博麗育成計画   作:伽花かをる

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三話 EXステージなんぞ、マスパが100枚もあれば難なくクリアできる

「――聞くが良い。

 我が名は『バルバトス』。ソロモンの72柱の序列8位にして、我ら紅魔四天王に於ける『最強』の――」

 

「恋符『マスタースパーク』ッ!!!」

 

「ギャァァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――バルバトスが死んだか。

 フフフ……奴は四天王の中でも最じゃ――」

 

「恋符『マスタースパーク』ッ!!!」

 

「ギョァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……人間如きに負けるとは、魔族のツラ汚――」

 

「マスパ」

 

「ブリャァァァァァァァァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

  ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスタースパークッ! マスパーパークッ! マスパーキングッ!」

『ぎゃぁァァァァァァァッ!!!』

「……だんだん真名からかけ離れていってるわね」

 

 

 と、襲い掛かってくる敵の妖精メイドの団体を処理するマスタースパーク発射装置と化した『MARISA』に、また新たなスペルカードを渡しつつ言った。

 

 

「ファイアーフラッシュッ!!」

『エンダァァァァァァァイヤァァァァァッ!!』

「火属性になったじゃない」

 

 

 が、あくまで叫ぶ名前が違うだけで、襲い掛かってくる妖精メイドらを呑み込むのはいつもの純白の極光だ。

 霧雨魔理沙の十八番のスペルカード、恋符『マスタースパーク』。

 幻想郷に於ける決闘法、弾幕ごっこにて必要不可欠なアイテム『スペルカード』は、当たれば即死レベルの攻撃の火力を、一定水準まで引き下げるが――魔理沙のマスタースパークは、どこからどう見ても即死レベルの類だろうと、博麗霊夢は見る度に思っている。

 無論、スペルカードを使用しているのだし、この殺傷力の高そうな敵を呑み込む極大のビームに当たったからと言って死にはしない。ただ、死にたいと思えるほど痛い。一度この極光を身を持って経験したことがある博麗霊夢なので断言できる。

 

 

「霊夢ッ! おかわりくれっ!!」

「え、あーはい」

 

 

 ボーッと、マスタースパークが敵の妖精メイドを屠る様を眺めている内に、早くも魔理沙はスペルカードを切らしたらしい。 

 しょうがないなぁと思いながら、博麗霊夢は財布くらいの大きさの巾着袋から――無限に物を収納できる八雲印の『スキマポケット』から十枚のスペルカードを取り出し、それを魔理沙に手渡した。

 

 

「はい、私の代わりにガンバ」

「サンキュー。よーしっ、マスタースパーク三連だぁ!」

 

 

 マスタースパーク! マスタースパーク! マスタースパーク!

 

 高火力スペルを一気に連続で使用する魔理沙。

 

 

『おかぁぁさぁぁァンっ!!』

『キミ、親御さんイタっけ?』

『お助け、お助け申しまする……っ』

『死ねないのが逆にツライですはい……』

 

 

 阿鼻叫喚とはこの場を示す言葉か。

 殺傷沙汰にはなっていない(ならない)が、妖精メイド共の悲痛の叫びを傍聴している博麗霊夢はそう思わずにはいられない。

 

 まぁとは言え、魔理沙の行動は()()()()()()()()――妖精メイドらが襲い掛かって来なければ、博麗霊夢らは無駄な殺生(殺してないが)などせず、道中のメイドなんてスルーして、魔理沙が言うダンジョンへと足を進めていただろう。

 

 

「……この屋敷、お客様の対応が雑すぎるわね」

「マスタースパークッ! まったくの同意見だぜ。客は神様だろうに」

 

 

 と、軽口を交わしながら、敵を薙ぎ払い目的地へと進んでいく博麗霊夢一行。

 彼女らは決して客ではなく、紛うことなき侵入者なのだが……それを指摘する者は、ここには居なかった。

 

 

 

 

 

 

     ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――いや、あなたたち侵入者に相応しい対応だと思うけど」

 

 

