先週返ってきたテストが酷すぎる件。
あれ?珍しく勉強した筈なんだけどな。
……さっさと本編行きましょうか、うん。
それでは、今回もよろしくお願いします!
「なぁ、本当に行くのか?」
「行くよ。心配だもん」
猪に出会った場所まで戻る焔に着いていきながら、俺は焔にそう聞く。
あの後、焔は助けた奴らが心配だから戻ると言いだしたので、俺達は焔が男達を移動させた場所まで歩いていた。
「なんでそんなに心配するんだよ?あいつらは、お前と何の関係も無い他人だろ?」
男達が殺されそうになった時に真っ先に手を出しちまった俺が言えることではないかもしれないが、これでまたあの猪に出会うと洒落にならないのでそう言うと、焔は足を止めて俺の方を見る。
「確かにそうかもしれないけど、それでもあの人達が心配なんだよ。
それに、情けは人の為ならずって言うでしょ?私は私の為になると思ってこうやって動いてるだけだよ」
焔はそう言うと、また前を向いて歩き始める。
俺はそんな彼女の背中を見ながらため息を吐いた。
「情けは人の為ならず、ねぇ。そういえばあいつもそんな事言ってたな」
そうして思い出すのはホムラとの記憶。
よく周りの人の手伝いをするホムラに、どうしてそんなに周りの手伝いをするのか聞いた時の記憶だった。
『え?どうしてそんなに周りのお手伝いをするのか?私、そんなに周りのお手伝いしてるかな?』
そう言うホムラは本当に覚えがないようだった。
その事に俺はため息を吐いた。
『してるだろ。さっきだって掃除当番の手伝いしてたし。あんなのお前がやる事じゃ無いだろ?』
『あれは他の掃除当番の人が帰っちゃって、数人しか残ってなかったから仕方なく』
『その残ってた奴らだって、お前より先に帰っちまってただろうが。俺がいなかったらもっと時間かかってたぞ』
『……あははは。ごめんね?』
そう言ってホムラは苦笑した。
それを見て俺はまたため息を吐いた。
『別に良い。だけどな、お前は人が良すぎるんだよ』
『そんな事ないよ。それに、これは私の為。ほら、情けは人の為ならずって言うでしょ?』
『情けは人為ならず?』
『うん。情けは巡り巡って自分に返ってくるから、沢山やりなさいって事、だったはず。
だからね、これは私の為でもあるんだよ?』
彼女はそう言って笑う。
その笑みに、俺はつい顔を逸らしながら反論してしまう。
『自分に返ってくる事なんてそうそう無いだろ』
俺がそう言うと、ホムラは顔をにやけさせる。
『チッチッチ。そうでも無いんだなこれが。
実は今日の朝、この前仕事を手伝ってあげたクラスの人から、お礼をもらったのです!』
そう言ってホムラは俺にお礼の品を見せてきた。
それは某有名なキノコのお菓子だった。
『どう?いいでしょう』
『いや、俺タケノコ派だし』
『えぇ、美味しいじゃんキノコ』
『俺はタケノコがいい』
『ぶー!そんなこと言うんだったらあげないからね!?』
『別にいらない』
『ちょっとは欲しいそぶり見してよ、もぉー!』
そう言ってふくれっ面をするホムラとその顔を見て笑う俺。
それは、ある下校帰りの出来事だった。
「本当、なんでこんな所まで似てるのかねぇ」
前を歩く焔に聞こえないよう小さな声でそう呟く。
一ヶ月前のあの時から時々ホムラの事を思い出しはするが、今回のように焔の些細な行動で思い出すことが多い。
でも、どうしてこんなにもホムラとの事を忘れているのか、全くわからないんだよな。
その事を不思議に思いながら焔の後ろを歩いていると、焔は足を止める。
そして、焔は慌てた様子で辺りを見回し始めた。
「どうした?」
その様子を不思議に思い俺が声をかけると、焔は泣きそうな顔で俺の方を向いた。
「ど、どうしよう空。確かに此処に運んだはずなのに、あの人達がいないの。
……もしかしてあの猪に」
そう言って焔は俯いてしまう。
焔のその姿を見て、俺はいつの間にか頭に手を置いていた。
「大丈夫だよ。もしもあの猪にやられたなら、この辺りは少なからず荒れてるはずだろ?見た感じ荒れてはないんだ。
多分だが、あの後目を覚まして逃げたんだと思うぞ」
俺がそう言うと焔は俯いていた顔を上げた。
「そう、かな?」
「あぁ、きっとそうだ。
それより、お前はこれから別の閻魔のところに行くんだぞ。こんな所にいないでさっさと先に進もうぜ?」
俺はそう言うが、焔はまだ不安そうな顔をしている。
そんな焔に更に声をかけようとした時、遠くから足音が聞こえた。
音のする方に俺達が顔を向けると、一人の男が此方に向かって走っている。
その男は俺達の前で止まると、俺たちに話しかけてきた。
「なぁ、あんた達さっきの二人組だよな?」
その言葉を聞き焔は困ったような顔をする。
しかしそれも仕方ないだろう。突然知らない奴から話しかけられ、しかも向こうは此方の事を一方的に知っていたんだから。
「えっと、貴方は?」
焔は困った顔はそのままに男に質問をする。
「あ、悪い。俺はこの近くの村に住んでる者だ。さっきあんた達が助けてくれた奴らは同じ村の者でな。だからあいつらを助けてくれたあんた達を探してたんだ」
男のその言葉を聞くと焔は焦ったように男に詰め寄る。
「あの人達は無事なの!?」
焔のあまりの様子に男はたじろぎながらも、安心してくれと言った。
「あいつらは無事だよ。まだ皆眠ってるけどな」
その言葉に焔は安堵の息を吐く。
「それでなんだが、村の仲間を助けてくれた恩もあるし、村に来てくれないか?お礼をしたいんだ」
「無理だ」
「ちょっ!?空!」
突然男が言ってきた言葉を俺がノータイムで拒否すると、焔がなんか言ってきた。
……こいつ、今回の目的もう忘れたのか?
俺は焔を連れて男から少し離れると、男に聞こえないくらい声で焔と話し始めた。
「あのな、お前の今回の目的はなんだ?他の閻魔の仕事を見に行く事だろうが。こんな所で時間をかけている暇なんて無いだろ」
「で、でも。彼も善意で誘ってくれてるわけだし」
「……善意ねぇ」
焔はそう言うが、俺はどうもあの男の事を信じられない。
なにかあの男には違和感がある。それが何なのかは、まだわからないが。
「まぁ、とにかくやめとけ。なんか嫌な予感がする」
「でも」
「……」
ああ、もうどうしてそんな悲しそうな顔するんだよ!?俺がひどい事言ってるみたいじゃん!
その顔を見て俺は頭を掻く。
「はぁ。わかったよ。でも少しだけだ。ちょっとお礼の気持ちをいただいたらすぐにその村を出る。それでいいな?」
俺がそう言うと焔は途端に嬉しそうな顔になった。
……だって仕方ないじゃん!あんな顔されちゃったらさぁ!?
俺は脳内で誰に言っているのかわからない弁明をしていると、いつの間にか話は終わっていた。
どうやら男が俺達を案内してくれるらしく、俺達は男の後をついて行く事になった。
そんなわけで俺達は少しだけ寄り道をする事になりました。……はぁ。心になんて言われるかな。
後の事を考えて少し憂鬱になる俺でした。……はぁ。
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それではまた次回です!