ガラガラと前の扉を当て、教室に戻ると注目の的になった。
それもそのはず。俺が小咲に肩を貸して入って来たのだから。まあ、俺はそれを無視して、るりの元まで歩いて行く。
「悪い、るり。小咲を頼んだ」
「ええ、いいけど。あんたたち今まで何やってたの?」
クラスの奴ら、気になるのは分かるが静かになりすぎだ。
俺の言葉を、耳を澄ませて待ってるしね。
「応急処置に日向ぼっこだな」
「約束もだよね?」
「来年の約束な」
「そうだね」
小咲は微笑した。てか、恥ずかしがり屋さんはどうしたのかな、小咲さんや。ここ教室だよ。
俺は『じゃあな』と言い、俺はこの場を後にした。
小咲 side
わたしが椅子に座り、紙コップに入ったオレンジジュース飲んでいると、痺れを切らした?るりちゃんが話しかけてきた。
「……蓮君と小咲は、本当に何があったの?」
「な、何もないよ。挫いた所に湿布を貼ってくれただけだよ」
「……そういうことにしといてあげるわ」
……うう、本当になにもないのに。
「それにしても、小咲は良い意味で変わったわよね」
「そ、そうかな」
るりちゃんはそう言うけど、わたしは実感がないかも。
強いて言うなら、蓮君と一緒に居ると自然体になれるって事くらいかな。
「ええ。長年、小咲を見てるんだから間違いないわ」
「そ、そっか。え、えーと。あれが理由かな」
親友のるりちゃんには、あの事を言っとこう。
わたしはるりちゃんに、耳を貸してと言った。それで、耳を近づけるるりちゃん。
「(で、話してくれるんでしょうね?)」
「(う、うん。……わたしね、蓮君に告白したんだ)」
驚愕の色を浮かべるるりちゃん。
まあ、今までのわたしを見てるから、こうなるのも無理もないよね。
「(…………………………それ、本当なの)」
「(うん、本当だよ)」
「(……それで、蓮君の答えは)」
「(保留って所かな。蓮君、まだちょっとだけ怖いんだって)」
「(なるほどね。蓮君は、恋愛には関わらないようにしてたものね。それにしても、小咲。成長したわね)」
「(あはは、ありがとう、るりちゃん)」
――蓮君。わたしは、いつまでも待ってるよ。
小咲 sideout
俺が男子共の元へ向かうと、案の定と言えばいいのか、集が肩に手を回してきた。
「おーす、蓮。小野寺と何やってたんだよ?」
「捻挫の治療だ。それ以上の事は無いぞ」
「いやいや、気になるからな。蓮と小野寺、この頃仲良すぎだろ。てか、蓮と小野寺は付き合ってるのか?」
「付き合ってないから。あれだ。へんz…………友達だ」
……あっぶね。『返事待ちだ』って言いそうになった。
話題を変えないと、墓穴掘りそう。
「俺の事はいいだろ」
「まあ無理に聞こうとしたら、蓮に締められるし」
よく分かっていらっしゃる、集さんや。
「てか、楽と姉貴は仲直りしたのか?」
楽と姉貴は、クラスの皆の祝福を受けている。
「舞台裏で一緒じゃなかったのか?」
「一緒だったけど。確実性が無くてな」
「なるほど。まあ仲直りしたらしいよ。破局は回避した」
マジよかったわ。破局回避=戦争回避だしな。
ともあれ、クラスでの打ち上げが終わり、下校時間となった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「それじゃあ、小咲。帰るか」
俺はそう言って、鞄を持ち立ち上がった。ちなみに、教室の生徒は、俺と小咲だけだ。
まあ、皆の前ではちょっと、ってのもあったんだけどね。
「小咲、肩貸すぞ」
「ん、ごめんね」
俺の肩を掴み立ち上がる小咲。
つーか、今思ったけど、女の子からいい匂いがするのは何で?まあ役得だけど。
とまあ、小咲の鞄を持ってから教室を出て、昇降口で靴を履き替え下校する俺たち。
幸いにも下校時刻を回っているので、学校に生徒は数える位しかいない。また、今日は文化祭もあって、部活動が休みだしね。
肩を貸しながら下校していたのだが、小咲は何かを思ったように呟く。
「……蓮君、ずっと肩貸してて辛くないかな?」
「いや、大丈夫だけど。どうかしたのか?」
小咲は顔を朱色に染め、俯いてしまった。
そして顔を上げ、意を決したように言う。
「……えっとね。提案があるんです」
「提案?」
あーなるほど。小咲が言いたい事が予想できた。
『ずっと肩を貸すより、おぶった方がいいかも』って言いたいのだろう。まあそれはいいんだが、女の子特有のアレが当たるんだよな。どうしたもんか……。
んで、俺が『おんぶか?』って言うと、顔を真っ赤にしてから頷いた。
「小咲はいいのか?アレがアレだぞ」
女子なら、アレの意味が分かるだろう。
「うん、蓮君になら構わないよ。減るものじゃないしね」
「……あー、まあそういうことなら」
そういうことなので、俺は小咲から手を離し、前に出てから上体を屈める、小咲が俺の背中に体重を預ける。
小咲が乗った所で、手を後ろに回し落ちないようにした。
ともあれ、和菓子屋『おのでら』へ向かう俺。
ちなみに、鞄は小咲に持ってもらった。
「おんぶして貰ったの、小学生以来かも」
「中学生になれば、そういう経験はなくなるしな」
「……うん。蓮君の背中、あったかいね」
「そうか?男は皆同じだろ」
『好きな人だからかな?』って笑顔で言わんでくれ……。何か、俺が恥ずかしくなる……。
まあ俺も、可愛い子から好意を向けられて嬉しいけど。俺も早く返事を返さないとなぁ。
「……蓮君、舞台裏ではゆっくりでいいよって言ったけど、実際、わたしの事どう思ってる?……今の気持ちを教えて欲しいかも」
「……そうだな。小咲には惹かれてるって言えばいいのか、そんな感じだな」
「……ありがとう、答えてくれて。わたし、蓮君が羽さんの事も同じように想っても平気だからね」
「いやいや、二股になっちゃうからね。小咲さん」
二股とか、世間一般では最低野郎じゃん。
だが、小咲の返しは俺の予想とは違った。
「ううん、わたしはいいんだ。それに蓮君は優しいから、どちらかを選ぶとなると苦しむと思うから。もちろん、羽さんの許可をもらってからだけどね」
……羽姉ちゃんが、『別にいいよ♪』って言ってるのが思い浮かんでしまった。……俺、マジで最低野郎じゃん……。
肩を落とした俺を見て、小咲は苦笑した。
「蓮君、どんよりしすぎだよ」
「色々思う所があってな……」
それからは文化祭の話題になり、話を弾ませた。
今日は、俺の思い出になる日となったのだった。
小咲と羽姉ちゃんのヒロインは確定しましたね。
これって、ハーレムに含まれるのだろうか?てか、原作より小咲ちゃん積極的やね(笑)
感想待ってます!!
追記。
楽は千棘に想いが傾きつつありますね。