ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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今回は、小咲のターンですね(多分)


第37話 再びパーティー

 ~桐崎家 入り口前~。

 

 現在、俺と姉貴は、家の入り口前でいつものメンバーの到着を待っていた。そう、今日は姉貴の誕生パーティーなのだ。

 それもあってか、姉貴はドレス姿である。といっても、軽い感じだけどね。……俺?俺は普通に私服姿だ。部屋着でも良いかと思ったが、流石にそれはマズイと思ったからである。つーか、姉貴。そわそわしすぎだからね。まあ、話しによると春ちゃんたちも来るらしいからなぁ。とまあ、噂をすればである。

 

「蓮君、一昨日ぶり」

 

「そうだな。てか、羽姉が日本に帰って来たぞ」

 

 小咲の瞳が丸くなる。

 

「じゃ、じゃあ、蓮君の昨日の用事って、羽さんのお迎えだったんだ」

 

「そんな所だな。姉貴たちも移動した事だし、俺たちも行くか」

 

 という事なので、俺と小咲は桐崎家へ入って行く。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「「「「「ハッピーバースデー、お嬢―!若―!」」」」」

 

 パーティー会場に入ると、直後に大量のクラッカーを鳴らす野郎共。知ってたけど。

 

「お、お姉ちゃん……。き、桐崎先輩たちって何者……」

 

 まあ確かに、かなりゴツイ野郎共に祝われてるんだ。春ちゃんがそう思うのは無理もない。

 

「え?えっと……お嬢様とお坊ちゃん?」

 

 小咲の返しは、半分正解で半分間違えって所か。

 まあでも、ギャングの息子なんだよ!って答えられないもんなぁ、普通。つーか、自家用ジェットなんか要らんわ。なので、野郎共には丁重にお断りをした。

 

「これ、姉貴に」

 

「ありがとう、蓮。大切に使うね」

 

 俺のプレゼントは文具だ。

 それから、各自のプレゼント渡しが行われた。んで、最後は取りの楽の番である。

 

「(姉貴……。不安そうな顔してるなぁ……)」

 

 まあ、前回の誕生日プレゼントが演歌とバナナ、ゴリラのぬいぐるみだったんだから、こうなるのも無理もないけど。楽のプレゼントは花束であった。つーか、花束?それに、姉貴が好きな花である。

 プレゼントを渡し終え、各自パーティーを楽しむ事になった。んでまあ、俺は途中で抜け出しました。主役は姉貴だしね。

 部屋に向かっていると、その廊下で小咲に遭遇した。

 

「あれ、パーティー会場は反対側だぞ。……あ、迷ったのか」

 

 小咲か顔を僅かに染める。

 まあ確かに、桐崎家は一般家庭の約3倍の大きさはあるしなぁ。

 

「う、うん。お手洗いの場所まではよかったんだけど…………れ、蓮君はどうしたの?」

 

 露骨に話題を変えたね。まあいいけど。

 

「いや、俺は部屋に戻ろうと思ってな。んで、小咲から見て右側の部屋が、俺の部屋だ」

 

「へ?」

 

 小咲は、素っ頓狂な声を上げ、俺は苦笑した。

 

「……はわわわわわわわわ。そ、そうなんだ!れ、蓮君のお部屋ね!」

 

「……お前大丈夫か。ぶっ壊れた機械的な感じになってんぞ。てか、俺の部屋の中が気になる的な感じか?」

 

 つっても、男が隠し持つ雑誌やDVDなんかは無いけど。

 その辺は、期待に添えなくて申し訳ない。

 

「え、えーと。…………うん、気になるかも」

 

「そういうことなら入るか?……あ、襲ったりしないから心配するな」

 

 数秒後、俺の言った意味を知ってか、小咲の顔が茹でダコのように赤く染まっていく。

 まあそういう事なので、ドアを開けて部屋の中に入る。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 俺の部屋は、壁際にベットとテレビ。本棚に小説。机の上と棚には、高校と大学の教材と問題集。部屋の真ん中に丸テーブルがあるだけだ。

 

「そんなに見ても、何もないぞ」

 

「う、うん。かなりシンプルだね」

 

「必要な物しか置いてないしな」

 

 てかあれだ。一度だけ姉貴の部屋を覗いた事があるのだが、かなり物が散乱してました。はい。

 まあ、俺は口を挟んだりしないけどね。

 

「あ、でも、机の上に何か飾ってあるよね?」

 

 そういえばそうだった。机の上に写真立ての中に写真を入れ、飾ってたんだっけか。んで、俺に許可を取ってから、小咲は机まで歩み寄り写真を見る。

 

「……これって、小さい時の蓮君と、羽さん?」

 

「まあそうだ。昔の思い出として、この写真だけは大切に持ってたらしい」

 

