最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
かといって、忙し過ぎて原作をプレイする時間もないですし……
つまらなかったら、ごめんなさい
「青子さん、相手のマスターは?」
「大丈夫よ。なんせ、あの久遠寺有珠が本気になったんだから」
不敵に笑う青子さんに、俺は不思議な安心感を覚えた。
青子さんもこう言っているし、俺だってキャスターの強さはよく知っている。
(キャスター、信じてるぜ)
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「良いのか、久遠寺有珠。蒼崎青子は行ってしまったぞ」
「…………」
煽るような表情でそう言う男『ハウスト・ハリーベルト』に、キャスターは無言を返す。
「ふん、つまらん。だんまりか」
なお、無言。
だが、その目は明らかに怒りに燃えている。
彼女は顔にこそ出さないが、別に感情の起伏に乏しいわけではない。
むしろ、感情の振れ幅は大きい。
「……『
だからこそ、彼女は無表情に淡々と、内心に激しい感情を内包しながらプロイキッシャーを呼び出す。
呼び出されるのはマッチ箱。
再びそれに火をつけ、炎の幻影を呼び出す。
「またそれか。芸がないな」
ハウストはつまらなさそうにため息をつく。
しかし、それだけで通用しないのはキャスターもよく分かっている。
彼女はもう一度右手をかざし、詠唱する。
「『金林檎』」
光り輝く右手。
それが弾けたかと思うと、光は一点に凝縮して形を成す。
それは、黄金色の林檎。
まるで本当に金でコーティングされているかのように、周囲を照らしている。
キャスターはそれに、
「……ガリッ」
躊躇なく噛み付いた。
直後、周囲に暴風と共に金の粒が舞う。
竜巻のように渦を巻きながら、それは3つの塊を形成する。
徐々に回転数を早くしながら、収束。
「キアァァァァァァ!!!」
奇妙な叫び声を上げながら、現れたのは金の狐、金の鳥、金の馬。
目を開けていられない程の光沢で、周りの炎のクリーチャー達に反射してユラユラと輝いている。
「……ちっ」
炎のクリーチャーと黄金の獣達にじりじりと距離を詰められ、ハウストの顔に焦りが浮かぶ。
先程薙ぎ払った炎のクリーチャー達はともかく、問題は金林檎の獣達だ。
金林檎の効果は『
故に、強度と耐熱性が高く、加えて一撃の威力が大きい。
「……さあ、ごっこ遊びをはじめましょう」
その一声で、炎のクリーチャーと黄金の獣達は一斉にハウストに襲いかかる。
「……ふんっ!」
ハウストは炎を薙ぎ払うべく、渦潮のように回転する水流を起こし、叩きつける。
しかし、多少速度は落ちても、黄金の獣達は止まらない。
狐は大口を広げ、丸呑みにしようと飛びかかる。
「ちぃ……!」
ハウストは大地に手を当てる。
直後、急激に地面が隆起し、狐の口に叩き込まれる。
硬いものと硬いものが衝突する甲高い音が鳴り響き、狐が後ろに仰け反る。
だが、その程度では終わらない。
上空から風鳴音が鳴り響いたかと思うと、今度は金の鳥が飛来する。
「……こざかしい……ッ!」
風を足元に炸裂させて飛び下がる。
砂埃を撒き散らしながら大地を踏みしめ、急ブレーキする。
「……そこよ」
ポツリ、とキャスターが呟いた。
その瞬間、
「………!?」
ハウストの体が硬直する。
指先の一つすら動かすことが叶わない。
キャスターはといえば、木の上から静かにハウストを見下ろしている。
漆黒だったはずの左眼は、赤く、赤く染まっていた。
久遠寺有珠の魔眼、月目のプロイキッシャー。
今回、魅力の効果として魔眼を使い、ハウストの行動を封じ込めた。
「……魔術師のサーヴァントを舐めすぎたわね」
「………っ!」
ハウストの周囲を黄金の獣達が囲む。
仮に魔眼を破ったとしても、直後に周りの獣達に食い尽くされる。
完全に詰みだった。
「貴方をどうするかはマスターの判断に任せるわ。そこで大人しくしてなさい」
涼しい顔でそう言いながら、キャスターはハウストを見下ろし続けた。
お読み頂きありがとうございました
お分かりだとは思いますが、金林檎も火炎の幻影もオリジナルプロイキッシャーです
金林檎の元ネタは『黄金の鳥』、火炎の幻影の元ネタは『マッチ売りの少女』です
ガバガバな設定でごめんなさい
それでは、また来週お会いしましょう