宮永咲の白糸台生活   作:タマアザラシ

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方言って意外と難しい・・・所々おかしいところがあるかもしれません


宮永咲と園城寺怜

「二回戦の相手で一番警戒すべきは新道寺だな」

 

菫は今行われているインターハイ一回戦のうち、強豪・新道寺が出ている試合を見ながら呟き、他の面々も菫の意見と同じなのか画面から目を離さずに新道寺を警戒していた

 

「けど、エース区間である先鋒の選手はあまり強くはなさそうですね」

 

「新道寺は今年から強い選手を後ろに置くオーダーにしているからな、正直、先鋒は捨て駒扱いだろうな」

 

誠子は新道寺の先鋒の実力が強豪でありながらそれほどのものではないと不思議に思い尋ねると、すでに情報を集めていた菫が新道寺の先鋒である花田煌を捨て駒であると判断したが

 

「咲はこの先鋒をどう思う?」

 

咲が菫の発言に考える仕草をしながら花田煌の牌譜を見直していたので、何か気になることでもあるのかと照は咲に尋ねたのだった

 

「えっと、この花田さんなんですけど、確かに今までの牌譜から強い打ち手ではないかもしれません・・・ただ」

 

「ただ?」

 

「・・・すごく『上手い』打ち手だと思うんです」

 

「ふむ?」

 

咲にそう言われて菫は改めて煌の牌譜を見直すと、総合的な点数は+の点数は少なく甘い部分も見られる、正直咲の言い分はイマイチピンと来なかった

 

「照、お前は咲の言い分をどう思う?」

 

「どうだろう、私はそうは思わないけど・・・でも、相手のセンスを見抜くのは咲の方が上だからね」

 

菫は姉の照にも確認をとったが、照は相手の本質を見抜くことは得意であるが、麻雀のセンスを見抜く力はどちらかというと咲の方が上である、なので照は咲の鋭いセンサーにこの花田煌が反応したとしか言えず、菫もそうかと納得した

 

「まあテルーなら誰が相手でも関係ないけどねー」

 

「それでも全国は何かあるかわからないから油断は禁物だよ、それと淡はそろそろ咲の膝から離れた方がいいと思う」

 

これまで咲の膝枕を堪能していた淡は自信満々に照なら大丈夫だというも、全国の怖さを知っている照は油断大敵としながら、咲の膝枕を浅慮している淡を睨み付け、淡はそのにらみから慌てて離れるのだった、それを見た照はチャンスと思い

 

「咲、お姉ちゃんにも・・・」

 

「あ、弘世部長」

 

「どうした?」

 

「ちょ、ちょっとお手洗いに行ってもいいですか」

 

「ああ、行ってこい」

 

咲の膝枕を堪能しようとした照であったが、咲がお手洗いを申し出て、新道寺の牌譜をジーっと見ていた菫は目を離さないままそれを許可し、咲はお手洗いのため部屋から出ていった・・・・なお、照は咲にスルーされたことがショックだったのか膝を抱えて泣き出したのだ

 

・・・咲が出て少し経った後、ふと菫はあるミスに気付いた

 

「・・・・スマナイ、さっき部屋から出ていったのは誰だ?」

 

「え?咲が出ていき・・・ました、けど」

 

菫の問いに誠子は答えながらふとあることを思い出して顔を青くさせた

 

「・・・その時、咲は誰かと一緒だったか?」

 

「・・・誰もついて行っていません」

 

「・・・・あ」

 

「?」

 

菫の顔がだんだんと怖い顔になり、尭深も淡も事の重大さに気づいたのだ・・・照以外は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲が極度の方向音痴であることを

 

「「「「あああああああああああああ!!!!!!!?????」」」」

 

この日この瞬間、白糸台の控室では女子高生が上げてはいけないような大きな声を出してしまうのだった

 

________

 

「・・・ここ、どこ?」

 

そしてそんな騒ぎの中心人物である咲は・・・当然のごとく迷子になっていた

お手洗いは何とかなったものの、自分の居場所や白糸台の控室がどこにあるかわからずにふらふらとさ迷うのだった・・・それが余計迷子の原因になっているのだが

 

「うう、お姉ちゃん、淡ちゃん、弘世部長・・・」

 

何処かでデジャブを感じる咲の泣き言に残念ながら今回は誰も答えてくれる人はいなかった、そして咲が曲がり角を曲がった瞬間・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・一人の制服を着ている女子高校生が廊下で倒れていたのだった

 

「ええええ!!??だ、だだ、大丈夫ですか!?」

 

咲は思わず驚きの声を上げながらその女子生徒のもとに駆け寄り抱き上げると、女子生徒は顔色が悪く、咲は何か病気で体調が急変したのではと、心配したが

 

「・・・・」(ボソボソ)

 

「え、な、なんですか!?」

 

女子生徒が何かぼそぼそと呟いたので咲は耳元を女子生徒の口に近づけると

 

 

 

「・・・ナイスリアクションや」

 

「・・・ハイ?」

 

・・・倒れた女子生徒は意外と余裕があったのだった

 

______

 

「ゴメンな、驚かせるつもりはなかったんやけど」

 

「は、はあ」

 

倒れていた少女・・・園城寺怜は何故か咲に膝枕をしてもらいながら先ほどの事を謝り、何故か膝枕をさせられている咲は曖昧な返事をするしかなかった

 

咲は怜の事は知っていた、今年から全国2位の千里山女子高校先鋒を務めるエース、そんな相手になぜ自分は膝枕をしているのだろうと思わずにはいられなかった

 

「そういえば咲ちゃんやっけ?」

 

「は、はい」

 

怜から話しかけられて咲は当然相手も自分の事を知っているのだろうと思わず身構えたが

 

 

 

 

 

 

