ニセコイ~千棘の義弟~   作:舞翼

21 / 72
ま、まさかのこちらの投稿。


第21話 ウミベデ

 夏休みも終盤。授業が再開するまで残り僅かだ。

 そう。楽と集との話し合いにより、海に行く事に決まったのだ。

 

「わたし、日本の海って初めて!ノースカロライナ以来かな」

 

「わたしは、モルディブ以来でしょうか」

 

「(……普通の会話じゃねぇぞ。姉貴、橘)」

 

 俺はラフな恰好で、問題集を眺めていた。これは、俺が小咲の為に製作した問題集である。

 その問題集に目を走らせながら、俺は答え合わせをする。

 ちなみに、問題の範囲は、高校一年の後半の範囲と言えばいいのか。そんな感じだ。

 

「(あー、ここは惜しいわ。……αを代入しないとなぁ。正解率は、五分五分って言った所か)」

 

「……ど、どうだったかな?」

 

 噂をすればと言うやつだ。小咲が俺の隣に来た。

 俺は振り向き、

 

「……うーん。五分五分って所だな」

 

「それって、正解半分って事だよね?」

 

「そんな所だな。でもまあ、高校一年の後半の範囲なんだ。妥当な結果って所かもしれんな」

 

「そうかもだけど。蓮君は、一回勉強できただけで解けるようになったんでしょ?」

 

 まあうん。俺の頭はスポンジ的な感じだしね。

 け、決して。バカって意味じゃないからねっ!……俺がやるとキモイな。うん……。

 

「ま、小咲ができるようになるまで付き合うよ」

 

「そ、そう」

 

 ……顔を伏せて頬を若干朱色に染めるのは止めようか。俺の心臓に悪いからね。

 

「あー楽しみ楽しみ!……わたしいっちばーん!」

 

 そう言って、姉貴は海へ走って行く。

 そんな姉貴を見て、小咲は苦笑した。

 

「千棘ちゃん。元気一杯だね」

 

「あれが姉貴の良い所でもあるしな」

 

 マイナス思考が続けば、負の連鎖があるかも知れないしね。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

『おい、なんだあの美女集団……』

 

『レベル高え~~~』

 

『芸能人?見たことないけど……』

 

『どこの雑誌の子だろ…………』

 

 ビーチでパラソルを立てていると、周りの視線が集まった。いやまあ、こうなる事はわかっていたけどさ。女子のレベルは、段違いに高いし。

 

『それに、あのイケメン……どこかの俳優かな……』

 

『……カッコイイわ』

 

『ほら、話しかけて来なさいよ!』

 

 ……いや、女子の皆さん。何で俺を見てそんな事言ってんの?

 俺は平凡な一般男子だから……。

 

「……なあ、小咲。女子の視線が凄いんだが……。俺、何かやったか?」

 

 溜息を吐く小咲。……いや、何でやねん。

 

「……蓮君は、誰もがカッコイイって言う容姿なんだよ。こうなるのは当然だよ」

 

「そんな自覚はないんだがな。俺はそこらにごろついてる男子だぞ」

 

「蓮君。無自覚は罪だよ」

 

「……いや、何のだよ」

 

 小咲は呆れ顔である。……つーか、小咲さん。完全に素ですよ。いつもの可愛らしい顔はどうしたの?

 ともあれ、俺はパラソルの影に隠れながら、横になりましたとさ。泳ぐつもりでは来てないしね、俺は。

 

「まあでも、喉は渇くよなぁ……。ラムネでいいか」

 

 そう言う事なので、俺は立ち上がり海の家に向かった。

 海の家まで歩いていると、チャラそうな男子に、我が生徒(多分だけど)が絡まれていた。

 

「あー、すんません。この子、俺のツレなんス。他を当たってくれませんか」

 

 そう言って、小咲の右肩に手を置く。

 小咲は、ビクッとしたけど。……何か、申し訳ない。

 

「てめぇ。オレらが見つけた女だぞ!」

 

「どうなるか解ってるんだろうな!」

 

 呻くチンピラ共。

 

「えー、1つ言って置きますけど、手を出したら正当防衛しますからね。やられても文句は言えませんよ」

 

 手をポキポキ鳴らしながら、近寄って来るチンピラ共。

 ……うん、こうなるのは薄々感じてた。で、殴ってくるチンピラ共。まあ、これで正当防衛ができたんだけどね。

 んで、そのチンピラ右手を左手で受け止め、力を込めていく。

 

「痛ててててて!おい!離しやがれ!」

 

