二回死んだ俺は閻魔の部下になった   作:鬱ケロ

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はい、三十分遅れての投稿です!
なんとか投稿できた。

それでは、見ていって下さい!!


〜魔王軍にいた頃の話〜後編

 それは一仕事終え、魔王の城に帰っている時の事だった。

 

 ここで一応説明しておくと、魔王の城は、周りが山や谷、森で囲まれており、更に凶暴な獣も生息している。それは、勇者ですらそう簡単に攻めることは出来ず、そもそも魔王の城に到達することすら難しい。

 勿論魔王軍の俺達が帰るために、安全な道が有るには有るが、その道は俺達魔王軍しか知らないはずだ。……はずなのだ。

 

「……そのはずだよなぁ?」

「……いや、新参者の俺に聞かないでくださいよ。でも、そのはずだと思いますよ」

 

 不安になった俺は近くの仲間に確認するが、俺の認識は間違っていないらしい。

 

「だよなぁ。……じゃあ何で……」

 

 俺は目の前の存在を見て素直な疑問を口にする。

 

()()()()()が魔王城の前で寝ているわけ?」

 

 

 

 

 

「それで、どうなってんだ?此処には勇者ですら来ることは難しいとか、ドヤ顔で言い切ったよな?魔王様」

 

 あの後、寝ている子供を城の中に運び布団に寝かせた俺達は、今回の事について魔王に話を聞きに来ていた。

 ……聞きに来ていたんだがだが……、

 

「予想はできるんだけど確証は無いっていうか、……それより、どうして俺は()()()()()()()()のん?」

「……本当に、分からないのか?」

 

 そう、俺は今魔王に正座をさせていた。

 別に、こいつが嫌いだから正座させているとか、正座している姿が面白いからとかそうな理由では無い。……本当だよ?

 まぁ、そんな事はどうでも良くて、そんなことを聞いて来た魔王を睨みながら俺は、魔王の机の上を指差す。

 

「俺達が仕事をしている間、お前は何で仕事もしないで部下とトランプやってんだよ!?てか、お前らも止めろよ!なんで一緒になってやってんだ!?」

 

 そう、何故か魔王の奴は部下とトランプで遊んでいたのだ。

 その姿を見た俺はその場で遊んでいた全員に拳骨をし、遊んでいた奴らを正座させて今に至るのだ。

 そして俺の問いに遊んでいた奴らは困った顔をした。

 

「いや、俺たちも最初はお前に怒られると思って断っていたんだが、魔王様が『大丈夫!皆でやれば怖くない!』って言うから、じゃあやるかってなったんだよ」

「小学生か!?なに?俺に怒られるのは車に轢かれるくらい怖いのか!?」

「?なんだよ、小学生とか車って?」

「あー、いや、なんでもない」

 

 そうだった。この世界には小学生っていないし、車はないんだった。

 そんなことを思っていると、魔王が話しかけてきた。

 

「まぁまぁ、そんなに怒らないであげてくれよ。俺とお前の仲だろ。な?」

『テメェのせいだろ、この魔王(バカ)!!』

「俺お前達の上司なんだけど!?」

 

 だったら、部下全員にバカ呼ばわりされるようなことすんなよ。

 

「はぁ、まぁいいや。今回はここまでにしてやる。次はしっかりしろよ。わかったな、バカ(魔王)

 それで、さっきの予想って何だ?」

「……なんか魔王のところ変じゃなかったか?」

「気のせいだ。それより予想を言え」

 

 こういう時だけ鋭いんだよな、こいつ。

 

「えっとだな、多分だけどあの子がここまで来れたのは、その、運だ」

「……は?いや、ちょっと待て。運て、あの幸運とか、不運とかの運か?」

「あぁ、その運だ」

 

 なにを言ってるんだこいつ?遂に頭がイったか?

