二回死んだ俺は閻魔の部下になった   作:鬱ケロ

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どうも鬱ケロです。

インフルエンザって辛いですね。自分は先週インフルエンザにかかって、数日間まともに動けなくなっちゃいました。
久しぶりに体温計の数字が四十度近くになりました。
みなさんは気を付けてくださいね。

今回は主人公視点と閻魔様視点で書きました。
後少し長いです。
それでは続きです!
どうぞ!



制圧戦

 side空

 

 

 

「はぁ、多すぎるだろ」

 

 そう言って、高台に座っていた俺はため息を吐く。しかしそれも仕方がないと思う。何故なら俺の目の前には溢れんばかりの人、人、人。

 気持ち悪すぎて吐きたくなってくる。

 俺は今、地獄にある高台の上に居る。そこから罪人たちを見ているのだが、まぁ、数が凄い。数十万人はやはり凄い。

 

「今なら人がゴミの様だ、とか言えちゃうよ」

 

 あれ?これ言っちゃうと最後死ぬな。やっぱり言うのやめとこ。

 そんな事を考えていると声をかけられる。

 

「そんなくだらないこと考えてんじゃねぇよ。この馬鹿」

「ちょっとは良いじゃねぇかよ」

 

 心は呆れた様な顔でそう言ってきた。

 ……たまには冗談も必要だろうが。

 

「今はそういう場面じゃないだろ」

「こういう時だからこそだろ」

 

 そう言って笑う俺を見て、心はため息を吐く。

 その後真剣な表情で聞いてきた。

 

「大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。大丈夫。あいつの準備ができるまでなら全然平気」

 

 そう言って、俺はさっきまでの会話を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 執務室から急いで地獄に向かっている俺たち四人は、走りながら作戦を決めていた。

 

「消すだけだったら、俺一人で事は足りるけど?」

「ダメに決まってるでしょ。全員、然るべき罰を受けて貰うんだから」

 

 閻魔によって、俺の一番簡単な案は却下されてしまった。

 

「とは言ってもなぁ。俺の()が罪人たちに効けば良いけど、罪人たちが持ってる武器のせいで、多分俺の力は効かないし。心たちって、その武器には触れるのか?」

「……悪いがそれは無理だ。少し触っただけでも、死にはしないけど一日は動け無いだろうな」

「……私も無理です。ごめんなさい」

「……そこまで?いや、まぁ、仕方ない。今回はさすがに相性が悪すぎる。でもなー。どうするか。俺一人で数万、いや数十万の人から武器だけ取るとかきついし」

 

 そもそも今回の事は、ただの人である俺が居ただけ運が良かった。鬼か妖怪で組まれてる組織に、怪異殺しの武器は強すぎる。

 どうするか考えていると、閻魔から質問された。

 

「武器がなければ何とかなるの?」

「ん?あぁ。持ってなければ、すぐに抑えられると思う」

「だったら、何とかなるかもしれない」

 

 閻魔の言葉に俺は驚いたが、他の二人は思い当たる事があるのか、驚いていなかった。

 

「本当に何とかなるのか?」

「そこは安心して良い。俺が保証する」

「私も大丈夫だと思うよ」

 

 俺の疑問に心と、鬼娘(おにむすめ)が答える。

 この二人が大丈夫と言うなら大丈夫か。

 そう思っていると、閻魔が困った顔で言ってきた。

 

「……でも私のそれには、ちょっと時間がいるの。その間に攻められちゃったら意味が無い」

「つまり、その間守り通さないといけないわけか」

「そうなの。でも、今もかなりぎりぎりだから、難しいかもしれない」

 

 そう言って辛そうな顔をする閻魔。

 なるほど。その間に、みんなが死ぬかもしれない事が辛いのか。

 そんな閻魔に声をかける。

 

「悩むな。悩めば、その間にたくさん味方が死ぬ。その死ぬ数を減らす為にも、お前は悩むな」

「……そうだね。うん、分かった」

 

 閻魔はそう言って、地獄に向かう足を早めた。

 ……何だかさっきから俺らしくないなぁ。

 そんな事を思った俺だが、すぐに頭を切り替える。

 

「それじゃあ、作戦としては、閻魔の準備が出来るまでの防衛戦で。心と鬼娘は武器に当たれば終わりだから、守ってる鬼たちと一緒にいて、指示とかしてくれ」

「あぁ、分かった」

「……分かったけど、鬼娘って私のこと?」

「ん?そうだけど?」

 

 他に誰かいるのだろうか?それとも何か気に障ったか?

