Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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第三十六話

月の地表は、真っ赤になっていた。

BETAの構成は殆どが戦車級だった。突撃級や要撃級、要塞級は、ちらほら見えるくらいだった。

 

アクロススカイは、戦闘態勢に入っていた。甲板上にあった機体は順次発進し甲板に残ったのはモンスター隊のケーニッヒ4機だった。

 

「マクロスキャノン並びに連装ビーム砲、エネルギーチャージ完了」

 

「全デストロイド部隊攻撃準備完了」

 

「モンスター隊、配置、攻撃準備完了」

 

艦長「連装ビーム砲の射程距離内に入りしだい攻撃を開始する。他の部隊はどうか?」

 

「全部隊配置完了しました」

 

艦長「わかった」

 

艦はゆっくりと月に近づいた。月にある大穴からは戦車級が湧き出していた。

連装ビーム砲の射程内に入った。

 

艦長「撃ち方、始め!」

 

マクロスキャノンと艦首側の連装ビーム砲が同時に火を吹いた。続けてデストロイドのマイクロミサイル、ケーニッヒの4連装レールガンと対地対艦重ミサイルも火を吹いた。降下地点にいたBETA群は消滅し月の地表に大きなクレーターができていた。

 

「第1降下部隊、降下開始して下さい」

 

第1降下部隊は、ブラボー大隊第2部隊とデルタ大隊第3部隊である。降下部隊をまとめるのは第3部隊のアームズ1である。

 

「アームズ1から全機へ攻撃開始!撃ちまくれ!」

 

「「「「了解」」」」

 

出撃する直前に装備されたビームガトリングで攻撃を行なった。着弾するとみるみるBETAが溶けていった。弾切れになった機からビームガトリングをパージし元々のメイン兵装に切り替えた。

先に降りたのは第2部隊のスピア隊だった。

 

「こちらスピア1からデルタへ、降下地点確保、繰り返す降下地点確保」

 

「こちらデルタ了解」

 

※デルタはアクロススカイのこと

 

次々と降下地点に到達し、円になるように陣形を組み攻撃を開始した。突撃級のような硬い殻に覆われたBETAではなく実弾が数発でも命中すれば絶命してしまう貧弱なBETAであるが1体の殲滅なら何にも問題はないがその数が倍にも膨れ上がるとその殲滅も容易ではなくなる。1体でも機体にまとわりつくつくと次々とまとわりつき喰われてしまうからだ。

第1降下部隊は、弾切れを起こしその隙を突かれぬようカバーしあいながら攻撃を行なった。

 

「アックス1よりアームズ1へ、残弾率40%まで低下」

 

「こちらスピア1、残弾率50%です」

 

「アームズ1からデルタへ、補給を要請する。あとデストロイドによる攻撃支援を要請する」

 

「こちらデルタ了解」

 

降下地点に補給物資が降り始めた。続けて艦下部にいるデストロイド部隊の支援攻撃が開始された。

 

「BETAの増援を確認しました」

 

「これより第2フェーズに移行します。アルファ大隊は攻撃を開始して下さい」

 

伊藤「こちらアルファ大隊、了解。全機マイクロミサイル撃ち方始め!」

 

計44機によるマイクロミサイルが発射され、数千発を超えるマイクロミサイルがBETAに着弾した。

 

伊藤「全機、兵器使用自由、各個に格闘戦に移れ!」

 

「「「「了解」」」」

 

ガウォーク形態になりBETAの殲滅を開始した。

 

上総「パイパー1よりセイバー1へ、花道は用意するから降下部隊の応援に向かいなさい。このままじゃ第1降下部隊は全滅するわよ」

 

伊藤「そんなことわかってる。セイバー1よりデルタへ、すぐに第3フェーズに移行しろ。第1降下部隊が持たないぞ」

 

「こちらデルタ了解しました。第3フェーズへ移行します。第2降下部隊は降下を開始して下さい」

 

「ファング1了解。全機降下!」

 

「ファング1よりファング全機へ、予定を早め俺たちも降りるぞ」

 

