最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
というのも、Wi-Fiがないせいでアニメが見れないんですよね……
観たい時に観れるようになったので、嬉しいです
「はーい、到着ー!」
「わーい、ぱちぱち」
「寝起きの頭に響く……」
あれから車で五時間、ようやく冬木にたどり着いた。
数ある山の中の一つ、その中にある少ない住宅の一つが、用意された拠点だった。
「にしても、なかなかデカイ屋敷だな」
「まあね。すごいでしょ?」
「はいはい。さて、魔力もある程度回復したし、さっさと強化して寝直すか……」
まあ、デカくて悪いことはない。
結界を張り、罠を仕掛ければそれなりに良い状態になるだろう。
「キャスター、手伝ってくれ」
「ええ」
キャスターのクラススキルには『陣地作成』がある。
魔術が通じにくい三騎士が相手でも、自分の陣地の中なら、有利に戦況を進めることができる。
「ただ、私の陣地作成スキルはあまり高くはないわ」
「えっ?どれくらい?」
「C+」
「あー」
たしかに微妙だなー。
「じゃあ、道具作成は?」
「EX」
「……わぁお」
まさかの測定不能。
C+と同じトーンで言うことじゃねえだろ。
「私はそういう魔術師だから」
「なるほどねぇ……」
まあ、魔術師としては道具を利用するのは、まだ正統派だろう。
むしろ、俺みたいなやつの方が珍しい。
「でも、それなりに出来るはずだろ?よろしく頼むよ」
そう俺が頼むと、キャスターは軽く頷いてから、右手を前に突き出し、
「いらっしゃい、『午睡の券(セカンド・チケット)』」
涼やかな声で呼びかける。
すると、床から魔法陣が浮き出し、そこから大きな縦鏡が出てきた。
「これは?」
「探査用結界を発生させる私の『プロイキッシャー』……使い魔よ」
「なるほど……」
言いながらキャスターは鏡を玄関に置き、次に2階の私室として割り当てた部屋に同じものを置いた。
「これで準備完了。ただ、私の陣地作成として使える魔術は、せいぜいこの子ともう一つしかないわ」
「いや、充分です」
探査用結界を敷地内に充満できるだけで、いい戦力だ。
相手を阻むタイプの結界は、俺が作ればいい。
「じゃあ、ちょっと設置してくる」
「それじゃあ、私は紅茶を淹れるわ」
「おお、ありがとう」
キャスターは無言で頷き、1階へと降りていった。
「さーて、やりますか」
窓から屋外へと飛び出し、俺はあらかじめ用意した結界用アイテムを配置していった。
さらにすこぶる嫌らしい罠も仕掛け、俺は屋敷の中に戻った。
キャスターの作った結界に補助を頼む形にしたため、強度は折り紙つきだ。
「さて、紅茶飲んで寝よ……」
カフェインを多量摂取することになるが、飲み過ぎてすでに耐性がついているのだろう。
寝る前に紅茶を飲んでも、問題なく眠れる。
「おーい、強化終わったぞー」
日が昇りはじめ、明るくなったリビングに入る。
母さんは夜通し運転していたので、どうやら寝たらしい。
香はテレビを見るつもりだったのだろうが、寝落ちしている。
(仕方ないなぁ……)
手近にかけてあった毛布を取り、香が眠るソファに近づく。
「なぁ……!」
そして驚愕した。
(な、なんて格好で寝てやがる……!)
