魔法少女育成計画routeS&S~もしものそうちゃんルート~    作:どるふべるぐ

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新連載大発表!(後編)

 

 そうして辿りついた闇の最奥は、殺意と獣欲と血肉と冒涜の坩堝であった。

 聞こえてくる心の声を頼りに辿りついた穴の果て、そこは大部屋と思しき開けた空間。

 まずスノーホワイトの金の瞳が捉えたのは、闇に蠢く何匹ものゴブリン達。そして腐ったゴミや糞尿などの汚物が散乱した床に、まるで壊れた玩具のように無造作に転がされた、裸の女性だった。

 

 傷つき血の気の失せた肌には無数の歯型や爪痕が刻まれ、悪臭を放つ汚汁が塗りたくられている。どれ程の凌辱をその身に受けたのだろう。すでにその瞳は焦点を失い虚空を向いて、ただ涙を溢すのみ。健常な精神の持ち主ならば思わず目をそむけたくなる無残なその姿が、彼女がゴブリン共に何をされたのかという事をスノーホワイトに教えていた。

 そしてこの部屋の一番奥、只人(ヒューム)の骨で作ったとおもわれる悍ましい玉座には、明らかに他とは異なるゴブリンが座っている。

 

 醜い顔の上に髑髏を被り、ねじれた杖を握るそのゴブリンこそが小鬼どもの酋長(ボス)なのだろう。

 酋長は自らの領地に踏み入った招かれざる侵入者を睨みつけ、それが可憐な少女だと分かると肉欲に歪んだ笑みを浮かべ、同じように笑う部下達に叫んだ。

 

「GRRROB!」

「GROB! GROB!」

 

 下された命に喜んで従い、全部で五十を優に超えるゴブリンの群れがスノーホワイトへと襲いかかる。

 薄汚い黄色い目を欲望で爛々と光らせ嗜虐の笑みで迫る小鬼どもに対して、だがスノーホワイトはどこまでも冷静だった。

 恐れず怯まず静かにルーラを構え、迎え撃つ。

 まず錆びた剣を振り上げ跳びかかる先頭の一匹を突き出したルーラで貫き、続く二匹目を引き抜きざまの横薙ぎで両断し、卑怯にも背後から跳びかかった三匹目には裏拳を見舞う。その後も次々と襲い来るゴブリンの群れをルーラと体術で捌きつつ、スノーホワイトはファルに問うた。

 

「ファル。あそこの女の人は生きてる?」

「微弱ながら生体反応はあるぽん。でもこのままじゃ危険ぽん。いつ死んでもおかしくないぽん! スノーホワイト、早く保護するぽん!」

「分かってる。だから早くこいつらを全員斃さなくちゃ」

「ファルも全力でサポートするぽん!」

 

 そう叫ぶファルの声に、もはや非難の響きは無い。あるのは、悪しき者への怒りだ。

 彼もまた床の女性の姿を見て気付いたのだ。こいつらは生かしておいてはいけない。人として、否、魔法少女として絶対に存在を認めてはいけない奴らなのだと。

 

 相棒の全面的な理解と協力を得て、スノーホワイトは更にルーラを振るう。

 より速く、より精確に、より無慈悲に。

 血塗られた刃で跳びかかるゴブリンの腹を突き、噛みつこうとしてきたゴブリンの首を飛ばし、その強さに驚き立ち竦むゴブリンを斬りつけ。とにかく間合いに入るゴブリンを殺しまくる。

 柔らかなピンクの髪を靡かせ、白い衣装を躍らせて、スノーホワイトはたった一人で小鬼どもの群れと渡り合っていた。

 その姿は凄惨でありながも美しく――それが酋長にはたまらなく腹立たしい。

 

 何をしている無能共が。揃いも揃ってたった一人の小娘も殺せんのか。犯して殺す事しか能の無い無駄飯喰らいめ。せめて刺し違えるくらいはしてみせろ。やはりこいつらに期待したのが間違いだった。ここは自分が指示してやらねば。

 

「GROOBG!」

 

 そうして酋長が放った新たな命令。

 同時に『失敗したら困る』というその心の声を聞いたスノーホワイトがそれを阻止しようとするも、させじと三匹のゴブリンが同時に飛びかかり、それを切り捨てている間に命令は完了していた。

 

「GORBU……!」

 

 他のゴブリン共とは一回りも二回りも大きい、はち切れんばかりの筋肉を纏った大柄のゴブリンが、床にうち捨てられていた女性の髪を太い指で握り無理やり立たせ、ぐいっとスノーホワイトに見せつけたのだ。

 そして卑劣さを恥じることなく勝ち誇った黄瞳で、こいつがどうなってもいいのかと問いかけていた。

 

「人質ってことかぽん……ッ!」

 

 その光景を前に、ファルの声が怒りに震える。

 今すぐにでも彼女を助けてこいつらをブチのめしたい。

 だがどうする。周囲は依然としてこいつらに囲まれて、スノーホワイトが助けに動けば必ず邪魔してくるだろう。そしてそれに対処している間にきっと彼女は殺される。だが仮に幸運にも彼女を助け出せたとしても、果たして動けない彼女を庇いながら一人で戦えるのか……? だがここで見捨てるなんてことがスノーホワイトに出来る訳が無いし自分だってしたくない。だがかといって、助けるのは危険がありすぎる。