 

「そんな運で来れるほど楽なのか?ここまで来るのって」

「そんなわけ無いだろ。あんな小さい子がここまで来るには、獣は全く通らず、罠もないルートを通らないといけない。

 悪いが俺もそんな道は知らない。偶然出来た道なんだろうさ。

 でもそんな道をなにも知らずに偶然通るなんて、砂浜で目当ての砂を見つけるより難しいと思うぞ」

「……そこまでか」

 

 こいつが真面目な顔で話すなら本当の事か。

 どんだけの運だよ。……俺もそんな運があれば……。

 ……あれ?あれば何なんだろう?

 

「おい!どうした空!?」

「!あぁ、悪い」

「……」

 

 俺が不思議な違和感を感じていると、魔王の声が聞こえてきた。

 今はそれどころじゃないか。

 俺は頭を振ると話を続けた。

 

「あの子はどうする?」

「無傷で家に帰す」

「即答って。本当に魔王らしくねぇな」

 

 まぁ、だからこそ俺はお前に従うんだがな。

 俺は小さく笑う。それを見て魔王も笑う。

 

「じゃああの子を起こして来る」

「いや、今日はやめよう。

 あの子も疲れてるだろうし、今は霧が出ていて危険だし」

「了解。それじゃあ部屋で寝てくる。俺も疲れた」

「あぁ、わかった。明日の朝、広間にきてくれ」

「オーケー」

 

 さっさと寝て明日に備えよう。

 

 

 

 

 

 

 

「……で?この状況は何?」

 

 翌日言われた通りに広間に来た俺の口からは、そんな言葉が出て来てしまった。

 いや、だって、広間に来たら昨日の子供と、悪魔とかが笑いながら話をしているんだぞ。そんな言葉が出てしまっても仕方がないと思う。

 そんな光景に俺が呆然としていると魔王が近づいて来た。

 

「いやー、あの子凄い良い子だな。あっさり皆と仲良くなっちまったよ」

「……頭痛くなってきた」

 

 俺が頭を抑えていると俺に近づいてくる者がいた。

 金色の髪は首元まで伸びており、金色の瞳は不安そうにこちらを見ている。間違いなく、昨日見つけた子供だった。

 

「あの、貴方が私を送ってくれる人ですか?」

「あぁ、そうだ。よろしく頼む」

「あ、いえ、その、こちらこそよろしくお願いします」

 

 そう言ってその子は頭を下げる。

 村の子にしては礼儀正しいな。

 そう思っていると魔王が声を出す。

 

「おし、それじゃあ空。しっかり送ってこいよ?怪我させるなよ?」

「お前はこの子の親か。それより他の奴は来ないのか?」

「俺らが行くと変な誤解受けるだろ」

 

 そうでもないと思うがな。人にしか見えない奴何人かいるし。

 まぁ、こいつらが良いなら良いか。

 俺達の話を聞いて、その子は先程まで話していた皆の方を向く。

 

「み、皆さん!私を助けてくれて、ありがとうございました!!」

 

 そう言ってその子はまた頭を下げる

 その言葉を聞き、皆の方を見ると、笑顔を浮かべる奴や、泣き始めた奴もいた。

 

「こっちこそありがとうな、お嬢ちゃん!!」

「おい空!しっかり送り届けろよ!」

「空、途中で襲うなよ!!」

「襲うわけねぇだろうが!!埋めるぞ!?」

 

 流石にそれはないだろ。この子見た目九歳くらいだぞ?

 そして、俺はその子をつれて城を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 あれから結構な距離を歩き、空を見上げると星が出ていた。しかしもうすぐ村に着くであろう距離にもなっていた。

 その間俺達の間で会話はあまり無く、あるとしても、

 

「あ、あの!」

「ん?」

「あ、その、なんでもないです」

「あっそ」

 

 こんな感じですぐ途切れる。

 ……あれ?俺、この子に怖がられてる?何か怖がられる事したっけ?

 俺が自分の行いに不安を感じていると、その子が話しかけてきた。

 

「……あ、あの。どうして魔王軍に人である貴方がいるんですか?

