最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
申し訳ございません
今後からこのようなことのないよう、更新日を決めることに致しました
この作品の場合、『毎週土曜日』が更新日となります
作者の都合でズレることもあるとは思いますが、極力そういったことはないようにしていきますので、今後ともよろしくお願い致します
起きたら昼だった。
なにを言っているのかわからねーと思うが、俺も何が起こっているのかわからねー。
いや待て落ち着けもちつけ俺よ。
まずは昨日何があったかだ。
たしか家に着いた後、怪我に魔力の消耗が重なって、すぐに寝たはずだ。
そこら辺ははっきり認識している。
だが、
「すぅ……すぅ……」
何故ここでキャスターが寝ている……!
しかも添い寝状態だ。
朝(昼)起きて。
右を見たら。
キャスターが隣に寝てた。
うん、状況整理しても何も変わらないね。
っていうか、このままだとやばい。
キャスターが起きたら修羅場。
ここに誰か入って来ても修羅場。
この状況を打破する手段を考えなければ、起きた直後にまさかの地獄絵図だ。
とりあえず、気づかれないうちにキャスターの部屋に運んでしまうのがいいか……?
それとも、とりあえず俺だけでも脱出するべきか……?
などと様々な策が浮かんでは消えるを繰り返す中、
パチッ
と、キャスターが普通に目を開けた。
(あ、終わったわこれ)
これは恐らく殴られるではすまないだろうと判断し、歯を食いしばっていると。
「……おはよう。マスター」
普段通りに話しかけてきた。
「えっ?あ、うん。おはよう」
てっきり最初に会った時みたいに殴られるか、少なくともカスを見る時みたいな目で見てくるかと思ったけど、そんなことはなかったようだ。
「あ、あのさ。キャスター?」
なので、思い切って理由を聞いてみることにする。
「なんで、ここで寝てたの?」
「……その様子だと、覚えてないようね」
「えっ?何を?」
どうしよ、本当にわからない。
「帰って来た後に、マスターが随分と疲れていたから、『私の魔力を供給するために、1晩傍にいるわ』って言ったのだけれど」
「えっ、嘘」
あー、でも、そういえば寝る直前になんか言ってたような気も……。
あれがそうだったのか。
「まあ、あの時のマスターは相当に消耗していたから、効いていなくても無理はないけれど」
「すみません……」
「それで、調子はどう?」
「えっ?ああ」
キャスターに聞かれ、身体を動かしてみる。
多少動かしにくくはあるが、これは恐らく俺の魔術の反動の方だろう。
実際、あれだけ魔力を使った後にも関わらず、普通に魔術が行使できそうなほどに回復していた。
「うん、大丈夫。キャスターのおかげだ。ありがとう」
「そう」
お礼を言うと、素っ気なくそう答えてキャスターは立ち上がる。
合わせて俺も立ち上がり、二人で部屋を出る。
「そういえば、キャスターは大丈夫なのか?魔力とか」
「ええ。魔力には自信があるから」
「たしかに……」
マスターだからこそわかるが、キャスターの魔力は数値にしてA++。
恐らく、全サーヴァントの中でも破格中の破格の魔力だろう。
ついでに、耐久の方もAだ。
この細い身体のどこが耐久Aなのかわからないけども。
そうこうしているうちに一階に到着。
どうやらもう昼ご飯の準備は終わっているらしく、カレーの匂いが部屋に漂っていた。
「あ、お兄ちゃんおはよ!キャスターさんも!」
「おはよう、香」
「……おはよう」
相変わらず元気いっぱいな香に挨拶し、ささっと席につく。
昨日は激しく運動した上に朝ごはんを飛ばしてしまったため、相当に腹ペコだ。
「おはよう、薫。起きていきなりカレーだけど、大丈夫?」
「平気平気。男子高校生なめてちゃダメだって」
「女子高生だって食べるよ?」
「お前は起きていきなりじゃないだろ……」
「キャスターちゃんも大丈夫?」
「ええ、まあ」
「おっけー!キャスターさんもたくさん食べてね!」
「大盛りにしちゃおう!」
「母さんの大盛りはエベレスト並だからマジでやめてくれ!」
この母娘が増えるだけで会話の量が明らかに増加する。
なぜ女性というのは、こうも話すネタが尽きないんだろうか……。
そんな恐らく一生解決しないであろう疑問を抱きながら、俺はカレーを食べ進めるのだった。
───────────────────────
食後、今後どうするかの作戦会議を始めた。
といっても、大したことじゃない。
昨日、この拠点への襲撃があったかどうかと、今日これからどう行動するかを決めるくらいだ。