 どうする。どうすればいい。

 灰色の脳髄ならぬ電脳をフル回転させて打開策を考えるファル。

 

 対して一方のスノーホワイトは、何もしていない。

 ただ静かに瞼を閉じ、呼吸を整えている。

 それは一見して何もかもを諦めたかのような――事実、周囲のゴブリン共は勝利を確信して歪んだ歓声を上げた――だがファブにはまるで、狩りをする獣が好機を伏して待つ姿のようにも思えて

 

「スノーホワイト?」

「待って。もうすぐだから……もうすぐ……――来た」

 

 スノーホワイトがカッと目を見開くのと、広間の入り口の向こう側から放たれた一本の剣が宙を奔り、玉座に座る酋長を貫いたのは全くの同時だった。

 

「GOORBBーー!?」

 

 胸を貫かれる激痛に酋長は醜い悲鳴を上げ、驚き動揺して一斉に己が主が血を吐く姿に目を向ける手下たち。

 全員の視線がもだえ苦しむ酋長に集中した瞬間、スノーホワイトは動いた。

 素早く地を蹴り、突然の事態に驚愕し立ち尽くすゴブリン共の間を駆け抜け、女性を捕らえる大柄のゴブリンへと迫る。白き疾風の如きその姿に大柄のゴブリンはハッと我に返るも最早遅い。その懐に飛び込んだスノーホワイトが振るった斬り上げの一閃が、女性の髪を掴み拘束していた右腕を斬り飛ばした。

 

「GOOOGURB!?」

 

 肘から先を失った腕から血を吹き出し絶叫する大柄のゴブリン。

 仕上げにその側頭部にリップル仕込みの空中回し蹴りを叩き込み、衝撃で意識を刈り取る。

 巨体がぐらりと崩れ落ち、その下敷きになる前にスノーホワイトは女性を抱きかかえ跳び退く。直後、どしんと重い音を立てて大柄のゴブリンは倒れた。

 それを確認し、相棒の腕の中の女性を見るファル。依然として半ば瀕死で意識は朦朧としているようだが、確かに呼吸をしている。生きている。

 

「よかったぽん」

 

 助けられた。その事に深く安堵するファルだったが、すぐにある疑問が湧き上がった。

 

 一体誰が、あの剣を投げたのだ?

 

 円らな瞳に戸惑いを浮かべ、剣が飛んできた先――広間の入口の向こうに蟠る闇の中に目を向ける。

 その答えはまもなく――やって来た。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ぼうっ……、と、冥府の底を思わせる闇の奥に小さな光が灯る。

 まるで鬼火の如く妖しく、不吉に。揺らめくそれが、無造作で、かつ決断的な足音を響かせこちらへと近づいて来るのだ。

 

 ザカッ……。

 

 揺らめく光は松明の炎だった。先端が赤々と燃えているそれを、使い込まれて傷だらけの小さな盾を括りつけた左手が掴んでいる。

 

 ザカッ……

 

 続いて闇に光ったのは、右手に握るあまりにも中途半端な長さの剣が炎の明かりを鈍く反射する光。その所どころ欠けた刃にはべったりと血と肉片がこびり付き、先端から赤い雫を滴らせている。

 

 ザカッ……。

 

 そして最後に現れたるは、凄惨な血飛沫の跡が付いた革鎧と鎖帷子を纏い、角の折れた鉄兜を被ったその全身。

 まるで中世ヨーロッパを舞台とした物語――それも血と惨劇のダークファンタジーからそのまま現れたかのような鎧兜姿の男が、そこにいた。

 

 闇に浮かび上がったその姿は血と泥で薄汚れていて、あまりにもみすぼらしい。

 だが、この場にそれを笑える者は一人とていなかった。

 その男の全身から溢れ出る超濃度の殺意が、皆殺しの意思が、この場全ての小鬼共に叩きつけられ、その背筋を冷たく震わせていたのだから。

 

 直接浴びせられた訳でもないファルの心胆さえも寒からしめたそれは、男が纏う安っぽくみすぼらしい装備とはかけ離れた、まるで何年にもわたって煮え滾り濃縮されたかのような殺意の塊。いったいどれだけの憎悪を、どれほどの怒りを魂に燃やせばこんなモノが放てるというのか。それがあまりにも異様で、恐ろしかった。

 

 息を飲み戦慄するゴブリン達を前に、男の頭部を全て覆う兜の隙間から、声が漏れる。

 

「残り三〇」

 

 緊迫し張り詰めたこの場に在って不気味なほどに冷静なその声は、眼前に集うゴブリンの数を正確に呟く。

 そして兜の隙間の奥、素顔を覆い隠す闇の中から、赤い瞳が気絶し倒れた大柄のゴブリンを見た。

 

「ホブ 一」

 

 続いて、玉座にて胸から剣を生やし悶え苦しむ酋長へと目を移し

 

「シャーマン 一」

 

 最後に、抱きかかえていた女性をそっと地面に寝かせ、彼女を守るように立ち上がりルーラを構えたスノーホワイトを見て……しばし思案するように言葉を止めた後、問いかける。

 

「ゴブリンか?」

「いいえ。魔法少女です」

「そうか」

「そうです」

 

