二回死んだ俺は閻魔の部下になった   作:鬱ケロ

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どうも、鬱ケロです。

これまでの話の中でおかしいなってところをいくつか直させてもらいました。話にはあんまり関係しないと思うので、これからも読んでもらえると嬉しいです。
あと、タイトルを少し変えました。

それでは読んでいってください。
どうぞ!


一つの終わり・物語の始まり

「……何処だ?ここ」

 

 目覚めた俺が最初に言った言葉は、そんな言葉だった。

 起きて周りを見てみると、いくつかのベッドがあり、俺の寝ていたベッドの近くにあるイスには何故か人形が置いてあった。......なんで人形?

 俺の体には包帯が巻いてあり、かなり痛い。昔の俺だったら泣いてる、多分。

 その状態を見てまたやったのかと思っていると、部屋の扉が叩かれた。

 

「失礼しまーす」

 

 そう言って入って来たのは閻魔だった。

 入って来た閻魔は起きている俺を見ると、その場で固まってしまった。

 

「どうした?なんで固まってんだよ?」

 

 俺がそう聞くと、閻魔は早足で俺の方にやって来た。

 

「空、貴方いつ起きたの!?それより怪我はもう大丈夫なの!?」

「ついさっきだよ。怪我の方も問題ない。あと、怪我人の前で大きい声出すな」

「あ、ごめん」

 

 そう言って謝ってくる閻魔を見る。

 見たところ、何処にも怪我は無さそうだし、騒げるほど元気そうなので俺は少し安心した。一応こいつも女だしな。

 

「なんか失礼なこと考えなかった?」

「いや全く」

 

こいつ、こんな鋭かったっけ?

 

「そう?まぁ、いいや。それより、本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ。だからそんな心配そうな顔するな。それよりここ何処は何処なんだ?見たことない場所なんだが」

 

 俺の言葉で安心した顔をする閻魔に、俺は先程から気になっていた事を聞いてみた。

 

「ここは医務室。あの後、倒れちゃった貴方をここまで運んで休ませてたんだよ。傷も凄かったからそれも一緒に」

「そうだったのか。運んでくれたり、傷の治療とかしてくれてありがとな。でも俺の他に誰も居ないみたいだけど、他の奴らは大丈夫なのか?」

「みんなはそこまで酷くなかったよ。だから今は地獄の復興に動いてもらうようにお願いしたの」

 

 そう言う閻魔の顔は、どこか嬉しそうだった。おそらくみんなが自分の指示に従って動いてくれるのが嬉しいんだろうな。

 俺がそう思っていると、閻魔は真剣な顔になって俺の方を向いた。

 

「ねぇ、空。貴方にいくつか聞きたいことが有るんだけど、聞いていい?」

「いいぞ」

「即答って、もう少し悩んだりしないの?聞かれたくないことだってあるかもよ?」

「俺に答えられる範囲なら答えるよ。言いたくなかったら言わないし」

「それだと私が困るんだけど、まぁいいや」

 

 いいのか?それで?

 閻魔の言葉に少し不安になっていると閻魔がメモ帳とペンを取り出して俺を見てきた。

 

「なら聞いてくね。とは言っても大体がこれに関することなんだけどさ。貴方が戦っていた時のあれはなんだったの?貴方とはまだ一週間くらいの付き合いだけど、あれは貴方らしくないと思ったんだけど」

「分からん」

「……はい?」

 

 俺の答えに固まる閻魔。しかし、俺には他に答えようがない。

 

「……えっと、分からないってどういうこと?」

「よく分からないんだ。魔王のところで戦っている時からそうなんだよ。戦いになるとだんだん意識が遠のいていって、気付くと全部終わってるんだ。あと、この身体の傷もその反動でできるんだよ」

 

 魔王のところでそうなると、止められるのが魔王だけだったから俺、戦いにあんまり参加できなかったんだよな。なのに隊長とか呼ばれて大変だったな。

 

「どの位貴方の意識って持つの?」

「大体が十分。長くて十五分」

「予想以上に短い」

 

 そう言って落ち込む閻魔。十五分持たせるだけでも、だいぶ大変なんですけどね。

 

「でも本当に、どうしてそんなことになってるのよ?」

「さぁな。でも、もしかしたら前の前の世界に原因があるかもな」

「……前の前の世界?」

 

 俺の言葉に反応する閻魔。なんだ?知らないのか?

 

「俺は一回転生してるんだぞ?知らなかったのか?」

「え、知らない。待って。そんなこと書かれてなかったよ。どうなってるの?」

「いや、俺は知らないぞ」

 

 でも閻魔が知らないなんてことあるのか?

