最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
これだけ投稿しておいて今更何やってるんでしょうね本当にごめんなさい_(:3 」∠)_
「ここを使ってください」
どういうわけか俺を無視して話が進み、結局青子さんはうちに滞在してもらうことになった。
幸い、この屋敷に空き部屋はあるし、不便なことはないだろう。
ちなみにベッドは全て付属品である。
「なんか、えらく殺風景ね」
部屋の入り口に手をかけ、青子さんがそう言う。
「ここは冬木にいる間の仮拠点ですから」
「ま、それはそうか」
納得したように頷きながら、青子さんは手に持っていたバッグを開いた。
俺はその間に、軽く部屋の掃除をする。
ちなみに、俺は別に片付けが苦手なわけではない。
単純に片付けが嫌いなだけだ。
とはいえ、青子さんが使う部屋だ。
片付けないと失礼だろう。
「そういえば、薫」
そういうわけで掃除をしていたら、荷物整理を終えた青子さんが話しかけてきた。
「なんでしょう?」
「あんたさ、何を叶えたいの?」
「聖杯に……ってことですかね?」
「ま、そういうこと」
そこで俺は考え込む。
いや、ぶっちゃけ願いなんかない。
そりゃ、いくつか夢とかはあるが、聖杯に願うほどのものじゃない。
「……ないですね」
苦笑いでそう言うと、青子さんは硬直する。
驚いたというよりは、こんな愚か者は見たことがないという顔だ。
少しして我に返った青子さんは、続けざまに質問する。
「じゃあ、なんで聖杯戦争なんか出てるのよ」
心底わからないという顔だ。
これはもう、決まり切っている。
「敵討ちです」
目を僅かに細め、意味ありげに息を吐く。
「……ふーん。なに?聖杯戦争で誰か死んだの?」
「ええ。父親が」
「で、犯人が参加してないかと思って……ってところ?」
「そうなりますね」
別に、聖杯戦争じゃ死人が出るのは珍しい事じゃない。
だが、それが実の家族なら話は別だ。
何がなんでも探し出して、この聖杯戦争中必ず殺す。
俺は、基本的にはこういう人間だ。
善人面しておいて、中身は身勝手。
自分が正しいと思ったことが正しいこと。
だからこそ、復讐しないと腹の虫が収まらない。
「いいんじゃないの?別に」
「……否定しないんですね」
「私にもぶち殺したいやつの一人や二人いるし。聖杯戦争って舞台で合法的に殺せるなら、それはそれでやればいいんじゃない?」
「それはどうも」
そう言い、俺は掃除を再開。
ひと通り片付き、俺は道具を片付けて掃除を終えた。
すると、青子さんがふと思い出したように、
「根源のことは願わないの?」
と言った。
「あー……なるほど。それがありましたか」
その手があったかと手を叩く。
「思いつかなかったんだ……。魔術師なら、大抵そんなところが願いなんじゃないの?」
「俺は父親の影響で、あまり根源について執着してないんですよね……」
「そもそも、戦争屋がどうやって根源に至ろうとしてるのか謎なんだけど」
「ああ、それですか。簡単ですよ」
青子さんに、俺はあっけらかんと答える。
「身体強化もダメージ分散も、そこに繋がってるんですよ。すなわち……『人体の光速化』」
「光速……人体を光と同じまで加速しようってことか」
「そういうわけです。まあ、今でも音速くらいが限界なんですけどね」
「それじゃ魔法とは呼べないわけか」
「ですね。戦闘機とかなら音速まで普通にいけますし」
とはいえ、着実に速くなってはいるらしい。
残念ながら、父さんの残した資料全てを読んだわけではないので、詳しくはわからないが。
「それなら、尚更じゃない。根源の到達にすれば?」
「……考えておきます」
結局、現段階ではそれは保留だ。
元は違ったが、今では魔術は敵討ちのための手段。
今の俺は、中途半端な『魔術使い』でしかない。
もし復讐が終わったら、また考えるとしよう。
「まあ、あんたの人生だし、せいぜいしっかり考えなさい」
「はい。ありがとうございます」
「はいはい。さーて、お腹空いたわねー。今日の夕飯なにかしら」
「香と母さんが張り切ってたんで、結構なご馳走じゃないですかね?」
「お、それは期待出来るわね」
「ええ、期待してましょう」
その夜、案の定とんでもない量の夕飯が用意され、結局その日の夜は動けなかった。
そして、翌朝。
街に放った使い魔から、衝撃の事実が飛び込んでくることになる。
お読みいただきありがとうございました
それでは、また来週お会いしましょう