 

「あの、ちゃんと名前で呼んでくれないかな?」

「……えっと、ごめん。俺、君の名前知らない」

「……ちゃんと名乗ったんですけど。まぁいいや。私の名前は桃花(とうか)。……今度はちゃんと覚えてね?」

「よし分かった。桃花ね。覚えた。多分忘れない」

「……凄い不安なんだけど」

 

 大丈夫。今度は忘れない。多分大丈夫。

 そう思っていると、何故か閻魔がこちらを睨んでいた。

 

「何だよ?」

「……別に。ねぇ私は?呼んでくれないの?」

「はぁ?閻魔は閻魔だろ?何言ってんだ」

 

 閻魔は閻魔だろ?他になんて呼べば良いんだよ?

 

「むー!」

 

 俺の言葉を聞き閻魔は頰を膨らませる。

 どうしたんだこいつ?

 

「そいつは放っておけ。それよりお前はどうするんだ?」

 

 その光景を見ていた心は、そう聞いてきた。……何故だか口がにやけてるんだが何なんだ?

 

「俺か?俺は敵の中に降りて、中から潰していくわ」

「危険じゃないのか?」

「大丈夫だよ。それに、中で暴れれば、そっちに行く力が多少は弱まるし。最後に、武器が無くなれば俺の力で押さえ込むんだから、敵の中にいた方がいい」

 

 そこで地獄の入り口が見えてきた。

 

「良し。それじゃあ閻魔、一言」

「えぇ!?何で急に!?」

「リーダーの一言はいるだろ」

 

 そう言って俺たち三人は閻魔の方を向く。

 

「え、あ、えっと。みんな、生きてまた会おう?」

「……死亡フラグ?」

「そんなつもりで言ってないわよ!!」

 

 そして俺たちは笑い合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程までの事を思い出していた俺は、笑みを浮かべる。

 

「それに、あいつの建てたフラグを折らないといけないんだから、死ねないよ」

 

 その言葉に心も笑みを浮かべる。

 

「そうだな。折ってやらないとな」

 

 そして互いに笑い合った。

 

「さて、そろそろ行くわ。……そっちは頼むぞ?」

「あぁ、任せろ」

 

 立った俺は心に最後に言葉をかける。

 

「じゃあな」

「……また後で、だろ?」

「あはは、そうだな。じゃあ、また後で」

 

 そして俺は、罪人たちの中に落ちて行く。

 

 ……さて、いつまで俺は()()()()()かな?

 

 

 

 side閻魔

 

 

 

 私は今、罪人の人たちが全員見える、一番高い高台にいる。

 空たちは、向かいの少し小さい高台にいた。

 今、みんなは私の準備が出来るまで、必至に頑張ってくれていた。

 

 

 地獄に着いた時、守っていたみんなが私を見て、

 

『閻魔様!おい、みんな!閻魔様が来てくださったぞ!』

『おお!本当だ!みんな、これで何とかなるぞ!後少し頑張れ!』

 

 と、言ってくれた時は本当に嬉しかった。嬉しすぎて泣きそうになった。

 それだけ、みんなが私の事を思ってくれていたことが、とても嬉しかった。

 そして、そんなみんなを守りたいと思った。

 だからこそ、

 

「……頑張らないと」

 

 後少しで準備は終わる。

 そうすれば、後は空の力で抑えられる。

 そこで空の事を思い出す。

 一人で私の準備が出来るまで、敵の中で暴れていると言った人。

 彼は大丈夫なのかと下を見る。

 

「……え?」

 

 確かにそこに空はいた。

 しかし、それは私の知る空ではなかった。

 

「はは、アハハハハ!!」

 

 それは狂気。まるで狂った獣のように、彼は暴れていた。

 彼に狙われた罪人は、何も出来ずに吹き飛ばされる。首を掴まれ地面に叩きつけられる。体の骨を叩き折られる。至る所から悲鳴が聞こえる。

 しかしそんな状態でも、死んでいる人はいなかった。

 きっと、空はあんな状態でも、私の言った事を守ってくれているんだ。

 

 

 でも、あんな空は見たくない。

 あんなにも悲しそうに、今にも泣きそうな彼なんて、見たくない!

 

 

 準備は終わった。後は私が言うだけ。

 大きく息を吸い、私は言う。

 

「聞け!地獄に在りし、地獄に仇なす武器たちよ!今ここで、七曜閻魔の一人、火曜の閻魔の名の下に!地獄での汝らの存在を、否定する!!」

 

 私がそう言った途端、罪人たちの持っていた武器が消えていく。

 閻魔が存在を否定したものは地獄にいられない。それが地獄のルール。だからこそ、存在を否定された武器たちはここにはいられない。

 私を息を吐く。これで後は、空が力を使ってくれれば全部終わる。

 そう思い下を見ると、

 

「……何で?」

 

 空は、まだ暴れていた。

 敵は武器を無くし、もう何もする事が出来ないのに。

 それでも彼は、暴れ続ける。

 悲しき声をあげながら。

 

「……いや」

 

 そんな彼を見たくない。

 

「……やだよ」

 

 そんな姿を見たくない。

 いつものあなたと一緒にいたい。

 だから、私は、

 

「空ぁーーー!!!」

 

 あなたの名前を叫ぶ。

 

 

 あなたが起きる様に祈って。

 

 

 

 side空

 

 

 

「ーーん」

 

 声が聞こえる。誰かの声が。

 

「ーー君」

 

 また聞こえる。懐かしい声。誰だっけ?

