最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
あれはダメですね
型月最強生物ですね
誰が勝てるんでしょうか
青子さんの右腕の魔術回路がさらに輝く。
強烈な閃光に思わず目を細める。
あれだけの出力の魔術回路を回したら、普通は悶絶する程痛いはずだ。
しかし、青子さんは顔を顰めるだけで、それを飲み込んだらしい。
澄んだ高い音が鳴り響き、右腕に猛烈な魔力が満ちる。
少なくとも俺には、こんな馬鹿でかい上に硬いゴーレムをどうにかすることはできない。
だが、青子さんは舌打ちをしながら、
「あんたは、お呼びじゃないんだっての!!!」
叫び、右手を振るう。
直後、空間が爆ぜた。
そう思わせる程の熱量と大気の振動。
先程までとは比べ物にならないサイズの魔弾が、橋の巨人に向かって放たれる。
その威力を感じ取ったのか、橋の巨人は拳を振り下ろす対象を変更。
魔弾を正面から迎撃する。
青く輝く魔弾と、石が密集した巨大な腕が衝突。
キイィィィィィィィ────!!!!
「───っ!なん……だよ……これ!?」
衝突位置は離れているはずなのに、吹き飛ばされそうな衝撃が起こる。
涼しい顔で棒立ちしているキャスターの方が異常だ。
「くそっ、橋の巨人は!?」
少し時間が経ち、土煙と閃光が晴れる。
顔を上げ、ゴーレムの方を見る。
そこに居たのは、
「────嘘だろ」
片腕が吹き飛んだ、橋の巨人の姿だった。
俺の魔弾どころか、自分の魔力全て注いだ蹴りでも、出来るかどうかわからない所業。
そもそも、やったらやったで片脚が千切れそうな気がする。
それを、魔弾一発で簡単にやってのけた。
「これが……魔法使い……次元が違い過ぎるだろ……!?」
それでも橋の巨人は揺るがない。
残った左腕を握り込み、その拳を真っ直ぐに振り下ろす。
「邪魔邪魔邪魔あぁぁぁぁ───!」
それに対し、青子さんは叫びながら右腕を振りかぶり続ける。
至る所に魔法陣が現れ、魔弾を作り出す。
さっきまでよりも小さな魔弾だが、数が異常だ。
機関銃とでも言えるような連弾が、次々と橋の巨人に着弾していく。
その度に身体が抉れ、ひび割れる。
時折放たれるレーザーのような魔弾は、ゴーレムの身体を貫く。
ゴーレムも負けじと残った身体で応戦する。
その巨大さと迫力は、片腕を失ってもなお力強い。
「大怪獣戦争かよ────!」
戦艦VS怪獣を思わせる戦いに、率直にそんな感想が出てしまう。
「キャスター……!」
何か手はないかと、キャスターの方を見る。
「……………なに?」
しかし、キャスターの反応がやけに鈍い。
心なしか、表情も余裕がないように見える。
(そうか……流石に宝具となると、維持に魔力を食われるのか……)
『
魔力でプロイキッシャーなら何でも作れる代わりに、召喚にも維持にも莫大な魔力がいる。
「だったら俺が!」
何が出来るかはわからないが、気づかれないように接近。
「あんたも邪魔!」
しかし、もはや後ろに目がついているのかというレベルで反応し、
「しっ────!」
右腕を一度だけこちらに向け、魔弾を放つ。
その一瞬で放たれたものとは思えない巨大さの。
「これは無理────!」
急ブレーキし、足裏に魔弾を炸裂。
右側に飛び込むように魔弾を回避する。
地面に着弾し、弾が爆発。
思わず閉じた目を開いた時には、軽くクレーターが出来ていた。
しかも、ついでに放ったような魔弾でこれだ。
今も、青子さんは橋の巨人との大怪獣戦争を続けている。
キャスターも、プロイの維持に手一杯だ。
………いやもう、勝ちの目なくね?
お読み頂きありがとうございました!
それでは、また来週お会いしましょう!