 まだそのことについて考えていた閻魔は、俺の視線に気づき首を振ったあと俺に聞いてきた。

 

「その事については後で調べておくとして、空はその一回目の人生で何かあったの?」

「それはだな。その、えっと」

「なに?どうしたの?なにがあったのよ?」

 

 歯切れの悪い俺に閻魔は再度聞いてきた。

 

「悪い。実は一回目の記憶があんまりないんだよ。俺」

「……嘘でしょ?」

 

 閻魔のその言葉に俺が首を横に振ると、今度こそ閻魔は頭を抱えてしまった。

 

「あ、でもな、最近少しずつだけど思い出してきてるんだ。だからいつか俺が暴れちまう理由が分かると思うんだよ」

「そっか。でも、どうして記憶がないの?まさか、魔王たちに何かされたとか!?」

「いや、それはないと思う。あいつら優しい奴らだったからな。それに、()()()が言うには、俺自身の意思で忘れてるらしい」

 

 本当にあいつらは魔王軍としては優しすぎるよ。森で迷っていた人の子を、近くの村まで送ってやるとかよくやってたし。人に化けて村とかにボランティアに行ったりしてたしな。……あいつら魔王軍だよな?慈善団体とかじゃないよな?あれ?

 俺が昔の仲間たちのことについて疑問に思っていると、閻魔が声をかけてきた。

 

「ねぇ、空。あいつって誰?魔王軍の誰か?それにしては、いつも貴方が話すより優しいそうな顔で今は話してるんだけど」

「え?そんな顔してたか?」

「うん」

 

 そう言われて俺は自分の顔を触ってみる。……触ってもよく分からないな。

 でも、そんな顔してたとか恥ずかしいな、おい。

 

「それで、誰なの?」

 

 閻魔が再度聞いてくる。

 

「あー、その、俺の知り合い?友人?みたいなものだよ」

 

 夢であった友人なんて言っても、大丈夫?って心配されるのがオチだから適当に誤魔化すことにした。

 

「ふーん。まぁ、今はそれでいいや。じゃあ、あれの原因は空にも分からないってことでいいんだね?」

「あぁ」

 

 そう言ってどこか不満そうだが話を終わらせる閻魔。

 その方が俺としてもありがたい。

 

「それじゃあ次に、空が最後に使ったあの力はなんなの?魔法とかじゃないよね、あれは。あれについても書かれてなかったし、何なのよ、もう」

 

 そう言ってまたも頭を抱える閻魔。

 いや、なんかごめん。

 俺がやったわけではないが、なんだかとても申し訳なくなった。

 

「あ、あぁ。あれな。そういえば、敵はみんな止まったか?」

「止まったよ。だけど、今も止まったままなんだよね」

「それなら、一日経てば解けるようになってるから大丈夫だよ」

 

 それじゃあ俺が気を失ってからまだ一日経ってないのか。

 

「それじゃあもうすぐ解けるんだ。でも咎の鎖も付けてあるし、近くで見張らせてるから大丈夫かな。それで?結局あれはなんなの?」

 

 どうやらもうすぐ一日経つらしい。

 それより気になってるなぁ。そんなに大したことでもないんだけど。

 

「あれは、俺の能力みたいなものだよ。『言霊』って俺は言ってる」

「言霊?」

「昔から言うだろ?言葉には力が宿る、とかそんな感じのこと。これはそんな感じのものだよ。俺が強く思って言葉にしたことを味方や自分、相手に強制させることができるんだ」

「……それって強すぎない?」

「そうでもないぞ。俺より強い奴や、神や魔王、高位の存在には効かないし、生死ついては無理っぽいしな」

「それでも使い方によってはかなり使えると思うよ?」

「そうだな」

 

 まぁ、そこは否定しない。実際、使い方によってはかなり使える力だしな。

 

「うん、これくらいかな?聞きたいことは聞けたし、これで終わりだね」

 

 持っていたメモ帳に今のことを書いていた閻魔がそう言ってきた。

 

「そうか。悪いな、まともに答えられることがなくて」

「大丈夫。忘れてるんだったら仕方ないよ」

「……なぁ、お前は俺が嘘をついていると思わないのか?」

 

 俺はいつの間にかそんなことを言っていた。

 まだ一週間の付き合いなのに閻魔は俺の話を信じている。それが俺にとっては信じられなかった。

 だから俺は、そんなことを聞いてしまったのかもしれない。

 俺のその問いに閻魔は不思議そうな顔をした。

 

「なんで?だって仲間でしょ。なんで嘘をつく必要があるのよ?」

「……そうか」

 

 あぁ、そうか。こいつは優しすぎるんだ。

 仲間を信じてるから、裏切ると思っていない。今回だって多分こいつは消えた奴らがやったことだなんて思っていないんだろう。

 

 それは、あいつと同じだ。

 その想いはとても眩しいものだ。

 俺が欲しいと思ったものだ。

 俺にはもう、手に入らないものだ。

 

 

 

「あ、もう一つ聞きたいことがあったんだった」

 

 閻魔のその声で俺はその考えを止める。

 

「ん、どうした?」

 

 俺が聞くと閻魔は何故か顔を下に向けていて、その顔を見ることはできなかった。

 

「あ、えっと、あのさ。どうして空は心兄(しんにい)桃花(とうか)は名前で呼んでるのに、私は呼んでくれないんだろうなぁって思って。いや、別に名前で呼んで欲しいとかじゃなくてね!?なんだか不思議だなって!そう!気になっただけだよ!?」

 

 そう顔を上げて必死に言う閻魔の顔は少し赤かった。

 そんな閻魔の話の中で気になることがあった。

 

「え?お前の名前って閻魔じゃないの?」

「そんなわけないでしょ!!」

 

 俺のその疑問に閻魔は間髪いれずに否定した。

 え?マジで?そうなの?

