Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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12・5事件
第五十一話


黒鉄は基地に入り、全電源を入れ出撃用のゲートを開けた。伊藤のデュランダルがガウォーク形態でゆっくりと入ってきた。黒鉄は伊藤ともに基地内の見回りをした。特に壊れている所も無かった。

 

黒鉄「何も無しだな」

 

伊藤「そうだな。設備も通常通り動いているようだしな」

 

上総「んで、何しにここに来たの?」

 

黒鉄「書類の破棄と今後の事についてだ。今後の事に関しては後で話すとして先に書類を焼却してしまおう」

 

黒鉄はそう言い部屋に入った。その部屋にあったのは武器の設計図や性能値を表した書類だった。殆どが試作もされていないものばかりだった。

 

黒鉄「伊藤、ドラム缶上までもってくから手伝ってくれ。上総、そこの薪持ってきて後書類も」

 

伊藤「おう」

 

上総「わかったわ」

 

外はすっかり暗くなっており、上を見ると星空が広がっていた。黒鉄が伊藤は息を切らしながら地上に出た。ドラム缶に薪を入れ火を付け、その中に書類も入れた。

 

上総「何故燃やしてしまうの?戦いもこれからだと言うのに」

 

黒鉄「無駄な戦闘を避ける為だ。この中には絶大な攻撃力を持つ兵器もある。新たな兵器は新たな戦争を生む、それなら今のうちに焼却してしまおうと思ってな」

 

伊藤「前にいた世界でも似たよう事があってな。大勢の人が死んだよ」

 

黒鉄「伊藤、後で報告を頼む」

 

伊藤「わかった」

 

上総「報告て?」

 

伊藤「ちょっとな。黒鉄、上総にも教えて大丈夫なのか?」

 

黒鉄「信頼できるやつならいいよ」

 

黒鉄は基地に入っていった。伊藤と上総は火が消えたのを確認したのち基地に入った。中では黒鉄が何かを準備していた。それは大きな机で中央部にはモニターが埋め込まれていた。

 

黒鉄「もう少し待っててくれ、もう15分くらいで唯依たちも来るから」

 

 

数十分前

 

黒鉄は唯依に電話をし基地まで来るように伝えた。秘密裏にではあるが今後の事を左右する重要な案件があったからだ。

唯依とユウヤは連絡をもらった後、歩いて基地まで向かっていた。ユウヤは何か考え事をしていた。数日前、黒鉄と格納庫で話した事についてだった。

 

ユウヤがデルタ大隊第1部隊格納庫に入るとユウヤが乗ってきた心神の前に黒鉄が立っていた。

 

ユウヤ「黒鉄、話ってなんだ?」

 

黒鉄「どうだった実戦での初めての対人戦闘は?」

 

ユウヤ「どうだったて?」

 

黒鉄「思い通りに動かせたか?」

 

ユウヤ「覚えてないんだ。気づいたら敵は撤退しててあんたらの仲間が来ていたんだ」

 

黒鉄「理由を教えようか。前に伊藤からも聞いたと思うが心神は俺が搭乗しているガンダムデルタカイが元になって設計されている。その為、従来の戦術機よりも性能が格段に上がっており対人、対BETA戦も有利に進める事が出来る……一般機の場合の話だがな。

ユウヤ、お前が乗っているその機体はオリジナルの心神だ。性能は一般機の倍、理由はガンダムデルタカイが使用不能になった場合に備えて俺が搭乗する予定だった機体だからだ。システム的には一緒だが一部手が加えてある。俺がユーコンで伊藤を止める際に使ったシステムを覚えているだろう?」

 

ユウヤ「ああ、覚えている。確か"n_i_t_r_o"だったか?」

 

黒鉄「そうだ。その簡易版があの機体に積まれている」

 

ユウヤ「な⁉︎」

 

黒鉄「大丈夫だ。使い過ぎてもリミッターが付いているから脳に影響が出ることはない。ただ、ある特定のことをするとリミッターが外れことがある。それは人の"感情"だ」

 

ユウヤ「感情?」

 

黒鉄「こちらの部隊が到着するまで何を考えながら戦った?」

 

ユウヤ「戦闘中に考える時間なんてない。殺すか殺されないかの瀬戸際だぞ」

 

黒鉄「いや、考えてた筈だ。何故、亡命先を日本に選んだ。直ぐ隣のソ連に亡命するていう手段もあった筈だ」

 

