色々とやる事がが終わったので、またちょっとずつ投稿していこうと思います。
なので、これからも見てもらえると嬉しいです。
今回は長くなっちゃいましたが、見ていってください。
では、どうぞ!
今日はあの夢を見なかった。
俺が起きて最初に思った事はそんな事だった。
それはあの夢を見なくて良かったという安心からか、見れなかったという残念な気持ちからか、それともその両方か、俺自身にもわからなかった。
はぁ、もう、あの時の事は忘れられたと思ってたんだけどな。……それより、どうして残念なんて思ったんだ?
そう思っていると、昨日と同じように部屋の扉が叩かれた。
「空、起きてますか?心です。入りますよ?」
「はい、起きてます。入って良いですよ」
俺がそう言うと心は入って来る。
「?空、あなた何かありましたか?」
「……どうしてです?」
なぜか、心は俺の顔を見てそう言ってきた。
「いや、あなたの顔が悲しそうに見えたので」
「……気のせいですよ」
……そう、気のせいだ。悲しそうだったなんてそんな事、あるわけない。
「……はぁ。あなたの場合、心を見る事が出来なくなる時があります。きっとあなた自身の意思で隠しているんでしょう。ですからこれ以上は聞きません」
でも、心はそう言った後、俺の目を見てこう言った。
「辛い事があったら言ってくれ。俺はさ、お前の事そんなに嫌いじゃないんだよ。これからは同じ職場の仲間だし、お前の事をもっと知りたいんだ」
「……」
……真剣な目で、声で、彼はそう言ってくれた。それはとても嬉しい言葉だった。俺にはもったいないくらいの言葉だった。
きっと本気で言ってくれているんだろう。きっと本当に彼はそう思ってくれているんだろう。
それでも俺は……
「……大丈夫ですよ。ただちょっと、夢見が悪かっただけですから」
その言葉を、
「……そうか、分かった。それじゃあ執務室に行こう。準備はできてるか?」
「少し外で待っててください。これから準備するので」
「分かった。それじゃあ、準備できたら来てくれ」
そう言って心は部屋の外に出て行った。
……本当に自分のこの性格が嫌になるな。
そう思いながら俺は仕事の準備をしていく。とは言ってもそんなに準備する事ないけど。
そして準備が終わり部屋の外に出る。
「お、やっと来たな。それじゃあ行こうか」
「仕事の時は丁寧に話すんじゃなかったんですか?」
「まだ仕事じゃないだろ?他には誰も居ないし、俺もなるべくこっちで話したいしな」
「そうですか」
なんだか昨日とだいぶ言ってる事違くないか?
「正直、丁寧に話すのがあんまり得意じゃない」
「だったらしなければ良いのに」
「……閻魔が、偉くなるならこんな風に喋った方が良くない?とか言い出してな。一体何を思ったんだか」
なんとなく何を思ったのか分かる気がする。
「多分偉い人は常に丁寧な喋り方をしてる、みたいな考えがあるんじゃないか?」
「偉いからってそうでもないと思うんだけどなぁ」
確かに魔王の奴とかむしろそのあたり適当すぎたし、周りの奴らに敬語使われるところをあんまり見なかったぞ。
……今になって思うと、あいつ魔王としてあれで良かったのか?
そう思いながら歩いていると、いつの間にか執務室の前についていた。
「それじゃあ今日も、よろしく頼みます」
「はい、分かりました」
そして今日も仕事が始まる。
……あいつ、本当に仕事増やしてないよな?
やばい、ちょっと仕事やるのが嫌になりそうだ。
それから結構経った。最初は仕事が増えてるんじゃ無いかと心配だったが、そんなに増えてはいなかった。その事について閻魔に聞いてみると、
「流石にあの量からさらに増やすほど鬼じゃありませんよ」
だそうだ。
本当に増やすと思ってたからちょっと意外だった。(その事を言ったら閻魔に頭を叩かれたが)
そんな事がありつつ仕事をしていたんだが、昨日のでだいぶやり方を覚えてしまったからか、仕事が予想より早く終わってしまったのだった。
「閻魔様、仕事他に無いんですか?俺の分の仕事終わっちゃったんですけど」
「え?もう終わっちゃったんですか?」
なんだか閻魔が驚いた顔をしているが、そんなに驚く事だろうか?
