Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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第三十九話

黒鉄はベットに横になり、点滴を受けていた。医師からは絶対安静と言われ一歩も動けない状況だった。

黒鉄は唯依に頼み、自室にあるパソコンを持ってきてもらい先日の戦闘データを見ていた。月面上には光線種はいなかった筈だが各機体の損傷率が予想されていた基準値よりも大幅に超えていた。特に基準値を大幅に超えていた隊は、第1降下部隊だった。多数の弾幕でBETAを近づけさせないよう設計された射撃型が担う部隊だったが殆どの者が初陣だったため、緊張や焦りから無駄弾が多かったのだ。射撃データを見ている限り発射された弾丸の内、半分程しか命中出来ていなかった。

 

黒鉄「(やはり、初陣ともなると射撃精度が乱れるか。一応、近接用の武器も装備しといた方がいいかもな)」

 

考えているとノックの音が聞こえ、返事をすると唯依が入ってきた。

 

唯依「伊藤たち、明日には戻るって」

 

黒鉄「そうか」

 

唯依「あら、あんまり嬉しくなさそうだけど」

 

黒鉄「うれしいけどよ。今回の戦闘データ見たか?」

 

唯依「いいえ」

 

黒鉄は唯依にパソコンを渡し、戦闘データを見せた。

 

黒鉄「新種の大型BETAも倒し反応炉も破壊し、月を奪還したはいいが、今回は光線種がいなかったことが幸いしただけで、もし光線種がいた場合、最悪、部隊は壊滅してた。最初の降下で3分の2がやられ、第2降下部隊は全滅し、唯一生き残るのは、アルファ大隊とデルタ大隊くらいだよ」

 

唯依は、パソコンにあるデータと黒鉄の言葉に絶句していた。

 

黒鉄「原因は何だと思う?」

 

唯依「降下時の動きが単調すぎること?」

 

黒鉄「そうだ。普通は、回避行動を取りながら下降するがただ真っ直ぐにしか降りていない。これでは大きな的だよ」

 

唯依「黒鉄、話は変わるけど明日の午後にアルゴス試験小隊が国連軍横浜基地に到着するわ」

 

黒鉄「こっちで試験をするのか?」

 

唯依「ええ」

 

黒鉄「だいぶ、嬉しそうに見えるな」

 

唯依「え⁉︎」

 

黒鉄「いつまでもデスクワークで引きこもってないでユウヤとデートにでも行ってこい」

 

唯依「な!黒鉄こそ、さっさとリハビリして上総とデートにでも行って来たら」

 

黒鉄「リハビリは明日から、まあ1週間もあれば元通りになると思うが」

 

この後も数十分程、会話をしていた。唯依はまだ、試験に向けての手続きが残っているということで帰っていった。

 

黒鉄は外を眺めながら考えごとをしていた。

 

 

 

 

 

アクロススカイ艦内、地球に向かっているものの先日の反省会でほとんどの者が潰れていた。全員がハメを外し過ぎ飲みまくった結果、艦内には空瓶が溢れていた。

伊藤も何とか、立ち上がり戦闘の報告書を書いていた。昨日、まりもを潰すために一緒になって度数の高い酒をとんでもないペースで飲んだところ、それ以降の記憶がなくなっていた。

飲み過ぎたから休みますとも言えず、具合が悪い中、書類とにらめっこをしていた。

艦内では、回復した者から地球へ降りるための準備を行なっていた。機体に関してはデルタ大隊以外の機体は、艦とともに地球におり、その他の機体については降下ポットで降ろすことが決まった。アクロススカイに関しては補給や整備をしなければいけないため統合軍基地に隣接された専用のドックへと入ることになった。

 

伊藤「これから降下だというのに酒が抜ける気配がないな。報告書も山のようにあるし、作戦時にいきなり反応弾は出てくる。艦長もあるなら話してくれればよかったのに」

 

元々、数十枚ほどでよかった報告書も反応弾が使用されたためその数が倍になったのだ。伊藤は、そろそろ降りる時間だと思い艦橋に向かった。

 

艦橋に着くと降下準備が終わったらしく伊藤の指示を待っていた。

 

艦長「降下準備終わりました」

 

伊藤「ではそちらのタイミングでいつでも」

 

艦長「わかりました。これより地球に降下する。全員指定の場所にて待機せよ」

 

伊藤はふと、カレンダーを見た。

 

伊藤「もう11月か、年をとると時間が経つのは早いな」

 

艦長「何行ってるんですか。まだ20代でしょうが」

 

伊藤「そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、地球

統合軍所属アルファ大隊第3部隊イージス隊

 

「こちらイージス3からHQへ、佐渡ヶ島のBETA群の動きが活発化しだした。近く攻撃があるもよう。警戒されたし」


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