なんとか投稿できた。
それでは、見ていって下さい!!
それは一仕事終え、魔王の城に帰っている時の事だった。
ここで一応説明しておくと、魔王の城は、周りが山や谷、森で囲まれており、更に凶暴な獣も生息している。それは、勇者ですらそう簡単に攻めることは出来ず、そもそも魔王の城に到達することすら難しい。
勿論魔王軍の俺達が帰るために、安全な道が有るには有るが、その道は俺達魔王軍しか知らないはずだ。……はずなのだ。
「……そのはずだよなぁ?」
「……いや、新参者の俺に聞かないでくださいよ。でも、そのはずだと思いますよ」
不安になった俺は近くの仲間に確認するが、俺の認識は間違っていないらしい。
「だよなぁ。……じゃあ何で……」
俺は目の前の存在を見て素直な疑問を口にする。
「
「それで、どうなってんだ?此処には勇者ですら来ることは難しいとか、ドヤ顔で言い切ったよな?魔王様」
あの後、寝ている子供を城の中に運び布団に寝かせた俺達は、今回の事について魔王に話を聞きに来ていた。
……聞きに来ていたんだがだが……、
「予想はできるんだけど確証は無いっていうか、……それより、どうして俺は
「……本当に、分からないのか?」
そう、俺は今魔王に正座をさせていた。
別に、こいつが嫌いだから正座させているとか、正座している姿が面白いからとかそうな理由では無い。……本当だよ?
まぁ、そんな事はどうでも良くて、そんなことを聞いて来た魔王を睨みながら俺は、魔王の机の上を指差す。
「俺達が仕事をしている間、お前は何で仕事もしないで部下とトランプやってんだよ!?てか、お前らも止めろよ!なんで一緒になってやってんだ!?」
そう、何故か魔王の奴は部下とトランプで遊んでいたのだ。
その姿を見た俺はその場で遊んでいた全員に拳骨をし、遊んでいた奴らを正座させて今に至るのだ。
そして俺の問いに遊んでいた奴らは困った顔をした。
「いや、俺たちも最初はお前に怒られると思って断っていたんだが、魔王様が『大丈夫!皆でやれば怖くない!』って言うから、じゃあやるかってなったんだよ」
「小学生か!?なに?俺に怒られるのは車に轢かれるくらい怖いのか!?」
「?なんだよ、小学生とか車って?」
「あー、いや、なんでもない」
そうだった。この世界には小学生っていないし、車はないんだった。
そんなことを思っていると、魔王が話しかけてきた。
「まぁまぁ、そんなに怒らないであげてくれよ。俺とお前の仲だろ。な?」
『テメェのせいだろ、この
「俺お前達の上司なんだけど!?」
だったら、部下全員にバカ呼ばわりされるようなことすんなよ。
「はぁ、まぁいいや。今回はここまでにしてやる。次はしっかりしろよ。わかったな、
それで、さっきの予想って何だ?」
「……なんか魔王のところ変じゃなかったか?」
「気のせいだ。それより予想を言え」
こういう時だけ鋭いんだよな、こいつ。
「えっとだな、多分だけどあの子がここまで来れたのは、その、運だ」
「……は?いや、ちょっと待て。運て、あの幸運とか、不運とかの運か?」
「あぁ、その運だ」
なにを言ってるんだこいつ?遂に頭がイったか?
「そんな運で来れるほど楽なのか?ここまで来るのって」
「そんなわけ無いだろ。あんな小さい子がここまで来るには、獣は全く通らず、罠もないルートを通らないといけない。
悪いが俺もそんな道は知らない。偶然出来た道なんだろうさ。
でもそんな道をなにも知らずに偶然通るなんて、砂浜で目当ての砂を見つけるより難しいと思うぞ」
「……そこまでか」
こいつが真面目な顔で話すなら本当の事か。
どんだけの運だよ。……俺もそんな運があれば……。
……あれ?あれば何なんだろう?
「おい!どうした空!?」
「!あぁ、悪い」
「……」
俺が不思議な違和感を感じていると、魔王の声が聞こえてきた。
今はそれどころじゃないか。
俺は頭を振ると話を続けた。
「あの子はどうする?」
「無傷で家に帰す」
「即答って。本当に魔王らしくねぇな」
まぁ、だからこそ俺はお前に従うんだがな。
俺は小さく笑う。それを見て魔王も笑う。
「じゃああの子を起こして来る」
「いや、今日はやめよう。
あの子も疲れてるだろうし、今は霧が出ていて危険だし」
「了解。それじゃあ部屋で寝てくる。俺も疲れた」
「あぁ、わかった。明日の朝、広間にきてくれ」
「オーケー」
さっさと寝て明日に備えよう。
「……で?この状況は何?」
翌日言われた通りに広間に来た俺の口からは、そんな言葉が出て来てしまった。
いや、だって、広間に来たら昨日の子供と、悪魔とかが笑いながら話をしているんだぞ。そんな言葉が出てしまっても仕方がないと思う。
そんな光景に俺が呆然としていると魔王が近づいて来た。
「いやー、あの子凄い良い子だな。あっさり皆と仲良くなっちまったよ」
「……頭痛くなってきた」
俺が頭を抑えていると俺に近づいてくる者がいた。
金色の髪は首元まで伸びており、金色の瞳は不安そうにこちらを見ている。間違いなく、昨日見つけた子供だった。
「あの、貴方が私を送ってくれる人ですか?」
「あぁ、そうだ。よろしく頼む」
「あ、いえ、その、こちらこそよろしくお願いします」
そう言ってその子は頭を下げる。
村の子にしては礼儀正しいな。
そう思っていると魔王が声を出す。
「おし、それじゃあ空。しっかり送ってこいよ?怪我させるなよ?」
「お前はこの子の親か。それより他の奴は来ないのか?」
「俺らが行くと変な誤解受けるだろ」
そうでもないと思うがな。人にしか見えない奴何人かいるし。
まぁ、こいつらが良いなら良いか。
俺達の話を聞いて、その子は先程まで話していた皆の方を向く。
「み、皆さん!私を助けてくれて、ありがとうございました!!」
そう言ってその子はまた頭を下げる
その言葉を聞き、皆の方を見ると、笑顔を浮かべる奴や、泣き始めた奴もいた。
「こっちこそありがとうな、お嬢ちゃん!!」
「おい空!しっかり送り届けろよ!」
「空、途中で襲うなよ!!」
「襲うわけねぇだろうが!!埋めるぞ!?」
流石にそれはないだろ。この子見た目九歳くらいだぞ?