 対してこちらも冷静極まりすぎる声で答えたスノーホワイト。

 彼女の金の瞳と、男の赤い瞳が交わり、互いをしかと捉える。

 ぎゅっと、ルーラを握る小さな手に力が籠った。

 すっと、男の血を滴らせる剣の先端が持ち上がる。

 高まる緊張感。ひりつく空気が一気に張り詰め、そして――二人は同時に地を蹴った。

 

「ふっ……!」

「…………ッ」

 

 スノーホワイトは鋭く息を吐き、男はただただ無言で、互いに己が武器を振り上げ相手に迫る。

 その動きに迷いは無い。ただ己の全力を以って殺すべき敵を殺すためスノーホワイトと鎧兜の男は疾走し、そして二人の身体が同時に互いの間合いに入った瞬間――ルーラが、剣が、闇に刃の軌跡を描き宙を奔った。

 

 かくして響くは、柔らかな肉を断ち切る音。

 赤黒い二つの血飛沫が虚空に飛び散り、そして

 

「GORBU!?」

「GOBRO!?」

 

 二匹のゴブリンが、二人に斬られて死んだ。

 

「まず一つ。残り二九」

 

 男の粗末な剣は、だがスノーホワイトの背後から跳びかかろうとしていたゴブリンの心臓を正確に貫き

 

「ではこれで残り二八ですね」

 

 スノーホワイトが薙ぎ払ったルーラは、男を背中から突き刺そうとナイフを構えて走って来たゴブリンの首を刎ね飛ばした。

 仲間の不意打ちを容易く防がれ、ゴブリン達に動揺が走る。

 役立たずめと罵りならばどうするかと顔を見合わせているその隙を逃さず、スノーホワイトと男は素早く床の女性を挟んで背中合わせに立ち、互いの背中を守り合いながら戦う態勢をとった。

 これならば死角を補い合うと同時に女性を守りながら戦える。

 示し合わせたわけでは無い。ただ互いの思考がこの場における同じ最善手を導き出したがゆえのコンビネーションであった。

 

「私の前の敵は私が全員殺します。だから、私の後ろの敵をあなたが殺してください」

「わかった」

 

 背中越しにかけられたスノーホワイトの申し出に男がそれだけを言って、ここに新たなパーティーが誕生する。

 血と殺意を纏う異様な鎧兜の男と、白く可憐な衣装の魔法少女。

 全く正反対な見た目の、だがその雰囲気だけは鏡合わせのように似通った二人。

 世界の境界を隔てて決して交わるはずなど無かった者達による奇跡のクロスオーバー。

 その迫力に怯み、後ずさろうとしたゴブリン共であったが、歯軋りの音を鳴らして堪える。

 

 相手は増えたが所詮たった二人、そして自分たちはその何倍もいる。ならば数で押せば勝てないはずはない! 仲間の仇を討て! 犯して殺せ!

 

 断じて勇気などではない蛮勇と憎悪を燃やし、ゴブリン共は醜い雄叫びを上げ一斉に襲いかかった。

 その猛り狂う幾多の貌はだが、間もなく恐怖に凍り付く事となる。

 そうして突入した新たな戦い(バトルフェイズ)はゴブリン共が考えていたような数による圧殺ではなく、魔法少女と鎧兜の男による殺戮だったのだから。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「二つ。残り二十七」

 

 まずスノーホワイトがルーラを突き出し眼前のゴブリンを貫けば、その背後で男の剣が横から跳びかかってきたゴブリンの腹を抉る。

 

「これで三つ。残り二十五」

 

 剣先で臓腑をかき回しつつ事務的に呟く男。その声に興奮による抑揚は無く、あくまで淡々と。

 一方、ルーラに貫かれたゴブリンは、せめてもの悪あがきと胸に刺さったルーラの柄を握り抜かせまいとする。スノーホワイトはその顔面に蹴りを叩き込んで引き剥がすも、生まれた僅かな隙を突いて新たな一匹がナイフを手に斬りかかった。

 

「四つ。油断するな」

「GORB!?」

 

 だがそのゴブリンは割って入った男の剣によって両断される。

 が、すでに刀身がボロボロで廃品同然だった剣はついに衝撃に耐えきれず根元から折れ、武器としての役目を終えてしまった。

 武器を失った男に、これを好機とすかさず左右から襲い掛かった二匹のゴブリンは、

 

「私も四つ。お互い様です」

「GOBR!?」「GOUB!?」

 

 すでに体勢を立て直していたスノーホワイトが横薙ぎで纏めて切り捨てた。

 

「武器を失いましたが大丈夫ですか?」

「問題無い」

 

 丸腰になったというのに『困った心の声』が聞こえない事を疑問に思い問いかけるスノーホワイトに、男は慌てることなく彼女が今殺したゴブリンの屍へと手を伸ばし

 

「武器ならいくらでも転がっている」

 

 鋭い爪の生えた指が握っていた同じような剣を奪い、近くの一匹に叩きつけた。

 問題ないという言葉の通り一撃でゴブリンの顔面を真っ二つにした男に、なるほどと納得して自らも眼前の一匹の顔を突き刺すスノーホワイト。

 かくして背中合わせの二人はそれぞれ正面の敵に向かい合いながらも、必要とあらば身をひるがえして互いをカバーし合う。故に実質的に隙など無く、それを理解できず蛮勇のままに突っ込んで斬るゴブリン共などもはや哀れなカモに過ぎない。

 

「五。残り二〇」

 