「あなた、この仕事始めて二日目ですよね?一応今日あなたにやって貰った仕事は、簡単なものや昨日やってもらったものだけにしましたけど、それでも結構量あったんですよ?」
「まぁ昨日でだいぶ覚えたんで。それより俺はどうすればいいんです?正直、もう今日の仕事は終わりです。とか言ってもらえると嬉しいんですけど」
「……そんな事あるわけないでしょう?」
あれ?半分冗談で言ったのにすごい冷たい目でこっちを見てくるんだけど。
「閻魔様、すみませんが俺はそんな目で見られて興奮する趣味は持ってないんですよ。ご褒美だったらもっといいものにしてください。例えば休みとか」
「もしもそれで興奮するような人だったら今すぐ地獄に落としてますよ!それよりあなた、どれだけ仕事やりたくないんですか!?」
「誰だって仕事はやりたくないでしょう?それでも仕事をやらないと生きていけないんです。だから人は趣味を見つけるんだと俺は思ってます」
仕事が好きって人もいるのかもしれないけれど、大抵の人は嫌だと思うんだよ。それでも頑張れるのは趣味を楽しんでるからだと俺は思う。……十七歳で俺は死んじゃったからよくわからないけど。
閻魔は俺のその言葉に思うところがあるのか何かを考えている様子だった。
「確かにそれはそうかもしれませんが、いや、でも。……あ!そ、それとこれとは話が別です!何もっとな理由を言って逃げようとしてるんですか!」
いや、別に逃げようとしてないんだが。
それより、閻魔がこんな言葉に納得しそうになっちゃいけないだろ?
大丈夫かこの閻魔?ちょっと心配になってくる。
「それより何をやれば良いんです?」
「それじゃあ、お茶とか淹れてきてもらって良いですか?そろそろ休憩にしようと思ってたので」
「俺、お茶淹れる場所知らないんですけど?」
「心も一緒に行かせるので大丈夫ですよ。しーん、ちょっと来てください」
「何ですか?仕事ならまだ終わってませんけど」
「空と一緒にお茶を淹れてきてください。あとお菓子も」
「そういう事ですか。分かりました」
いや別に心が行くなら俺いらなくない?
「そうでもないんですよ。休憩になると、閻魔様がお菓子をたくさん食べるのでお菓子を持ってくれる人が欲しかったところなんです」
「なっ!そ、そんなに食べてないじゃないですか!?勝手な事言わないでください!」
「いつも私が食べようとすると一つも残ってないんですけど?」
「うっ。そ、それは、その……ごめんなさい」
痛いところを突かれたのか、閻魔が顔を赤くして俯いてしまった。
何だろう。ちょっとかわ……いや、何でもない。
「ふふ、それでは空、行きましょうか」
「……まぁそういう事ならついて行きますよ」
はぁ、心の奴凄いニヤニヤしてるし。凄い腹立つな。
こんな事なら、心読まれないようにすれば良かった。
「あ、今日のお菓子はクッキー多めでお願いしますね!チョコは飽きたので少なめで!」
……閻魔が何か言っていたけど、気にせずに俺たちは執務室を出て行った。
チョコを多くしてやろう。
「そういえば、どうして執務室にお菓子とか置いておかないんだよ?そっちのほうが楽だと思うんだけど?」
お茶を淹れるために廊下を歩いていた俺は、気になった事を、周りに誰もいない事を確認して心に聞いた。
「確かにそっちのほうが楽なんだが、閻魔が勝手に食べちまうからあそこに置いておけないんだよ」
心は苦笑いをしながらそう教えてくれた。
いや、あいつどれだけお菓子好きなんだよ?勝手に食べるとか閻魔とか関係なく女として大丈夫か?
「まぁ、あいつも頑張ってんだ。俺もどうかと思うけど、あいつの前で絶対言うなよ?あいつ落ち込むから」
「俺も流石に面と向かってそんな事は言わないよ」
「あぁ、頼むわ」
そう言って心は俺に笑いかけてきた。
本当に心は閻魔の事思ってるんだろうな。羨ましいねぇ。
そう思っていると、部屋に着いたのか心は足を止めた。
「この部屋にお茶や菓子があるんだよ。だから持ってくるときはここに来るようにしてくれ」
「分かった。ん?中に誰かいるようだけど?」
「え?あれ?本当だ。はぁ、あいつら今は休憩時間じゃないだろうが。ったく」
部屋の中から気配がしたからそう言うと、心は呆れたような顔をした。
サボってるのか。大丈夫なのか、それで?
「仕方ない。一言言ってくるか」
そう言って心はドアに近づいた。
ん?何か心の纏う雰囲気が変わった?
「……悪い空、先に戻っててくれるか?」
「は?何でだよ?」
「……頼むから」
「何だよ急に?もしかして、中の奴が俺の悪口言ってんのか?別に気にしねぇからさっさと言ってこいよ」
「……違うんだよ。でも、お前には絶対聞かせたくないんだ。だから、頼む」
「いや、意味分かんねぇよ。中で何言ってんだ?」
本当に意味が分からん。何だよ俺に聞かせたくない事って?