 

「空君!!」

「うわ!?」

 

 俺は跳び起きる。

 すると俺の目の前には女性がいた。白く長い髪に紅い瞳、どこか幼いその表情は頰を膨らませていてそこがまた幼く見える。しかし服装は俺の通っていた高校の服装だから高校生だろう。背は少し高いのかな?百六十センチくらい。

 

「全く!何回も呼んでるのに全然起きないんだもん!この寝坊助!」

「えっと、あんたは?」

 

 突然現れた彼女に俺はそう聞く。

 すると彼女は可笑しそうに笑った後、こう言った。

 

「ふふっ。ごめんね?でも、空君は知ってるはずだよ?だって空君のただ一人の友達だもん」

 

 俺の友達?俺の友達って魔族ばかりなんだが。

 

「あぁ、ごめん。ニ回目の人生じゃなくて、一回目の人生の方ね」

 

 一回目?一回目っていうと……

 

「……え?」

 

 そんな、ありえない。だってあいつは。

 でも、そういえば、あいつの姿は確かにこんな感じで。

 

「……お前、なのか?」

「あ、やっと思い出した?」

 

 腰に手を当てて言う彼女。

 そうだった。彼女はこんな感じだった。

 どうして、すぐに思い出すことができなかったんだろう。

 

「仕方ないよ。あんな事、誰だって忘れたいと思うもん。......ごめんね」

 

 そう言って謝る彼女。

 あんな事?何があったっけ?

 思い出そうとするが、記憶に黒い靄がかかっていて思い出せない。

 

「……今はまだ思い出さなくていいよ。私はただ、君を起こそうとしただけだし」

「そういえば、ここはどこだ?真っ白で何もない」

「ここは君の夢の中。そして私は、君の記憶の中の私。本物じゃないんだ」

「……そうか。でも、会えて嬉しいよ」

「うん、私もだよ」

 

 そう言って互いに笑うと、また何かが聞こえてくる。

 

『ーーぁぁぁぁーーー!!』

「なんだ?」

「うん。そろそろかな」

 

 彼女はそう言う。

 

「何がだ?」

「さっき言ったでしょ?これは君の夢の中。だから覚めないと」

「やっと、会えたのにか?」

「私は偽物だよ。それに」

「何だよ?」

「君には今、待っている人がいるでしょ?」

「そんな奴……」

「いるよ。耳を澄ましてみて」

 

 そう言われた俺は、言われた通りにしてみる。

 すると先程の声が聞こえてくる。

 

『ーーらぁぁぁーーー!!!』

「この声が何だよ?」

「もっとよく聞いて」

 

 そう言われた俺は目を閉じて、声に集中する。

 そうすると聞こえてきた。

 

『空ぁぁぁーーー!!!」

 

 その声はここ数日聞いていた声。真面目なくせに、どこか抜けていて、寂しがり屋なあいつの声。

 

「……あー、そうだった。あいつがいたな」

「でしょ?」

 

 そう言った後、微笑む彼女。

 その姿に俺も笑みを浮かべる。

 

「俺にもやることがあったわ。そろそろ行かないと」

「うん、頑張って!」

「……今度は忘れないから」

 

 そう言うと彼女は驚いた顔をしたが、すぐに幸せそうな笑みを浮かべた。

 

「うん、ありがと」

 

 そう言ってぼやけて行く視界の中で彼女は言った。

 

「いってらっしゃい」

「あぁ、行ってくる。またな、(ほむら)

 

 そして俺の夢は覚めていく。

 

 

 

 

 

 

 目が覚めると、そこにはこちらに襲いかかろうとする罪人たちがいた。

 覚めた瞬間色々やばいんだが。

 まぁいい。さっさと仕事を終わらせよう。

 俺は息を整え、言う。

 

「『止まれ』」

 

 その瞬間罪人たちはみんな動かなくなる。

 後は鬼達で何とかなるな。

 

 ふぅ、やっと終わった。

 すごい疲れた。寝たい。

 

「空ぁーー!!」

 

 向こうから閻魔が走ってくる。

 無事だったか、良かった。

 心も桃花も無事っぽいな。

 安心した俺は意識が遠のいていく。

 

「……あー、終わった」

 

 そこで俺の意識は途切れた。

 




タイトル制圧戦なのに、あんまり戦闘描写書けてない。
やっぱり難しいですね。書くのって。

読んでくださった方ありがとうございます!
誤字・脱字、感想・アドバイスなど待ってます!

それでは、また次回です!

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