最近、この作品をちょっと読み返していたのですが、三話で主人公が閻魔の容姿を言っていた場面で、金色の瞳と言っていたのですが、間違いでした。本当は紅色の瞳です。すみませんでした!
これからもたまに打ち間違えてしまい、その度に訂正するかもしれませんが、見てもらえると嬉しいです。
それでは前回の続きです!
どうぞ!
夢を見た。
その夢はまだあいつに出会って間もない頃の夢。
俺たちが初めて一緒に帰った日の夢。
『ありがとう!これも空君のおかげだよ!』
彼女は嬉しさからか、興奮したように俺にお礼を言ってきた。
『……俺は何もやってないだろ』
俺は恥ずかしかったのか、彼女の顔を見ずにそう言うと、彼女は首を横に振って否定した。
『空君が私の背中を押してくれたから、私は勇気を出す事ができたの。空君が私を救ってくれたんだよ!』
『……救ったは言い過ぎだろ。友達が出来ただけで』
『何言ってんの!ぼっちじゃなくなっただけ救いだよ!』
『その言葉をぼっちの前で言うか!?』
俺が彼女の言葉に対して怒ると、彼女は不思議そうに首を傾げた。
『え?何言ってんの?空君は私の初めての友達だよ?ぼっちじゃ無いじゃん』
『……は?』
『空君には私がいるじゃん。だから、空君はもう一人じゃ無いよ』
『ッ!』
そう言って彼女は俺に笑いかける。
その笑顔がとても、幸せそうでーー。
『あ!ちょっと、どこ行くの!?』
『帰るんだよ!』
『歩くの早いよぉ!』
俺は一人でどんどん歩いていく。
その後を小走りで追いかける彼女。
……それはとても幸せだった頃の夢。
……それは、
あれから二日が経った。
閻魔の奴は、あれから何も無かったかのように仕事をしている。
俺とはあれから仕事上の最低限の会話しかしていないが、時々視線を感じるのでそちらを見てみると、閻魔と目が合いすぐに向こうが目をそらす。この二日間はそんな事が多い。
そろそろその視線も鬱陶しいので、昼になったら話でもするかな、と俺は思いながら仕事をしていた。
そんな時だった。執務室の扉が突然開かれたのは。
「閻魔様、大変です!」
そう言いながら入って来たのは、たまに執務室に書類を持って来る鬼だった。
その鬼は、桃色の髪をしていて頭に小さなツノが二本生えていた。服は和服の様だが、下は何故かミニスカートだ。そして何よりも此処では珍しい女の鬼だった。(ちなみに閻魔とは幼馴染みたいな関係らしい)
その鬼は、見た目が俺と変わらないくらいの年に見えたので、俺もなんとなく覚えていた。
しかし、俺の知っている彼女は普段は静かで、クールな感じだった筈だ。その彼女がこんなにも慌てているとは何事なのだろうか?
閻魔も不思議に思ったのか、彼女に話しかけた。
「落ち着いてください。どうしたんです?あなたがそんなに慌てるなんて」
「す、すみません。早く、つ、伝えないとって思って」
そう言って彼女は息を整えた後、真剣な顔をして言った。
「この前閻魔様が地獄に送った者数名が、地獄で暴れ始めたんです!しかも、いままで地獄にいた者達も一緒に暴れ始めて、このままじゃ罪人達がみんな地獄から出て来ちゃいます!」
「……え?」
そう呟いてから閻魔は固まってしまった。心も驚いたような顔をしている。
でもそれも仕方ないと思う。俺でもそれがどれだけやばい事なのか分かるくらいだったから。
そう思っていると、閻魔が彼女と話し始めた。
「ま、待ってください。どういう事です?だって、そんな事、出来るわけないですよ。彼らには咎の鎖がついてる筈なんですよ?」
「それが、咎の鎖が何者かによって切られていて」
「……そんな」
咎の鎖?何だそれ?
知らない言葉に俺が不思議に思っていると、近くにいた心が教えてくれた。
「咎の鎖は地獄行きになった者に付けられるものだ。そいつの罪の重さによって、鎖の量も増えていくんだよ」
「なるほどな。でもそんな鎖が切られるなんてあり得るのか?」
「……人間の力じゃ絶対無理だ」
……人間の力じゃ無理、ねぇ。
俺たちがそんな事を話していると、閻魔が他の事について聞いていた。
「そ、それでも!彼らはただの人間です!あそこには武器になるものなんてないし、地獄にいる鬼達にやられてしまう筈でしょう!?」
確かにその通りだ。俺みたいな例外はあるけど、ほとんどのやつは鬼に敵うはずがない。ましてや武器もないんだったらほぼ不可能だ。
閻魔がそう聞くと、彼女は表情を暗くした。
「……それが、何故か暴れている者全員が武器を持ってるんです!しかも、そのほとんどに怪異殺しの力が付加されています!」
「なっ!」
「嘘だろ!?」
その言葉に閻魔だけでなく心も驚きの声を上げた。
怪異殺しの力。それは何となく分かる。名前の通りだとかなり厄介だな。でもそれって何にでも付くものなのか?
