最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た   作:雪希絵

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もはや時間をすぎるのがデフォルトになってしまいました

ここで謝っても、もはや薄っぺらい言葉にしか見えなさそうです

なので、更新日を守るということで誠意を示していきたいと思います

でもやっぱりすみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁっ!


無表情な激情家

「薫!薫!」

「はっ────!」

 

青子さんの呼ぶ声で目が覚めた。

 

「ぐっ……っ……!?」

 

起き上がろうとしたが、どうにも力が入らない。

 

「……はぁ、呆れた。よく生きてるわ、本当」

 

青子さんはそう言いながら、本当に安心したといった様子で息を吐いた。

 

有難いことに本気で心配してくれたようだ。

 

「いっ───はっ───がっ……!」

 

『一体何が』と言おうとしたが、ほとんど声が出ない。

 

「……無理しない方が身のためよ。あんた、首の骨がポッキリ折れたのよ」

「……!?」

 

(……そうか……通りで……!)

 

身体のどこにも力が入らない。

 

若干見えるが、視界は霞んでいる。

 

「あんたの魔術の効果ね。首が折れるなんて即死クラスの怪我を、全身に分散したこと……あと、身体強化。だからこそ、あんたは生きてる」

 

どうやらそうらしい。

 

帰り道まで警戒して魔術回路を起動していなかったら、間違いなく即死だ。

 

伝わるかは分からないが、口パクで尋ねる。

 

『キャスターは?』

 

どうやら青子さんは理解してくれたらしい。

 

頷き、

 

「私は無事よ」

 

そう言った。

 

違う、そうじゃない。

 

いや、それも心配だけどそうじゃない。

 

しかし、俺の疑問は直後に解消された。

 

ドンッ───────!

 

爆音が轟く。

 

すぐ近くだ。

 

寝てる間にポーションでも飲ませてくれたのか、少し動くようになった身体を起こすと。

 

(キャスター……!)

 

キャスターが戦っている。

 

顔は、無表情なまま。

 

だが、明らかに雰囲気が違う。

 

激情に染まり、その目には殺意に支配されている。

 

「『赤い靴』『おしゃべり双子』」

 

続けざまにプロイを呼び出す。

 

合計三体のプロイキッシャーが、相手に襲いかかる。

 

先にいるのは、長いコートを羽織った男性。

 

だが、コートの男性は、

 

「────、────」

 

ボソリと何が呟く。

 

直後、その周囲に炎と雷光が爆ぜる。

 

それは、おしゃべり双子を吹き飛ばし、赤い靴を焼き尽くす。

 

その様子を、キャスターは苛立った表情で睨みつけていた。

 

「有珠なら、見ての通りよ。あいつ、本当に何者なんだか……」

 

あのキャスターと、魔術師のサーヴァントと正面から魔術戦を繰り広げている。

 

にわかには信じられない光景だ。

 

キャスターが右手をかざす。

 

「『火炎の幻影(ファントム・エデン)』」

 

手に現れたのは、マッチ箱。

 

素早く中からマッチを取り出すと、それを手際よく着火する。

 

すると、空間が燃え上がるように炎が広がっていく。

 

それは俺たちを包み込み、辺りにゆらゆらと陽炎を発生させていく。

 

そして、それは次から次へと何かを吐き出していく。

 

それは炎の巨人であったり、炎の刃であったり、炎の獣であったり。

 

「……へぇ。なるほど」

 

青子さんは興味深そうに周囲を見回す。

 

その炎の化身たちは、波状攻撃でコートの男に襲いかかる。

 

食らいつこうと、指し穿とうと迫る。

 

「……ふん」

 

男は、興味なさげにそれを流し見ると、今度は突風を巻き起こす。

 

轟音と共に、炎の化身たちは吹き飛ばされてしまった。

 

「こんなものか。魔女といっても大したことはないな。久遠寺有珠」

「……黙りなさい」

 

さらに逆鱗に触れたのか、明らかに不機嫌な声でそう言う。

 

「……キャ……ス………ター……!」

 

辛うじて声が出るようになったため、すぐにキャスターを呼ぶ。

 

だが、どうやら聞こえていないようだ。

 

無事であることを伝えて、一旦戦いをやめさせないといけない。

 

「……無駄よ、薫」

 

青子さんは、俺を見下ろしながらそう言う。

 

「有珠はあんたが死んだから怒ってるんじゃない。というか、パスで繋がってるんだから、薫が死んでないことくらい分かってるわよ。単純に、あんたが傷つけられたから怒ってるのよ」

 

そうして、ため息をつく。

 

「ああなったら、もう止まらないわ。ああ見えて、超激情家だしね」

 

立ち上がり、青子さんはポキポキと拳を鳴らした。

 

「……さて。私も出るか」

 

ぐるぐると肩を回し、続ける。

 

「生憎、私も……とっくにキレてんのよ」




お読み頂きありがとうございました!

さて、次回は二人の共同戦線です

それでは、また来週お会いしましょう

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