ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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第35話 オミマイ

 あれから色々な事があった、キョーコ先生が結婚するので学校を退職したり、集の好きな人がキョーコ先生だったり、楽の気持ちは姉貴に傾いてたり、俺の想い人(名前は伏せてる)を話したりと色々な事があった。

 んで、今俺は、和菓子屋『おのでら』の裏口へやって来ている。るり曰く、小咲が風邪を引いてるから、看病してこい。だそうだ。

 ともあれ、チャイムを押すと、家の中から『はーい、少々お待ちください』と言う返事が返ってくる。

 玄関のドアがガラガラと開き、

 

「どちらさまで……」

 

 小咲は、凄まじい勢いで玄関を締め姿を隠した。いや、何で隠す?

 

「おーい、小咲。開けてくれ」

 

『……う、うん。わかった』

 

 玄関の扉が開き、再び小咲が顔を出す。

 

「ど、どうして蓮君が家に?」

 

「いや、るりが『小咲が熱を出したから、お見舞いに行きなさい。小咲の友人としての頼みよ』だそうだ。小咲には伝えたらしいけど」

 

「(る、るりちゃん。聞いてないよ。わたし、また熱出しちゃうよ~)」

 

「取り敢えず上がっていいか」

 

 かなりナチュラルに言ってるが、大丈夫だよな?いや、大丈夫なはずだ。

 つーか、小咲のお母さんたちは、商店街の人たちと旅行に出てて、二、三日自宅に帰って来ないらしい。まあ、春ちゃんもいると思うし、家を開けても大丈夫だと思うけど。てか、今はいるのか分からんけどな。

 とにかく、家に上がりました。

 

「んで、調子はどうだ?」

 

「うん。お薬を飲んだから、大分良くなったよ」

 

 だが、若干だが顔が赤い。

 

「でも、今日一日は安静な。家の事は、俺がやるから」

 

「い、いや、悪いよ」

 

「ダメだ。大切な人を無理させるとか、あっちゃいけないしな」

 

「……もう、それはずるいよ。甘えたくなっちゃうからね」

 

 俺的には、甘えて貰って全然構わないんだが。つーか、寧ろ推薦。

 その時、春ちゃんが廊下の角からひょこっと顔を出した。

 

「お姉ちゃん、そろそろ休まない……」

 

 春ちゃんは目を丸くする。

 

「春ちゃん、お邪魔してるぞ。あとこれ、差し入れだ。小咲も腹が減ったら食ってくれ」

 

 俺が春ちゃんに差し出したのは、涼美屋の苺大福だ。お邪魔してる身なのに、差し入れはなしはアレだし。

 とまあ、小咲には二階の部屋で休んで貰い、俺はお粥を作る事にした。春ちゃんも一緒に作ってくれるらしい。

 

「悪いな、急にお邪魔しちゃって」

 

「いえ、彼氏なのでお宅訪問は当然ですよ。姉の看病に来て頂きありがとうございます」

 

「お、おう。こちらこそ」

 

 なんつーか、まだ高校一年になったばかりなのに、かなりしっかりしてる。

 ともあれ、できたお粥を小咲の部屋に運んだ。

 

「小咲、一人で食えるか。何だったら、食べさせてあげるけど?」

 

 小咲は顔を真っ赤に染める。……熱がぶり返すぞ。

 

「だ、大丈夫だよ。一人で食べれるからね」

 

「ほら先輩、お姉ちゃんも大丈夫そうなんで下にいきますよ。お姉ちゃん、何かあったらスマートフォンを鳴らしてね」

 

「う、うん。わかった」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ドアを開けて廊下に出たのだが、俺は春ちゃんの額に右手掌を当てる。

 

「やっぱり。……春ちゃん。小咲の風邪、移っただろ?」

 

「――ッ!?な、なんの事ですか……」

 

 俺は真剣な顔で、

 

「……春ちゃん」

 

「……そうです。ごめんなさい」

 

「いや、謝る事はないと思うけど。まあいいや、春ちゃんは寝なさい。お粥作ってくるから」

 

「……いや、でも」

 

「春ちゃん」

 

「……はい、わかりました」

 

「よろしい」

 

 そう言って、俺はお粥を作り、反対側の部屋を開け春ちゃんの元へ向かった。

 春ちゃんは、安静にしてベットの上で上体を起こしていた。

 俺は近場のテーブルに、お粥を乗せたお盆を置く。

 

「お粥とポカリだ」

 

「すいません、桐崎先輩」

 

「実は俺、謝れるより感謝された方が嬉しいんだが」

 

 春ちゃんは顔を俯けてから、

 

「桐崎先輩、ありがとうございます」

 

「おう、お粥食えるか」

 

「はい、大丈夫です」

 

「そか。俺は下に行くから安静にしてるんだぞ」

 

 そう言って、俺は階段を降りて下へ向かい、風呂から洗面器を取りその中に水道水を入れ、洗面所からタオルと取り出した。

 

 

 春 Side

 

 ……私、何をやってるんだろ。看病してたのに、看病されるなんて。不覚すぎるよぉ……。

 それにしても、冷たくて気持ちいいな。つい、眠く……。

 数時間が経過した頃、私は目を覚ました。上体を起こして周りを見回すと、桐崎先輩が部屋の周りを綺麗にしてくれていた。色々と片付けの途中だったんだっけ(女の子特有の物は片付けには入ってない)。

 

「(あれ、何かさっき額から落ちたような?)」

 

 布団を見てみたら、丸められたお絞りがあった。ベットの下には、水が汲まれた洗面器が置いてある。

 ……ホントに、桐崎先輩の優しさは底知らずだと思う。たぶん、心地良かったお陰なのは、先輩が額に冷えたお絞りを当ててくれたくれたからだろう。

 私はお姉ちゃんの言葉を思い出していた。『蓮君は、優しくて包んでくれる、魅力的な男性なんだよ。それに、とっても親身になってくれてね。……まだ一杯あるんだけどね、これが私の、蓮君の好きな所かな』だったっけ。

 

「お、春ちゃん起きたか。てか、熱は引いたか?」

 

「あ、はい。大分楽になりました」

 

「そかそか、それは良かった。てか、部屋の片付け勝手にやってスマン」

 

「い、いえ、気にしてませんから。……ホントに、何から何まで、探し物の時も」

 

「あー、それは気にするなって言っただろ。春ちゃんは大切な後輩だし、当然の事だ」

 

 ……先輩。その当然の事が、大抵の人はできないんですよ。お姉ちゃんが、先輩を好きになった理由が分かった気がする。

 

「てか、何か食うか?作ってくるけど」

 

「い、いえ。本当に大丈夫ですから」

 

「んじゃ、ゆっくり休めよ。俺、小咲のお絞り交換してくるからな。何かあったらすぐ呼べよ」

 

 そう言って、先輩は部屋から退席していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――……お姉ちゃん、姉妹って似るものなんだね。だから私も先輩の事……。

 

 春 sideout




今後ですが、楽、集メイン(完全な)は飛ばす感じになるかもです。
今回みたいな、キョーコ先生の回とかですね。いや、ちゃんと蓮君もいるんですけどね。

春ちゃんのタグも追加かなぁ。つか、蓮君優しすぎだね(笑)

ではでは、感想よろしく!!

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