「怪異を殺した伝説を持つ武器なら、伝説通りの力を持つ。でも、今ではそのほとんどが時代と共に無くなった筈だ」
「じゃあ、ただの武器にそういう力を付ける事は可能なのか?」
「可能ではある。でも、それはほぼ不可能に近い。ただの武器に伝説を付け加えるなんて、そんな事を出来る奴はそれこそ……まさか」
「……なんとなく何考えてるか分かるから言っておくけど、それ以上は考えねぇ方が良いぞ?まずい事になる。後、その事について閻魔には何も言うな」
「……分かった」
はぁ、本当に嫌になるな。ここまでするか?普通。
俺はそう思いながら閻魔を見た。
「どうするんだ?どうにかするなら早く指示をくれ」
「……貴方はここにいて下さい。地獄にいる鬼達総出で相手をすればすぐに終わります。後どれだけの鬼がいますか?」
俺が指示を求めると、閻魔はこちらを見ずにそう答えた。
しかし、閻魔にそう聞かれた彼女は突然黙り込んでしまった。
「どうしました?もしかして、かなりの鬼がやられてしまったんですか?」
「いえ、そうではなくて……」
そう言ってまた黙り込んでしまった彼女に、俺たちが不思議に思っていると彼女は目に涙を浮かべながら口を開いた。
「……朝までいた筈の鬼達の約八割が何故か、罪人達が暴れ始める数十分前から突然消えてしまったんです!もう残ってる鬼はニ万程しかいません!」
「……そんな」
その言葉を聞いた瞬間、閻魔は絶望に染まった顔をした。
「……そんなの、もう」
「……」
「……」
閻魔も、心も、鬼も、皆が絶望に染まった顔をする。
「……なんて顔をしてんだよ」
俺は無意識の内にそう呟いていた。
その言葉に三人の顔が一斉に俺に向いた。
「まだ終わったわけじゃねぇだろ?なのに、何終わったような顔してんだよ?」
「……そんな事言ったって、もう無理だよ。こっちにはもう二万しか味方がいないんだよ?罪人達はその何倍、いや、何十倍もいるのにどうしろって言うのよ?」
「そうじゃねぇだろ。……おい、閻魔。お前はどうしたいんだよ?それじゃあ、お前は逃げるのか?残っている奴らを見捨てるのか?」
「そんな事したくないよ!!……でも、私にはどうする事も出来ない。私には、どうにかできるだけの力が無いの」
そう言って、閻魔は下を向いてしまう。
「……閻魔。おそらくだが、消えた八割はお前を認めてなかった奴らだ。罪人達に武器を渡したのもな」
「……」
俺のその言葉に閻魔は手を握る力を強めた。
「でもな、消えてない奴らは少なくとも、お前を認めてたって事じゃないのか?残ってる二万の鬼達は、お前の頑張りを知ってたって事じゃないのか?」
「……え?」
その言葉を聞いた瞬間、閻魔は顔を上げて俺を見てきた。
「だってそうだろ?お前を認めてなかったら、こんな事態になってまで此処にいるか?お前達でさえ諦めそうになってる今この時も、そいつらは戦ってるんだ。それはお前ならなんとかしてくれるって、そう信じてるからじゃないのか?」
「……それは。でも」
「あー!もう!めんどくさいな!いつまでもぐだぐだ言ってんじゃねぇよ!いいか?少なくてもな、此処にいる俺たち三人はお前を認めてるし、お前を信じてる。仮に、そこの二人が信じてなくても
俺がそう言うと、ずっと黙っていた二人が声を上げた。
「何言ってんだ!俺だって信じてるに決まってんだろ!」
「私だって、信じてるよ!」
「……二人共」
こいつらも言う時は言う奴らだな。
結構恥ずかしい事言ってると思うんだが。
「……お前ブーメランだぞ」
……まぁ、うん。そうだね。
この話は置いておこうか。
俺は改めて閻魔を見て言う。
「ほら見ろ。お前を信じてる奴がいるんだよ。お前ならなんとかしてくれるって、信じてるんだよ」
「……でも、私にはやっぱり、なんとかできる程の力が無いよ」
はぁ、こいつ忘れてんのか?
「閻魔、忘れてるんだったらもう一回言ってやる。いいか?お前は誰かを頼れ。お前一人じゃダメでも、お前の周りには頼れる奴がいるんだから。な?」
「ッッ!!……頼っても、いいの?」
閻魔はそう不安そうにおれたちに聞いてきた。
その言葉に心が答える
「あぁ」
「……助けて、くれるの?」
その言葉には鬼の女が。
「当然!」
「……こんな私を、信じてくれるの?」
そしてその言葉には俺が。
「お前だから、俺たちは信じるんだ」
「……」
俺の言葉を聞いた閻魔は黙って下を向いてしまう。
しかしすぐに顔を上げ、涙を我慢しながら俺たちを真っ直ぐに見て言った。
「お願い。あなた達の力を私に貸して」
その願いに俺たちは、笑みを浮かべながら同時に言った。
「「「もちろん!!」」」
その言葉に我慢できなくなったのか、閻魔はその場で泣き始めてしまう。
そんな閻魔を鬼の女が慰めている姿を見ていると、心がこちらに話しかけてくる。
「ありがとな。やっぱり、お前にまかせて正解だったよ」
「……そんな事ないだろ。それに、まだどうなるか分からん。此処で終わっちまったら意味が無い。だから、守りきるぞ。あいつの大切なこの場所を」
「……あぁ、そうだな」
心は閻魔を見ながら頷いた。あいつは本当に仲間に恵まれてるな。
……それにしても、
「……信じてる、か」
「ん?何か言ったか?」
「いや、なんでも無い」
俺は心を隠して心に言う。
今はそんな事を考えるのは止めよう。そんな事を考えてる場合じゃ無い。
俺はまだ泣いている閻魔に声をかける。
「おい、閻魔!泣くのは全部解決した後にしろ!」
その声を受けて閻魔は顔を上げる。
「……うん。そうだね。みんなを守らないと!」
そう言って閻魔は前を向く。そこには、先程までの諦めた様な表情はもう無かった。
その姿を見て安心した俺は、笑みを浮かべながら言う。
「さぁ、制圧の時間のいきますか!」
誤字・脱字、感想・アドバイスなど待ってます!
それではまた次回です!