、俺は短冊にシャーペンを走らせ願いを記入していく。まあ、しょうもない願いなんだけどね。
そんな時、担任教師が前の扉を開け壇上に上がる。
「お前ら、願いは書けたかー?早速飾りに行くぞー」
そう言って、担任教師は教室を出て行く。
そんな訳で、俺は教室を出て目的地を目指す。男子共に、何て書いたのとシツコク?聞かれたが、『もう、勉強教えてやんないからな』と言ってたら、掌を返したように聞く者が出る事はなかった。……なんつーか、餌づけしてる感じだったんだが……。
靴に履き替え、笹の木の元へ向かうと不自然に垂れ下がってる場所がある。てか、かなりの短冊がかけられてる。
まあ、言わずとも橘が主犯だったんだが。つか、楽。橘に愛されすぎでしょ。将来頑張れ。としか今はかける言葉が見当たらんな、うん。
笹の木に短冊をかけると、教室に戻り英語の授業。てかあれだ。既に解ける問題なので、授業が退屈である。まあ、いつも退屈なんだけどね。んで、担任が笹の木の移動を忘れたらしく、それに楽が命名させていた。いや、あれだ。ファイトだよ!……あれ、これって某アニメのセリフじゃね……。
ちなみに俺が短冊に書いた願いは、
――――法律に重婚がOKと追加されますように。匿名より。
という願いだ。……うん、高校生が願う事じゃないね。まあ、思い浮かんだのを書いただけである。バレとしたら、小咲くらいだろうな。
ちなみに、小咲は、
――――匿名さんの願いが叶いますように。
だそうだ。てか、この祭りは主催してる神主は願いを叶える事で有名な人なので、マジで叶いそうである。
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~放課後、帰り道~
「蓮君、前の誕生日プレゼントありがとう」
「おう、気にすんな。ほぼ春ちゃんが選んだって言っても過言じゃないしな」
小咲は若干膨れたように、
「蓮君、春も落とすつもりなの?……春から聞いてるよ、落し物の件」
「落し物?……あー、あれか。てか、普通だろ?」
あれ、何か俺マズイ事したの?そんな覚えは1ミリもないんだが。
小咲は、徐々に呆れ顔になっていく。
「……その無自覚さが女の子を落としていくんだからね。……でも、そんな君を、わたしは好きになっちゃったんだけど」
「お、おう。サンキュー。面と向かって言われると何か恥ずかしんだな。いや、俺も好きだけどさ」
小咲は、顔を徐々に赤く染めていく。
「……ずるいよ、蓮君」
「いや、何が?」
「も、もう、女の子には色々あるんですっ!」
「そ、そうか。何かすまん」
恋人ができても、未だに乙女心が解らない俺である。
まあでも、解っても何も変わらないと思うけどさ。つーか、誰も居なくなったからって、腕に抱きつくのは止めようぜ、小咲さん。俺の理性が瓦解するからね。
「……なあ小咲、当たってるんだが」
『当ててるんだよっ』って言って、小悪魔的な笑みを浮かべないでくれませんかねぇ。まあ、役特だけどさ。
「羽さんも、わたしと同じ事をすると思うよ」
いやいや、キョトン顔をしないでくれ、小咲さんや。
「……まあ確かに、羽姉なら有り得るな。てか、俺の理性をブチ壊そうとするわな」
これだけはマジで勘弁である。高校生にして大人の階段を上がるのは、ちょっとなぁ。って感じなので。そして、小咲は『そうかもね』って言ってクスクス笑う。
「まああれだ。最低でも高校卒業までは待って欲しい。てか、高校卒業したら、小咲はどうするんだ?」
ちなみに、俺の第一希望は、小咲と羽姉と静かに暮らしたいである。
「うーん、そうだね。お家の手伝いをしながら、蓮君と一緒に居たいかな。それに、裏に入る覚悟もできてるよ」
そう言って、小咲は無邪気に笑った。てか、そこまで考えてたとは予想外である。
でもまあ、俺が婿に行くのは不可能(裏事情を除く)であるのは確かだ。なので必然的に、小咲は嫁に貰うという事になる。てか、ここまで将来設計ができてるとはな。
そしてこれが、七夕イベントで起きた出来事であった。
次回はお祭りかな?
てか、将来設計ができてる、小咲と蓮君でしたね(笑)