見切り発車時の設定的な感じで。
まあ、千棘とあんまり関わってないじゃん。って所は目を瞑ってくだせぇ(^_^;)
文化祭まで残り一週間を切った。
現在、一年C組ではロミオとジュリエットの演劇の練習が行われていた。
俺は仕事を終わらせ、椅子に座り机の上で腕を組んでグッタリしてる。てか、働きたくないっていうのが、俺の本音だ。働いたら負けである。
「(小咲と楽もいい感じに仕上がってるし、文化祭までには確実に間に合うな)」
途中で橘も混ざってるけど。
つーか、眠い。マジで眠い。俺は睡魔に負け、夢の中へ落ちて行った。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
――パンッッ!
俺はこの音を聞いて目を覚ました。誰かが打った音?ビンタとか?
俺が上体を起こし発信源に目をやると、そこには楽と姉貴が映った。……姉貴のビンタか。
そんな時、小咲が俺の前までやって来る。
「蓮君、千棘ちゃんと一条君どうしたの?一条君は練習から外れちゃったよ……」
「あれだな。海の一件が尾を引いてると思う。特に姉貴だな」
楽は気にしてない感じだったし。
おそらく、楽のあの時の言葉が、姉貴の心に刺さったままなのだろう。
「……千棘ちゃんと一条君、大丈夫かな」
「こればっかりは、俺も分からん。これは時間が解決してくれる問題じゃないしな」
……俺は家で姉貴と顔を合わせられるかな。メチャクチャ悲しそうな顔をしてるよ、きっと。……このまま行くと、破局も有り得るかもな。てか、戦争になったら、この街大丈夫かな……。
「でもまあ、何とかなるはずだ。……根拠はないけど」
「……な、無いんだ」
「おう、無いぞ。てか、文化祭の劇は何とかなると思うし、文化祭の失敗は無いだろ。その後の事は、まあ分からん」
これは、本人次第の事柄だ。このまま離れるのも、仲直りするもの本人次第。
てか、まだ練習の時間だよね。
「練習を再開したいけど、ロミオ役がいねぇーぞ。どうすんだ?」
と、教室の男子が言う。
あれだ。……メチャクチャ嫌な予感がする。
「れ、蓮君。ロミオ役できるでしょ?」
「……いや、できるけど。皆の前ではさすがに……」
……小咲さん、覗き込むように見ちゃダメだよ。
つーか、涙を溜めるな。
「……放課後、クレープ奢ってくれよ」
「OKだよ。それじゃあ、よろしくね」
俺は溜息を吐き、椅子から立ち上がった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
放課後。文化祭の練習や準備を終わらせて、俺と小咲は下校していた。
まあ、二人で帰るのが日課になりつつある。なんつーか、楽に悪い気もするが、こればっかりは仕方がないと自己完結させる。
「それじゃあ、近場のデパートに行こう」
「そだな。あそこのクレープ旨いし。てか、新作が出たらしい。それ奢りな」
ちなみに新作という事もあり、それなりに高い。
「うぅ……」
「奢ってもらうぞ。女の子だからって妥協はしないぞ」
あの後、『何で蓮がロミオ役できるんだ?ほぼ完璧じゃねぇかよ』『桐崎君凄いね』『もしかして、こっそり練習してたとか?』等々の意見をもらった。
いやね、小咲の練習につき合ってたら、自然とできるようになったんだわ。
「てか、かなり恥ずかしかったんだからな」
「……わかったよ」
「素直な子は好きだぞ」
「ふぇ!す、好き!?」
「いや、恋愛って意味じゃないから。まあ、小咲の事は友達としては好きだけど」
「そ、そうだよね。――――蓮君のバカ。期待しちゃったよ」
小咲さん。俺は鈍感主人公じゃないから、後半の言葉は聞こえてる。
てか、期待って、恋愛的な?小咲は楽が居るのに?……まあ有り得ない事だけどさ、小咲が心変わりして俺に好意を持っても、俺は答える事ができない。――俺は恋愛しないって決めてるから。それに、俺は裏世界に生きる人間だ。
そしてこれを聞いてしまったら、俺と小咲の関係が微妙に変わってしまうのは確かだ。――だが、俺は口を開く。俺は有耶無耶にするのは嫌だからだ。
「小咲はさ。楽と俺の事どう思ってるんだ?」
「きゅ、急にどうしたの?」
「本当の小咲の気持ちが聞きたくて。……いや、まずはクレープを食べるか。その後話そう」
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
デパートでクレープを買い、クレープを食べ歩きながら近場の公園に到着した。
クレープを食べ終わった俺と小咲は、ブランコに座る。
そして、小咲は、覚悟を決めたようだった。俺も、聞く覚悟と受け止める覚悟を決めた。
「……蓮君、さっきの話に答えるね」
「……ああ、聞かせてもらうよ」
「……わたしね、中学の頃から一条君から一条君を想ってた。だけどね――」
小咲は、夕焼け空を見上げる。
「蓮君と触れ合う度に、蓮君を目で追いかけるようになってた。この気持ちは何だろうって、色々確認もしたんだ。そしてわかったの。わたしは、蓮君が好きなんだって」
掌を返すようで軽い女かもね。と付け加える。
俺は、いや。と前置きをし、
「恋愛は時間とかは関係なく、その人の想いで決まるものだと俺は思う」
小咲は相槌を打つ。
「でもな、小咲。時間とか想いとかは関係なく、俺の答えは決まってるんだよ。――俺はな」
「うん、わかってる。蓮君はお家の事情とか、出身とか気にしてるんだよね」
「……そうだな」
「わたしはね、蓮君。出身とか、お家の事情とか関係なく、蓮君が好きなの。――お家の事情は、わたしが裏世界に入ればいい事だし、出身はわたしの想いで捩じ伏せちゃうから心配ないよ」
「……かなりの力技だな」
小咲は苦笑した。
「そうかも。それに気付いてるんだよね、羽さんの気持ちも」
小咲の言う通りである。俺は、羽姉ちゃんが好意を持っている事に薄々感じてはいたが、それは有り得ない。あったらいけないと思い、ずっと躱続けていた。
「まあ、な。前々から感じてはいたよ」
「そっか。そこから先は、本人から聞かないとだね。蓮君、そろそろいいんじゃないかな?わたしは、君を受け入れるよ。どんな事があっても」
「……俺に向き合えっていうのか。ずっと背けてきた恋愛に」
「ちょっとだけでも向き合って欲しいかも。そこから広げるのは、わたし
確かに、今のままで良くないのは事実だ。
「…………少しだけ向き合ってみるよ。でも俺は、さっきの返事を返す事はできない」
「うん、わかってる。あの言葉が、本当だって受け止めてくれたら今はいいんだ」
暫しの沈黙が流れる。
その間は、鳥の鳴き声がよく響いた。
「ああ、しっかり受け止めたよ」
「ならよし。わたし、これからアタックするからね。学校では控えるようにするけど。――きっと振り向かせて見せるよ、君の事を。恋する乙女は強いんだから」
そう言って、笑みを浮かべる小咲。
「お、おう。お手柔らかにお願いします」
「うーん、それは分からないかな」
そう言う俺たちを、夕陽の輝きが見守っていた。
小咲さん、羽姉ちゃん一歩先を出た感じかな。
あとあれです。楽、ドンマイ。
次回は文化祭当日かな。
では、エネルギーとなる感想よろしく!