 血塗られた剣が、魔法の薙刀が、闇に殺戮の軌跡を描く度に血飛沫が弾け骸が転がる。

 流れる血は血河となり、重なる骸が屍山を築く。

 

「十。残り十五」

 

 悪鬼よりも凄惨に、死神よりも容赦無く、屠り続ける二人の前に、広間に蠢きこの巣穴を力と数で支配していたゴブリンどもはついに半数となった。

 数で押し込めば勝てる。そう高をくくっていたゴブリンどもの顔にも不安と焦燥が浮かび、中には背を向けて逃げようとした者すらいた。が、二人の殺戮者がそれを許すはずも無く、男が放った短刀に後頭部を貫かれ絶命する。

 

「十一。一匹も逃がさん」

「GOOBUU……」

 

 もはや逃げる事すら出来はしない。ここにきてゴブリンどもはようやく気が付く。

 追いつめられていたのはこいつらではなく、自分達なのだと。

 

 ぶざけるな! そんな馬鹿な事があってたまるか! 殺す! 絶対に殺してやる!

 

 無論ゴブリンにそんな事実を素直に受け入れる潔さなどあるはずも無く、黄色く濁った瞳を理不尽な怒りで見開き、見苦しく憤慨した。対してスノーホワイトと鎧兜の男は、凍り付くような殺意でもってそれを迎え撃つ。

 

「この男、一体何者ぽん……ッ」

 

 一糸乱れぬ二人の連携に、そしてそれを初対面にも関わらず事も無げにこなす得体の知れぬ男に、ファルは戦慄の声を漏らした。

『魔法少女狩り』として基本的には一人で戦うスノーホワイトだが、もともと他者との連携は抜群に上手い。たとえそれが初めて組む相手だろうと、その『困った心の声が聞こえる』魔法で共闘相手の思考を常に把握することで、サポートなどの連携も問題なく行えるのだ。

 

 だが、これは違う。この男とのそれは、他の相手とは比べ物にならないほど()()()()()()()()()

 呼吸、足さばき、攻撃のタイミングから身のこなしまで何もかもが、体格や武器が異なるにもかかわらず、その機械的に相手を屠る手際がまるで鏡合わせのようなのだ。

 

「十三。床を這う一匹は任せる」

「では代わりに死体の下に潜って隠れている一匹をお願いします」

 

 それはきっと、その戦い方が、二人が極め到達した所が同じだから。

 華やかさなどいらぬ。拘りなど不要。慈悲や躊躇など元から無い。

 ただ殺す。速やかに確実に最大効率で相手を殺すことのみを突き詰めたそれは、ゆえに恐ろしい程に似通っている。

 そしてなによりも、その在り方だ。

 スノーホワイトとこの男は――自分自身を己が成さんとする目的のための道具としか思っていない。たとえ肉が裂け骨が砕けようとも心の臓さえ動いていれば立ち上がり、四肢がもげようとも歯を使って敵の喉首に喰らい付けばいいのだと。

 狂っている。どうしようもなく壊れている。だがそれでいてこの二人、その思想は壊れても思考だけは精確なのだ。

 怒りと憎悪に魂を燃やしても決して我を忘れることなく、冷静に狂える復讐の鬼。

 これほどに悍ましく、そして酷く哀しい存在がいるだろうか。

 

「十五。そして十六」

 

 共にタガが外れ、壊れるまで回り続ける歯車となった二人は故にカチリと噛み合い、二人で一つの殺戮装置となってゴブリンを屠りまくった。

 前に現れたら殺す。後ろから襲いかかっても殺す。逃げようとした奴も殺す。殺す殺す殺す。

 大量の血飛沫を浴びて全身を赤黒く染めながらそれぞれの武器を振るい、そしてついに残りが片手で数えられる段階になった時――

 

「GOOORBB!」

 

 憤怒を燃やし空気を震わせる大咆哮。意識と右腕を失い地に伏していたはずの大柄のゴブリン――ホブゴブリンが突如起き上がり、鎧兜の男に残った左の剛腕を振るったのだ                                                             

 他のゴブリン共とは比べ物にならない分厚い筋肉に覆われた拳が兜に覆われた頭部に迫る。それを咄嗟に掲げた剣の腹を盾として間一髪で受け流すも、代償に剣の刀身は無残に砕け散った。

 ならば足元に転がる死体の武器を奪うことを考えるも、ホブゴブリンは既に二撃目を放とうとしている。間に合わないか……ッ。

 

「これを!」

 

 果たして攻撃が届く前に武器を拾い構えることが出来るか刹那の間思案する男に、スノーホワイトが鋭い声と共に何かを投げ渡した。

 反射的にそれをキャッチし、とりあえず棍棒代わりに叩きつける。

 渾身のフルスイングはホブゴブリンが拳を放つよりも僅かに早く、その道具の赤く染まった筒状の箇所が横っ面を直撃した。

 

「GOOBGR!?」

 

 致命的一撃(クリティカルヒット)とはいかなかったものの、衝撃で脳を揺らし怯ませることに成功。ホブゴブリンはぐらりと上体を揺らし、再びどうと音を立てて仰向けに倒れた。

 

 なるほど。初めて見る道具だが剣よりは頑丈なようだ。感心しつつ、男は自らの手にある未知の物体――細いホースと持ち手とレバーが付いた赤い筒――に目をやる。

 見たところ金属製のようだが、これは鈍器か? 少なくともそこらの棍棒よりは硬そうだが……

 

