最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た 作:雪希絵
それでは、ごゆっくりどうぞ!
次の日の夜、俺は屋敷にいた。
傷も治り切ってないし、ひとまず安静にしていようと考えたからだ。
そんな時、携帯が鳴った。
待ち受けも何も確認せず、俺は手に取って通話ボタンを押す。
「もしもし?佐伯さん?」
緊急時にすぐに取れるように、着メロを他と変えてあるのだ。
「薫さん……!はぁ……はぁ……!」
電話越しに聞こえる声は、どこか緊迫としている。
「どうした!?何かあったのか!」
佐伯さんは荒い息を吐き続き、深く深呼吸をした後に、
「さ、サーヴァントですっ……!サーヴァントが襲ってきました!」
と言った。
「────すぐに行く。どこだ?」
「駅前の裏路地です!駅からはそう離れてません!」
「わかった。あと少しだけ耐えてくれ」
「はい……!お願い、します……!」
「ああ」
簡潔に答え、電話を切る。
「キャスター」
「話は聞いたわ。準備は出来てる」
「お兄ちゃん。はい、礼装」
どうやら、俺の口ぶりから内容を察したらしい。
全く、頼りになることこの上ない。
「ありがとう、香。いってくる」
「いってらっしゃい。キャスターさんも、気をつけてね」
「……ええ」
母さんが急ピッチで修理してくれた魔術礼装を身につけ、グローブとブーツを強化。
「────
仕上げに、魔術回路を起動。
服越しでもわかるほどに青白く輝く両脚。
玄関を飛び出し、踏ん張りをつけて勢いよく走り出す。
その隣を、キャスターは滑るようについてくる。
「キャスター。魔力の反応とかはキャッチできるか!?」
「ここからでは難しいわね。駅前まで近づけばできるわ」
「充分だ、頼む!」
以降は一心不乱に走り続ける。
冷たい風が叩きつけられ、身体は冷えていくが、走ることによって寒さは全く感じない。
普通にいけばかなり時間がかかるが、今の俺なら五分とかからず駅にたどり着ける。
あっという間に駅付近まで来ると、不意に、
「マスター。こっちよ」
といって指をさす。
片足を強引に踏み込み、方向を無理やりそちらに変更し、ほぼ減速なしで曲がる。
キャスターが指をさした方に向かうこと数分、金属音が鳴り響いて来た。
まるで巨大な金属同士を打ち付けあっているような、腹の底に響く音。
「さすがだキャスター!」
「ええ」
どうやら、音は近くの廃工場からするようだ。
廃工場とはいってもかなり広く、サーヴァント同士が争っても充分なスペースを確保できるほどだ。
しかも、慎重なことに音遮断の結界まで付与されており、壁には強化の付呪がされている。
「かなり慎重派みたいだな。相手のマスター」
廃工場の入り口を探し、中に入りながら呟く。
廃工場の中央に行くにつれ、音は大きくなっていく。
ここまで来れば、例え素人でも剣戟の音だと気がつくだろう。
ようやく辿り着いた廃工場のど真ん中。
そこでは、二騎のサーヴァントが激しい戦いを繰り広げていた。
「はぁ!」
一人はセイバー。
その不可視の大剣を振り下ろし、魔力放出も伴った轟音を響かせながら相手のサーヴァントに迫る。
それをもう一体のサーヴァント、ランサーは黙って見つめる。
ランサーはギリギリまで近づいた剣を最小限の動きで受けると、その槍に炎を纏わせ始めた。
それを見たセイバーは、急いで炎が届かない位置まで飛び下がる。
そして再び斬りかかり、魔力放出も駆使しながらランサーの激しすぎる攻撃を避けていく。
だが、そんなランサーの背中はこちらを向いている。
セイバーに集中しているからだろう。
「いくぞ、キャスター!」
「ええ。任せて」
身を隠していたコンテナから飛び出し、全力の踏み込み。
キャスターは右手に意識を集中し、
それを尻目に、俺はさらにスピードを上げる。
ここまでくるとさすがにランサーを気がついたのか、槍を俺の方に向け……ようとしたが、
「甘いっ!」
セイバーが防いだ。
「食らえ……!」
魔力を集中した右足による蹴り。
それはランサーに直撃はしなかったが、それでも弾くことは出来た。
セイバーとランサーの間に、少し大きめの間ができる。
立ち上がり、辺りを見渡すと、ここより少し離れたところに佐伯さんがいるのがわかる。
彼女は俺の方を見ると嬉しそうに顔を輝かせ、
「薫さん!」
と叫びます。
「よぉ、お待たせ。セイバー、佐伯さん」
「薫……!」
「感動してる暇じゃねぇぞ。さっさと片付けよう」
「ああ。背中は頼むよ」
「まかせな」
そうして、俺たちの初の共同戦が始まった。
眠いです!
書いてる最中にも寝落ちしそうでした
今回はなんとか書けましたが、次からは分からないのでストック作っておきます
では、また来週お会いしましょう!