第1話 テンコウ
「失礼しまーす」
俺、
てか、姉貴はまだ来てないのかよ……。まあ、義理なんだけど。
ともあれ、俺は編入するクラス担任の元へ向かった。
「桐崎蓮です。よろしくお願いします」
頭を小さく下げる俺。
「そう畏まらなくていいぞー。担任の日原教子だ」
かなりフランクに接してくれるキョーコ先生。
「あ、そっすか。んじゃ、よろしくです」
そんな時、職員室の扉が開き、姉貴が職員室に入ってきて、俺の隣に来た。
てか、かなり息が上がってるね。なんかあったの?いやまあ、別に知りたくないけどさ。
「おー、話は聞いてるぞ。君は坊主の姉だろ?」
おい、キョーコ先生や。坊主ってなんや、坊主って。まあいいけど。
「は、はい。桐崎千棘です」
キョーコ先生は、うんうんと頷いた。
それから、編入先の教室へ向かう。
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所変わって一年C組の教壇の上。
ここに並んで、俺と姉貴は立っている。あれだ、転校生がクラスに来る特有の騒ぎが起こってるわ。
「初めまして、桐崎蓮です。気軽に蓮でいいですよ。……好きな食べ物は肉で。以上です」
まあうん。一方的に終わらせました。
「初めまして、アメリカから転校してきた桐崎千棘です。母が日本人で、父がアメリカのハーフですが、日本語はバッチリなので気軽に話しかけて下さいね」
ニッコリと微笑む姉貴。
掴みは上々って所か。なんでお前がそんなこと言ってんだよ。って感じだけどさ。
『はいはーい!桐崎さんたちは姉弟なんですか?』
テンションが高いクラスメイトにそう聞かれた。
これは聞かれると思った。俺は口を開く。
「義理だけどな。まあでも、俺にとってはいい姉貴だ」
『……蓮~。お義姉ちゃん嬉しいよ』って小声で言いながら、姉貴は泣きそうだ。てか、転校初日から泣くとか止めてくれよ。
まあ、無事に自己紹介が終わると思ったのだが――、
「「あ――――――ッッ!!」」
姉貴と……もやし?(俺命名)が痴話喧嘩?を始めた。つーか、登校中に跳び膝蹴りって……。
「(……姉貴。なにやってんだ、あんたは)」
こう思いながら溜息を吐く俺。
で、『猿女』が決定打になり、もやしは姉貴の右手で殴られてたが。……姉貴、女なのに力がハンパないからなぁ。
ともあれ、俺は空いてる席に腰を下ろしました。席は、真ん中の列の最後尾って所だ。てか、転校初日だから、教科書類とかないんだよね。
“あれか!今日一日は寝てていいのか!”……とまあ、そんなことを思いながら机にうつ伏せになっていたのだが、茶髪で左側のサイドの髪が長い、アシンメトリーな髪型が特徴の女の子に話しかけられた。
「は、初めまして。わ、わたし、小野寺小咲。ええと、き、桐崎君」
俺は上体を起こし、
「蓮でいいよ。姉貴も桐崎だろ。呼び方だけど。小野寺、それとも小咲。どっちがいい?」
「ど、どっちでもいいよ」
「そか。じゃあ、小野寺で」
いや、何。シュンとしないでくれませんかねぇ、小野寺さん。
あれか、名前呼びの方が良かったとか。……いや、ないか。
「蓮君。教科書とかないの?」
「ない。だから、今日は寝る」
そう言って、机にうつ伏せになろうとする俺。てか、高校一年の学問は習得してるんだよね。俺、勉強しなくてもいいんじゃね。的な感じでもある。
だが、小野寺は焦ったように、
「だ、ダメだよ。ちゃんと授業を受けないと」
「いや、だから教科書がないから」
「わ、わたしが見せてあげる。だから、ちゃんと授業受けよう」
「……わかったよ」
あれだわ。小野寺って優しくて包容力があると思う。まあ、俺の予想だけど。
で、教科書を見せてもらい一限目の授業を受けました。
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時は経過し昼休み。
俺が大きく伸びをしてると、男子生徒が二人近づいて来る。俺のモットはー、来るものは拒まずだ。
「これからよろぴく、蓮さんや。オレは、舞子集ね」
「オレは、一条楽だ。一年間よろしくな」
「自己紹介で聞いたと思うが、桐崎蓮だ。よろしくな」
自己紹介が終わり、集が俺の肩に手を回してきた。てか、ニヤニヤすんな。
「それはそうと、蓮さんや。いつの間に小野寺と仲良くなったんだ」
「いや、ただ教科書を見せてもらっただけだから。これと言って何もないし。てか、楽。姉貴の面倒を頼んだわ」
楽は、げっ、という顔になった。
「お、オレに暴力女と仲良くなれと……」
「まあそういうことだな。だからまぁ、頼んだ」
「お、おう……」
がっくりと肩を落とす楽に、この光景を見てニヤニヤと笑ってる集。何というか、高校生活が楽しくなりそうな予感。いやまあ、たぶんだけど。
続くかな?