最強のキャスター呼んだら最強の人形師がやって来た   作:雪希絵

10 / 49
また日にち過ぎたー!

すみません!寝落ちしてました……!

うぅ、ベッドの上で書くものではありませんね……

これからは枕元にミンティアを用意しておきます……


大切なもの

「お前ら、何を企んでる?」

 

しばし放心した後、最初に口をついて出たのはそれだった。

 

キャスターはすでに準備万端。

 

俺も魔術の起動準備は終わり、感覚を拡張する魔術で周囲を警戒する。

 

一番最初に疑ったのは、不意打ち。

 

話を持ちかけて油断させ、攻撃してくるパターン。

 

しかし、今こうして目の前にいるが、攻撃を仕掛けて来る気配はない。

 

そうなると、可能性が出てくるのは、周囲に予め罠か使い魔などの攻撃手段を配置しておくこと。

 

そういうわけで、全力で警戒しているわけだが……。

 

「……………」

 

二人は無言で、頭を下げ続けるだけだ。

 

これでは埒が明かない。

 

(どうしたもんか……)

 

話が進まず、困り果てていた時だ。

 

「……マスター」

 

キャスターが小声で俺を呼んだ。

 

「どうした?」

「『黄金のヴェール』の準備が出来たわ。大抵のことは防げるから、話を聞いても問題ないわ」

「……お、おう」

 

正直、ちょっと意外だ。

 

どうやらキャスターは、遠回しに詳しく話を聞くことを望んでいることを伝えてきたようだ。

 

まあ、そういうことならいいか。

 

「……頭を上げろ。一応、理由を聞くだけ聞こう」

「!? あ、ありがとうございます!」

 

俺がそう言うと、マスターの方が勢い良く頭を上げ、お礼を言いながら再び頭を下げる。

 

「礼はもういい。それで、どうして俺たちと共闘したいんだ?」

「それは僕から話そう。昨日の戦いの際、乱入してきたサーヴァントのことだ」

 

どうやら、事は昨日の黒いサーヴァント、バーサーカーに関わることのようだ。

 

「僕達……というか、僕の見解ではあれはバーサーカーだと思う。君達はどう思う?」

「同感だ」

「やはりね。それで、そのバーサーカーとの戦闘中のことなんだが……彼女の、僕のマスターの大切な物が、あのバーサーカーに奪われてしまったんだ」

「……そんな暇はなかったように見えたが?」

 

あの時、確かにセイバーとバーサーカーは戦っていたが、すぐに俺が横槍を入れたはずだ。

 

「実は、マスターを押した時に、首にかかっていたペンダントが外れてしまったんだ。それをどうにか途中で拾ったんだが、手負いで防御で手一杯になっている間に、バーサーカーに奪われてしまった」

「つまり、バーサーカーはそれを持ったまま吹っ飛ばされたわけか」

「そういうことになる」

 

なるほどね、だいたい話が見えて来た。

 

「つまり、バーサーカーを倒してそのペンダントを取り戻すのに協力しろと?」

「はい。お願いします。あのペンダントは、おばあちゃんから貰った唯一の形見なんです。どうか、私達に協力しては貰えませんか?」

 

今度はマスターがそう言い、涙目で見つめてくる。

 

どうやら、本当に大切なものらしい。

 

「キャスター」

「なに?」

「どう思う」

 

これは俺の一存で決めるものじゃないだろう。

 

というわけで、キャスターに尋ねる。

 

「……本当の話なら、悪い話じゃないわ」

「それはそう思う」

 

つまり、共闘期間の間は、相手のサーヴァントとマスターの二人に対し、こちらはサーヴァント二人と俺の三人で戦える。

 

それに、セイバーは間違いなく底抜けに強力なサーヴァントだ。

 

後方からの援護に適したキャスターと、セイバーの近接戦闘能力があれば、それだけで勝利の確立は格段に上がる。

 

「……その話、信じていいものか?」

「もちろん、こちらに騙すつもりなんかありません」

「証拠に、僕の真名と全てのステータスを明かそう。君達は特にそれを必要はない」

「そこまでするのか?」

「マスターの大事な物のためなんだ。それくらいはするさ」

「騎士道精神の塊みたいなやつだな」

「よく言われるよ」

 

そう言い、苦笑するセイバー。

 

釣られて、俺も苦笑する。

 

何故かはわからないが、この二人なら信じてもいい気がする。

 

「いいだろう。共闘しよう」

「ほ、本当ですか!?」

「ここで嘘つくほど卑怯じゃないさ。いいだろ?キャスター」

「お人好しね、マスターは。けれど、マスターが選んだことなら、従うわ」

 

……たまに思うけど、キャスターってすごい従順じゃね?

