Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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第五十二話

休み明け初日、12月3日クーデターまで2日

 

突如、大型の低気圧が発生し外は雪が降っていた。格納庫内や滑走路では整備員が忙しく動いていた。現在、発令されている警戒態勢は一部の者にしか伝えられていない為、殆どの者が訓練だと思い動いている。

そんな中、1人の男が宿舎から隊の部屋へと走っていた。

 

伊藤「寒い!なんでこんなに寒いんだよ」

 

「雪が降ってますからね」

 

伊藤「雪⁉︎積もったら最悪だぞ」

 

「外見てないんですか?とんでもない大雪ですよ」

 

カーテンを開けると一面、冬景色だった。

伊藤は口を開けたまま呆然としていた。

 

「おかげで監視の方にも遅れが出ています。幸い何も起こってませんが」

 

「除雪の方は第1滑走路を中心にやっています。その他はいつ手がつけられるかわかりません」

 

伊藤「デルタの第6は?」

 

「もう、数分後に到着予定です」

 

「上丘大尉から連絡が来てましたよ。横浜基地に来て欲しいそうです」

 

伊藤「車で行くか」

 

「ありませんよ。みんな除雪で使われてますから」

 

伊藤「え⁉︎」

 

「行くとしたら自分の機体だけです」

 

伊藤「何かあったら連絡頼む。少し行ってくる」

 

伊藤は電話を取り、整備員に暖機をするように伝えた。

伊藤はノーマルスーツに着替え機体に乗った。管制塔から滑走路はまだ使用出来ないとのことだったためガウォーク形態でゆっくりと飛んだ。横浜基地まで距離も近いため今までは数分で着いていたが大雪のせいで視界が殆どなかった。そのため、レーダーなどに気を配り最新の注意を払いながら飛行した。

十数分後、横浜基地の防空圏に入ろうとしていたため管制塔に連絡をとった。

 

伊藤「こちら統合軍所属伊藤少佐です。滑走路までの誘導を頼みたい」

 

「こちら管制塔、現在滑走路は使用不能のため北東方向より進入し1番格納庫前に着陸して下さい」

 

伊藤「了解した」

 

1番格納庫に近づくとブレイド隊の機体が並んでいた。模擬戦をして来たのだろう機体の各所に傷が着いていた。格納庫の前に機体を止め、機体から降り格納庫に入るとA-01部隊の姿も見えた。

 

上丘「この天気の中、呼んで申し訳ないです」

 

伊藤「本当だよ。この天気の中、何やってるんだ?」

 

伊隅「副司令から新しいOSを機体に積んでもらったので慣れる為に模擬戦をやってるんです」

 

伊藤「新しいOS?どんなの?」

 

上丘「一度、やってみればわかります。今のところ1回も勝っていません。いいとこ引き分けです」

 

伊藤「それだけ性能がいいのか?」

 

上丘「敵機が全て、黒鉄中佐だと思ってもらうとわかりやすいですかね」

 

伊藤「それはやばいな。俺とも模擬戦やってくれないか?」

 

伊隅「いいですよ」

 

伊藤は準備に入った。

模擬戦や演習用に使われるJIVESを開き、横浜基地にリンクさせた。兵装などのデータを送信し出撃態勢に入った。ミサイル系の兵装にはロックを掛けた。間違って発射してしまったら大変なことになるからだ。

戦力差は6対1、新型のOSの力を確かめるため敢えて戦力に差をつけた。相手が黒鉄とほぼ同じならファイター形態のデュランダルにも攻撃を当ててくるはずだからだ。

 

伊藤「先に向かってます」

 

 

 

演習場区域

 

伊藤はスタート地点にてバトロイド形態で待機していた。レーダーを見ている限り何も変わったことはないように見えた。スタートの合図がなり伊藤は上空に飛んだ。囮だと思われる機に向かって飛んだ。照準を合わせ引き金を引いた。いつもなら当たるはずが今回は当たらなかった。直前で回避を行なったのだ。

 

伊藤は息を呑んだ。OSを変えただけでこんなにも変わるものなのかと。

今更だが伊藤は気付いた。

この世界に来て初めて戦術機に乗った時のあの操作性の悪さを。そして、乗ってすぐにOSを書き換えたことに。

考えながら戦闘をしていると突如、背中に悪寒が走った。ロックオンアラームがなり緊急回避のためファイター形態からガウォーク形態になり急減速をかけた。それでもアラームが消えなかった気付くと周りを囲まれていた。全ての銃口が伊藤へと向けられていた。

 

伊藤は負けを確信した。

 

 

 

模擬戦後

 

デュランダルには多数のペイント弾が付着していた。伊藤が機体から降りヘルメットを取った。汗をかいていた。いつもなら汗ひとつかかない伊藤が今回だけは違った。そのまま、伊隅のほうに歩いていった。

 

伊隅「少佐、ありがとうございました」

 

伊藤「いや、礼を言うのはこちらの方だ。忘れていたものを思い出せてくれたんだからな。あれだけ命のやり取りをして来たのに油断する自分が情けないです」

 

伊隅「少佐はBETAの前に人と戦って来たのですか?」

 

伊藤「そうだ。と言っても今は詳しくは話せないんだ。一つお願いがあるんだがいいだろうか?」

 

伊隅「何でしょうか?」

 

伊藤「ここの副司令と話しがしたい。できるだけ早く」

 

伊隅「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本某所

 

ランサー隊は機体の中で待機していた。全員がフル装備のまま待機していた。

 

 


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