ユウヤ「それは心神を中尉に返すためにいや……………唯依に会いたいと思ったからだ」

 

黒鉄「その思いが一時的にリミッターを外し、お前に力を与えたんだ。だから戦闘中の様子を何も覚えていない」

 

ユウヤ「ならもう乗らない方がいいのか?」

 

黒鉄「それを決めるのはお前だ。この機体は既にお前のだ」

 

ユウヤは少し考えていた。リスクを背負いこの機体に乗り戦うかそれとも別の機体に乗るかだ。だがユウヤの答え既に決まっていたようだった。

 

ユウヤ「この機体に乗るよ。せっかくここまで唯依と作りあげたんだ」

 

黒鉄「わかった。ユウヤ・ブリッジス少尉、一時的にではあるが日本帝国陸海空統合軍基地直轄警備隊への入隊を命ずる。まあ、正式な通知が来るまでこちらでお前の身柄は預かる」

 

ユウヤ「正式というと何処から?」

 

黒鉄「斯衛軍からだ。俺と伊藤、基地司令の連名で推薦状を出した。返答が来るのは数日かかるがな」

 

ふと、ユウヤは唯依から呼ばれ我にかえる。

 

唯依「ユウヤこっちだ」

 

ユウヤ「ああ、すまない。中尉」

 

唯依「ユウヤ、今はプライベートなんだから階級で呼ぶな」

 

ユウヤ「じゃあ、どう呼べば?」

 

唯依「普通に名前で………」

 

ユウヤ「すまない、唯依。もうどのくらいなんだ?」

 

唯依「ここら辺の筈なんだが」

 

地面が割れ、通路が現れ上総が出て来た。上総と唯依は慣れたように入って行くがユウヤは恐る恐る入っていった。3人が入っていくと通路が閉まり元の地面に戻った。

通路を進むと黒鉄と伊藤が話をしていた。伊藤は、唯依たちに気づきこちらに来るように伝えた。

 

黒鉄「呼んだのはこれから起こる事についてだ。その前にユウヤ、正式な配属先が決まったぞ。配属先は日本帝国斯衛軍調布基地白い牙(ホワイト・ファングス)中隊だ。入隊日は…………」

 

唯依「それ、私の隊じゃない!」

 

黒鉄「詳細は、部隊長から聞いてくれ。伊藤、報告を頼む」

 

伊藤「諜報班からの報告だ。帝国軍内で不穏な動きありだそうだ。今も内偵中だが情報が入ってない」

 

黒鉄「帝国情報省のからも情報が入っている。今後、1週間以内にクーデターが起こると」

 

唯依「クーデター⁉︎誰が⁉︎」

 

黒鉄「わからない。その日になってみないとな、ただ何もしない訳にはいかない。基地司令との話し合いで本日1400時から全部隊の指揮権が自分に委譲された。

アルファ大隊第1部隊は基地内で待機、ナイトメア第1、第2、第3は、装甲空母"翔鶴""瑞鶴"に着艦し他の艦艇とともに訓練として東京湾近海に展開、第4はスクランブル待機。

ブラボー大隊全隊は基地待機。

デルタ大隊第1部隊、国連横浜基地にて教導を続行。他の部隊に関しては待機、ただし第2部隊、第5部隊は直ぐに降下できるよう即応態勢で待機。第6部隊、十数機は一時的に基地直轄警備隊の指揮下へ。

我が特殊作戦部隊は、帝国情報省の要請により休み明けより任務に入る。詳細については機密事項のため公開出来ない。そのため、一時的に指揮が出来なくなるため自分が戻るまで指揮権を伊藤に委譲する。なお、ブラボー大隊には何も通達するな。いつも通りの業務を行ってもらう」

 

伊藤「了解」

 

上総「今の帝国軍の軍備はどのくらい?」

 

黒鉄「本土防衛軍帝都守備隊、富士教導隊に関しては心神が配備されている。その他の部隊は不知火や撃震だ」

 

伊藤「なんで、ブラボー大隊は待機なんだ?」

 

黒鉄「あの隊の人員の殆どが帝国軍出身だ。もしクーデターの奴らがいたら直ぐに制圧できる」

 

伊藤「そうだな」

 

 

 

 

この日から統合軍の長い戦いが始まる

 


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