「『持ってたらしい』って疑問形?」

 

「俺もそんな気は全くなかったんだよ。無意識に、ってやつかもな」

 

 また、小咲の見てる写真は、俺と羽姉が顔をピッタリとくっ付けているものだ。羽姉は笑っているが、俺は不貞腐れた顔をしている。……あの頃は正直じゃなかったしな、俺。

 

「そうなんだ。わたしも欲しいかも、写真」

 

「別にいいけど。ここにカメラないぞ」

 

 俺がそう言うと、小咲はバックからスマホを取り出した。

 なるほど。スマホのカメラで撮るのね。んで、写真を撮る姿勢だが、ベットの上に腰かけ、顔をくっつけてである。てかあれである。小咲を女友達ではなく恋人であり異性として見てるので、色々とヤバイ……。

 予想が裏切られた感覚っていえばいいのか、そんな感じだ。

 ――だから俺は、脇腹を思いっ切り抓る。……かなり痛いが、煩悩が消えるなら構わない。

 

 シャッターが切られ写真撮影の終了だ。振り向くと、小咲の顔が眼前にあった。……てか、ヤバイヤバイヤバイ。俺、ヤバイしか言ってなくね。

 そして、俺の脳内で戦争が勃発する。

 

【いいじゃんいいじゃん。恋人なんだし押し倒しちゃえよ】

 

 頭の中で黒い服を着た俺が、嫌らしい表情を浮かべながらそう言ってくる。

 

「(……いや、それは早いし却下だ)」

 

【お前はな、昔から感情を殺しすぎなんだよ。羽も襲いたい衝動があるんだろ?】

 

「(……俺、まだ高校生。意味解る?)」

 

【ったく、このヘタレ。こんなのだったら、肝心な所で失敗するからな】

 

 うっ、俺の悪魔にそう言われてしまった。いやでも、その通りなのかもしれないけど。

 ――ここは覚悟を決めて……。

 

 

 

 

 

《悪魔の言う事は聞いちゃダメだからな!まだ、お前には早すぎるからな!》

 

 再び脳内では、白い服を着た俺が現れて注意をしてくる。すると、黒い服を着た悪魔が舌打ちをする。

 

【コイツに取ってある意味チャンスなんだぞ。邪魔すんじゃねぇよ】

 

《おま、高校生には早すぎるだろうが!頭逝かれてるんだろ!》

 

【あぁん!テメェ、今なんつった?こら】

 

 組み手を始めてしまった天使と悪魔。いや、何。俺はどうしたらいいの?もう、自分で判断がつかなくなってきたんだが……。

 

【だから言ってんだろうが!テメェの本能のままに動けよ!】

 

《それは早いからな!》

 

【うるせぇ!テメェはどっか行ってろ!】

 

 天使は悪魔に蹴り飛ばされて、脳内から弾かれるように飛ばされていった。

 悪魔は俺の肩に手を回し、悪戯な笑みを浮かべる。

 

【ほら、正直になれって】

 

 そして、遂に――、

 

 

 

 

 

「蓮k――――んん!?」

 

 俺は小咲を押し倒し、唇を重ねていた。……それも濃厚なやつだ。

 だが、次に行く前に、俺は自制心をかき集め若干理性を取り戻し、再び、思いっ切り脇腹を抓る。……これは、さっきのやつより痛いな……。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「……スイマセンでした。焼くなり煮くなり好きにしていいです。覚悟はできてます……」

 

 俺は小咲の前で、――――土下座をしている。

 

「蓮君。頭を上げて」

 

「は、はい!」

 

 ガバッと上体を起こす俺。

 小咲は息を吐き、

 

「キスはしていいけど、時と場所は考えようね。ここには皆がまだいるんだよ」

 

「……仰る通りです。ごめんなさい」

 

「許す。それにわたし、蓮君に裸見られてるしね」

 

 ……うん、そんな事あったな。林間学校の露店風呂で。

 つーか、これって俺の黒歴史になったりすんのか?

 

「ほら、皆の所に戻るよ。今ならまだ怪しまれないしね」

 

 まあ確かに、俺と小咲が会場から出て数分しか経過していないという事は、『外の空気を吸ってた。それで、その時鉢合わせた』で誤魔化せる範囲だと思う。

 また、戻るのかぁ。と思ってたが、今はこれが最善策である。

 そして、パーティーが終了し、皆が帰った所で部屋に戻り一息ついた俺は、気持ちを切り替える為ミステリー小説を読む事に没頭したのだった。




れ、蓮君。遂にやってしまったー(笑)まあ、途中で自制心が勝ったけど。羽姉もこれを聞いたらグイグイきそうだし。あれだ。リア充爆発しろって事だな。
次回は、春ちゃんかな?まあそこら辺は解らんけど。

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