夏休み最終日。俺は指定した待ち合わせ場所に向かっていた。ちなみに、俺の今の恰好は、ラフな恰好だ。
それから数分歩いたら、待ち合わせ場所に到着した。
「小咲。お待たせ」
小咲は振り向き、笑みを浮かべる。
ちなみに、小咲もラフな恰好だ。
「全然待ってないよ」
「そうか」
とまあ、あるテンプレの会話を交わす。てか、これで見ると、立場が逆のようにも思えるが……。まあ、細かい事は気にしない方向で。
ともあれ、時間が着々と迫っているので、目的地に歩き出す俺たち。
数分歩き目的地に到着すると、入口隣の長石には、『凡矢理幼稚園』の彫刻が施されている。
「んじゃ、行きますか」
「うん」
内部に足を踏み入れると、そこには園長先生の姿があった。
「あ、蓮君いらっしゃい。待ってたわよ」
園長先生の話によると、子供たちは俺に会える事をかなり楽しみにしてたらしい。ま、まあ、このアポを取る為、学校に電話をかけてきてくれたしね。んで、先生たちの予定とか、子供たちの夏休み等とか色々あって、俺の夏休み最終日になったという事だ。
「ご無沙汰してます。園長先生」
「今日はよろしくね、蓮君。あの後、大変だったのよ」
俺は皆が寝た後に幼稚園を後にしたのはいいんだが、その後がメチャクチャ大変だったらしい。
何でも、俺が消えた事で、ほぼ全員が先生に『兄ちゃんは何処に行ったの?』って声を上げたとか。
俺は苦笑し、
「何か申し訳ないです。その前に、俺がそんな風に言われてるとは意外ですよ」
その時、三人の園児が俺を見つけた。
「あ――――――ッ!蓮兄ちゃんだ!」
「兄ちゃん。遊ぼう!」
「わーい。蓮兄ちゃんだ」
……子供らよ。かなりのどんちゃん騒ぎだわ。てか、走るな。危ないだろ。
んで、俺は連行されそうになる。
「大地。翔太。麗香。腕を引っ張るな!捥ぎれるだろ!」
俺の言い訳は虚しく、聞いてもらえん。
揃って『早く~』って言うな。てか、息が合い過ぎだからな。そんなこんなで、俺は連行されました……。
「蓮兄ちゃん。鬼ごっこしよ」
「違うから。蓮兄ちゃんは、オレと一輪車で遊ぶんだし」
「それも違う。蓮兄ちゃんは、私たちとお城遊びするの!」
園児たちは俺の元に集い、このような言葉を交わす。てか、一気に遊ぶ事はできないからな。俺は分裂とかできないからね。
つか、口論がヒートアップしてるし。
「だーっ。順番で遊ぶぞ。んじゃ、最初は鬼ごっこからだ。次は一輪車。次はって感じな」
「「「「「「「「はーい」」」」」」」」
……いきなり統制したな、ガキ共よ。それから鬼ごっこをやる人。と言ったら、全員だったんだよね……。で、俺が鬼だわ。
「きゃーっ!蓮兄ちゃんが追いかけてくるよ!」
「決まってるだろ、夏帆さんや。鬼ごっこなんだから」
んで、捕まえましたとさ。
それからも、俺は鬼として子供たちを捕まえていった。
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「園長の本田春香よ。今日はよろしくね♪」
「あ、はい。小野寺小咲です。今日はよろしくお願いします」
挨拶を交わす、わたしと園長先生。わたしたちの前では、蓮君と子供たちがかなり楽しそうに遊んでいた。
わたしは、感嘆な声を上げる。
「凄いですね、蓮君」
「かなりの人気よ、蓮君は。あっという間に、子供たちの心を掴んじゃったんだから」
園長先生の話によると、恥ずかしさの余り輪の中に入れない子も蓮君と遊び、今ではそれが克服されたらしい。
園長先生は、それでね。と言い言葉を続ける。
「蓮君が帰った後、泣く子が続出しちゃってね。蓮君にまた来てくれるように、名指しで凡矢理高校に電話をかけたのよ」
なるほどです。あの時、蓮君が途中で授業を抜けた理由は、電話を受ける為だったですね。何と言うか、蓮君凄すぎだよ。
園長先生は、悪戯な笑みを浮かべた。
「小野寺さんは、蓮君の彼女かしら?」
「ふぇ!?ま、
「まだ。ねぇ」
……墓穴を掘ってしまいました。園長先生にはわたしの気持ちがバレてしまったらしいです。園長先生、策士です。……あれ、策士でいいんだよね?
