ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

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題名考えるの難い……。


第22話 オハナシ

 やはり、海の最後を締めくくるのは花火である。

 俺は線香花火を持ちながら、小咲と真剣勝負をしていた。そう、線香花火耐久勝負である。

 その証拠に、パチパチと燃え上がる玉を見つめていた。

 で、結果は――、

 

「俺の勝ちだな」

 

 そう、俺の勝ちだ。……なんつーか、小学生の勝負みたいだけど。まあ気にしない。

 小咲さん。シュンとしないでくれ……。何か、かなりの罪悪感を感じちゃうからさ……。つーか、これって、かなり神経を集中するよね。

 

「俺も小咲も、かなり集中してたな」

 

「あはは、そうだね。『落ちるな、落ちるな』って思いながら、花火を見てたかも」

 

「たしかに。つか、小咲。姉貴と昼に何か話してたけど、何だったんだ?」

 

 林間学校を過ぎてから、姉貴と楽はなんか変なんだよなぁ。

 

「えっとね。千棘ちゃんのお友達が、『胸がドキドキしたり苦しくなったり、前みたいに話せなくなったのは何なのかな?』っていう相談だったんだ」

 

 ……いや、それってモロ姉貴の事だよね?あれか。姉貴が楽に本気になったって言うことか?

 

「それって恋じゃね」

 

 小咲はバケツに線香花火を捨ててから、右手人差し指を唇に当てた。

 

「蓮君も、やっぱりそう思うよね。鶫さんの事だったのかな?」

 

 ……姉貴。恥ずかしくて、自分の事って言い出せなかったんだな。んで、『友達が』って事にしたんスね。うん、知ってた。

 

「まあそれは何とかなるんじゃないか。時が解決してくれるさ」

 

 そんな時、俺がポケットに入れていたスマホ震える。

 ……まあうん。着信者は解るんだけど、この場では拙いような、拙くないようなって感じなんだけど。

 

「蓮君。電話が鳴ってるけど、出なくていいの?」

 

「出ていいか?たぶん、駄姉からだ」

 

 そんな事を言ってから、俺はスマホを取り出し通話ボタンをタップしてから、通話口を右耳に当てる。

 

「もしもし、駄姉か」

 

『んもー、開口一番に駄姉はヒドイよ~』

 

 通話口で唇尖らせてる、羽姉ちゃんが容易に想像できるわ。

 

「悪い悪い、羽姉ちゃん。つか、あの問題集終わりそうだわ」

 

『さすが蓮ちゃんっ!わたしの無茶ぶりをこなすなんてっ』

 

「……やっぱり、無茶ぶりだったんだな。予想はしてたけどさ」

 

『でもでも、大学一年生の学問はほぼ完璧でしょ?』

 

 その通りなんだけどね。てか、高校の勉強が復習的な感じになってしまってる。

 

『蓮ちゃん。女の子と今一緒にいるでしょ?』

 

「……何で解ったんだよ?怖ぇな、女の勘」

 

 いや、何。無言で『変わって』的な感じは。

 ともあれ、通話口を離す俺。

 

「小咲。羽姉ちゃんが話したいだって。どうする?」

 

 目を丸くする小咲。無理もないけどさ。

 

「えと。いいのかな?」

 

「姉ちゃんが変わってって言うんだから、いいと思うぞ」

 

「じゃ、じゃあ、失礼します」

 

 そう言って、俺が手渡したスマホを受け取り、右耳に通話口を当てる小咲。

 ここからは女子の会話なので、話が終わるまで野郎は退散しますか。と言うことなので、俺は小咲に『終わったら呼んでくれ』と言ってからこの場を離れた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「あ、あの。お電話変わりました。小野寺小咲です」

 

『わたしは奏倉羽。よろしくね、小咲ちゃん』

 

 わたしの最初の印象は、かなり明るくて元気な人だ。

 

『とりあえず、何か話そっか』

 

「は、はい」

 

 そう言うことなので、わたしと羽さんは、学校の事や最近の事などを話した。それを約十分話した所か、蓮君の話題になった。……こうなる事は解ってたけど、何か緊張する。

 

『蓮ちゃんの優しい所は変わらないんだね』

 

 羽さんは、慈愛に満ちた声でそう言う。今の話題は、昨日のナンパから助けてくれた蓮君の話だ。

 

「はい、蓮君はとっても優しいですよ。皆に分け隔てなく接して、どんな事でも真剣に相談に乗ってくれて。こんな風にあげたら、切りがないですよ」

 

 そう言って、わたしは苦笑した。

 

『そっか』

 

 羽さんのこの言葉には、色んな意味が込められてるとわたしは思った。

 

『ところで小咲ちゃんは、――蓮ちゃんの事が好きだったり?』

 

 わたしは噴き出しそうになってしまった。

 

「い、いや。あの……好きです」

 

 わたしの顔は真っ赤になってはずだ。

 よし、わたしの反撃だ。

 

「う、羽さんはどうなんでしょうか?」

 

『ん、わたし?わたしは大好きだよ。蓮ちゃんのことが、世界で一番大好き』

 

 羽さんはキッパリそう言った。その言葉には、一つの迷いもない。

 ホントに好きって事が、通話越しでもしっかりと受け取る事ができた。

 

『でもね。蓮ちゃんは恋愛に蓋をしてるの。きっと自分の出身とかが、突っかかってるのだと思う。――小咲ちゃんも聞いてると思うけど』

 

「はい。孤児院出身って事ですよね」

 

『うん。“誰の子供かも解らないのに、そんな奴が恋愛なんて”っ感じだと思うんだ。今の蓮ちゃんは』

 

 やっぱり、長年一緒にいる羽さんもこう思ってたんだ。きっと羽さんは、わたしの知らない蓮君の事を沢山知ってる。

 

『だから、蓮ちゃんを振り向かせるのはかなり難しいよ。お互い頑張ろうね、小咲ちゃん。近直、わたしも日本に行くし、その時はお茶しよっか』

 

「いいですね。その時沢山話しましょう」

 

 それからもわたしと羽さんは、話に花を咲かせました。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 あれから約一時間後、女子トークが終わったららしい。……てか、女子の話はかなり長いわ。いや、知ってたけどさ。

 俺は元の場所に座り、

 

「かなり長話だったな。どうだ?楽しかったか?」

 

「羽さん。とっても優しい人だね」

 

「そうか。仲良くなって何よりだ。……あとあれだ。もしかしたら、駄姉が無茶ぶりをするかも知れんが、その時は受け止めてやってくれ……」

 

「う、うん。それはさっきの会話の中で感が見えたかも」

 

 おい、羽姉ちゃんよ。もう、無茶ぶりをしたんかい。ちょっと早すぎない?

 そんな時、

 

『そんなもん、上手くいくわけがねーだろ。バカ』

 

『うっさいわね!分かったからもう黙っててよ!』

 

 途切れ途切れだが、このような会話が聞こえてきた。つか何、姉貴と楽の声やん。あの中に割って入るのは、今後色んな意味で拙い気がする。

 そう思った俺は溜息を吐く。

 

「……これから、一騒動ある感じだな。小咲」

 

「そ、そうだね。頑張ろう」

 

「……そだな」

 

 再び溜息を吐く俺。

 夏休みが終わるまでの、一週間程度の夏の夜の事だった。




ヒロインが、邂逅?しました。
てか、今後ヒロインが増えるか未定ですが……。

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