Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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第二十七話

基地で起こったテロは、テロリスト達の自害という形で幕を落とした。

 

被害は、軍民合わせて4000人が死んだ。行方不明者は1500人だった。特に商業施設が集中していた地域では被害が多く、復旧は困難を極めた。

 

今回の事件で公になった。"レッドシフト"はアメリカに対し全世界から非難の言葉が寄せられた。独断で行なった高官に対しては軍事裁判にかけられることになった。

 

 

事件から数日後

 

あの戦闘で暴走を起こした伊藤は順調に回復し、何とか話せるとこまでは回復した。心配されていた脳へのダメージは奇跡的に確認されておらず数日中には退院できるそうだった。

だが、黒鉄は戦闘中に受けた怪我により意識不明のままである。原因は血を流し過ぎたことである。極度の血液不足により心停止し脳に酸素がいきわたらず、脳の一部が損傷したからである。いつ目覚めるかはわからない状態である。

 

人員・機体の損害状況

 

ガンダムデルタカイ 中破

 

Ex-Sガンダム 機密保持の為、爆破処理

 

ジェスタ全形態 軽微並びに小破

 

YF-29デュランダル 小破

 

VF-171ナイトメア 国連ユーコン基地派遣部隊全8機 大破

 

ナイトメア隊 8名中6名戦死、2名重体

 

etc………

 

 

この事件により日米との共同開発となっているF-3心神の試験中止命令が日本から来ていた。それに伴い、今回の事件の状況説明と今後の事について、派遣部隊全員に即時帰還命令が出された。試験機体については基地に預ける形となった。

アクロススカイ搭載部隊は、後日投下予定の降下ポットで全機帰投する予定だ。その際、デルタカイも搭載するのとになっている。黒鉄は派遣部隊とともに日本に帰還する。

破壊したEx-S に関しては後日現場に行き、再度残っている残骸の処理をした。それに合わせEx-Sガンダムの全データ消去が行われた。

 

 

 

病室、黒鉄

 

たくさんの機器に囲まれ、人工呼吸器を付けられベットに横たわっていた黒鉄がいた。静かな病室からは心拍数を図る電子音が鳴り響いていた。

 

その横には、椅子に腰をかけている上総がいた。

 

一晩中泣いていたのだろう目が赤くなっていた。

 

あの時、黒鉄を助けに行きその光景を見てしまったからだ。コックピットを開けた時、滴り落ちてくる血を。その本流は黒鉄のノーマルスーツに刺さっていた1つの破片だった。伊藤を助け出す為に攻撃を受けた事が原因だろう。コックピットの一部が深くえぐられていた。

 

誰もが助からないと思っていたが、強運の持ち主なのかなんとか命を取り止めたが、代償は大きかった。

 

 

病室、伊藤

 

伊藤は、今までの状況を唯依から教えて貰っていた。部隊の状況、これからのこと、そしてあの戦闘で何が起こったのか。

 

ナイトメア隊に関しては、壊滅状態。2名は助かったが機体は大破、事実上ユーコン基地派遣部隊兼第1分隊は壊滅。部隊への人員、機体補充は未定。

そして、日本からは即時帰還命令が出されたていること。

 

伊藤「今回の状況説明か?」

 

唯依「まあ、そんなところよ。今回の事件で心神の開発中止命令が出されるかもしれないわ」

 

伊藤「反対派にとってはいい材料だからな。そろそろ本題に入ってくれないか。俺の機体のことや、黒鉄のことも」

 

唯依「貴方の機体は爆破処理された。もうこれ以上暴走させない為だと。そしてあの悪魔の機体を表に出さないためにと」

 

伊藤「黒鉄が破壊したのか?」

 

唯依「ええ」

 

伊藤「黒鉄はどうなった?」

 

唯依「黒鉄は現在、意識不明のままよ。伊藤を助けるために攻撃を受けたことが原因よ」

 

伊藤「そうか。すまんが車椅子を持って来てくれ、あいつのところへ行く」

 

唯依「ちょっ⁉︎その身体で」

 

伊藤「大丈夫だ。あいつが受けた傷に比べるれば軽いものだ」

 

伊藤は、黒鉄の病室へと向かった。

 

唯依「部隊、残念だったわね」

 

伊藤「俺がこの世界に来て、2回目か。いや今まで渡り歩いてきた世界で3回目か。なあ唯依、俺は死神なのかな、必ず部隊が全滅しても俺だけが生き残る」

 

唯依「でも今回は………」

 

命を取り止めた2名も怪我による後遺症が残り部隊への復帰は不可能だった。

 

黒鉄の病室に着き、ノックをし入室した。中に入ると上総が椅子に座っていた。

車椅子を走らせ、上総の横に停車した。

 

伊藤「上総、すまない。あの時、乗っ取られさえしなければこんなことにはならなかったんだが」

 

上総が勢いよく立ち、伊藤の胸ぐらを掴み上げた。

 

上総「そうよ。なんであの時、乗っ取られたのよ。なんで毎回、毎回、黒鉄だけがこんな目に合わなければいけないのよ」

 

伊藤「すまない」

 

上総の目から大粒の涙が出てきた。病室に泣き声が響いた。

 

伊藤は、病室を後にした。

 

伊藤「唯依、ここまででいいぞ。まだやらなければ行けないことがあるだろう」

 

唯依「ええ、ありがとう。明日には、日本に出発するから準備しておきなさいよ」

 

伊藤「わかった」

 

唯依は、自分の部屋へと向かった。

 

 

 

翌日

 

空から次々と降下ポットが降りてきていた。それにブースターをつけた後、ジェスタが乗り込み準備が完了したポットから離陸していった。

滑走路には戦術機用の輸送機が停車し積み込みを開始していた。そこにデルタカイも積み込まれていた。

 

伊藤は、今までお世話になっていたところへの挨拶回りをしていたところ、ちょうどユウヤと会った。

 

伊藤「すまんな。こんな半端なことになってしまって」

 

ユウヤ「どうせすぐ帰って来るんだろう」

 

伊藤「そうだな。ユウヤ」

 

ユウヤ「なんだ?」

 

伊藤「この先どうなるかはわからん。もし計画が中止になり機体が接収されそうになったら機体を爆破してくれ。それか日本に亡命してこい」

 

ユウヤ「おまえ何を⁉︎」

 

伊藤「あの機体は、Ex-Sと同じく危ない機体だ。たのむ」

 

ユウヤ「わかった」

 

伊藤「それより、唯依と会わなくていいのか?」

 

ユウヤ「いいんだ。また会えるから、唯依には剣を教えてもらわなければいけないからな」

 

伊藤「そうか。もし帰ってこれなかったら今度は戦場で会おう」

 

伊藤は輸送機に方へ向かった。

 

 

唯依は最後にもう一度、ユウヤと2人で作りあげた心神を見ておこうと格納庫前に来て、機体を見ていた。シャッターが閉まり出し、完全に閉じるまで見ていたところ格納庫内にユウヤがいた。声をかけようとするが、何故かブレーキがかかってしまう。

ユウヤはふと、外を見たそこには唯依が立っていた。穏やかな顔で敬礼をした。すると、唯依も返してきた。

 

 

2人の間で思いが交わされる。

 

また直ぐ会えると信じ。

 




この先のことはわからないので、オルタネイティブ(マンガ)の方に繋げたいと思います。

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