最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た   作:雪希絵

33 / 49
最近FGOがサボり気味です……

新しい特異点も来たことですし、やらなくてはいけないのはわかるのですが……

はあ、週休五日くらいになりませんかね……(´・ω・`)


薫の本気

「使えない……?何でだ?」

 

まず真っ先に、それが思いついた。

 

宝具とは、英霊の生前の逸話、印象に残るエピソードなどが形を成したものだ。

 

その性質上、基本的には武器や道具などが宝具になりやすい。

 

宝具は大抵は英霊一騎に一つか二つ。

 

キャスターこと『久遠寺有珠』は英霊でもとりわけ多い、四つの宝具を使うことが出来る。

 

真名が分からなくなったわけでもないのに、それがなんで使えないんだ?

 

「あんた、何言ってんの?あれだけ自由に操ってたじゃない」

 

青子さんが額に手を当て、呆れたように言う。

 

「グレートスリーでも最も攻撃力の高い、過去にうちのクソ姉貴の人形20体以上を貪り食った、あのプロイが使えない?どういうことよ?」

 

青子さんは既にキレ気味だ。

 

感情が高ぶっているせいなのか、魔力が周囲に溢れ出て、強烈な光を生み出している。

 

(……ん?なんで青子さんが怒るんだ?)

 

強力な宝具なら、解放しない方がいいはずだ。

 

勝負に勝つのなら、相手が不利な方がいいに決まっている。

 

(全力の相手に勝たないと気に入らないってタイプなのか?)

 

ダメだ、魔法使いの考えることはわからん……。

 

「貴女には関係ないわ、青子」

「あるわよ。現在進行形で戦ってんでしょうが」

 

図星を突かれたのか、キャスターが押し黙る。

 

「……キャスター?使えない理由の心当たりとかあるのか?」

「……ない………わけではないわ」

「どんな?」

「恐らく、宝具にまだ至ってないのかもしれないわ」

「宝具に至ってない?」

 

頭いっぱいに浮かぶクエスチョンマーク。

 

もう俺には何が何だかわからない。

 

脳筋魔術師の限界という事だろうか。

 

「ああ……なるほど。そういうこと」

 

対して、青子さんは納得したようにそう言って鼻を鳴らす。

 

「なら、このまま続けて無理やり呼び覚ますか……」

 

ポキポキと拳を鳴らして、青子さんがそう言う。

 

(容赦ないな、この人……!)

 

魔力切れだろうが、歯が立たない格下だろうが、容赦なく潰すつもりらしい。

 

しかし、ただで負けてやるのは性にあわない。

 

(ここが夢なら、無茶しても問題ないはずだ。だったら、切り札を切る……!)

 

「───起動(アクティブ)反転(リバース)

 

覚悟を決め、俺は詠唱を開始する。

 

第一工程(プロセスワン)完了(クリア)第二工程(プロセスツー)完了(クリア)

 

キン……キン……と澄んだ音が鳴り、それに比例するかのように脚の痛みが増す。

 

(耐えろ……もってくれよ……俺の身体……!)

 

全魔術回路(フルロード)逆装(リロード)完了(クリア)

 

何をしているのかわかっていないのか、はたまた楽しんでいるだけなのか、青子さんは何もしない。

 

いや、恐らく後者だろう。

 

証拠に、目が明らかに楽しそうな色をしている。

 

(後悔すんなよ……!)

 

全行程終了(オールクリア)

 

そう宣言した瞬間、まるで銃をリロードしたかのような音が響く。

 

そして、両脚の魔術回路が更に光り輝き、ギチギチと締め上げるように収縮した。

 

術式変更(タイプチェンジ)……『ファランクス』!」

 

起動が終わった瞬間、俺は全力で地面を蹴った。

 

砂埃が舞い、大気に消えていく。

 

次の瞬間、

 

「!?」

 

驚く青子さんの顔に、俺は容赦なく蹴りを叩き込みにいった。

 

「しっ──!」

「やばっ………!」

 

危機を察知したのか、青子さんはまるでイナバウアーの如く回避。

 

「ちっ!」

 

舌打ちするが、これは計算内。

 

振り抜いた蹴りの勢いを利用し、すぐさまもう片方の脚で回し蹴りを放つ。

 

「こんの……!?」

 

青子さんは右手に魔力を込め、殴ることによってそれを防御。

 

「いっ……たぁ……!?」

 

どうにか弾きはしたが、青子さんはそう言って拳を左手で抑える。

 

その間に一歩飛び下がり、大地が抉れる程に踏み込んで加速。

 

胴体に膝蹴りを叩き込む。

 

「あんまり舐めないでよねッ───!」

 

その直前、青子さんは右手から放った魔弾をジェット噴射のように使い、蹴りを回避。

 

「とっとと寝なさい!」

 

光り輝く右手の魔術回路。

 

大砲のような音を響かせ、先程ついでのように放って来た魔弾とは、比べ物にならない魔弾が飛んでくる。

 

「せいやぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

気合い共に、俺はその魔弾を思い切り蹴る。

 

「嘘っ!?」

 

激しい青色の爆発。

 

それが晴れた時、俺は普通にその場に立っている。

 

「……あんた、まさか……!全魔力を、攻撃振ったの!?」

「………ご明察ですよ、青子さん」

 

『ファランクス』とは、俺の持つ魔術回路の全てを、攻撃力に振ったモードだ。

 

本来なら設定通りの働きしかしない魔術回路を強引に書き換え、相手を打撃した時の攻撃力一点に絞る。

 

そうすることで、ダメージと副効果としてスピードの向上が出来る。

 

「薫……っていったっけ?確かに大した攻撃力だけど、さっきまでの身体強化とダメージ分散はどこいったのよ」

「そんなもの、捨て置きましたよ」

「あんたバカ!?」

 

唐突に青子さんが叫んだ。

 

後ろを見ると、キャスターも非難するような目を向けている。

 

「それはつまり、脚以外は生身で私の魔弾を受けるって言ってるようなもんよ!?」

「……そうでもしないと、あなたには勝てないので」

 

そもそも夢の中だしな。

 

妙に痛みがリアルだけど。

 

「……はあぁぁぁ。まともな奴かと思ったら、やっぱぶっ飛んでるわ。主に思考が」

 

長いため息をついて肩を落とした後、青子さんは右手をこちらに向ける。

 

「いいわ。あんたの心意気に免じて、全力で迎え撃つ。覚悟しなさい」

 

そして、再びその手に魔力を流し込んだ。




お読み頂きありがとうございました!

それでは、また来週お会いしましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。