 

「特に自己紹介とかないから、てっきり閻魔って名前なのかと思ってたんだけど」

「え?そうだっけ?……えっと、ごめん」

 

 俺の言葉で閻魔は思い出したのか、顔を赤くして謝ってきた。

 こういうどっか抜けてるところもあいつに似てるな。

 俺はそう思い笑みをこぼす。

 

「それじゃあ、改めて自己紹介するか」

 

 俺のその言葉に閻魔はこちらを見て、そして笑みを浮かべる。

 

「うんそうだね。そうしよっか」

 

 

「それじゃあまず俺から。

 元はただの一般人で転生して魔王の部下に。

 そして死んだことでお前の部下になった。

 深星 空(ふかほし そら)だ。改めて、よろしくな」

 

 そう言って俺は笑う。

 

「それじゃあ次は私ね。

 七曜閻魔の一人、火曜の閻魔の名を持つけど、まだ成り立ての新人。だけど貴方の上司になりました。

 (ほむら)です。これからもよろしく」

 

 その名前に俺は驚く。

 

「焔?それがお前の名前?」

「?うんそうだよ」

「……そうか、焔か。よろしくな、焔」

「うん、よろしくね。空」

 

 そう言って俺たちは笑い合う。

 ……焔、か。おかしな運命だな。全く。

 

「それじゃあ私は行くね。空は今日は休んでてね?分かった?」

「あぁ、分かったよ」

「うん、よろしい。じゃあね」

「またな」

 

 そう言って閻魔は部屋を出て行った。

 さて、

 

「いつまでそうしてんだ?お前は?」

 

 俺がそう言うと近くにあった人形が光りだす。

 そしてその人形は人の大きさになっていった。

 

「あれれ?いつから気づいてたの?自信あったんだけどなぁ」

 

 そう言って人形だった女は俺に話しかけてきた。

 そいつは閻魔に似て白く長い髪をしているが、閻魔と違い、その瞳は空のように碧く澄み渡っている。服は薄い赤色に花が描いてあり、昔教科書で見た十二単のような感じの服だった。

 

「最初におかしいなって思ったんだよ。俺に人形とか絵面が変だろ?それに、えん、焔のやつが人形に目を向けてなかった。あれって焔に見えないようになってただろ?」

「へぇ、あれだけでそこまで分かるんだ。やっぱりすごいなぁ」

「それよりお前は誰だよ?」

 

 俺のその問いに女は笑みを浮かべながら言ってきた。

 

「私?私は神だよ。分かってるくせになんで聞くの?」

「神だったら今回のことについて聞きたかったからな」

「あぁ、なるほどね。大丈夫だよ。今回のことに関わったバカは神権を剥奪。ここじゃない地獄に落とされたから」

「ここじゃない地獄?他に地獄があるのか?」

「うん。いくつかに分かれてるんだよ。その中の一つに落としたの」

 

 それなら安心か。

 もし神が攻めてきたら、本気で潰しに行かないといけなかったからな。

 

「じゃあなんでこんなところに来たんだ?」

「あぁ、それはネタ集めのためにね」

「ネタ集め?」

「うん。私趣味でお話を書いててね。今回のことでいいネタないかなって探しに来たんだ」

「......はい?」

 

 その言葉に俺は何も言えなくなってしまった。

 つまり、こいつは趣味のためにここまで天界から降りて来たってことか?こんなのが神とか大丈夫かよ?

 俺がそんなことを思っていると、そいつは言葉を続ける。

 

「今回のことはなかなかいいネタが見つかったよ!やっぱり君たちのことを見るのは面白いなぁ」

「どこがだ」

「あなた達の生き様の全てが。私はね、ある時から人の生き様を見るのが大好きになったんだ。だからこそ、私はあなた達の生き様を書くの。私が忘れない為に。人に、神に忘れさせない為に」

 

 そう言うそいつの目は本気だった。本気で彼女は人の人生を好いていた。

 

「……あんた変わってるな」

「そうかな?」

「俺があったことのある神は大抵人をよく思っていない奴ばっかだ。そうでなくても好いている奴はいなかった」

「そいつらは見る目がないんだよ。……まぁ、昔の私もそうだったんだけどね」

 

 そう言う彼女はどこか懐かしそうだった。

 しかし、すぐに元に戻って言ってきた。

 

「それじゃあ私はもう行くね。これからもあなた達のこと見てるから、楽しい物語を期待してるよ!」

「そうか。あんまり期待するなよ。まぁ、頑張るよ。じゃあな」

「うん!またねぇ!」

 

 そう言って彼女は消えた。

 それを確認して、俺はもう一回寝ようと横になり眠りについた。

 その時にさっきの神の声が聞こえた気がした。

 

 

 

『期待してるよ?この物語が、ハッピーエンドになることを!』

 




感想・アドバイス、誤字・脱字などもらえると嬉しいです。

それではまた次回です!

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