 それに、どうして彼らは貴方を仲間に加えているんですか?」

「……不思議か?」

「……はい。大人や神様達は、魔王達は人類の敵であると教えてくれるんです。だけど、あそこでは皆が私に優しくしてくれました。

 だから、わからなくなってしまったんです。どちらが本当で、どちらを信じれば良いのかが。

 なので貴方の話を聞きたいと、思ったんです」

 

 そう言ってその子は顔を伏せてしまう。

 ……そりゃあ戸惑いもするか。それまでのイメージと違いすぎるもんな。

 その子の当然の反応に俺は苦笑を浮かべ、彼女の問いに答える。

 

「最初の頃は、俺があいつらといるのはお互いの目標が一緒だったからだ。

 俺はな、おそらく神に転生みたいな事をされたらしくてな。気づいたらあそこに居たんだ。あそこがどこかもわからなくて、目の前にはあいつらがいて、俺はもう死ぬんだなって思った。

 でも、あいつらは俺を殺さず、あそこにおいてくれたんだ。

 その時点であいつらに恩があるのに、あいつらは俺に良くしてくれてさ。

 だからかな?今はあいつらに恩を返したい。だから俺はあいつらと一緒にいるんだよ」

 

 そう言って俺は、夜空に浮かぶ星を見る。

 ……こうやって口に出してみると、あいつらにどれだけ救われてるのか、改めて認識させられるな。

 

「それに、あいつらは人と仲良くしたいんだよ。

 神が有る事無い事吹き込んで人を送り込んでくるから、いつも上手くいかないけどな」

「……そうですか。やっぱりあそこにいる皆さんは良い方達なんですね。……いいなぁ。私も彼らみたいな仲間が欲しいな」

 

 そう言ってその子も夜空を見る。

 夜空を見るその瞳は、何処か寂しそうだった。

 そのことについて聞こうとした時、遠目に村の明かりが見えた。

 

「此処までみたいだな。村の明かりが見えた」

「そうみたいですね。……あの……」

「ん?」

 

 彼女が何かを言おうとし、口を閉じる。

 俺はそんな彼女の次の言葉を待った。

 するとその子は何かを決心したように口を開いた。

 

「あ、貴方の、名前を、教えてください」

 

 そう言って彼女は下を向いてしまう。

 ……だけどその言葉は彼女が勇気を出して言ったであろう言葉だ。

 だったらその言葉に返さないとな。

 俺は彼女の頭を撫でながら、答える。

 

「空。俺の名前は空だ。君の名前は?」

「私の、名前は、私の名前は、コアです」

 

 そう言って彼女は笑顔を浮かべる。

 その笑顔はとても、眩しかった。

 

「そうか。じゃあコア、此処でお別れだ。俺があんまり近づき過ぎても良くないからな」

「はい。空さん、今日は本当に、ありがとうございました」

「いいんだよ別に。じゃあな。またいつか」

「はい!!」

 

 そう言って俺達は自分の場所に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、それで!?その子とはその後会えたの!?」

 

 話を終えた直後、焔は俺にそう聞いてきた。

 

「いや、その後会うことは無かったよ。そもそも、魔王城に来れたことがありえないことだからな」

「会いにいかなかったの!?」

「あの後すぐに、その村に傭兵とかが付いてな。そうそう行けなくなっちまったんだよ」

「えー」

 

 不満そうに焔は唇を尖らせる。

 

「おし、それじゃあこの話は終わり!ほら、もっと宴会を楽しもうぜ!」

 

 俺はそう言って酒を取り出す。

 

「……なんだか納得いかないけど、まぁ、いいか。あ、空。私にもお酒ちょうだい」

「あ、俺にも少しくれ」

「私も欲しい」

「はい、はい。わかりましたよ」

 

 そして、焔や心、桃花にお酒を配る。

配り終えたところを確認すると、焔は口を開いた。

 

「それじゃあ、改めて」

「あぁ」

「おう」

「うん」

 

「「「「乾杯!!」」」」

 

 そうして、俺達の夜はまだ続くのだった。

 




最後が少し雑になってしまったような気がします。

批評・感想、誤字・脱字お待ちしてます。

それではまた次回です!!

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