最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た   作:雪希絵

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時間過ぎてしまって、申し訳ありません!

もう間に合わないと判断したので、しっかり書くことを優先させて頂きました!

お楽しみいただければ嬉しいです!

ごゆっくりどうぞ!


夢の続きは

何かに呼ばれている予感の正体は、どうやらこの屋敷らしい。

 

理由は単純、この屋敷の姿を認識した瞬間、呼ばれている感覚が強くなったからだ。

 

「……入るか」

 

迷いなく、屋敷の敷地内に入り込む。

 

誘われている感じはするが、罠だとかそんな可能性は考えられない。

 

「そもそも、誘われている感じからして嫌な予感がしないんだよな……」

 

呟きつつ、門を潜って中庭に入る。

 

とはいっても、さほど大きい中庭ではない。

 

草は手入れされていないのか、かなり伸び放題。

 

ツタまみれの外壁は、それこそ手の施しようがない程に荒れている。

 

「母さんと香が見たらショック死しそうだな……これ……」

 

綺麗好きの二人からしたら、こんな光景は許して置けないレベルだろう。

 

死ぬまではいかないまでも、しばらく気絶した後に、般若のような形相で掃除を始めることは間違いない。

 

「……思い出したくない」

 

俺の地下工房に起こった惨劇について思い出しそうだったため、もう考えるのをやめる。

 

屋敷に近づくと分かるのは、ガラス張りの窓が多いこと。

 

そこら辺は、むしろ俺の元の家に似ている。

 

月光を取り入れられるように作られているわけだが、ここも似たような作りだろう。

 

そんな玄関の扉を開き、中に踏み込む。

 

月明かりと窓の効果なのか、そこは相当に明るい。

 

外装の割には、中は綺麗だ。

 

散らかっている様子もない。

 

目の前には階段があり、二階に続いているようだ。

 

けど、何か違う。

 

呼ばれているのは、そこじゃない気がする。

 

ふと、右側を見る。

 

迷いなく扉に手をかけ、勢いよく扉を開く。

 

中は、どうやらリビングのようだ。

 

月明かりが照らす室内は、高そうな家具が多数置かれている。

 

一人がけ用のソファ、小さなテーブル、今時珍しい古い型のテレビ。

 

特に高そうなのは、床に引かれた絨毯。

 

素人目にもわかる、相当良い品だ。

 

一歩、一歩、ゆっくり踏み出し、部屋の真ん中まで歩みを進める。

 

外からも見た、大きな窓の側。

 

小さな、小さなティーテーブルと、一つのアンティーク調の椅子が置かれている。

 

そこに、彼女はいた。

 

「……お前だったのか」

 

彼女の姿を確認した瞬間、呼ばれている感覚の正体がわかった。

 

「……キャスター。お前がここに呼んだのか?」

 

彼女……キャスターは手にしたティーカップを置くと、立ち上がってこちらを見る。

 

月明かりに照らされるキャスターは、なんだか少し若いような気がする。

 

その黒髪も、髪型も、漆黒の瞳も、白磁のような肌も、その美貌も何も変わってない。

 

けれど、俺の知っているキャスターより、少しだけ幼いように見える。

 

「……ここは私の記憶の中、私が過去に過ごした場所よ」

「だろうな」

 

確認するように解説するキャスターに、俺は頷く。

 

なんとなく、それはわかっていた。

 

俺の記憶には全く無かったしな。

 

「ここには元々私が一人で住んでたのだけれど。一人居候が転がり込んできたわ」

「居候?」

「ええ。……魔法使いの、ね」

「────っ」

 

(そういうことか……!)

 

起動(アクティブ)────!」

 

全力で飛び下がりながら、俺は叫ぶ。

 

出来るかどうかは賭けだったが、脚の魔術回路は問題なく起動した。

 

「────へえ。なかなかいい反応じゃない」

 

月明かりの影から、誰かの声がした。

 

女性の声だ。

 

恐らくは、俺よりもそれなりに年上。

 

コツコツ、と足音が静寂の中で鳴り響く。

 

やがて、その女性が月明かりの当たる範囲に来た。

 

腰まである長髪、ラフな白いシャツにジーンズ。

 

最も目を引くのは、その髪が真紅であること。

 

気の強そうな瞳は、まっすぐ俺たちを射抜いている。

 

「────青子」

 

久しぶりの友人に会ったような、それでいて怒りに似た感情が込められているような、色々なものが混ぜこぜになった声。

 

「────久しぶり、有珠。何年ぶり……とかは魔法使いには関係ないわね。そんなこと言ってたら、あのジジィに笑われるわ」

 

あはは、と笑いながら、青子と呼ばれた女性はそう言う。

 

「そうか……思い出したぞ。五人目の魔法使い、第五魔法『青』の使い手。お前が、『蒼崎青子』!」

 

現存する四人の魔法使いの一人、戦争屋の蒼崎が根源に至った故に作られた、第五魔法使い。

 

本物の魔法使いが、なんでこんなところに……!




如何でしたでしょうか?

急に出てきちゃうところが、実に彼女らしい気がします

この先のどうなるのか、見守って頂けると幸いです!

それでは、また来週お会いしましょう!

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