Muv-Luv〜wing of white steel〜 作:lancer008
4人が乗っていたプライベートジェットは、京都上空に差し掛かりもう数分で着陸するところだった。
現在の首都は東京である。理由はBETA侵攻に伴う本土防衛戦の際、京都市内での市街地戦が激化しほとんど何もない状態になったからである。その後も度重なる侵攻で、東京、仙台と首都を移したが明星作戦でのハイヴ破壊により本州を奪還し防衛戦が押し上げられたため、現在の首都になっている。現在は、完全に日本列島をBETAより奪還し各地で復興が行われている。
現在の京都は、歴史的建造物を除いてその殆どが元通りになっている。避難していた人々も少しずつではあるが戻って来ている。
ジェット機は基地に降りたった。
この基地は、本土防衛戦時に集積場や戦闘で使われたため深く爪痕が残っているところもあるがある程度は修復を終えていた。戦力としては本土防衛軍と斯衛軍が各3個小隊程駐留している。他の基地と比べて戦力は小さいものの衛士一人一人がベテランである為、技術力としては他のパイロットに引けを取らない。
全員が機から降り、黒鉄が事前に頼んでおいた車に乗り各々の目的地へ向かう事にした。唯依とユウヤは途中、少し歩いて行くといい車から降りた。車には黒鉄と上総が乗っていた。
黒鉄side
黒鉄「どうする?家の方まで行くか?」
上総「そうするわ」
黒鉄「いくら昔の街並みと同じように復興されたとはいえ、何か違和感があるよな」
上総「そうね」
黒鉄「どうした疲れたか?」
上総「黒鉄の用事を済ませてもいいわよ。もう待っている人はいないから」
上総の親族は、本土防衛戦時に戦闘中や戦闘に巻き込まれ死亡していた。
黒鉄「それでも行くよ。線香ぐらいは上げて行かないとな」
黒鉄にも罪悪感がある。理由は機体の調整で戦闘に遅れたことだ。"自分がもっと速く戦闘に参加出来ていれば"や"機体・兵装データをもっと速く渡すことができたら"と。黒鉄と伊藤の力があれば京都市街での戦闘は起きず防衛戦を押し上げることも可能だった。それを出来なかったことを今も悔いている。
目的地に着き、家があった場所に線香を立て途中にあった花屋で買った、花束を置いた。黒鉄は合掌をし終え隣にいた上総を見ると涙を浮かべ合掌し続けていた。黒鉄はそれを見守り続けた。
唯依side
黒鉄達と別れ、ユウヤと共に懐かしい街を歩いていた。やはり防衛戦前よりも人の通りが少なくなっていた。よく見かけるのは京都市民では無く、軍人の方が多かった。
唯依はまず、自分がいた斯衛士官学校跡地へと向かった。毎日歩いて通ったので何年経とうが道は覚えていたが、身に覚えのない道が出て来たり、橋があるところが無かったりと迷ったりしながらも目的地に着いた。
唯依「ここが私と上総がいた斯衛士官学校があった土地や。今は何も無いけど、戦術機の格納庫があったりしたから普通の基地と同じくらい大きかったわ」
ユウヤ「へぇ〜」
見るからに大きな土地だった。真っさらな状態であるが、その大きさはとてつもなく大きかった。
話ながら唯依の実家へと向かった。唯依の親族は生きていた。避難が何とか間に合い東京の方へと避難していたのだ。
唯依は、昔話をしながら歩いていると実家へ着いた。ユウヤは少し驚いていた。普通の一件屋を想像していたのだが、昔からの和風建築で周囲を壁で囲まれ大きな庭があったのだ。すると玄関から唯依の母親と家政婦数名が出て来た。唯依が少し手前で止まり、
唯依「日本帝国斯衛軍調布基地白い牙(ホワイトファングス)中隊隊長篁 唯依中尉、只今戻りました」
母「お帰りなさい。それで後ろの方は?」
ユウヤ「日本帝国陸海空統合軍基地直轄警備隊所属ユウヤ・ブリッジス少尉です」
母「ようこそ、篁家においでになりました。ここで話もあれなんで上がって下さい」
唯依とユウヤは、家に入った。
黒鉄side
黒鉄は最初に住んでいた家に向かって車を走らせていた。隣には上総が乗っていたが寝ているようだった。目的地に近づくと家が建っていた場所は跡形もなく消えていた。車を降り、基地の入口を探していると上空からデュランダルが降りてきた。
伊藤「綺麗に無くなってるな」
黒鉄「どこか入れる場所ないかな」
伊藤「確かこういう時の為に非常用の搬入口を作っておいたんだがこの辺に作った気がしたんだが」
伊藤は、茂みの中に入っていった。すると地面が割れ、地下通路が現れた。
伊藤「黒鉄、中に入って出撃用のゲート開けてくれ」
黒鉄「わかった」
黒鉄は地下通路に入っていった。