「俺にも聞かせろよ。話を聞かないと分かんないだろ?」
「あ、ダメだって!」
気になった俺は心の言葉を聞かずにドアに近づいた。
そうすると中の声が聞こえてきた。
『何であんな奴が閻魔やってんだろうな?』
……は?
『本当だよな。あんな餓鬼が閻魔で俺らに命令してよ。やってられねぇよ!』
『あんな奴より俺のほうが向いてるっつうの!』
『お前がやるくらいだったら俺がやるわ!』
『お前らじゃ無理だわ!俺のほうがいいっての!」
『どっちにしろあの女がやるのはありえねぇよな!?』
『全くだ!』
何だよ、それ?
『てかさ、あの魔王の部下だった奴を自分の部下にするとか言ったんだろ?頭どうかしてるだろ』
『その事で上からも、色々言われたらしいぞ。アホだよなぁ、あんな奴庇うとか』
『魔王軍の奴らなんて、救う価値のねぇ奴らばかりなのになぁ。価値のない者同士あの女も感じるところがあったんじゃね?』
『それはあるかもな!』
それは言ってはいけない言葉だった。
その言葉を聞いた瞬間、俺は中の奴らを殺そうとドアに手を伸ばしたが、その手を心に止められてしまった。
「……何だよ?邪魔だ」
「……戻るぞ」
「……先に戻ってろ。ゴミを片付けたら俺も行く」
「……俺だって我慢してんだぞ?頼むから言うこと聞いてくれ」
その言葉を聞き心を見てみると、心の体は震えていた。俺の手を掴んでいない方の手は握られていてそこから血が垂れている。
その姿を見た俺は心の言うことを聞くことにした。
「……分かった」
「……すまない」
そこから執務室に戻るまで俺たちの間で会話は無かった。
執務室に戻ると、閻魔は呑気に待っていて、俺たちを見ると、
「遅いですよ、二人共!あれ?お茶は?お菓子は!?クッキーは!?」
と、言ってきた。
でもこちらにはそんな事よりも大事なことがあった。
「……おい」
「?何です?そんな怖い顔して」
「……お前は知ってんのか?」
「おい、空!!」
心は俺を止めようとしてくるがそんなこと知るか。
心のその態度に閻魔は何かを察したのか悲しそうな顔をした。
「……そっか、知っちゃったんですね?」
「……何で言い返さないんだよ?」
「……彼らの言ってることは正しいですよ。私はまだ若いですし、仕事の事に関しても、最近やっと覚えられてきたようなものですし。一人じゃ何も出来ないんですから色々と言われても仕方ありません」
閻魔は悲しそうな笑みを浮かべながら、まるでもう諦めているかのような発言をした。
その時、俺は
『……仕方ないよ。白い髪に紅い瞳だよ?こんな私に話しかけてくる人なんて、いるわけないって』
悲しそうに笑いながら、それが普通だと言う彼女の事を。
閻魔のその姿があの時のあいつにそっくりで。
「……ふざけんな」
「……え?」
「仕方ないだと?ふざけるなよ?そうやってお前自身が諦めてどうすんだよ!?」
「ッ!!でも、実際にそうでしょう!?どうすることも出来ないんですよ!」
「お前は認められる為に何かしたのか!?何もせずに仕方ないだなんて諦めてんじゃねぇよ!!」
俺がそう言うと、閻魔は俯いて小さな声で何かを言っていた。
「……やったわよ」
「聞こえねぇよ!」
「私だって、認められる為に色々なことをしたのよ!仕事を一人で何人分もできるくらい頑張った!みんなが認めてくれるように、辛かったけど、心を鬼にして何人もの人を地獄行きにした!でも、誰も私を認めてくれなかった!」
「……」
「……どうすれば良かったのよ?どうすれば、みんなは私を認めてくれたの?もう、分かんないよ」
そう言って、閻魔は黙り込んでしまった。
「……空、今日はもう終わりにしよう。お前も頭を少し冷やせ」
「……分かった」
心がそう言ってきたので、俺はその言葉に従うことにした。
そして執務室を出る時に、俺は閻魔に声を掛けた。
「……閻魔、お前はもっと、誰かに頼れ。お前一人じゃダメでも、お前の近くには頼れる奴がいるんだからさ」
「……」
そう言って俺は執務室を出て行った。
そしてその二日後に事件は起こった。
誤字・脱字、感想、アドバイス頂けるとありがたいです。
それではまた次回です!