「これはなんだ?」

業務用消火器――火を消すための道具です。ピンは既に抜いてあるのでレバーを握り込めばホースの筒先から消火効果のある粉末が噴射されます」

「なるほど」

 

 呟き、男は消火器のホースを握ると、その筒先をホブゴブリンの口にねじ込んだ。

 痛みと息苦しさにくぐもった悲鳴を漏らすホブゴブリンを押さえつけ。ホースを握る拳に当たった歯が折れ、咥内が傷つき血が溢れるにも構わず、力ずくで奥へ奥へと突き入れそして――持ち手を握りこみレバーを押した。

 

「GOBUGOO…ッ!?!?!?!?」

 

 瞬間、喉奥の筒先から消火剤が噴射。凄まじい勢いで噴き出したそれが、喉奥から胃袋、更にその先のあらゆる臓器へと流れ込む。

 体内を満たす大量の異物によって腹部が破裂寸前の水袋のように膨れ、口からは血と唾液と消火剤が混じったピンク色の粘液が溢れた。想像を絶する苦しみに白目をむき暴れるホブゴブリンを、男は一片の加減無く足で踏み動きを抑え、消火剤が全て出し切ったのを確認した後ようやく筒先を引き抜く。

 そして消火器を振り上げ、これでようやく終わりかと安堵したろうホブゴブリンの顔面に叩きつけた。

 

「GOBRU!?」

 

 上がる悲鳴と鈍い打撃音。飛び散る血。

 硬い消火器の底でホブゴブリンの鼻を潰し、また振り上げ――落す。

 額が割れ血が溢れたがもう一度。前歯が全て折れ眼球が飛び出し顔面が陥没しようと何度でも。男は無慈悲に、そして確実に、繰り返し消火器を振り上げ殴り続ける。

 鬼気迫るその姿に、堪らず目を逸らすファル。

 やがて肉を打つ音が湿った水音となってからようやく、ホブゴブリンの顔面を殴り潰した男は攻撃の手を止めた。

 その死を確認し、血と骨片と脳漿がこびりついた消火器を見て一言。

 

「悪くないな」

 

 呟き、続いて鬼火の如き赤い瞳を動かして、それを見た。

 この屍山血河の地獄絵図で、まだ唯一息のあるゴブリンを。

 

「十九。残り一」

 

 最後はおまえだ。

 凍える様な殺意の眼差しでそう伝え、骨の玉座――そこで胸を剣に貫かれ今にも息絶えようとしている酋長へと近づいていく。

 その隣にはスノーホワイトも並び、ゆっくりと、だが決断的な歩みで近づいて来る二人が、酋長にはまるで死神に見えた。

 

 ◇◇◇

 

 

 いやだ。死にたくない。

 

 胸を貫く痛みと、自らの肉体から徐々に熱が失せていく感覚に恐怖しながら、酋長はそれでも必死に死にたくないと願い生にしがみ付いていた。

 だがいくら上位種は丈夫とは言っても、臓腑を穿たれ血を流し過ぎたその身体ではどの道助からず、男が手を下さずとも間もなく死が訪れるだろう。

 

 いやだぁ……ッ!

 

 半ば朦朧としながらも意識を保ち、生き汚く願う。強く願い死の恐怖にもがき嫌だ嫌だともはや動かせぬ舌の代わりに心で叫び足掻いてそれでも傷口から血が流れ続けて命が失われ嫌だ嫌だ嫌だあああああああ!!

 

 

 

──生きたいの?

 

 

 

 その時、靄がかかり暗くなっていく視界に、見た事の無い生き物が映った。

 それは背中に透き通った虫の羽根を生やした、手のひらほどの小さな人間。まるで一流の職人が最高の技術で作り上げたビスクドールのようなそれが、可憐だが邪悪な笑みを浮かべ、死に逝かんとする酋長へと問いかけた。

 

──死にたくないの?

 

 当り前だ!

 叫ぼうとしたが、喉奥から漏れたのは僅かな呻き。

 それでも謎の生き物は笑みを深め。

 

──なら、一緒に楽しい事をしてくれるなら助けてあげるよ。

 

 そう、問いかける。

 子供のような笑みで、優しげな声で、ファウストを誘惑する悪魔のごとく。

 一方、その生き物を目にしたスノーホワイトは目を見開いた。

 その生き物――自らが追っていた妖精タイプのマスコットキャラクターが何をしようとしているのかを察し、鋭く叫ぶ。

 

「やめて!」

 

 だが、そんな言葉が外道になど届くはずもなく、再度問う。

 

──あいつらが憎いでしょ? 殺したいでしょ? このまま何もできないで死ぬのなんて我慢できないでしょ? だったら、生きて復讐して犯して殺したいでしょう?

