Muv-Luv〜wing of white steel〜 作:lancer008
伊藤を含めたブレイド隊は、各自の機体に登場した後、01式MS輸送機に乗り、新潟県沿岸部に急行した。デルタ大隊の機体は第4部隊を除いてSFSが搭載されていないため重力下では主に01式MS輸送機に機体を乗せ出撃している。現行の戦術機よりも移動速度が遅いため連携が取りにくいという問題もある。
伊藤達は、イージス隊の誘導を受けながら急行していた。伊藤は、ふとレーダーを見ると後方から近づいてくる部隊がいた。その部隊は伊藤達の横に並び飛行した。
伊隅「伊藤少佐、そちらに何か情報は入ってませんか?」
伊藤「伊隅大尉か。今のところは何もない」
横に並んでいた機体は、出撃前まで教導を行なっていた伊隅ヴァルキリーズだった。少し会話をしていると監視を行なっているイージス隊より連絡が入った。
伊藤「こちらセイバーなんだ?」
「KIAが2名でました」
伊藤「わかった。他に情報は?」
「帝国軍は、既に配置が完了し迎撃態勢に入っています。ナイトメア第1隊は対潜攻撃後、帝国軍とともに迎撃態勢をとります。BETAの進軍速度は以前変わらず数十分後には新潟県沿岸部に上陸します」
伊藤「俺達が到着する頃には戦闘が開始されているか。了解した。また情報が入り次第、頼む」
「了解」
通信を切るとブレイド1が話しかけてきた。
「初の戦死者ですね」
伊藤「そうだな。(また部下を失ってしまった)だが悲しんでいる暇はない。今はBETAを殲滅することだけを考えろ。俺たちの後ろには何千万という人々がいるんだ。それを忘れるな」
「「「了解」」」
伊藤「伊隅大尉、先に行ってくれ。貴女達の方が俺達よりは早い筈だ。頼む」
伊隅「わかりました。ヴァルキリーズ行くぞ!」
「「「「了解」」」」
ヴァルキリーズは、増速し防衛地点へと急行した。
防衛地点ではBETAが上陸し、帝国軍やナイトメア隊が攻撃を行なっていた。やはり、ナイトメア隊にも練度不足が見られ帝国軍よりも命中率が下回っていた。
旧ナイトメア第2分隊は、味方の弾幕から抜けてきた突撃級や要撃級の対処に追われていた。多数のマイクロミサイルを発射しても突撃級の前では足止め程度にならず、メインウェポンのガンポットでの撃破を余儀なくされていた。戦術機が携行している突撃砲よりも連射力が高いため次々と弾切れを起こしはじめていた。
「ナイトメア111より各機へ、弾の消費が予想よりも高いぞ。連射は控えろ。弾切れを起こしたらこの機体ではBETAに太刀打ち出来ないぞ(援軍はまだか)」
1機の帝国軍機が、要撃級に撃破されそうになった時、突然要撃級に無数の穴が開き絶命した。なんだと思いレーダーを見ると国連軍機が近づいてきていた。戦場にいる全ての機体に通信が入り、
伊隅「こちら国連軍横浜基地所属A-01部隊これより攻撃を開始する」
戦っていた衛士から歓喜の声が上がっていた。それはナイトメア隊からもだった。ヴァルキリーズは攻撃を開始し、驚くべき速度でBETAを殲滅していった。
数十分後、あらかた殲滅し掃討に移ろうとした時、再びイージス隊から戦場にいる機体に向けて通信が入った。
「こちらイージス3より、戦場にいる全ての機体に通達する。新たなBETA群を確認、数は先程の倍だ。数分後には上陸するぞ。戦闘態勢を整え………」
声が途切れたと同時にレーザー照射が見え遠くの空に火の玉ができ、地表に向け落ちていった。戦場にいる全員が理解し絶望した。元々、佐渡まで距離が短く航空支援が受けられなかったものの超高高度からのデータリンク通信があったため他の戦術機との連携が取り易く戦いやすかったが今の攻撃を受け、一部のデータリンクが消えたことにより連携に穴が開いてしまったのだ。
するとそこを突くかのようにBETAが出現した。近くにいた機体は反応が遅れ数機が喰われた。
戦場は混乱を極めた。帝国軍は先程の攻撃で指揮官が喰われたのか足並みがバラバラだった。ナイトメア隊も古参だったイージス隊が落とされたことに驚きパニック状態に陥った者もいたが唯一、伊隅ヴァルキリーズは戦闘を継続していた。
伊隅「ヴァルキリーズ、帝国軍と統合軍を援護しろ。1匹も逃すな」
「「「「了解」」」」
水際でBETAを抑えているがいっこうに数が減らなかった。弾薬の消費が激しく、補給を要請しても光線級によって撃ち落とされてしまっていた。
戦闘中に本部から撤退命令が入り、国連軍は殿となり帝国軍と統合軍の撤退を援護せよというものだった。
伊隅「速瀬、前に出て少しでもBETAを抑えろ。宗像、速瀬の援護を」
「「了解」」
帝国軍と統合軍が撤退を完了しても、A-01部隊には撤退命令が出なかった。
伊隅「ヴァルキリー1よりヴァルキリー0へ、撤退はまだか。このままでは保たない」
「もうすぐ援軍が到着します。援軍が到着後撤退を開始して下さい」
全員に疲れが出始めていた。特に前衛で戦っていた速瀬中尉率いるB小隊の損耗が激しく、BETAを抑えきれなくなっていた。
すると速瀬中尉の真後ろで新たなBETA群が出現し、後ろから襲いかかった。後衛で射撃を担当していた宗像も気づくのが遅れ、間に合わないと思った時、一筋の光がBETAに命中し、BETAが吹き飛んだ。今度は、数十本にもわたる光線がBETAに向かっていき一瞬にして殲滅した。
飛んできた方向を見ると4機の機体が弓のようなものを構えていた。弓のようなものを後ろに背負うと勢いよくBETAの中に突っ込んでいった。
地表に着地する直前、今度は弓だったものが両手持ちの大型大剣に変わり、横に振りかぶり回りにいたBETAを一掃した。
伊藤「伊隅大尉、ここは俺達が受け持つ。貴女達は撤退しろ」
伊隅「ですが、たった数機では」
伊藤「大丈夫だ。俺たちはそういうのを想定して作られた部隊だ」
伊隅「わかりました。ヴァルキリーズ、撤退するぞ」
「「「「了解」」」」
伊隅達は、撤退していった。
伊藤「よし、これで思う存分戦えるぞ。全機、兵器使用自由。リミッターの解放も許可する。全機、BETAを殲滅せよ」
「「「了解」」」