「「「「了解」」」」

 

「アームズ1からファング1へ、さっさと来てくれ。もうもたない」

 

第1降下部隊はギリギリの状態で戦っていた。2機1組でカバーしあいながら戦闘を継続していたがその限界を超え始めていた。既に何機かが戦闘不能状態に陥っていた。死者は出なかったものの機体が半壊してるのがほとんどだった。

 

伊藤「アームズ1、9時の方向から向かう当てるなよ」

 

「アームズ1了解。ですが約束は出来ませんよ」

 

伊藤「それでいい。回避はこちらでやる。第2部隊10機つづけ」

 

「「了解」」

 

上総「セイバー隊を援護するわよ。メガビームキャノン撃ち方始め!」

 

デルタ大隊第4部隊が撃ったビームが着弾すると周辺にいた戦車級が一瞬にして蒸発した。続けてツインドッズキャノンによる援護射撃が行われ周囲のBETAはいっそうされた。

 

伊藤「セイバー1から全機へ、降下部隊から距離3000まではミサイルの使用を許可する。それ以降そのほかの兵装で戦え」

 

「了解」

 

降下部隊は補給が間に合わず近接戦をしいられた。近接戦闘を行なっていた1機が電装系をやられ行動不能になったところに戦車級が殺到した。

 

「喰、喰われる!誰か!」

 

機体に飛びかかろうとしていた戦車級が何かに吹き飛ばされた。

 

「こちらファング1、現着した。これより戦闘を開始する」

 

「ウイング隊も同じく」

 

「スカイ隊も」

 

その頃、艦内では、

 

「何してるさっさと準備しろう。けが人も運びこまれてくるぞ」

 

整備員と医務員が慌ただしく走っていた。

 

伊藤「セイバー1現着した。全機ミサイル解禁撃ち方始め。セイバー1からデルタへ、現状はどうなっている?」

 

「各部隊の周辺にいるBETA群は減って来ておりますが、大穴からそれを補うかのように戦車級が湧き出しております」

 

伊藤「セイバー1からデルタへ、第3フェーズを一時中断。モンスター隊並びにマクロスキャノンの一斉射撃で大穴を壊してほしい」

 

「それでは、反応炉の破壊が出来ません」

 

伊藤「壊さなければ数の差で降下部隊は全滅する。地表が片付きしだい俺の隊が突撃する」

 

「わかりました。モンスター隊、大穴への攻撃を開始して下さい」

 

「モンスター1了解。全機、撃ち方始め!」

 

16発もの弾丸が発射され大穴に向かっていった。命中し地表には大きな振動が伝わった。だが少し崩落するだけだった。予想よりも硬く完全に崩れることはなかった。続けざまにレールガンでの砲撃が始まりアクロススカイからもミサイルが発射されたがまだ、崩壊しなかった。

 

「主砲、充電完了しました」

 

艦長「マクロスキャノン撃てえー!」

 

着弾すると大穴が崩壊し、BETAの増援が止まった。地表では残存BETAの殲滅が開始され既に月の裏側を片付け終わったアルファ大隊が降下部隊と合流しBETAの殲滅にあたった。あらかた殲滅し終え、

 

「月地表でのBETAの反応確認できず」

 

艦橋内では一時歓声が沸いた。

 

艦長「伊藤少佐、第3フェーズを再開せよ」

 

伊藤「了解。各機弾薬補給後、反応炉を破壊しに行くぞ」

 

「了解」

 

艦長「負傷者の回収を急がせろ。使えなくなった機体は投棄し破壊しろ。BETAどもに情報を与えるな」

 

戦場にいる全ての部隊からアラームがなった。それはコード991だった。BETAの地中侵攻を伝えるアラームだった。

 

伊藤「セイバー1からデルタへ、どういうことだ⁉︎」

 

「その通りです。大穴付近からです」

 

伊藤「数は⁉︎」

 

「わかりません。見たこともない振動です」

 

伊藤「セイバー1から全部隊へ、戦闘態勢のまま待機しろ(何が来るんだ?)」

 