「ひとまず、襲撃がなかったなら、拠点はこのままで。問題は今日の行動だけど……」
「正直、礼装の修理は時間かかるよ。早くても明日の夜だね」
「あたしも協力したいけど、他に準備があるし」
「そうか……」
昨日の戦闘後、身につけていた防御用の礼装が傷だらけになっていることに気がついた。
母さんが作ったものだからすぐに修理には取り掛れるけど、作った時と同様に、時間がかかるようだ。
香が手伝ってくれるなら、多少早くなるだろうが、香にもいろんな準備がある。
ちなみに、俺はまったくわからない。
本当に荒事専門だからな。
他人はこれを脳筋という。
「仕方ない。とりあえず今日は偵察だな」
「そうね。マスターも回復しきってはいないもの」
そうと決まれば、善は急げだ。
明るいうちに、昨日のセイバーとバーサーカー以外のサーヴァントについて探り、夜の間は拠点で身体を休めることにしよう。
「キャスター、行こう」
「ええ」
母さんから上着を受け取り、それを手早く羽織って玄関に向かう。
キャスターは例によって、いつの間にか外套を羽織っている。
「それじゃあ、いってきます」
「……いってきます」
「「いってらっしゃい」」
二人の声を背に受け、家を出る。
「マスター」
「ん?」
数歩歩いたところで、キャスターが立ち止まる。
「どうした?」
「偵察用のプロイを放った方がいいと思うのだけれど。どうかしら?」
「偵察用か……。空を飛べるとか、そんな感じか?」
「ええ」
「じゃあ、頼むよ」
「わかったわ。……いらっしゃい『シックス・スィング・チョコレート』」
そう言い、彼女が呼び出したのは、小さな収納箱。
それを開くと、中から大量の茶色の鳥が飛び出した。
「うおっ、びっくりした」
「この子たちに任せれば、この街くらいならカバーできるはずよ。遠目からはただの鳥にしか見えないし」
「なるほど……これは便利だな」
威力偵察よりもこっちが良かったもしれないな、これ……。
あれ、ひょっとして骨折り損?
いや、折れてはいないけども。
そんな風に若干ナイーヴになりながら歩き、長い庭を抜けて門へ。
無駄に巨大な門を開き、外に出た瞬間、
「やっぱり、ここで待っていれば出てくると思っていたよ」
突然の声と、ただならぬ気配。
即座に飛び下がり、魔術起動の準備。
横を見ると、どうやらキャスターも同じ反応のようだ。
気配のした方を見据え、魔術を待機起動状態に。
そこに居たのは、
「お前……セイバー!」
昨日の金髪の美青年、つまりはサーヴァントセイバーだった。
(何しに来やがった……!?こんな昼間からやらかすつもりか?)
いくら人通りが少ないとはいえ、今は真っ昼間だ。
どんな騒ぎになるかわからない。
しかし、向こうがやる気なら……。
「ま、待ってください!」
だが、予想に反して飛んできたのは、攻撃ではなく女の子の声だった。
長い三つ編みに眼鏡。
一見地味だが、整った顔立ち。
「セイバーのマスターか……」
「そ、そうです!」
緊張のためなのか、肩で息をしながら、彼女は言う。
「違うんです!私たち、戦いに来たんじゃないんです!お願いですから、話を聞いてください!」
「頼む。本当に君たちと争いに来たわけじゃないんだ。話を聞いてくれるなら、僕をこの場で拘束しても構わない。だから、話だけでも聞いてくれ」
言い切り、二人同時に頭を下げる。
「……どうするのマスター」
「……キャスター、一応『おしゃべり双子』を待機状態にしてくれ。何をしてくるかわからない」
「用心深いわね。でも、それが正しいわ」
二人にしか聞こえない声量で相談し、ため息を一つ。
「わかった、聞こう。ただし、距離はこのままだ」
「! あ、ありがとうございます!」
信用されてはいないというのに、二人は嬉しそうに顔を上げる。
な、なんか調子狂うな……。
「それで、何の用だ。手短に頼む」
調子を戻すため、あえて表情を引き締めて問う。
「ああ、もちろん。……これからするのは、実に虫のいい話だと思う。けれど、現状僕らにはこれしか手がないんだ」
そこでもう一度頭を下げ、はっきりと、とんでもないことを言い出した。
「僕らと一時的に停戦し、共闘してほしい」
「…………はっ?」
結論。
人間が逆に冷静になるほど驚くことというのは、以外に頻繁に起こるものだった。
時間微妙に過ぎちゃいましたが、恐らく大抵はこれくらいだと思います
いつも夜書いて投稿してるので、若干日をまたぐことはありそうですが、それ以上ズレないようにはします
それと、本当にお待たせしてすみませんでした……