あと、プール掃除が行われたのは土曜日です。
桐崎家 ~蓮の部屋~
ベットに横になりながらラノベを読んでいたら、スマホに着信があった。
取り敢えず、隣に放置されているスマホの電話に出る。
「おう、楽か。どうした?」
『ああ、悪い、急に電話して。実はな――』
楽の話によると、キョーコ先生からプール掃除を頼まれたらしい。んで、人手が欲しいという事らしい。
メンバーは、いつもの奴らだ。俺の予想だと、春ちゃんたちも来るだろう。
「別に構わないぞ」
『サンキュー、蓮。それで詳細なんだが――』
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やって来ました、プール掃除。
「女子の面子教えれば、皆集まっただろーに……」
「人をダシに使えるかよ……」
「そうだったら、俺が楽に制裁を下してた」
それから数分後。
「一条く~ん。よろしく!」
パタパタと此方にやって来る水着姿で、Tシャツとバレオを巻いている小咲。そして、俺を見て目を丸くした。
……誘われた時、俺の名前はその時にはなかったらしい。
「れ、蓮君も久しぶり」
「いや、昨日会ってるだろうが」
とにかく、俺は荷物を持ち、
「まあなんだ、その恰好も可愛いな」
「そ、そうかな。ちょっと地味かなーって思ったんだけど」
「いや、そんな事はないぞ」
取り敢えず、壁際にランチバックを置き、俺たちは集合した。
つーか、ここの居るメンバー(楽と風ちゃんは除く)には、俺たちの事はバレてるんだよね……。
「……これで全員揃ったか。皆集まってくれてサンキューな。終わったら好きに遊んでいいらしいから、頑張って終わらせようぜ!」
「「「「「お~~~!!!!!」」」」」
それからプール掃除が始まった。女子勢は遊びながら、プール掃除をしている。つーか、マジで眼福なんですが。
これを見ていた男子勢は、
「オレ、この様子をDVDにするだけで、儲かる気がするんだけどな~」
「やめとけ。敵に回すと恐ろしい奴ばっかりだぞ」
「もしやったら、集は締めるじゃ済まないけどな」
男子勢はそう言いながら、プール掃除に励んだ。
午後を回った頃、掃除が終わったという事で昼食を摂ることになった。ブルーシートを敷き、腰を下ろして小野寺姉妹が用意した昼食を堪能する。
「「「「「いっただっきま~~す!!!!!」」」」」
俺の前には、豪勢な弁当が並べられている。てか、高級幕内弁当?……この盛り付けは、小咲か。
とにかく、俺は弁当を一口食べた。
「うまい。これ春ちゃんが作ったのか?」
「いえ、片方のお弁当はお姉ちゃんですよ」
「ほう。見栄えは良いダークマターじゃないとは驚きだ」
「……解ってた事ですけど、お姉ちゃんの料理って桐崎先輩から見てもそうだったんですね」
「……おう、壊滅的だったぞ。男子生徒を病院送りにできる」
そんな事を話していたら、小咲が、
「ちょ、蓮君。ヒドイよ~」
頬を朱色染めた小咲が、俺の肩をポコポコ叩きながら反論する。てか、まったく痛くないが。
とまあ、春ちゃんは木を登りポーラの元へ向かった。まあそういう事なので、ポーラも昼食に食べれるだろう。昼食が終わり、各自でプール遊びを始めていた。
「あれ、蓮君は遊ばないの?」
「まあ俺はいいかな」
「そっか。じゃあ、わたしも」
そう言いながら、俺と小咲はプールサイドに座り日差しを避けながら楽しく談笑したのだった。
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プール掃除が終了し、小咲を『おのでら』に送って行った後、付近の公園で春ちゃんが何やら探し物をしていた。
とにかく、俺はその場まで歩み寄る。
「春ちゃん。どうかしたのか?」
春ちゃんは振り向き、
「あ、桐崎先輩どうもです」
「こちらこそどうもです。……じゃなくてな、何してるんだ?」
春ちゃんの話によるとこうだ。
友達である風ちゃんと公園で遊んでから別れ、自宅に帰宅している途中で、通学バックにつけた大事な月のキーホルダーが無くなっていたらしい。んで、戻る途中で見なかったので、公園の何処かに落ちているという事だ。
まあでも、俺も探すのに協力したのだが、見つかる事はなかった。日も既に落ちかかっている。
「今日はここまでにするか。幸い明日は日曜日だし、明日一緒に探そう。女の子が遅くまで公園にいたら危ないしな。親御さんも心配するだろ」
「そう……ですね。……分かりました、では明日お願いします」
「おう。また明日だ」
まあそういうことで、春ちゃんには帰路に着いた。
俺はそれを確認してスマホで時間を見る。今の時刻は16時30分だ。
取り敢えず、コンビニで懐中電灯を購入。あ、あと、一応カロリーメイトだな。んで、野郎共に連絡してOKだ。
俺は再び公園に赴き、キーホルダー探索に向かった。
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翌日の早朝、春ちゃんが公園に到着した。
「おう、春ちゃん。おはよう」
「ほ、本当に来てくれたんですね」
「疑い深いな、春ちゃん。まあいいか。んで、これか?」
俺が右手からぶら下げたのは、月のキーホルダーだ。
「あ、それです。ありがとうございます!」
春ちゃんは、ぺこりと頭を下げた。
Side 春
本当に来てくれるなんて予想外だ。――今の時刻は朝の7時。……いや、待って。何でこんなに早く先輩が居て、既に探し物を見つけてるの?…………まさか、まさかだとは思うけど。私はある可能性が浮かび上がった。
「(――桐崎先輩は寝ずに探してくれたの!?)」
よく観察すればおかしいな点はあった。まず服装は昨日と変わってないし、昨日なかったはずの懐中電灯が左ポケットから顔を出している。
「……あ、あの、桐崎先輩。もしかして、寝ずに探してくれてたんですか?」
桐崎先輩は、ギクッとする。
「そ、そんなわきぇないひゃろ」
……まったく、そんなに噛み噛みだと嘘がバレバレですよ。
桐崎先輩は、ハッと閃いたように、
「そ、そう!例の王子様が見つけてくれて、俺に渡したんだ。俺、そいつとは親友の間柄でな。いやー、良い奴だな」
「……その恰好で言われても、説得力皆無ですよ、先輩。先輩が、見つけてくれたんですよね?」
桐崎先輩は頭を掻く。
「……いや、まあ、そうだけど……」
私は、目頭が熱くなるのを感じた。
「ど、どうしてそこまでしてくれるんですか?桐崎先輩はお姉ちゃんの彼氏で、私とは他人のはずです」
「まあ春ちゃんから見れば他人かもしれないけど、俺にとっては他人じゃないというか、可愛い後輩というか、放っておけないというか……まあそんな感じだ」
『悪いな、曖昧な答えで』と言って、桐崎先輩は苦笑した。
そんな時、桐崎先輩は大きな欠伸をした。
「んじゃ、俺は帰るけどいいか?……あ、礼をしようとか考えるなよ。俺が好きにやった事なんだし」
「……ほ、本当にありがとうございます」
私は深く頭を下げる。
「気にすんな。つーか、今度は失くさないように気をつけろよ」
そう言って、桐崎先輩は公園を後にした。
この時、私にある気持ちが芽生えそうになり、それを否定するので精一杯だった。
春ちゃんにフラグ立ったかも?まあ、今後どうするか決まってないんですけどね(-_-;)