最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
いつもこれくらいになればいいんですけどね(^_^;
「はぁ……はぁ……」
意図せずに息が荒くなる。
だが、身体の感覚は随分と戻って来た。
ダメージの分散と、ポーションによる回復が効いてきたのだろう。
(どこにいやがる……!)
緩慢に構えを取りながら、俺は周囲の気配に集中する。
先程から、どういうわけか全く気配を感じない。
「もしや、アサシンのサーヴァントか……?」
アサシンのクラススキル『気配遮断』。
そのスキル故に、マスターを狙う戦法さえ取れれば、聖杯戦争では強烈な強さを持つ。
仮にアサシンのサーヴァントだとして、仮にあの魔術師がマスターだとしたら……。
(サーヴァント並の魔術師と、アサシンのサーヴァントのコンビ……?)
そんなもの、俺のような即死封じの能力が無ければ最悪の敵だ。
「ふぅ……ふぅ……」
細く、息を吐く。
直後、
「……………っ!」
俺はその場にしゃがみ込んだ。
瞬間、猛烈な轟音と共に、頭の上を通過して行った。
「危ねぇ……!」
ギリギリ避けたが、回避に成功したのは奇跡に近い。
(今のは音的に蹴り……!ってか)
ついさっきまでそこに居たはずなのに、どこを見回しても全く姿が見えない。
気配も欠片も感じない。
「なんなんだよ……!」
ギリッと歯を噛み締め、拳を握る。
「……大したものだ、小僧。儂の一打ちで死ななかった上に、二激目を回避するとは。キャスターのサーヴァント相手では面白くないと思っていたが、これなら多少そうじゃ。カッカッカッ」
姿は見えないが、声だけは聞こえる。
最後に声の主は、妙な笑い方で笑った。
「……誰だお前。サーヴァントか」
どこにいるかは分からないが、ひとまずそう声をかけてみる。
「左様。儂はアサシン。サーヴァント、アサシンじゃ」
「やっぱりか……」
それはつまり、先程の嫌な予想が現実になったということを意味していた。
「……姿を表す気は、ないんだよな?」
「当然じゃ。わざわざ自分の有利を崩す愚か者などおらん」
「だよな……」
長くため息をつく。
姿が見えず、おまけに人の首を一撃でへし折る技量の持ち主。
そうなれば、こちらも相応の手段を取らなければならない。
「───
前と同じく、澄んだ音が響く。
「
徐々に脚の魔術回路の光が強くなる。
だが、前に夢で使った時よりも少々光が抑えられている。
「
今回はコントロールして弱めにした。
「
だが、この状況に対処出来るのはこれしかない。
「モード、『ソニックロア』!」
俺の切り札、術式変更。
今回の術式は、ギリギリまでダメージ分散を低減させ、その代わりに機動力を底上げした形態。
先程のように、一瞬でも攻撃の片鱗を捉えることが出来れば、回避が可能だ。
「……来いよ、アサシン。こっから先は、全力だ!」
「良かろう。儂には分かるぞ。お前のその、武道の力」
スタッ、とどこかの地面に降り立つ音がした。
「その全力、儂にぶつけて来い。相手になろうぞ!」
どこから来るか分からない攻撃に、俺は一層身構えた。
お読みいただきありがとうございました
次回、アサシンVS薫!
どうぞお楽しみに!