ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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更新です。
てか、この頃砂糖量産ができなくなってきた。

では、どうぞ。


第32話 バレンタイン

 冬休みも終わり、三学期。

 そして、今日の日付は2月14日、バレンタインデーである。

 小咲は、鞄から綺麗にラッピングした箱を取り出し、両手で俺に手渡す。

 

「バレタインチョコレートです。もちろん、本命だよ。お返し期待してます」

 

「お、おう。サンキュー、小咲」

 

 そう言って、チョコを受け取る俺。

 

「……ダークマターって事はないよな」

 

「もうっ、それはないから安心して。ちゃんと味見したんだから」

 

 小咲は料理が上手くなるように、日々努力してるらしい。これを見て、小咲の母親は目を疑ったとか何とか。

 ということなので、ラッピングを取り、この場でチョコを食べた。

 

「ど、どうかな?」

 

「旨いぞ。ちゃんとガトーショコラなってる」

 

 そう言って、空いている手で小咲の頭を撫でる俺。てか、『君を好きになってよかったよ』って、小声で言わないでくれ。まあいいけど。

 んで、小咲は一瞬驚いたようにしたが、

 

「……うん、ありがと」

 

「おう。……って、このままだと、学校遅刻する」

 

「あ……」

 

「い、急ぐか」

 

 俺は小咲の手を引いて、学校へ向かって走り出した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 学校に到着する直前で、俺は小咲の手を離した。

 俺と小咲は上体を下げ、両膝に両手をつけながら、ぜぇぜぇと息を吐いていた。

 

「ま、間に会ったよっ」

 

「な、何とかな」

 

 到着した時刻は、8時30分だ。まあ、40分からHRなので間に会った。

 とまあ、そう言う事なので、校舎の中に入った俺たち。教室に入ると、男子共はそわそわしていた。

 

「(……にしても、そわそわしすぎだろ)」

 

 と、教室内を見て、俺は心の中でそう突っ込む。

 ちなみに、俺の席は席替えをして、中央の前から二番目だ。隣は変わらず小咲である。んで、その左に姉貴と楽だ。

 ともあれ、俺たちは自身の席に着席した。

 

「今日はバレンタインデーだから、皆そわそわしてるのかな?」

 

「だろうな。好きな奴から本命チョコを貰える日だし」

 

「その点では、蓮君は勝ち組かな」

 

 小咲さん。その通りだけど、その言葉は口にしちゃダメだよ。だってほら、数人の男子がこっち見てるし。

 ちなみに、俺と小咲が付き合ってる事は、るり以外にはバレてない。てか、ほら。クラスの連中にバレるとアレじゃん。

 

「……あー、いや、まあ、たぶんな」

 

 うん、思いっ切り誤魔化したね、俺。つーか、姉貴は楽にチョコを渡したのだろうか。

 姉貴、楽の事が好きだしなぁ……。家の中では気持ちを隠してないので、俺にはもろバレである。まあ、弟だからその辺は気にしてないって所もあると思うけど。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 時は経過し昼休みの教室。

 

「あの、よかったら。コレ受け取ってください!」

 

 お分かりの通り、鵣が女子からチョコを受け取っていた。友チョコというやつだろうか?

 んで、扉まで移動し、女子生徒の背中を見送る鵣。

 

「……なんだ、今のは?」

 

「バレンタインってのはな「嫌いな奴にチョコを上げる日なんだよ」

 

 俺の言葉を遮ったのは集だ。つーか、悪乗りして逆の事を教えるなって……。

 ほら、鵣が集にチョコを渡してる所を見て、楽が勘違いしたし。

 

「鵣。バレンタインっていうのはな、女子が好きな男子にチョコを上げるイベントだな」

 

「な、な、な!そ、それでは、私は一条楽に、舞子集が好きだと勘違いされたんですか!?」

 

「……まあうん。そういう事になるな」

 

「ま、舞子集!貴様――!」

 

 鵣は懐から銃を取り出し、一足先に逃げた集を追いかけて行った。てか、ここは日本なのに、よく銃刀法違反に引っ掛からないなぁ。不思議だわ。

 

「それで蓮君。あんたは貰ったの?」

 

