最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
これを投稿した頃には、私は山にいることでしょう
圏外になっちゃうので、予約投稿なのです
「ここまででいいよ。ありがとう」
「そうかい?わかった、気をつけて」
「今日は助けてくれてありがとうございました」
「いいってことよ」
屋敷の下の坂道までたどり着き、俺はそこでセイバーと別れることにした。
ここまで来れば結界も届くし、何かあっても陣地のバックアップがあればどうにかなる。
屋敷には、あの二人も待機してるしな。
「それじゃ、またなんかあったら連絡してくれ。おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ、薫」
キャスターを背負い直し、俺はゆっくりと坂を登る。
何だかんだ結構長いんだよなぁ……。
「それにしても、強かったなー。ランサーもキャスターも」
暇になり、戦闘のことを思い返す。
施しの英雄カルナ。
あいつは本当に強かった。
あの自由に操れる炎に加え、セイバーと互角以上に戦ってみせた槍の技量。
その上、あらゆるダメージを無効にする鎧の宝具。
どうやったら勝てるんだってくらいだ。
ただ、それと正面から打ち合ったセイバーも凄かった。
しかし、その二人が霞むほどに、キャスターの強さは半端じゃない。
特に、あの固有結界。
固有結界といえば、魔術の中でも特別な存在だ。
魔法に最も近いなんて言われてるわけだし、自分の心象世界を現実に投影するなんて、正直言ってむちゃくちゃだ。
加えて、キャスターは赤憐のマスケットで、カルナに致命傷を与えられる。
キャスターさえいれば、上級サーヴァントばかりが集まる、この聖杯戦争を勝ち抜ける。
「……ほんと、良かったよ。俺のサーヴァントがキャスターで」
ポツリ、と呟き、坂登りを再開する。
───────────────────────
「────ん……?」
「お?」
半分ほど登った時、キャスターが僅かに身じろいだ。
「気がついたか?体は大丈夫か?」
「……ええ」
声は小さいが、どうやら大丈夫そうだ。
「良かった……ちゃんと治療効いたんだな」
ほっ、と息をついて、そう呟いた。
「そう……。迷惑、かけたわ」
「気にすんなよ。俺はお前のマスターなんだし」
笑ってそう言うと、キャスターは少しの間黙った。
そして、独り言のような声量で、話始めた。
「……前にも、あったわ。こんなようなことが」
「そうなのか?」
こくり、と頷く気配がする。
キャスターが続ける。
「まだ生きてた頃に」
俺は無言を貫く。
たぶん、そうした方が続けやすい思った。
「管理地の侵入者と戦った時、ある人に背負われて、家まで送ってもらったわ」
肩に置かれた手に、力が籠る。
思い出したくないのか、はたまた話したくないのか。
俺には分からない。
「そうか……」
それでも。
「なんか、嬉しいよ」
顔は見えないだろうけど、俺は微笑みながらそう言う。
「キャスターが、そうやって自分のことを話してくれるなんて、思わなかったからさ。どんな話でも、してくれるのは嬉しいよ」
「そう……。変わってるわね……マスターは……」
「そうかな?……ま、そうかもな」
キャスターが再び眠ったのを感じ、苦笑しながら呟く。
「ま、変わったサーヴァントのマスターなんだ。変わっててもいいだろ?」
それが聞こえたのか、ただの偶然なのか。
キャスターの手に、再び力が篭った。
お読みいただきありがとうございました!
なんか最近ペースが遅い気がしてきたので、ここら辺からちょっとペースを上げようと思ってます
ひょっとすると、このままでもいいって方もいるかもしれませんので、徐々に上げていきますね
それでは、また来週お会いしましょう!