他のも投稿しないとなぁ……。
「ったく。姉貴は何処行ったんだよ……」
俺は一人で、そう呟いていた。
今日は縁日であり、姉貴の付添だ。……連行された。の方が正しいか。まあ、クロードが用意した灰色の甚平を着てるんだけど。
いやまあ、それはいいんだが、姉貴と逸れました……。
その辺をぶらぶらと歩いていたら、ある人物と目が合いました。で、その人の前まで歩み寄る。
「久しぶりだな、小咲」
「久しぶりだね、蓮君。今日は縁日に?」
俺は頬を掻いた。
「いや、姉貴の付添だな。……甚平の事は突っ込まないでくれ……。うん、クロードの奴がな……」
「わ、わかった」
それにしても、小咲の浴衣姿は似合っている。
ピンク色を基調にし、所々に花の模様があしらっている。
「その浴衣、似合ってるぞ」
小咲は、顔を真っ赤にした。……もしかして、気を悪くした?
……フォローしないと。
「楽に言ってもらうのが筋だよな。……悪い」
「ぜ、全然大丈夫!嬉しいもん!」
「へ?嬉しい?」
俺が首を傾げると、小咲は必死に取り繕った。
「ほ、ほら。褒められると嬉しいものでしょ?」
「まあ確かに。ま、小咲は可愛いしな」
「……蓮君。それって天然?」
「天然?」
小咲は溜息を吐いた。
いやいや、何で溜息。俺、泣いちゃうからね……。
「そ、それはいいとして。小咲は一人で?」
「そうかな。恋結びを買おうかなって」
「へぇー、恋結びね。ま、俺は興味ないけど」
「蓮君って、ホントに恋愛に興味がないんだね」
まあ俺の場合は、恋愛をしないって決めてるんだが。――そう、俺は孤児院出身で、何処の子供かも解らないのだ。そんな奴が恋愛なんかしちゃいけないしね。……あとあれだ。姉ちゃんとの約束は口にしないだから、心の中ではOKなはず。
てか、かなりの人混みやん。
「まあ俺のことは置いといて。手伝うよ、恋結び買うのに」
「え、いいよ!そこまでして貰ったら悪いよ!」
両手を前に出して、手をぶんぶんと振る小咲。てか、これって前に見た光景と被るね……。
「……小咲って、損な性格してるよな」
「そ、そうかな?」
「だと思うぞ。欲しい物を譲っちゃったり。先頭を譲っちゃったり。とかありそうなんだけど」
「う、うぅ……」
……うん、あるんだね。知ってた。
「そういうこった。遠慮するな」
「は、はい……。お願いします」
……急にシュンとしないでくれませんかねぇ、小咲さん。何か、俺が凄ぇー悪い奴に見えるじゃんか。
まあそう言う事なので、手を繋いで本堂の神社へ向かいました。……てか、勢いで手を繋いじゃったんだけどね。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「か、買えなかったね」
「……何かすまん。俺がもっと早く歩いてたら」
違うよ、蓮君。わたしに歩幅とか合わせてくれたんだよね。
それに、わたしが歩いてる場所が狭くならないように、力技で道を開いてたんでしょ?……お客さんには迷惑になっちゃったかもだけど……。
わたしは、ずっと気になってたことを聞いてみる。――実は、ちょっと怖かったりもするんだけどね。
「蓮君。そ、そのミサンガってどうしたの?」
蓮君は少し思案顔した後、『姉ちゃんも小咲ならOKって言うだろうし、いいか』と言いました。
「誕生会の後、俺が居なくなっただろ?」
わたしは頷いた。
「実は、パーティーの翌日に中国に行ってたんだ。弾丸ツアーでな」
わたしは、蓮君の次の言葉を待つ。
「で、羽姉ちゃんに会って来た。その時に買ったのが、このミサンガって訳だ。姉ちゃんとお揃いだな」
……蓮君は気づいてないと思うけど、利き腕にミサンガつけるのは、恋愛って意味があるんだよ。
つまり、羽さんは――――――ってことなんだよ、蓮君。
「ま、そういうことだ。深い意味はないぞ」
「う、うん」
それからは、金魚掬いや射的、焼きそばの食べ歩きなど。色んな事をしました。……たしかに、るりちゃんの言う通り、自分の素とか緊張とかが……。あれ、どっちも同じ意味かな……。と、ともあれ、蓮君と過ごす時間はとても楽しかった。
一条君とバイトした時は確信までいかなかったけど、これでハッキリしました。
――――――そう。わたしは一条君から、桐崎蓮君に心変わりしていたのだ。
「(……わたしって軽い女だったかな?)」
でも、るりちゃんは、『恋に時間なんかは関係ないわ。大事なのは本人の気持ちよ』って言ってくれそう。
「……小咲。何で難しい顔してんだ。似合わないぞ」
ど、どうやら百面相?してたらしいです……。
「そ、そうかな?」
「難しい顔をしてたと思う。てか、小咲の頭じゃ――――」
蓮君の言葉が止まったのは、わたしが少しだけ不機嫌オーラを出したからだ。
わたしはニッコリ笑い、
「……わたしの頭がなにかな」
「……えーとですね。……スンマセンでした!小咲先輩。僕の失言です!ごめんなさい!」
「蓮君、凄い片言になってるよ。あ、あと敬語にもだけど。――じゃあ今度、勉強教えてよ。蓮君。大学一年までは完璧なんでしょ?」
「……いや、高校3年までだ。大学1年の学業は勉強中だな。……てか、姉貴と鵣のスペックは高すぎる……。何処の四大でも入れるらしいぞ。最早、チートだな」
いやいや、わたしから言わせて貰えば、蓮君もチートの域に入ってるからね。
蓮君は、『あ、そうだ』と言い、懐から細長い棒?を包んだ物を取り出した。それから、その物をわたしに手渡そうとする。
それは、可愛いい簪だ。
「似合うと思ってな、小咲が焼きそばを食べてる間に買って来た」
蓮君は、目を丸くしたわたしを見て、申し訳なさそうな顔をする。
「……あー、もしかして余計だった……姉貴にあげ――」
「も、貰います。渡してくれるまで動かないから」
「……忠犬ハチ公かよ」
『俺の比喩表現だけどな』と言いながら、蓮君はわたしに簪を手渡してくれた。
簪を着けると、綺麗な鈴の音が鳴った。
「ど、どうかな?」
「あー、あれだ。まあうん。似合ってるぞ」
「蓮君。また片言だよ」
そう言って、わたしは苦笑した。
それにしても、蓮君は罪作りな男の子だと思う。……わたしが、そう思ってるだけかも知れないけど。
「さて、帰るか。送ってくよ」
「千棘ちゃんはいいの?」
蓮君はスマホを取り出してから、画面を見る。
「楽と一緒に居るらしいぞ。楽が送って行くと思うから問題ないだろ」
「そっか。それじゃあ、お願いします」
「お、おう。何か、遠慮がなくなってきたな」
そうだよ蓮君。恋する乙女は強いんだから。
それからわたしは、蓮君に送ってもらい帰宅しました。今日はわたしに取って、忘れられない日になったのだった。
小咲は、完全に楽の手から離れてしまいました。……何か楽さん。ごめん<m(__)m>
まあ今のところの蓮君のヒロインは、羽姉と小咲ですね。今後どうなるかは、未だ不明です。