そして、俺はその子をつれて城を出ていった。
あれから結構な距離を歩き、空を見上げると星が出ていた。しかしもうすぐ村に着くであろう距離にもなっていた。
その間俺達の間で会話はあまり無く、あるとしても、
「あ、あの!」
「ん?」
「あ、その、なんでもないです」
「あっそ」
こんな感じですぐ途切れる。
……あれ?俺、この子に怖がられてる?何か怖がられる事したっけ?
俺が自分の行いに不安を感じていると、その子が話しかけてきた。
「……あ、あの。どうして魔王軍に人である貴方がいるんですか?
それに、どうして彼らは貴方を仲間に加えているんですか?」
「……不思議か?」
「……はい。大人や神様達は、魔王達は人類の敵であると教えてくれるんです。だけど、あそこでは皆が私に優しくしてくれました。
だから、わからなくなってしまったんです。どちらが本当で、どちらを信じれば良いのかが。
なので貴方の話を聞きたいと、思ったんです」
そう言ってその子は顔を伏せてしまう。
……そりゃあ戸惑いもするか。それまでのイメージと違いすぎるもんな。
その子の当然の反応に俺は苦笑を浮かべ、彼女の問いに答える。
「最初の頃は、俺があいつらといるのはお互いの目標が一緒だったからだ。
俺はな、おそらく神に転生みたいな事をされたらしくてな。気づいたらあそこに居たんだ。あそこがどこかもわからなくて、目の前にはあいつらがいて、俺はもう死ぬんだなって思った。
でも、あいつらは俺を殺さず、あそこにおいてくれたんだ。
その時点であいつらに恩があるのに、あいつらは俺に良くしてくれてさ。
だからかな?今はあいつらに恩を返したい。だから俺はあいつらと一緒にいるんだよ」
そう言って俺は、夜空に浮かぶ星を見る。
……こうやって口に出してみると、あいつらにどれだけ救われてるのか、改めて認識させられるな。
「それに、あいつらは人と仲良くしたいんだよ。
神が有る事無い事吹き込んで人を送り込んでくるから、いつも上手くいかないけどな」
「……そうですか。やっぱりあそこにいる皆さんは良い方達なんですね。……いいなぁ。私も彼らみたいな仲間が欲しいな」
そう言ってその子も夜空を見る。
夜空を見るその瞳は、何処か寂しそうだった。
そのことについて聞こうとした時、遠目に村の明かりが見えた。
「此処までみたいだな。村の明かりが見えた」
「そうみたいですね。……あの……」
「ん?」
彼女が何かを言おうとし、口を閉じる。
俺はそんな彼女の次の言葉を待った。
するとその子は何かを決心したように口を開いた。
「あ、貴方の、名前を、教えてください」
そう言って彼女は下を向いてしまう。
……だけどその言葉は彼女が勇気を出して言ったであろう言葉だ。
だったらその言葉に返さないとな。
俺は彼女の頭を撫でながら、答える。
「空。俺の名前は空だ。君の名前は?」
「私の、名前は、私の名前は、コアです」
そう言って彼女は笑顔を浮かべる。
その笑顔はとても、眩しかった。
「そうか。じゃあコア、此処でお別れだ。俺があんまり近づき過ぎても良くないからな」
「はい。空さん、今日は本当に、ありがとうございました」
「いいんだよ別に。じゃあな。またいつか」
「はい!!」
そう言って俺達は自分の場所に帰っていった。
「そ、それで!?その子とはその後会えたの!?」
話を終えた直後、焔は俺にそう聞いてきた。
「いや、その後会うことは無かったよ。そもそも、魔王城に来れたことがありえないことだからな」
「会いにいかなかったの!?」
「あの後すぐに、その村に傭兵とかが付いてな。そうそう行けなくなっちまったんだよ」
「えー」
不満そうに焔は唇を尖らせる。
「おし、それじゃあこの話は終わり!ほら、もっと宴会を楽しもうぜ!」
俺はそう言って酒を取り出す。
「……なんだか納得いかないけど、まぁ、いいか。あ、空。私にもお酒ちょうだい」
「あ、俺にも少しくれ」
「私も欲しい」
「はい、はい。わかりましたよ」
そして、焔や心、桃花にお酒を配る。
配り終えたところを確認すると、焔は口を開いた。
「それじゃあ、改めて」
「あぁ」
「おう」
「うん」
「「「「乾杯!!」」」」
そうして、俺達の夜はまだ続くのだった。
最後が少し雑になってしまったような気がします。
批評・感想、誤字・脱字お待ちしてます。
それではまた次回です!!