最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
機種変更で容量が空きまくったので、ゲームを入れまくりました
結果がこれです
もう1話続けて投稿するので許してください
「戦う前に、一つ聞きたい。なぜ不意打ちでマスターを狙わなかった?」
「……勘違いするな。俺は元より、戦線に参加しないマスターと戦う気はない。ましてや殺すつもりもない。……あいつと同じことだけは、死んでもしたくないからな」
最後の部分だけ、声を潜める。
恐らく、そこはキャスターにしか聞こえていないだろう。
「……どうやら、随分と騎士道精神のある人のようだね。聖杯戦争らしくはないが、正々堂々と戦おう」
「上等!」
そう言い、俺が構えると、キャスターが右手を前に出し、
「いらっしゃい、『
プロイキッシャーを呼び出す。
その手には、青色の鈴が握られていた。
「さあ───ごっこ遊びをしましょう」
それを地面に放り投げると、鈴は地面に沈んでいき、同時に鐘の音が響く。
『夜の饗宴』は、俺が触媒にも使った猫眼石の鈴だ。
地面に沈めることで、夜を助長する金を鳴らし、他のプロイキッシャーの地盤を作り出す。
単体では効果はないが、非常に重要なプロイキッシャーだ。
「『おしゃべり双子』」
さらに次のプロイキッシャー。
『おしゃべり双子』の本体はサイコロ。
サイコロを振って、出た目によって姿を変える。
「『6』」
結果は6の目。
姿は、口がホッチキスになった、二匹のブタのぬいぐるみに。
「トゥーイドルダム、トゥーイドルディー。敵を足止めしなさい」
キャスターの指示を受け、二匹のブタがセイバーに飛びかかる。
「はあっ!」
セイバーは両手で握った不可視の剣を振るい、横に一閃。
同時に二匹とも薙ぎ払い、まるで飛ぶようにこちらに疾走して来る。
「やはり、少し火力が足りないわね」
「別のやつを出すか?」
「ええ。時間を稼げる?」
「もちろん」
頷き、脚に力を込める。
蹴り出した瞬間、まるで爆発したかのように地面が弾ける。
向かうのはもちろん、滑走するセイバーの方向だ。
「!?」
俺が向かってくることに気がつき、セイバーが驚愕の表情を見せる。
まさか、サーヴァントにマスターが戦いを挑むとは思わなかったのだろう。
生憎だが、これは無謀な策でも、単なる特攻思考でもない。
れっきとした、勝算のある作戦だ。
「不意打ちをしなかった君に免じて、峰打ちで弾かせてもらう!」
「やれるもんならな!」
どういう原理か知らないが、セイバーは不可視の剣を扱っている。
だが、剣自体は消せても、手元の動きは誤魔化せない。
それさえ見えれば、剣のおおよその位置が分かる。
大上段の切り下ろしに対し、俺は右脚の直蹴り。
普通なら負けるだろうが、俺は普通じゃない。
結果は──────。
ギイィィィィィィィッッッ!!!
互角だ。
俺の魔術は『
両脚に特に集中した身体強化、両脚から魔弾の放出など戦いに特化した魔術を扱える。
うちの家系は俺で八代目。
その全てを、戦闘のために費やしてきた。
荒事はうちの専門家業なのだ。
「くっ……!」
予想外の反動に、セイバーが一瞬怯む。
そこに、
「『赤い靴』」
キャスターのプロイ、赤い靴を履いた人形が飛びかかる。
赤い靴は自動攻撃型のプロイキッシャー。
術者の制御が必要なく、他のプロイとの併用もしやすい。
赤い靴が踊るようなステップを踏み、回し蹴りを繰り出す。
それに合わせ、俺も足を踏み変えて左脚で回し蹴り。
「っ……!!」
ジェット噴射のような音を響かせ、セイバーは普通は有り得ないような体勢で後退。
(させるか……!)