 

 ならばさあどうするという問いに、酋長は最後に残った力を振り絞り、ほんの僅かだが確かに――頷いた。

 

 瞬間、玉座に剣で貫かれていた酋長の身体が輝き、不可思議な光に包まれる。

 

「――ッ!」

「くっ……!」

 

 突然の異常事態に、警戒して歩みを止め身構える男。

 一方、スノーホワイトは目の前の光景が、その光がなんであるかを知っていた。なぜならばそれと同じものを、かつて自身も体験していたから。

 これは誕生の光だ。魔法の才を持つ生き物がマスコットキャラクターと契約を交わし――新たな魔法少女として変身する光だ。

 

 何故止められなかったのかと彼女を責めるのは酷だろう。

 スノーホワイトは知らなかった。酋長がゴブリンの中でも魔法の才に長けたシャーマンであることを。

 そしてなにより――この戦いの結末を決めるために神が振った『偶然』と『宿命』のサイコロの、出目が悪かったのだから。

 

 かくて眩くも不吉な胸騒ぎのする光がおさまった時、玉座からゴブリンの姿は消えていた。

 代わりにいたのは、人ならざる異形の鬼気を放つ一人の少女。

 

 あどけなさの残る可憐な美貌を邪悪な笑みで歪め、くすんだ緑の髪を波打たせ。杖を手に堂々と立つその肢体に纏うのは、豪奢なれど露出の激しい冒涜的な衣装。

 何もかもが変身前とは異なる中でただ一つ変わらぬのは、爛々と光り眼前の怨敵二人を睥睨する――ゴブリンの黄眼。

 魔法少女無きこの世界に初めて誕生した魔法少女――小鬼魔法少女(ゴブリンマジカルガール)が、そこにいた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「まずい……まずいぽん……」

 

 思わぬ事態に、ファルは動揺する。

 ここまでスノーホワイトは、元の世界で試験官と、そしてこの世界ではゴブリン共と、二つの戦いをほぼ休みなしで行ってきた。特に試験官はクラムベリーと同じく『力』を信望していたとあって強敵であり、いかに魔法少女狩りとはいえ無傷では倒せなかった。ゆえに表情にこそ出していないもののスノーホワイトの身体には連戦による疲労とダメージが確実に蓄積されているはずであり、ここに来て更に魔法少女との戦闘ともなれば最悪力尽きてもおかしくは無い。

 

「スノーホワイト。ここは撤退を――」

「駄目。ファルの考えていることは分かるけど、あの敵は今魔法少女になったばかりで魔法少女の戦い方をまだ分かっていない。だから経験を積んで手強くなる前に、ここで倒す」

 

 たとえそれで命が尽きようとも、引き換えに悪党魔法少女を倒せるのなら構わない。

 

 そう金の瞳で語る魔法少女を、だが認める事など出来るはずが無かった。

 スノーホワイトがこんな所で死んでいいわけなど無い。いや、たとえどんな所だろうと死んでほしくなどあるものか!

 だが一体どう言えば彼女を説得できるのか、ファルが必死に頭を振り絞り考えていると

 

「それで――」

 

 ふと、焦るファルの声とは全く逆の、異様に落ち着きすぎた声がかけられた。

 その主、鎧兜の男は、隣で小鬼魔法少女にルーラの切っ先を向け身構えるスノーホワイトへと無造作に問いかける。まるで業務連絡を教えてくれとでもいうかのような調子で

 

「あれはゴブリンか?」

「はい。ゴブリンです」

「そうか」

「そうです」

 

「ならば」そして男は――表情は見えずともどこか嬉し気な雰囲気で――血の付いた消火器を握る手に力を込めて、構えた。

 落ち着いて淡々と。焦ることも猛る事も無く。

 たとえ何であろうとどんな姿になろうとも、アレがゴブリンならばやることは変わらないと。

 

 それは白い魔法少女もまた同じ。

 たとえここがどんな場所であろうとも、そこに悪しき魔法少女がいるのならば、己が成すべき事はただ一つ――

 

 

 

「ゴブリン共は皆殺しだ」

「悪い魔法少女は狩ります」

 

 

 

 ゴブリンを殺す男と魔法少女を狩る少女の宣言は、同じ必滅の意思を燃やして闇に轟いた。

 

「――ッ!?」

 

 凄まじいその迫力。肌が焼けつくような闘志と全身が凍り付くようなその殺意を、まともにぶつけられた小鬼魔法少女がその笑みを消す。

 悟ったのだろう。たしかに目の前の怨敵は疲労困憊し、己はかつてない力を手に入れた。だがそれでもこいつらは――その命を躊躇い一つなく引き換えにして己を殺せるのだと。

 

「GOOBURR……ッ」

 

 淡い唇から漏れるのは、苛立ちに煮え滾る――紛れも無いゴブリンの唸り。

 小鬼魔法少女は黄色い瞳で、ルーラの切っ先を向けるスノーホワイトを、血の滴る業務用消火器で今にも殴りかからんとしている男を憎々しげに睨みそして

 

「《閃光(フラッシュ)》!」

 

 杖の先から閃光が迸る。

 先程の変身の光とは比べ物にならないほどの凄まじい光量で闇を白く染め、視界を焼きつかせるそれ。堪らず男は腕に括りつけた盾で、スノーホワイトは腕を目元に翳して閃光を防ぎ、耐えるしかなかった。

 そして暫し時が過ぎ、ようやく光がおさまった時、小鬼魔法少女の姿は二人の前から消えていた。

 

「逃げたか」

 

 あるいはそう思わせて油断した時を襲うつもりかとも考え男は警戒を続けたが、しばらくたっても何のアクションも起きないのを確認し、掲げていた消火器を下ろした。

 

「ファル。周囲に反応は?」

「……無いぽん。少なくとも探知できる範囲に魔法少女反応は見つからないぽん。完全にロストしたぽん」

 