今日の香の服装は、白いセーターに赤色のミニスカート。
そのスカートが、片足を開いているせいで意味をなしていない。
端的に言えば、水色と白のボーダーの下着が丸見えだった。
これが、家の中を下着姿でうろうろしたり、裸同然の部屋着でいる妹ならまだしも、残念ながら香はしっかりとしているタイプだ。
これでは、目の毒になるのは致し方ない。
「ああもう……」
呟きつつ、なるべく見ないように毛布をかける。
どうにかスカートを含んだ体が隠れ、ほっと息をつく。
「キャスター、待たせたな」
「大丈夫よ。さきに飲んでいたし」
「ああ、いいよ。茶葉の場所とかわかったのか?」
「妹さんが寝る前に聞いたわ」
「そうか」
俺もキャスターの正面に座り、用意されていたティーカップに紅茶を注ぎ、一口啜る。
「うまっ……」
思わず、そう呟いてしまった。
たしかに、うちにある茶葉は豊富だし、合わせれば様々な味になるだろう。
でも、こんな味が出るとは思わなかった。
「私の知ってる茶葉があったから、いくつか合わせてみたわ」
「……それでこんな味出せるのかよ」
「普段はそんなことしないけど」
そこで紅茶を一口飲み、一拍置く。
「普通に飲む時は、ただ良い茶葉で淹れるだけよ」
「あー、俺もそうだわ」
実際、キャスターに淹れた時もそうだったし。
想像以上に美味しい紅茶を飲み干し、俺は立ち上がる。
「さて、俺はもう一眠りするよ。キャスターは?」
「私も寝るわ」
「そうか。それじゃあ、おやすみ」
「ええ」
後片付けだけ終わらせ、俺は部屋に上がる。
「……意外にいい部屋だな」
仮工房も兼ねてるから、広くなくちゃ困るけど。
「さあ、寝よ寝よ」
備え付けだったらしいベッドに飛び込み、掛け布団にくるまって横になる。
(あ、やば……即寝れる)
同年代の女の子がひとつ屋根の下にいるというのに、我ながら大した神経だ。
そんな思考を最後に、俺は瞼を閉じた。
目覚めたのは昼頃だった。
一階に降りると、母さんと香が昼食を作っていた。
「あ、お兄ちゃんおはよー。毛布ありがとう」
「ん?お、おう……」
思い出すな、思い出すな。
「っていうか、俺以外みんな起きてたのか?」
「キャスターちゃんも割と早かったよ」
「キャスターちゃん……」
そのまんまだな。
真名で呼ぶよりは……まあいいか。
この二人に限って誘拐されて尋問なんて可能性はないだろうけど、念には念をだな。
「おはよう、キャスター。よく眠れたか?」
「ええ、まあ」
「そっか。良かった」
口数は少ないが、別に寡黙というほどではないし、返事もしてくれる。
悪いやつじゃなさそうで、良かった。
「さて、お昼ごはん食べようか!」
「今日はフレンチトーストだよ!」
「例によって生クリームたっぷりのあれか……」
朝食っぽいメニューだが、朝は何も食べなかったからな。
「あ、キャスターさんのは、好みがわからないから、生クリームつけてないよ。欲しかったら言ってね?」
「いらないわ」
「そう?わかった」
いつも通りに一人加わり、騒がしい朝食が始まる。
「相変わらず美味いなぁ……。ちょっと甘いけど」
「でしょ?アタシとお母さんの愛がたっぷりだからね!」
「その通り!」
「甘さがそのせいとか言うなよ……」
だがまあ、紅茶と一緒なら、ちょうどいい。
キャスターも同じなようで、フレンチトーストと紅茶を交互に口に含んでいる。
サーヴァントも普通に食事するんだなー、などと考えていると、正面の母さんが口を開く。
「そういえば薫、今日はどうするの?」
「……威力偵察に行く」
「……とうとう本気で動くんだね」
「ああ」
空気が変わり、のどかな昼食から作戦会議を開始する。
「キャスター、食事が終わったら、すぐに出よう。やってほしいことがある」
「わかったわ」
「香、屋敷は任せるぞ」
「OK!任せて、お兄ちゃん! 」
「母さんも、念のため準備をしてほしい」
「はいはい」
三人に指示し、俺は最後のひと切れを頬張った。
作者はFateの曲の中だと、『MEMORIA』が一番好きです
『溢れ出す気持ちを教えくれたから この世界がなくなっても私はそこにいる』の歌詞が大好きです
Fateっていい曲多いですよね