全員が固唾を飲んで大穴の方向を見ていた。すると崩壊していた岩が飛び砂煙が舞った。出て来たのはワームの形をしたBETAだった。

 

「なんだアレは?」

 

「まだ全容が見えていませんが胴体直径は約180mです」

 

「なんというでかさだ」

 

全ての機体があまりのデカさに目を向け呆然としていた。だが1機だけ即座に動いた機体があった。

 

伊藤「何ぼっけとしている!各部隊長は部隊ごとに戦闘態勢を整えろ。何の攻撃をしてくるかわからないぞ。全員気を引き締めろ」

 

「「「「了解」」」」

 

垂直に立っていた大型のBETAは突如口の部分をこちらに向け倒れて来た。その口が開いた瞬間、そこから数多くのBETAが出現した。中には要塞級までもいた。アクロススカイ艦内は混乱していた。通信回線にひっきりなしに口頭で情報が送られてきているためだ。

 

艦長「セイバー1を呼び出せ」

 

「デルタからセイバー1へ、応答願います」

 

伊藤「こちらセイバー1、なんだ⁉︎」

 

艦長「作戦中止を進言します」

 

伊藤「そのぐらいわかっている。だが降下地点にはまだ第1降下部隊が残っている。こいつらを先に上げない限りこちらは退くことは出来ない。撤退信号を出してくれ。指揮はこちらでやる」

 

艦長「わかった。信号弾撃て!」

 

信号弾が撃たれ即座に第1降下部隊は撤退を開始した。

 

伊藤「第1降下部隊を最優先に撤退させる。殿はセイバー隊、ナイトメア第1隊、ウイング隊、ランサー隊、ブレイド隊、ファング隊、バイパー隊だ。その他の隊は今すぐ撤退を開始、機体が動く隊は他の隊の機体を運んで行け。国連からきている方も同じくだ護衛にナイトメア第2隊をつける」

 

まりも「我々も共に戦います。まだ弾薬もたくさんありますし」

 

伊藤「ですが、ここから先は地獄ですよ」

 

まりも「地獄はとうの昔に見ました」

 

伊藤「わかりました。第2隊、オーダーは無しだ撤退しろ。全員聞け、ここからが正念場だ。ここから先、通せば仲間が死ぬ。自分が盾になってでもBETAを殲滅しろ必ず生きて帰るぞ!」

 

「「「「「了解」」」」」

 

伊藤は、セイバー隊に秘匿回線をつないだ。

 

伊藤「各機、一旦アクロススカイに戻り補給を済ましてこい。装備はアーマードパック、大型のミサイルと荷電粒子ライフルを装備してこい。あのワーム型を倒すぞ」

 

「「「了解」」」

 

今度は艦長に繋げ、

 

伊藤「新種の大型BETA、討伐任務を許可していただきたい」

 

艦長「ダメだ。リスクが多すぎる」

 

伊藤「ここで………」

 

伊藤が話をしていると通信士官が艦長に向けて何かを話た。

 

艦長「伊藤少佐、大型BETA内から高エネルギー反応だ。あいつの体内に反応炉がある」

 

伊藤「なら、ちょうど良いじゃないですか。2つとも倒せれば一石二鳥です」

 

艦長は少し考え、

 

艦長「セイバー隊へ命令する。敵、大型BETA並びに反応炉の破壊を命じる」

 

伊藤「ありがとうございます。艦長。各機、聞いたな一度戻り装備を整えろ。下は俺たちが抑える。セイバー1からデルタへ、支援攻撃を求む」

 

「こちらデルタ了解しました。支援攻撃開始、モンスター隊攻撃を開始してください」

 

「了解」

 

支援攻撃が開始され、地表を埋め尽くしていたBETAは一掃された。だが次から次へとワーム型の口が開き、そこから多数のBETA湧き出ている。アクロススカイに搭載されている連装ビーム砲も攻撃を開始したが、大きなダメージには至っていない。

伊藤は小さな声で、

 

伊藤「黒鉄、おまえならこいつをどうやって倒す」

 


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