今現在俺は、中華街を羽と共に歩いていた。てか、羽呼びに全然慣れません……。いつも、羽姉ちゃんって呼んでたしなぁ。
「羽。近いから」
俺と羽の距離は、肩と肩が触れ合う感じだ。俺の心臓に悪いからね。
「暫くは会えないんだし、いいでしょ?」
俺は溜息を吐いてから、
「……お手柔らかにお願いします。俺、女性に対する免疫が無いんだから」
「任せて」
そう言った途端、腕を組んできた。当たってるから、何がとは言わないが当たってるから。何で女の子からはいい匂いがするんだよ……。あー、俺の理性がガリガリ削られてく。……てか、頑張ってくれよ、俺の理性。
「それで、最初は何処に行くんだ?」
「あそことかどうかな?」
羽が指差した店は、
俺たちは腕を組んだまま、小龍包屋へ向かった。
それから、小龍包の中に、豚挽き肉と鶏もも肉が入ったものを一つずつ注文した。一口食べると、薄皮の中に入った肉と共に熱いスープが洩れ出す。
ちなみに、割り箸を持ち、紙皿の上で食べてます。立ち食いでもあるけどね。
「……かなり熱い。口の中が火傷する」
「……わたしも同じく」
そういうことなので、若干冷ましてから一口。てか、かなり旨いです。
「蓮ちゃん。わたし、豚挽き肉のやつが食べたいな」
「いいぞ。ほら」
そう言って俺は、豚挽き肉が入った小龍包が乗った紙皿を、羽の前まで持っていった。
「じゃあ、蓮ちゃんも」
羽は、鶏もも肉が入った、小龍包が乗った紙皿を俺の前まで持ってきた。
それから、割り箸で取って一口。
「あれだな。どっちも旨いわ」
「そうだね。――後、しちゃったね。間接キス」
「……羽。俺が考えないようにしてた事を言ったらいけないよ」
「えへへ、ごめんごめん」
羽はクスクスと笑うだけだ。
羽も俺も顔が真っ赤じゃん。てか、恥ずかしいなら言うなよ……。
とまあ、間食しました。
「俺、ホントに中国に居るの?的な感じだよ」
そう。日本の中華街に居る感覚である。
「そうかもしれないね。ここの中華街と、横浜中華街は似てるから。わたしと蓮ちゃんって、周りから見るとどう映ってるんだろ?」
「……姉弟ではないような気がするし。たぶん、友達じゃないか?」
羽は思案顔をしながら、
「……わたしは、恋人だと思うけどなぁ」
「俺と羽が恋人ねぇ。……俺は釣り合わないよ。俺にとっての羽は高嶺の花だしな。それに羽には、もっと良い男が居るはずだ」
~羽Side~
「(……蓮。わたしは、そんな風に思ってないんだよ。きっと、蓮以上の男の子なんて現れないよ)」
そう。このように時間を割いて会いに来てくれたり、わたしの事を知っても変わる事なく接してくれる。蓮が、ギャングの息子って事も若干はあると思うけど。
――――――わたしは、そんな君が大好きなんだよ。
~羽side out~
「ま、まあ、この話は終わりにしよう」
うん、何か墓穴掘りそうで怖いわ。
「そうだね。違う所に行こっか」
「そうだな」
次に向かったのは、お土産屋と言ったらいいのか。そんな所だ。
店内には、限定ストラップや中国ならではのお土産、文具やお菓子など。てか、日本で言う駄菓子屋に似てるような?
取り敢えず、親父や姉貴、野郎共には、限定の土産とストラップを買って行こう。無難だしね。
「蓮ちゃん蓮ちゃん。お揃いしようよ」
「お揃い?」
「そうそう。ミサンガのお揃い」
「……ミサンガね」
俺には縁が無い代物である。
羽が手に取ったのは、赤と水色とオレンジで組み合わせてあるミサンガだ。それを2個だな。
なんつーか。利き腕につけて欲しいらしけど。何故利き腕。と言う疑問が出るが、気にしないでおこう。てか、聞くのは野暮な気もする。
「まあいいけど」
「ホント!?」
そんなに喜ぶ所なの?なんつーか、女の子って難しい……。
それから会計をして、土産袋を片手に、利き腕にミサンガを結びました。……てかあれだわ。ミサンガは切れるまで外せないという事は、学校まで。と言う事になる。勘ぐられないか心配になってきたわ。……ま、何とかなるだろ。
とまあ、買い物も終わった事だし、中国空港へ向かいました。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
「そろそろ便の時間になるから。って、泣きそうになるなよ。一生の別れじゃないんだから」
羽は、目許に涙を溜めていたのだ。
「……やっぱり、寂しいよ」
俺は羽の頭に右手掌を、ポンと置いた。
「泣くなって。てか、年上の威厳が無くなってるぞ。羽さんや」
「……わたし、いつか日本に行くから」
「1週間くらいって事か?」
「ううん。ずっとだよ。それまでに、こっちでの事は全部終わらせるから」
いやいや、それって組織を完全に統一させるって意味だよ。……ま、まさか。それを完遂しちゃうの?
「でも、これまで通り連絡は取り合いたいかな」
「構わないぞ、俺からも連絡はするよ。頻繁に。まではいかないと思うけど」
1週間に2回程度だろう。いや、これも頻繁に入るのか?
「わたしは、暇があったらかな」
「い、いいけど。学校の時間は勘弁……。まあ、メールなら大丈夫だと思うけど」
「うん、わかった」
「じゃあ、そろそろ。――わぷッ」
後半の情けない声は、羽が抱きついて来て無意識に出た声だ。
「元気でね」
「羽こそ元気でな」
そう言ってから抱擁を解き、俺はゲートへ向かい歩き出す。
ちなみに、土産などはターンテーブルに乗せた。
こうして、俺の弾丸ツアーの幕が閉じた。
次回から、原作沿いに戻ると思います。
てか、羽姉ちゃんのヒロイン力ハンパないね(笑)