 

びっくりするくらい俺に従ってくれるんだけど。

 

いや、嬉しいんだけどね?

 

「それで、お前は誰なんだ?」

「ああ、もちろん開示するよ」

 

セイバーは言いながら、身体に力を込める。

 

直後、風がセイバーの身体を包み込み、数秒後には白銀の鎧に包まれた戦闘形態になった。

 

思わず身構えるが、彼はその不可視の剣を構えはせず、

 

「『風王結界(インビジブル・エア)』解除」

 

一言詠唱した。

 

突如として吹き荒れる突風。

 

細めた目を開き、再びセイバーの方を見ると……。

 

「……!」

 

そこにあったのは、黄金の剣。

 

肉厚の刀身に、シンプルながらも恐ろしいほど綺麗な細工。

 

光り輝く、美しい大剣だった。

 

「……驚いたわ」

「キャスター?」

 

横を見ると、僅かに目を見開き、驚愕した表情のキャスター。

 

「わかるのか?キャスター」

「一度聖杯に関わった者が、あの聖剣を見間違えるはずがないわ」

 

表情こそ無表情のままだが、言葉の端々から驚きが感じ取れる。

 

そして、続きを聞いた俺は、キャスターを優に上回るレベルで驚くことになる

 

「まさか、こんなところでお目にかかれるなんてね。円卓の騎士団最強の騎士王にして、ブリテン国王。聖剣エクスカリバーの使い手『アーサー・ペンドラゴン』」

「………………はぁぁぁ!?」

 

(アーサー・ペンドラゴンって……あのアーサー王!?)

 

いや、逆にそれ以外にない。

 

選定の剣『カリバーン』を抜き放ち、ブリテン国王となった騎士。

 

後に円卓の騎士を率い、多数の怪物を退治しながらブリテンを統べた、王の中の王。

 

「ってことは俺、知らないうちに伝説の騎士王と接近戦でやりあってたのかよ……」

 

よく生きてたな……。

 

「いや、正直驚いたよ。あの格闘術は見事なものだった」

「はあ……どうも」

 

あのアーサー王に褒められたよ、俺の格闘術。

 

天国の親父よ、泣いて喜べ。

 

「それじゃあ、私も自己紹介します」

 

アーサー王の衝撃で忘れていたマスターが、一歩前に出てそう言う。

 

「私は『佐伯芽衣』といいます。バーサーカーを倒すまでの間、よろしくお願いします」

「ああ、よろしく。俺は美月薫だ」

「……可愛い名前ですね」

「うるせえ、気にしてるんだ」

 

いきなり痛いとこ突っ込んできたな、こいつ……。

 

気を取り直し、キャスターの方を見る。

 

「それでこっちが……サーヴァントキャスター。真名は『久遠寺有珠』だ」

「「!?」」

 

驚愕する二人と、眉を顰めるキャスター。

 

そして、ため息をつき、

 

「なぜ、言う必要があるの?」

 

今までよりちょっと冷たい声で言われた。

 

うっ……まあ、やっぱり怒るよね……。

 

「だ、だって、フェアじゃないだろ?手を組むこと自体は、一応俺たちにもメリットはあるわけだし……」

「たしかにそうだけれど。せめて一言言って」

「ご、ごめんなさいでした……」

 

怒ってらっしゃる、盛大に怒ってらっしゃる。

 

しかし、そんな俺とキャスターの気まずい雰囲気を叩き壊し、元に戻ったセイバーが割って入る。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!?ま、まさか、本当に久遠寺有珠なのか!?」

「あ、あわわわわわ!?」

 

大慌てのセイバーと佐伯さん。

 

なんだなんだ、どうした。

 

「どうした?」

「どうしたもこうしたも、あの久遠寺有珠だろう!?君は驚かなかったのかい!?」

「いや、そこまで……」

「なんでですかぁ!?」

 

え、なに、もはや怖い。

 

ひたすら戸惑う俺に、セイバーは答えをくれた。

 

「久遠寺有珠といえば、魔法使いではないながらも、階位でいえば神代クラスにも並ぶ近代最高の魔女だろう?」

「え」

「一子相伝、魔法レベルの性能を持った使い魔を多数有する、最強の人形師ですよ!」

「え」

 

ぱちぱちと、目を白黒させ、キャスターの方を見る。

 

澄ました顔でこちらを見、ため息をつくキャスター。

 

(………………………うそーん)

 

そんな有名人だったのかよ、うちのサーヴァント……。




今回ちょっと短いですけど、以上です

なんか、有珠超いい子ですね

いや、もちろん理由はちゃんとあるんですけども……

まあ、それは後々ということで

お読み頂きありがとうございました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。