 スノーホワイトは相棒に問うも、申し訳なさそうに帰って来た答えに小さく溜息を吐く。

 逃げられてしまったか。これで事態は振り出しに……否、あいつに加えて悪の魔法少女が敵に増えた事を考えるとむしろより悪化したと言える。

 もう少し早くゲートに飛び込みこの世界に来ていれば、あるいは奴らが接触する前に捕まえられたのではないか。そう己の不甲斐なさを責めるスノーホワイトの耳が、ふと鎧が擦れる音を聴く。

 

 それは鎧兜の男が床に倒れた女性の下に屈みこむ音だった。

 

「ゴブリンに攫われたという娘だな」

 

 静かに問いかけると、女性は僅かに頷いたように見えた。

 それを確認し、男は腰のベルトポーチから無造作な手つきで小瓶を取り出す。

 

治癒の水薬(ヒールポーション)だ。飲め」

 

 ガラスを透かして薄く燐光を放つ緑色の薬を、その力無く開いた唇に流し込んだ。

 すると体力の低下で青白かった女性の肌に血の気が戻り、今にも途切れそうだった呼吸も安定し安らかなものとなる。

 自分たちが知る通常の薬とは比べ物にならない効果と速効性だ。あるいは魔法が関係する物なのかもしれない。

 とはいえ、今は驚くよりも感謝が先だ。もはや手遅れかもと思っていたが、これならば女性は治療を受け安静にしていれば助かるだろう。

 

「ありがとうございます。私一人ではこの人を守り切れませんでした」

「礼はいい。ゴブリンを退治し娘を救うという依頼で、俺はゴブリンを殺しに来ただけだ」

 

 感謝を伝え頭を下げるスノーホワイトに、男は照れ隠しでも格好をつけるわけでもなく無造作に言い、そして問いかけた。

 

「あのゴブリンシャーマンは途中で姿が変わったが、お前はあれが何だか知っているか?」

「はい」

「教えろ」

 

 簡潔で、なおかつ有無を言わせぬその言葉。そこに込められた強い意志を感じながら、スノーホワイトは問う。

 

「それを知ってどうするつもりですか?」

「殺す」

 

 

 

 返ってきたのは、あまりにもシンプルな答えで

 

「あれは人知を超える力を持つ存在です。単純な身体能力だけでも人体を容易く引き千切り、更には恐るべき魔法を操ります。ただの人間では殺されるだけですよ」

 

 共に戦っていて分かった。

 この男は経験と思考力こそ並外れているが、その他の戦闘技術はよくて達人レベル。それは努力と鍛錬でいきつける限界値ではあるが、そこから先の天才や英雄といった者達の領域には及ばない。ましてや魔法少女には。

 

「関係ない」

 

 なのにこの男はこう言うのだ。

 それが強がりでも、まして己が実力を弁えていない蛮勇でもない事は心の声を聞けば分かる。

 

「たとえアレが何であろうと、正体がゴブリンであるなら――」

 

 この男が戦う目的が、世界を救うためでも、英雄になることでもない事も。

 この血塗られた鎧のなんか変なのは、ただ

 

 

 

「ゴブリンは、俺が殺す」

 

 

 

 世界最弱の怪物を殺すためだけに戦うのだと。

 

 スノーホワイトの唇が微かに綻んだ。

 世界には自分に似た人が三人いるとは聞くが、まさか異なる世界でこうまで自分と似通った者に出会うとは。その偶然があまりに奇妙で、可笑しくて。

 肩の上で驚愕するファルの気配を感じながら、スノーホワイトは自分でもいつ以来か思い出せない微笑で口を開いた。

 

「なら、一緒に戦いましょう。私もまた、悪い魔法少女を倒さなければいけませんから」

 

 どのみちこの見知らぬ世界でマスコットキャラクターと小鬼魔法少女を独力で探す事は困難なのだ。ゆえに協力者が、この世界の住人でなおかつ魔法少女と化したゴブリンの生態を知り尽くした人物の――この男の協力が不可欠なのである。

 

 そんなスノーホワイトの申し出に、男は

 

「……好きにしろ」

 

 無造作に呟き、了承した。

 望んだ答えに笑みを僅かに深め、スノーホワイトは名乗る。

 

「私はスノーホワイト。《魔法少女狩り》と呼ばれる魔法少女です。あなたは?」

 

 男は、答えた。

 ドラゴンでも魔王でもなく、冒険も世界を救うこともせず、ただただゴブリンを殺し続けるその名を

 

 

小鬼を殺す者(ゴブリンスレイヤー)

 

 

 

◇◇◇

 

 

神ですらも予想がつかない、小鬼殺しと魔法少女狩りの邂逅。

果たしてどうなるものかとハラハラ見守っていた神さま達の表情は、てすがだんだんハラハラからドキドキそしてワクワクへと変わっていき、最後には拍手喝采となりました。

二人の出会いと戦いは、神さまですらも予想できない故に先が読めず、ゆえに最高の見世物だったのです。

いや―面白かった。まさかゴブリンがあんなことになるとは。こんなに驚いたのは久々だよ。

笑顔を浮かべ、口々に感想を語り合う神さまたち。

もう白い魔法少女を無理やり取り除こうかと思っている者は誰もいません。それよりも、この二人が紡ぐ物語をもっと観てみたいとみんなが思っていました。

ワクワクしながら、神さまは《偶然》と《宿命》のサイコロを振ります。

 

からからころり。からころり。

 

出目はクリティカルかファンブルか。はたして二人の物語の結末は感動のハッピーエンドかそれとも悲劇のバッドエンドか神さまにもわかりません。

魔法少女狩りと小鬼殺しの冒険(シナリオ)は始まったばかりなのですから。

 




次回予告!