「まあ頑張りなさい。蓮君、かなりガード固そうだからね。それに、小野寺さんが蓮君を好きになる気持ちは解るわ。蓮君はかなり魅力的だからね」
わたしは、子供たちと遊んでいる蓮君を見ながら、柔らかな笑みを浮かべた。
「他の男性には無い物を持ってる気がします、蓮君は」
「私も同感よ。――私も、あと十歳若かったらって感じかしら」
園長先生。あと十歳若かったら、蓮君を狙うつもりだったんですね。でもこの光景を見たら、そうなるのは無理もないと思います。
「それに、かなり強力なライバルがいると見たわ」
テンションが徐々に上がっていく園長先生。
やっぱり女性は、恋話になると盛り上がります。わ、わたしもその一人ですけど。
「わかりますか?」
「ええ、もちろん」
頷く、園長先生。
羽さんは、かなりの強敵だと思う。だって、かなりの時間を共有してるし、わたしの知らない蓮君をいっぱい知ってるから。――諦める。なんて事は絶対にしないけど。
そんな時だった。息を切らした蓮君がわたしの名前を呼ぶ。
「こ、小咲。た、助けてくれ。俺一人じゃ身が持たない」
「う、うん。わかった」
そう言ってから、わたしは園長先生を一瞥する。その表情からは、『お願いね』と言う言葉を捉える事ができた。
わたしは一礼し、蓮君の元へ小走りした。こうなる事を予想して、『ラフな恰好で来てくれ』って言ったのかな、蓮君は。
「小咲お姉ちゃん。今度はこっちのお城」
「はいはい。ちょっと待っててね」
そう言って、砂場でお城を作る子供たちとわたし。
遠目で見ると、一輪車で遊んでいる男の子たちと蓮君が映る。やっぱり、蓮君と共に過ごす時間は楽しい。わたしは改めて思った。
「(やっぱり好きだなぁ)」
昼休みも終わり、お昼寝の時間。
わたしがピアノを弾き、蓮君が独自に作った子守唄を歌い、子供たちを寝かし就けた。
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「それじゃあ、園長先生。俺たちは帰りますね。それと、お呼びがあればいつでも行くんで、子供たちにもそう言っといてください。――小咲は、どうする?」
「わたしも、いつでも遊べるように用意しとくね」
「ありがとう。小咲ちゃん、蓮君。ホント助かるわ。……そのまま、ここに就職してくれないかしら」
おーい、後半の声が聞こえてますよ。園長先生や。
『それじゃあ、また』と言ってお別れをし、幼稚園から出ましたとさ。
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「はあ、疲れた」
小咲は苦笑し、
「でも、楽しかったね」
「まあそうだけど。てか、明日から学校か」
近直行われる文化祭がメインになるだろう。てか、その文化祭の出し物って何やんの?劇とかだったら、俺は通行人Aとか、木がいいなぁ……。楽だし。
「そうだね。勉強頑張らないと」
「つっても、小咲さん。後期の勉強ほぼ完璧やん」
小咲は、高校一年の学問は完璧と言っても過言ではない。さすが、我が生徒だね。……生徒で合ってるはずだ。たぶんだけどさ。
「でもでも、勉強は大事だよ」
「まあそうだけど。てか、今日は助かった。俺一人だったらどうなってたことか」
「いえいえ、それにしてもかなりの人気だったね。蓮君」
「まあ、好きで人気になった訳じゃないがな」
「もう、そんな事言って」
頬を膨らませる小咲さん。
ともあれ、時間もまだ余裕があるという事なので、近場の喫茶店でお茶をしましたとさ。
これが、夏休み最終日に起こった出来事である。
次回は、文化祭に入るのかな?
では、次回。感想待ってます(^O^)