「お、居たのかるり。身長が小さk――」

 

「ふん!」

 

 ……るりさん。ナイスボディブローです。

 

「お、おう。まあ貰ったぞ。もう食ったけど」

 

 ちなみに、貰った場所は、あの秘密の場所である。

 

「へぇ、あの子もやるようになったじゃない。やっぱり、蓮君のお陰かしら」

 

「どうだろうな。まあでも、それだったら嬉しいけどな」

 

「今の所私しか知らないの?あの事は」

 

「まあな。そろそろ、集辺りは感づきそうだけど。あいつ、そういう所は鋭いしな」

 

 まあ、その時はその時だけど。るりから、『あの後何かあったのかしら?』って聞かれたけど、な、何もないよ。ほ、本当だよ……。うん、俺がやるとキモイな。

 その時、るりが俺の右手首を見やった。

 

「それはそうと、蓮君。小咲も色違いの組紐のブレスレットをしてたけどお揃いなの?」

 

「あ、ああ。まあそうだ。あの後、デパートで買ったんだよ」

 

 小咲が言うには、『わたしもミサンガみたいにお揃いにしたい』らしい。だが、ミサンガはできないので、組紐にしたのだ。てか、ミサンガと組紐でバレるんじゃないか。と思ってしまう俺であった。

 

 

 Side 小咲

 

 わたしが体育館に繋がる通路を歩いていたら、その壁に体重を預けている千棘ちゃんを見つけた。

 それで、わたしは千棘ちゃんの元へ移動した。

 

「どうしたの、千棘ちゃん?」

 

「ひゃ、……小咲ちゃんか。ビックリした」

 

 わたしは苦笑してから、頭を下げた。

 

「ごめんごめん」

 

 千棘ちゃんの隣には、ラッピングした袋が置いてある。

 わたしの勘だと、バレタインチョコかな。よし!聞いてみよう。

 

「千棘ちゃん、それバレンタインチョコ?」

 

「い、いや。あの、その……そうです」

 

 わたしは、千棘ちゃんの隣に腰を下ろす。

 

「……私、あげようと思ってる奴がいるんだけど、なかなか渡せなくて」

 

「千棘ちゃんの好きな人?」

 

「……う、うん。そう」

 

「それってもしかして、一条君?」

 

 千棘ちゃん。沈黙は肯定なりだよ。

 昔のわたしだったら、かなり取り乱してだろうな。

 

「わ、私の事は置いといて、小咲ちゃんは好きな人居るの?」

 

「うん、居るよ」

 

「だ、誰、誰!?」

 

 千棘ちゃん、必死すぎるよ。でもまあ、女の子は恋愛に対してはかなりアレだしね。

 取り敢えず、メールでその旨を伝えると、『姉貴なら問題ない』という返信が蓮君から返ってきた。

 

「えーと、千棘ちゃんの弟、蓮君だよ。皆には隠してるけど、付き合ってるんだ」

 

 目を丸くする千棘ちゃん。

 

「え、あいつ恋愛に興味がないと思ったのに、何か以外」

 

「その辺は、わたしが無理やりって部分もあるかもだけどね」

 

 そう言って、わたしは苦笑した。

 

「てことは、チョコレートも?」

 

「うん、渡したよ」

 

 『れ、蓮。帰ったら問い詰めてやる』って小声、聞こえてるよ、千棘ちゃん。

 とにかく、千棘ちゃんの背中を押そう。

 

「そんな事より、千棘ちゃん頑張って!」

 

「が、頑張ってみる。ありがとう小咲ちゃん、行ってきます」

 

「うん!その意気だよ!」

 

 千棘ちゃんは、チョコをラッピングした袋を持ってから立ち上がり、校舎へ入って行った。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 その日の放課後、いつもの帰り道。

 

「そっか、そんな事があったのか。まあ、あの時の表情を見れば、上手くいったんだろうな」

 

「うん。きっと上手くいったよ」

 

 このようにして、俺と小咲は帰路に着いた。

 これが、2月14日に起こった出来事である。




うーん、次はマラソンなんだが、蓮君の独走は確定だし、飛ばしちゃおうか検討中ですね。
では、次回m(__)m

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