かくしてゴブスレのパーティーに加わったスノーホワイト。
しかしそれこそが波乱の始まりだった!

ゴブスレ「ゴブリンだ」
スノホワ「ゴブリンです」
ゴブスレ「ゴブリンを退治した」
スノホワ「では次のゴブリンを狩りに行きましょう」(最初に戻って延々リピート)
女神官「ゴブリン退治のペースが…はぁはぁ…いつもの二倍に…私…もう駄目ですぅ(ばたんきゅー☆)」
ファル「このハードワーク……昔の納期間近デスマーチを思い出すぽん(死んだ目)」

寝ても覚めてもゴブリンゴブリンしか言わない二人に、女神官とファルの疲労とストレスが早くも天元突破! 

ゴブスレ「ゴブリンは臭いに敏感だ。特に女子供の臭いには」
ザクザク(ゴブリンの死体を剣で〇〇〇する音)
妖精弓手「ちょっとオルクボルグ。いくら何でもこんな純真そうな子にいきなりそれは無理よ。それにこんなこともあろうかと、私がこの子の分の臭い袋もちゃんと用意して――」
スノホワ「なるほど血の臭いで体臭を消すんですね。分かりました」
ひょいっ(〇〇〇したゴブリンの死体を頭の上に持ち上げる音)どばどばー(傷口から滝のように落ちる血と〇〇〇を頭から浴びる音)
妖精弓手「…………( ゚д゚)ポカーン」
スノホワ「もっと浴びた方がいいですか?」
ゴブスレ「いや。充分だ」
スノホワ「ではゴブリンを狩りに行きましょう」
ゴブスレ「ゴブリン共は皆殺しだ」

妖精弓手「オルクボルグが増えた……((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」

適応力高スギィのスノホワに妖精弓手もドン引きィ!
だが彼女の不幸はそれだけではなかった!

妖精弓手「ねえスノーホワイト」
スノホワ「(ギンッ)」
妖精弓手「ひっ!? だから何であんたはいちいち私に殺気を向けてくるのよ!?」
スノホワ「あ、ごめんなさい。別にあなたが憎いわけじゃないんです、ただ……――」
妖精弓手「ただ?」
スノホワ「『緑で貧乳のエルフ』とか生理的に狩りたくて仕方がないんです」
妖精弓手「何でよ!? Σ(lliд゚ノ)ノ」

一方で芽生える種を超えた友情!

ファル「お互いパートナーには苦労するぽんね……」
女神官「分かってくれますかファルさん……っ」

やめて!ゴブリンのライフはもうゼロよ!

ゴブリン「ゴブリンの巣穴に火を放つ」
妖精弓手「だからそういうのは絶対に駄目だって言ってるでしょ!」
スノホワ「そうです。それはやめましょう」
妖精弓手「あんた……。オルクボルグ2号とか思ってたけど誤解だったみたいね」
スノホワ「ここは徹底的に山ごと爆破しましょう」
ゴブスレ「それだな」
妖精弓手「もうやだこいつら(泣)」

死なないでゴブリン!! あと貧乳エルフも!!

『魔法ゴブリンスレイヤー育成計画』
次回『ゴブリン死す!』

お楽しみに!

うるる「読んでくれてありがと! そんな皆にお知らせがあるよ。――実はこれ、嘘企画なんだよ!エイプリルのジョークでした! エイプリルフールはみんながうるるを騙してくるから今度はうるるがみんなを騙してやるんだ。やったね大成功!」
宇宙美「うるるちゃん。エイプリルフールはもうとっくに過ぎてるよ」
うるる「……え?」
宇宙美「いやだからエイプリルフールは何日も前に過ぎたって」
うるる「嘘!? だってこの前エイプリルフールだと思って嘘つこうとしたらプク様が『今日はまだエイプリルフールじゃないよ。エイプリルフールはあと〇日後だよ』って言ってたもん!」
宇宙美「あーたぶんそれこそがエイプリルフールの嘘だったんだろうね」
うるる「じゃじゃあ今日は……っ」
宇宙美「エイプリルフールじゃなくてごく普通の日」
うるる「ウゾダドンドコドーン!?」
宇宙美「いやショックのあまり言語機能がオンドゥルになっても事実は変わらないから」
うるる「じゃ、じゃあうるるがしたことって……((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
宇宙美「嘘が許されるのはエイプリルフールだけだから、その日以外で嘘を吐くのはもう正しい魔法少女としてアウトだね。魔法少女狩り案件だね。あっ、噂をすれば……」
魔法少女狩り「悪い魔法少女はいねがー。食ーべちゃーうぞー」
うるる「修羅雪姫キターーーーー!?」
ゴブスレ「ゴブリンか? なら殺す」
うるる「なんか変なのもキターーーー!? うわーん嘘ついてごめんなさーい!」

うるる「エイプリルフールはもうこりごりだよ~o(T□T)o」チャンチャン♪


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