どうやら英雄が逆行した模様です   作:もこりん

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たとえほとんど誰にも期待されていなくても書くのである。
期待されてないところが俺クオリティー。

かと思いきや、感想が4件、お気に入り34件もあるではありませんか。
評価10はもっと考えてつけるものですよー。

ともかく、読者の皆様ありがとうございます。

注)時と場合と気分により、文体や口調どころか一人称と三人称までもが使い分けられるかもしれません。
  ご了承ください。

12月24日12時 誤字修正しました。報告ありがとうございます。


第1話

書類整理をしていたはずなのに、気づけば空を見上げていた。

 

いや、それだけであればナルトもそこまで動揺しなかっただろう。

もうとっくに成人しているのだから、酒に呑まれたことも一度ならずある。

さすがに、今回のようなひどい記憶の混乱は経験がなかったが、せいぜいヒナタに一日中怒られる程度で済んだであろう。

もっとも、愛妻家のナルトにとってはそれもひどく辛いことではあるのだが。

 

 

そう、何よりもナルトを動揺させたのは…

 

サスケに顔を覗き込まれたことだった。

 

「ナルト、さっさと立て。和解の印を結ぶんだ。」

 

イルカ先生らしき声が聞こえた。

しかし、いつもより妙に若々しかった。

よく見れば、サスケも幼い頃の姿だ。

 

ふと気づくと、身体中に痛みが走っている。

その中でも、受身を取らずに投げられたようなあの独特な痛みがナルトを襲った。

思わず起き上がろうとすると、身体に違和感を覚える。

どうも自分の身体が全体的に小さくなっているようだった。

 

 

そんな状況に、ナルトは動揺を通り越して720度ほど回り、かえって冷静になった。

それを抜きにしても、一応すでに火影として落ち着いた身である。

このくらいの動揺に、いつまでも身を任せてはいなかった。

 

まずナルトが考えたのは、これが夢である可能性。

もっとも納得出来るものではあるが、この場合は何も心配はいらないので一旦置いておく。

 

次に考えたのは、幻術であるという可能性。

しかし、すでに九喇嘛と打ち解けている今、普通の幻術は効かないはずだ。

そう考えたナルトの脳裏に、ある出来事がよぎった。

八尾の人柱力であり、ナルトよりもずっと先に尾獣と打ち解けていたキラー・ビーがなすすべもなくかかった幻術。

 

そう、無限月読である。

 

とはいえ、もし本当に無限月読ならば、火影であり、人柱力であるナルトが事前に知らなかったことに説明がつかない。

何せ、あの幻術には馬鹿でかいチャクラと図体を持つ十尾が必要だからである。

そもそも、この可能性を考えたところで何もできることはない。

 

そこで、ナルトは自らの経験を思い出す。

かつてナルトがサクラと巻き込まれた幻術、限定月読のことだ。

あれならば火影に気付かれずに事を進めるのも不可能ではない。

あの時はまだ九喇嘛と和解していなかったが、それでも共闘はした。

それなのに抜け出せなかったのは、それがとてつもなく強力だったからだ。

そんな限定月読だが、あの時はその世界でのナルト、メンマという名前ではあったが、それを打ち倒したことにより幻術から逃れられた。

この場合なら、頑張ればどうにかできる。

 

最後に、これが本当に現実である可能性。

この場合、忍界では知られていない新たな力を仮定することになる。

 

ナルトはここまで考えたところで一旦思考を止める。

ここで寝っ転がったままでは選択肢を一つに絞れない。

それに、元々ナルトはあまり考えるのが好きではなかった。

それは、火影になった今でも変わらない。

ついでに言えば、いつまでも寝っ転がっていても怪しまれるばかりである。

 

 

起き上がって周りを見渡すと、忍者アカデミーの校庭で、物の見事に幼くなった同級生たちが囲んでいた。

女子は皆サスケに黄色い歓声を上げている。

サクラやイノまでそうしているのを見ると、少し悲しくなった。

男子は幾分かこちらに目を向けているが、瞳に映るのは嘲笑ばかり。

いや、忍同期男子メンバーはこちらを心配そうに見てくれていた。

サクラとイノも見習ってほしくなる。

 

ふと後ろを振り向くと、幼いヒナタがナルトを見つめていた。

思わず数秒見つめ合ってしまったが、いつまでもそうしているわけにもいかないので、まだ若いイルカ先生の元へ向かう。

しかし、小さくなった身体のせいで思うように歩けない。

 

見れば、サスケはすでにドヤ顔でイルカ先生のそばに立っていた。

 

「遅いぞ、ウスラトンカチ。俺を待たせるな。」

 

サスケがそう言うと、さらに女子の歓声が上がる。

男子はさすがにうっとうしくなってきたのか今度はナルトを非難するような目を向ける。

ナルトは幼い頃に受けた差別を思い出し悲しくなったが、火影にまで上り詰める間にできた仲間達を思い、そんな悲しみを振り払った。

 

なんとかイルカ先生の前まで辿り着き、サスケと和解の印を結ぶ。

その時、ナルトはアカデミーでサスケと初めて組手をしたことを思い出す。

どうやら今はその組手の時まで戻っているようだと気付いたナルトは、これからのことを思ってため息をつくのであった。

 

謎の現象の中、これからのことを考えられるほどにナルトも成長したのだ。

 

 

 

この時、ナルトに見つめられたヒナタが顔を赤らめていたことに気づかないところは全く変わっていないのだが。

 

 




筆者の脳内捏造設定大暴露の術


限定月読

映画ROADTONINJAでオビト(トビ)がナルトとサクラにかけた幻術。
かけられたものの願望が反映される。
おそらく七尾までの力を使ったものと思われるが、ナルトはそこまで考えていない。
ナルトがメンマ(月読世界でのナルト)を倒した時に破れたのは、同じ世界に同一人物が二人存在することをお互いに認識したから、と考えるべし。

感想、評価、批評お待ちしております。


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