 と、場面は変わって紅魔館にある大図書館。

 そこの管理者に任している、ゆったりとした薄紫のパジャマのような格好をした、紫色の髪の少女――パチュリーは、魔理沙たちが語った大図書館に辿り着くまでの経緯の話を聞いて、まず初めにその指摘を入れた。

 

 

「いやいやいやっ! 侵入者である前にお客様だぜ私らは! もっと敬意を払えってんだ」

「例え客だとしても、室内であんな馬鹿デカイ光線を放つ輩に、払うべき敬意があるとは思えないのだけれど」

「いやでもさぁ、前に来たときは何事もなくここに辿り着けたぜ?」

「そうでしょうね。この前までは、金髪の黒白が来たら武力行使の対応をしろなんて命令、妖精メイド達には下してなかったし」

「そうなのか――って、おい。お前の仕業かよ! 私が好きなのは分かるけど、そういう嫌がらせは止めろよな」

「盗んだ魔導書を返してくれたら考えるわ」

「…………身に覚えがないなぁ」

「目が泳いでるわよ」

「…………」

「……仲いいわね、あんたら」

 

 

 と、少し離れたところで魔法使い二人の会話を聞いていた博麗霊夢は、ボソリと口を挟んだ。

 博麗霊夢の声が聞こえなかったのか、その言葉に対する返答はない。

 まぁ見るからに仲良いのは明らかだし、問いかける必要は無かったか。

 そう自己完結し、博麗霊夢は何気なく会話を続ける魔法使い二人から目を逸らした。

 目を逸らした先に――

 

 

「――まぁ、あのお二人は『魔法を学ぶ者』という共通がありますからね。以前、異変でお会いになったときから、きっと良い友好関係を築くのではないかなぁと思っていましたよ」

「――――ッ!?」

 

 

 気配なく、悪魔的な両翼を持った紅髪の少女が立っていた。

 いきなり目前に現れたものだから、博麗霊夢は驚いてビクリと身体を揺らしてしまった。

 

 

「おっと、自己紹介もなく申し訳ありません――わたくし、そこに居られる偉大なる魔法使い、パチュリーノーレッジ様の秘書の任を与えられたしがない悪魔。もとい、しがない小悪魔の『小悪魔』という者です」

 

 

 名刺はなくて、すみませんね――と、小悪魔と自称する彼女は深く一礼した。

 

 

「小悪魔……下位の悪魔ということね」

「はい。正式な名は付けられてませんので、今のわたくしはただの『小悪魔』です。でも、長いので面倒であれば、愛称として『こぁ』とお呼びくださっても、結構ですよ」

「……結構です」

「はは、言葉遊びですか? 嫌いじゃないですよ、そういうの」

「…………」

 

 

 こいつ、苦手なタイプだ。

 あんまりはっきりとした嫌悪感を人(妖怪含む)に対して抱かない博麗霊夢であるが――この小悪魔は、生理的に無理だ。

 悪魔的な気性を肌で感じると言うか、悪そのものの気性を肌で感じるというか――ともかく接したくない。視認するだけで吐き気を催す悪意をヒシヒシと感じる。

 

 

「…………」

「あれ、もう話はおわりですかぁ? あのお二人の会話も長引きそうですしぃ、こっちもこっちで甘いお話をしましょうよぉ」

「……いえ、私、ちょっと魔理沙に言いたいことができたので」

「別に、あとでいいでしょ? 魔理沙さんが言ってましたが、霊夢さんと魔理沙さんって毎日のように遊んでらっしゃるんでしょ。はは、ほんと仲いいですねぇ羨ましいです……魔理沙さんが紅魔館に訪れるのは週に二回程度ですしぃ、霊夢さんと比べて、パチュリー様と会って話せる回数は圧倒的に少ないんですからぁ、自重してくださいよぉー」

「…………」

 

 

 小悪魔の媚びるような声。嫌悪感が胸から溢れ返りそうだ。

 やはり、生理的に無理だ――心が、この少女を容認しない。

 まるで、()()()のように――

 

 

「もぉ、無視しないでくださいよぉ」

「――ッ!?」

 

 