 あれだ。俺の握力によって、チンピラの骨が音を立ててるね。いやまあ、たぶんだが。

 右ストレートを鳩尾に一発。その場に蹲るチンピラ。

 

「えーと。次はそちらのお兄さんですか?相手になりますけど、正当防衛ですから」

 

 手をポキポキ鳴らしながら、チンピラ共を見る俺。

 

「こ、こいつ。ガキの癖に強ぇぞ……」

 

「ず、ずらかるぞ」

 

「……ちょ、テメェら!オレを置いてくな!」

 

 チンピラ共はこの場から去りました。

 あれだな。典型的な噛ませ犬って所か。てか、さようならー的な感じです。

 

「はあ、面倒な輩だったわ。小咲は大丈夫か?」

 

「う、うん。ありがとうございます。助かりました」

 

 ……いや、何で敬語。まあいいけどさ。

 

「小咲は大事な友達だしな。助けるのは当たり前だ。……てか、友達で合ってるよな。他人とかだったら、俺、泣いちゃうかも……」

 

「……も、もちろん。友達だよ」

 

「サンキュ。俺のHPがかなり削られる所だったわ」

 

 そんなこんながあり、ラムネを買ってから歩幅を合わせ皆の所へ帰りましたとさ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

~小咲side~

 

「るりちゃん。ただいま」

 

 わたしは蓮君と一緒に、パラソルまで帰って来た。

 それから、るりちゃんと2人になった。

 

「……小咲。あんた一条君はどうしたの?アタックしなくていいのかしら?――もしかしてあんた」

 

 ……さすが、るりちゃん。もうバレたかも……。

 

「う、うん。るりちゃんの思ってる通り。……わたし、軽い女かな」

 

「いえ。恋は時間じゃなく、本人の想いよ」

 

 やっぱり、るりちゃんは、あの時とほぼ同じを言ってくれた。ありがとう。

 

「小咲の気持ちも分かる気もするわ。蓮君は誰にでも優しいし、誰にでも手を差し伸べるし、どんな悩みも真剣に聞いてくれるしね。きっと彼は、一条君にはない物を持ってるかもね」

 

 るりちゃんは、『でも』と続ける。

 

「蓮君は、恋愛をしないって決めてるわね。たぶん、孤児院出身って事が引っかかってると思うわ」

 

 るりちゃんの言う通りだと思う。わたしも、縁日の時にそれが引っかかってたから。

 ――蓮君は、自分に好意が向けられるなんて、あり得ないって思ってると思う。

 

「それに、蓮君のガードはかなり固いと思うし、強力なライバルも隠れてそうね。わたしの直感がそう言ってるわ。頑張りなさい、小咲」

 

「うん」

 

 わたしは、小さく頷いた。

 

~小咲side out~

 

 

 夕食も食べ終わり、俺は防波堤に腰をかけ、歌いながら海を見ていた。

 ちなみに、夕食はバーベキューであり、片付けは姉貴と楽たちだ。俺はジャンケンで勝ったので免除だ。

 

「隣。いいかな?」

 

「いいぞ」

 

 隣に腰をかけたのは小咲だ。

 

「さっきの歌。綺麗だね」

 

「げっ……。聞いてたのか」

 

 ちなみに、俺が独自に考えた歌だ。

 

「ま、まあ。ガキどもに聞かせた事がある、子守唄みたいなもんだ」

 

「ガキども?」

 

「凡矢理幼稚園のガキどもだな」

 

 俺が街をぶらぶらしていたら、迷子になってる子供を見つけたのだ。

 何でも、昼休み遊んでいて、好奇心で外に出たら帰れなくなったと言う事だった。それから、その子を送ってあげてから、遊んだ。という事である。つか、帰ろうとしても帰してくれなかったんだよね。

 

「んで、寝る時間に子守唄を歌ってくれっていう無茶ぶりから創った歌だ。まあでも、たまに俺も口ずさんじゃうんだよなぁ。てか、夏休みの最終日に会いに行く予定だしな」

 

「そうなんだ。蓮君は、子供も好かれるんだね」

 

「好きで好れてる訳じゃねぇけどな」

 

 小咲は、何かを決心したように言う。

 

「わたしも、一緒に行ってもいいかな?」

 

「いいけど。多分、小咲と遊べる時間はないかもしれん。ガキどもに連行されるかもしれないからな」

 

「うん。りょうかい」

 

「おう」

 

 とまあ、こうして一日目が終了した。




もしかしたら、これから原作ブレイクがあるかも(^_^;)
子守唄は、即興で知ってる言葉を繋げた感じです。音楽は、昔聞いてたのを聞いてた曲をアレンジした感じ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。