全力で距離を詰め、横蹴り。
しかし、さすがは最優のサーヴァント。
今度は油断せずに、充分な勢いをつけて剣を叩きつけてくる。
これは競り負けると悟り、剣の進行方向に合わせて回転。
威力を流し、コンパスをように地面に軌跡を描きながら、右脚を後ろへ。
最初と同じように蹴り出し、膝蹴りを打ち込む。
「ぐっ……」
直撃。
だが、顔ではない。
明らかに金属だ。
案の定、セイバーは篭手に包まれた左手で防いでいた。
しかし、その背後に赤い靴が迫る。
プロイの強烈な蹴りが、今度は外さずに胴に直撃した。
「がはっ……!」
俺など比にならない強さの蹴りに、セイバーが堪らず息を吐き出す。
「っ……!はあぁぁぁぁ!!」
セイバーが気合いとともに、強引に体を反転。
轟音を鳴らし、突進。
体格以上の威力が出たらしく、赤い靴が吹き飛ばされ、ギギッっと音を上げて動かなくなる。
さらに、セイバーは一回転してこちらを向き、距離を詰めてきた。
(負けるか……!)
横一閃の斬撃を、回し蹴りを当てて相殺。
お互い弾かれるが、脚を使った俺より、セイバーの方が立ち直りが早い。
再び大上段の切り下ろし。
片足は上がっているし、跳躍も後退も不可能。
地面には付けられるが、そこから動くことは間に合わない。
(なら……!)
腕を交差させ、手の甲が対になるよう構える。
地面に足がついた瞬間、振り下ろされる斬撃をその腕でガードする。
「っ……!」
「くっ……!!」
そのまま、鍔迫り合いのごとく押し合うが、全く動かない。
だが、このまま硬直状態になれば、キャスターに攻撃のチャンスが……。
「下がって。今すぐに」
静かな、けれど驚くほど通る声での指示。
迷わずそれに従い、足の裏に魔弾を炸裂させ、爆発力を利用して飛び下がる。
そのほんの一瞬後、またも激しい音が響き、猛烈な加速を得た斬撃が地面に振り下ろされた。
(どういうことだ……?)
明らかに後から加速が加わっていた。
宝具の能力か何かか……?
「詳しい原理まではわからないけれど、指定した部分から魔力を放出できるようね」
「さすがキャスター……」
魔力に関してはお手の物って感じだな。
膠着状態。
お互いの危険度が分かったため、迂闊に手出しを出来ない状態だ。
そんな状況だからか、セイバーがゆっくりと口を開いた。
「……大した魔術師だ。私の剣を見切るだけでなく、正面から受けて無事とはね」
「無事……?なわけないだろ」
言った直後、右腕から血が滴った。
「マスター、怪我をしているの?」
「平気だよ、キャスター」
いや、実は結構やばい。
堅華の魔術回路は両脚全体に宿っているわけだが、身体強化と魔弾発射に使われているのは半分ほどだ。
残り半分の魔術は『ダメージの分散』。
例え致命傷であろうと、そのダメージを全身の内蔵以外の各部位に分散する。
これのおかげで、俺は頭を瞬時に吹っ飛ばされるか、全身消し去られるかしない限り即死は有り得ない。
しかし、これがあっても今やダメージが外傷となって現れ始めている。
特別な防御礼装を使い、魔術で強化し、ダメージを分散しても、この様だ。
これが、サーヴァントと現代の魔術師の圧倒的な差というやつだ。
「赤い靴をもう一度出すわ。しばらく休んで」
「大丈夫。もう少しやれる」
「……はぁ。分かったわ」
ため息をつき、一応賛同してくれる。
というか心配してくれたんだな。
なんか嬉しい。
「さあ、続きをやろう、セイバー」
「もちろんだ」
例え怪我をしていようとも、武道の染み付いた身体は、勝手に構えてくれる。
(行くぞ、セイバー!)
俺が地面を蹴り出した瞬間、脇構えでセイバーが突進してくる。
ギリギリまで近づいてから弾くことに決め、さらに速度を上げる。
下からの切り上げに対し、飛び上がって回し蹴りを繰り出す。
俺の脚と不可視の剣が衝突する……直前。
黒い霧の塊のようなものが、飛び込んで来た。
前書きにも書いた通り、もう1話続けて投稿します