 小悪魔は音を響かせずに博麗霊夢に寄り、ギュッと密着した――抱擁した、と言うべきか。  

 寄り、抱くまでの時間はあった。博麗霊夢でも充分に避けられるくらい、のらりくらりと近付いてきたのに――あまりにも挙動が自然すぎたので回避できなかった。

 

 

「えいっ」

「――えっ」

 

 

 小悪魔は、博麗霊夢の股下に太腿を入れた。

 途端、博麗霊夢の背筋に悪寒が走る。

 

 

「やっ、やめな――」

「おっと声を出しちゃ駄目ですよ」

 

 

 小悪魔は手で博麗霊夢の口を塞ぐ。

 そして博麗霊夢の腰に手を回し、押し倒すように本棚の奥の壁際へと移り――魔理沙とパチュリーの死角になる位置に、踊るかのように移動した。

 

 

「ははっ、流石は()()()()の博麗の巫女――ちょっと強引になるだけで、こんなにあっさり連れ込めるとは」

「――――っ!!」

 

 

 抵抗できないまま、急に壁際に追い詰められたものだから――パニック状況に陥り、小悪魔が()()()()()()()に関わることを言っていたというのに気付けなかった。

 まだ霧雨魔理沙と、ある妖怪しか知らないはずのその秘密を――

 

 

「ねぇ、霊夢さん。私ねぇ、前に異変でお会いになったときから、ずっと貴女のことを想い続けているんですよ。朝から夜まで、夢にも出ている」

「――は、離しぇ」

「気になるんですよ貴女のことが。あぁ、これって恋なのでしょうか……」

 

 

 何を言っているのだろうか彼奴は。

 桃色の吐息が、博麗霊夢に掛かる――もしかして私、先程の妖怪襲撃とは違う意味で襲われているのだろうか? 今更だが、やっと事態を把握した博麗霊夢だった。

 現状を理解した途端、どっと背中から汗が吹き出るを感じた――博麗霊夢には同性愛の理解はあるが、決して自らそういうシミュレーションをされたいとか、そういうことは思ったことすらないのだ。男と女で言えば、当然男のほうが好きである。

 

 

「――は、離してぇ」

 

 

 博麗霊夢は小悪魔の抱擁から逃れようと奮闘する。

 が、彼女は妖怪。力は圧倒的に小悪魔が勝っていて、一度捕まってしまった以上は簡単には逃れられない。

 

 

「無駄な抵抗ですよ、霊夢さん。魔理沙さんとパチュリー様からはそこそこ離れていますし、大声で叫ばない限り、助けは来ませんよ――無論、()を開始しても口は塞ぎ続けますし、ばんじきゅーす、という奴です」

「――っ! ――っ!」

 

 

 小悪魔は妖艶に微笑み――最悪の宣告をした。

 どう考えても、これは助かれない。博麗霊夢の生存に特化した運は驚異的であるが――逆に言えば生存に特化し過ぎていて、命に関わる状況でないと発揮しなかったりするのだ。

 つまり小悪魔の言う通り、万事休す。

 このままではエロ同人みたいされてしまう。

 

 

「――――ッ!(離してッ! 博麗の巫女は純潔を保たないといけないのっ! ていうか女の子が相手はイヤぁ!)」

「では、お行儀よく……いただきまぁすぅ」

「――――ッ!!(待てぇぇぇ!!)」

 

 

 魔理沙ァァァ助ケテェェェェ!!

 

 心の中で絶叫するが、それが魔理沙の耳に届くわけなく――小悪魔は前戯として、博麗霊夢の耳を食もうとした。

 

 ――だが、その直前に。

 

 

「――誰かが私を呼んだ。故に来た、見た!

 ならば次は勝つだけのこと!」

 

 

 博麗霊夢の救済を求める声を聞き受け、『ある者』が駆けつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 バルバトスくん、食べたかったなぁ(´・ω・`)。

 昨日FGOをクリアしたせいか、ついやってしまった……0.2秒くらい反省しました。
   
 沢山のお気に入りや評価、ありがとうございましたっ! 予想以上に来たのでビックリしています。バルバトスくんは風邪のせいで一体も食せなかったが、評価やお気に入りでお腹いっぱいになった。
 
 

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