Muv-Luv〜wing of white steel〜   作:lancer008

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第ニ十話

黒鉄は暇だった。心神の追加パックのレクチャーも終わり、オペレーションルームでユウヤ達の演習を見ているだけだった。2日前に名簿が来ると言われていたが全然こなかった。そのため、やる事がなくただただ座ってモニターを見ているだけであった。

 

黒鉄「暇だ〜〜暇だ〜〜」

 

唯依「黒鉄うるさいわよ」

 

黒鉄「暇。俺も混ざってくるから出撃許可出して」

 

唯依「無理。黒鉄の機体は機密扱いよ」

 

黒鉄「なら、機体貸して。ナイトメアでいいから」

 

唯依「ダメ」

 

黒鉄「ん〜〜」

 

黒鉄は考え、

 

黒鉄「教導隊として行ってくるのはダメか?オペレーション名"鬼ごっこ"。機体は予備のナイトメア使うから」

 

イブラヒム「篁中尉、鬼ごっことは?」

 

唯依「訓練兵時代に行った演習です。鬼が撃った弾が命中したら、1発毎に基地の外周を走るというものです。逃げる方の弾が鬼に当たればそこで終了となります。その場合は走らなくてもいいんですが、1つ問題が」

 

イブラヒム「問題とは?」

 

唯依「それは、逃げる方はペイント弾を積むのでいいのですが、鬼の方はスタン弾を積みます。スタン弾は命中すると僅かながら電流を流します」

 

イブラヒム「人体に影響は?」

 

唯依「ありません」

 

イブラヒム「ならやってみようか。黒鉄少佐いつからやりますか?」

 

黒鉄「現在の時刻は0950なので、補給などを時間に入れて、1100でお願いします。説明はお願いします」

 

イブラヒム「了解した」

 

黒鉄は機体の整備をする為、格納庫に向かっていった。

イブラヒムはユウヤ達に対し一旦帰投するよう伝え、帰投の間、唯依が説明をしていた。伊藤と上総は驚愕の表情を浮かべこれ一度きりにしてくれと懇願していた。

 

 

補給中

 

ユウヤ「おい伊藤。たかが鬼ごっこだろう。数でいえばこっちが6機、鬼が1機だろう。簡単だろう?」

 

伊藤「お前、鬼が誰だかわかってんのか⁉︎」

 

ユウヤ「黒鉄だろう。ここにいる6機でやれば勝てるだろう」

 

伊藤「言っとくが、俺と上総も一度も黒鉄に当てた事はない。訓練兵時代の時は、30対1で負けてたからな」

 

ユウヤ「嘘言うなよ」

 

伊藤「本当だ」

 

全員から笑顔が消え、黙り混んだ。

ユウヤと伊藤が何とか気をまぎらわそうと話している。だが内心は、自分の不安な気持ちでいっぱいだった。

補給が完了し演習場に向かった。向かっている途中、黒鉄が乗っているナイトメアが並走してきた。機体を見てみると最低限な兵装しかなく装甲も限界まで削られていた。

黒鉄がオープン回線で話しけてきた。

 

黒鉄「説明では1発毎に命中したら基地外1周と言っていたが今回はあまりにもでか過ぎるから、輸送機用の滑走路1周で許してやる」

 

伊藤「きたよ、鬼軍曹」

 

黒鉄「なんか言ったか?」

 

伊藤「言ってません」

 

黒鉄「まあ流石にあれなんで、そっちに報酬でも与えようか。俺に1発でも当てたら演習終了並びに、そっちの被弾分を俺が走る。あと夕飯分奢るでどうだ?」

 

伊藤「いいんじゃねえの」

 

ユウヤ「そうだな」

 

両方とも納得し、開始地点に移動した。

再度説明が入り、制限時間は30分となった。理由それ以上すると体力が持たないということだったからだ。

カウントが始まった。

 

 

スタートの合図とともに全機散会した。

ユウヤ達は集団で行動し、一斉射を食らわした方がいいと思っていたが伊藤から30機の一斉射を交わされたと言われたため、散会し誰かに食いついたところを集中して狙うという作戦だ。

だが、そう簡単に釣れるわけもなく被弾が増えていった。黒鉄の動きが余りにも早過ぎるためコンピュータの標準が追いつかなかったのである。そのため予測射撃をする事しか出来なかったのである。

 

伊藤「アルゴス1!」

 

ユウヤ「なんだ⁉︎」

 

伊藤「俺と上総が格闘戦を仕掛ける。隙が出来たらそこを狙撃でも一斉射撃でもいいから当てろ!」

 

ユウヤ「無茶言うな。さっきから1発も当たってないんだぞ」

 

伊藤「大丈夫だ。こちらがそちらの射線に誘導する。頼むぞ、射撃はアメリカのお家芸だろ」

 

ユウヤ「しょうがねえな見せてやるよアメリカのお家芸を」

 

上空をファイター形態で飛んでいる黒鉄に対し、伊藤と上総は格闘戦を開始した。数にして見れば伊藤の方が有利だが、機体性能は黒鉄の方が有利である。装甲を限界まで削り落とし機動性を限界まで上げたのとパイロットの腕である。装甲を限界まで削ったため規格外の動きを見せてるためとっくの昔に空中分解をしてもいいはずなのにまだ飛び続けている。

黒鉄は流石だなと思っていた。

黒鉄から全員に通信が入り、

 

黒鉄「その程度の機動では、YF-29はやれんな」

 

伊藤「おいおい、こんな時にテストかよ」

 

黒鉄「こんな時だからだ。俺はこの演習が終わったらここを一旦離れ日本に向かう。もし今、格闘戦で俺に1発でも俺に当てられたらYF-29をカスタマイズ仕様でここに送る。全ての出力を自分で調整できるタイプだ。ナイトメア隊からバルキリー部隊の初代隊長にはいい機体じゃないかな」

 

伊藤「おまえその話、どこから聞いた?」

 

黒鉄「ここに入ればいやというほど聞こえてくるよ。機密情報に関してはしっかり保管しろ。おおかた自分の机の上にでも置いといんだろう」

 

伊藤「………………」

 

黒鉄「図星か。まあそういうことだ。ここからは本気で行くぞ、お前も本気でこいよ」

 

伊藤「わかった。セイバー02へ離れてろ」

 

上総「ツー」

 

上総は戦列から離れ、邪魔にならないよう地上に降りた。

 

上総「アルゴス1へ、これよりセイバー01が一騎打ちをする射撃を停止して下さい」

 

ユウヤ「アルゴス1了解。まさか本気を出していなかったとは」

 

上総「黒鉄が本気を出したら開始5分で終わってたわよ」

 

ユウヤ「マジかよ」

 

黒鉄と伊藤の一騎打ちが始まった。

ともにナイトメアを使い兵装はガンポットのみを使った戦闘した。ともに撃って避けて、撃って避けての繰り返しである。殆どがファイター形態で戦っているためユウヤ達からは、ただ飛んで後ろをとって射撃をしているだけに見えるが戦闘機に乗ったことがあるものから見えればとんでもない戦闘機動をしていたのだ。

 

黒鉄「伊藤、いやセイバーか。やるようになったな」

 

伊藤「ランサー、前は勝てなかったが今回は勝たせてもらう」

 

黒鉄「やってみろ」

 


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