最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
やっぱりいいですね、絵も綺麗ですし
ほんのちょっとずつしか進んでませんけども
「おい!キャスター!しっかりしてくれ、キャスター……!」
よく見てみると、キャスターの身体は酷いことになっていた。
一部どころか、左半分はほぼ炭化。
特に、腹部や腕などは、皮膚が崩れて内臓が見えている。
どこからどう見ても即死レベルの大怪我。
「キャスター……!なんでこんな……!」
「決まっている、キャスターのマスターよ」
どうにか治療するためにポーションを引っ張り出していると、ランサーが槍を握り直してそう言った。
「……どういうことだ」
「想像が出来るだろう。キャスターは、お前を庇ったのだ」
「────!?」
驚愕するが、考えてみれば当然だ。
カルナの炎は、太陽の加護を受けた炎だ。
ただの魔術師でしかない俺が、いくら黄金のヴェールとセイバーの風の力で守られたとはいえ、耐え切れる代物じゃない。
だとすれば、その他に威力を減衰する要因があったに決まっている。
そしてそれは、キャスター以外に考えられない。
「キャスター……なんて無茶を……!」
思わず肩を握る手に力が籠る。
相棒の惨状に、思わず涙が滲む。
「マスターを守ろうとしたその意思には敬意を称する。だが、戦場で容赦はできない。構えろ、キャスターのマスター」
「……言われなくても」
やってやるよ、そう続けようとした時。
二つの異変に気がついた。
ずるっ………、といったような柔らかいものが引き摺られる音。
それと共に、キャスターの身体がビクリと震える。
「え……?」
慌ててキャスターを見下ろし、戦慄した。
崩れた腹部が。
その中の内臓が。
炭化した身体が。
全てが、青白く輝いていた。
見覚えのあるそれは、まず間違いなく魔術回路。
ただ、その数が多すぎる。
骨や内臓にすら及ぶ、おびただしい数の魔術回路が、身体中で光り輝いて強引に傷を再生する。
(そうか……これが耐久Aの理由……!)
全身の隅々まで張り巡らされた魔術回路が、重症を追う度に再生するからこその耐久力。
大した時間も経たず、キャスターは身体を起こした。
「キャスター!?大丈夫なのか!?」
「ええ。一応、動けるわ」
フラフラと足元は覚束無いが、それでもキャスターは立ち上がる。
そして、それに合わせて顔を上げた時、先程の異変の正体に気がついた。
近くからした、多数の物音。
その正体は、無数の金属の塊。
金属片や鉄の棒などが固まって出来た、大量のゴーレム。
動きは緩慢だが、まるでこちらを押し潰そうとしているかのように距離を詰めてくる。
「くそっ、新手か────!」
キャスターの隣に並び立ち、構えをとる。
しかし、
「大丈夫よ、マスター。全部味方だから」
と言い、キャスターが俺を片手で制した。
すると、思い至ったようにランサーが呟く。
「──────そうか。これは宝具か」
自らの元へ集いつつあるゴーレムを見据え、さらに続ける。
「緑の霧を発生させて結界を作り出し、内部の忘れられたものを再生。クリーチャーとして仮初の命を与える宝具。聞いたことはあるが、これ程の魔力とはな」
宝具『
一定範囲内に魔力を充満させ、領域内の廃品や過去の遺物を再生し、動き出させる固有結界。
今この時、この廃工場は異界と化しているのだ。
「となれば、お前の真名は、稀代の人形師『久遠寺有珠』か」
「ご明察よ。施しの英雄『カルナ』」
「そちらも分かっていたか」
「ええ」
それだけ言葉を交わし、槍を構えるランサー。
キャスターも足並みを整え、腹部を抑えながら右手を突き出す。
「行きなさい」
「ふっ──────」
キャスターの指示でランサーにゴーレムが殺到し、それを向かい打とうと槍を振るう。
炎を纏った槍が一閃するだけで、ゴーレムは次々と溶解する。
縦横無尽に槍を振り回し、ゴーレムを文字通り薙ぎ払っていく。
だが、敵はそれだけじゃない。
「──────!」
ランサーが咄嗟に飛び下がる。
半秒後、鉄パイプが床に突き刺さる。
上を見上げれば、そこには鉄パイプで構成された弓兵。
気がつけば、周囲の霧はさらに濃くなっている。
どうやら、時間が経てば経つほどクリーチャーは強力になるらしい。
(すげぇ……これが、キャスターの全力か……!)
目の前で繰り広げられる激戦に、俺はただただ唖然としていた。
お読みいただきありがとうございました!
ようやくキャスターの宝具の一つが出せました
本編でも重要な役回りでしたから、これくらいの扱いでなきゃいけませんよね!
室内で使えるのかどうかとかは突っ込まないでくださいお願いします
それでは、また来週お会いしましょう!