「なかなかええフトモモしとるな」

 

「へ?」

 

「竜華程ではないけど、なかなか癖になるふとももや」

 

竜華とは、おそらく千里山の次鋒を務める清水谷竜華の事であろうと咲は考えていると、怜はそんな咲を見ながらじっくりと咲のフトモモを堪能していると、よくよく考えてみるとただのセクハラであることに気づき咲は顔を真っ赤にさせた

 

「い、いきなり何言い出すんですか!?」

 

「なんや?うちはホントの事を言っただけやで?」

 

セクハラ発言をした怜はなんでそんなに怒っとるん?といった顔を浮かべ、咲は今すぐにでも立ち上がりたいたかったが、先ほどの怜が倒れた姿を見たためにできずにいた

 

「なんや、怒っとるのに止めんのやな」

 

「・・・・園城寺さんは倒れたばっかりなんですからそんな事できませんよ」

 

「・・・そっか、咲ちゃんは優しい子なんやな」

 

優しい子発言に咲は照れて顔を赤くし、怜は何この子めっちゃ可愛いわーと言いながら頬をつつくのだった

 

「そういえば園城寺さんはどうして倒れてたんですか?」

 

ある程度落ち着いてふと咲は先ほど怜が倒れた原因が気になったので思わず尋ねたのだ

 

「実は昨日遅くまで後輩と麻雀の特訓をしとってな、朝からちょっとふらふらしてたら躓いて、そこに咲ちゃんが来たわけや」

 

「・・・そんなになるまで特訓ですか?」

 

麻雀の特訓をすることなどこの場に選手として来ているものなら当然の事だろう、だが怜のよう見るからに体の弱そうな選手が試合前に体を壊しそうな事をするべきではないとは思ったが・・・

 

「これでも昔と比べればだいぶマシになったものやけどな・・・それにな

 

 

 

 

・・・竜華とセーラ、皆と一緒に戦う高校最後の大会や。優勝するためなら多少の無茶もするべきや」

 

そうだ、園城寺怜は三年生、これが高校最後のインターハイなのだ、だからこそこれまで一緒に戦ってきた仲間たちと最後に優勝という栄光を掴みたい、そのためなら病弱だからと、そんな事を理由に手を抜けるはずがなかったのだ・・・それほどインターハイ優勝とは三年生にとっては下の学年とは比べ物にならない思いがあることを咲は感じ取った

 

だが怜の思いは、咲にも通ずるものがあった

 

「・・・それでも、試合前に倒れたりでもしたらそれこそ今までの苦労が水の泡ですよ、それに

 

 

 

 

 

 

 

優勝するのは白糸台です、園城寺さんたちがどんなに強い思いをもってしても、私たちは全力であなたたちに勝ちます」

 

その挑発ともとれる発言に怜はへぇっと笑みを浮かべた・・・咲にも負けられない理由が、姉との最後の大会と県大会で自分にエールを送ってくれた真佑子との約束があるのだ、例え相手が三年生だから、最後の大会だからといって今の咲には手を抜くという意思はまるでなかった

 

(憩ちゃんから聞いてた子とはずいぶん雰囲気が違うけど・・・これはこれでなかなかええ子やな)

 

ウチに来てほしかったなーそしたら竜華と交互で膝枕をしてもらえたのにと怜は思っていたが、この咲も怜にとっては好ましく思えた

 

そして怜は頭を起こして咲と向き合い、咲は強い眼差しを怜に向け、怜もその儚い雰囲気から想像できない燃えるような意思を持つ目で咲を見ていた

 

「・・・今年の千里山は歴代最強やで王者」

 

「残念ですが、私とお姉ちゃん、そして淡ちゃんたちがいる白糸台も歴代最強です」

 

お互いに威圧感を出し合う二人に場は重苦しい雰囲気に包まれたが、次の瞬間にお互いにフっと笑みを浮かべた瞬間、重い雰囲気が嘘のように消え去ったのだ

 

「どちらの言い分が正しいか準決勝か決勝で証明できたらええな」

 

「私達はともかくそちらは準決勝まで残れますか?」

 

「愚問やな、当たり前に決まっとるやろ」

 

まるで親しい者同士の会話であるが、咲と怜が出会ったのは今日が初めてである。なのに何がこの雰囲気を作り出しているのか・・・それはお互いに負けられない理由があり、お互いに相手の気持ちを共感でき、認め合うことができたからだ

 

「ほな、咲ちゃんのお迎えが来たみたいやからウチはそろそろ行くわ」

 

「え?」

 

「今度は準決勝で会おうな」

 

怜はそういって咲のもとから離れるように歩いた瞬間に、まるで入れ替わるように尭深が姿を現して、尭深は怜の姿に一瞬驚いた後に咲に駆け寄るのだった

 

「咲ちゃんようやく見つけた、皆咲ちゃんの事を探してたんだよ」

 

「す、すみません渋谷先輩」

 

咲は自分が迷子になっていた事を思い出し、心配させてしまった尭深に申し訳なさそうにしながら、怜の後ろ姿を見るのだった

 

「あの人・・・千里山の園城寺さんだけど、何かあったの?」

 

「・・・いえ、少しお話をしていただけです」

 

咲はそう答えながら怜の方をじっと見つめ、そしてあることが気になったのだ

 

 

 

(・・・どうして園城寺さんは渋谷先輩が来たことに気づいたのだろう?)

 

先ほどまで咲と怜が居た場所からは尭深がこちらに来ている姿を見ることができない、そして尭深は能力を発動するとき以外はそれほど気配を感じない選手でもある、これが照や淡なら咲も来ている気配を感じることができるのだが尭深の場合では姿が見えるまでその存在に気づかなかったのだ

 

・・・それなのにまるで尭深が来たところでも見たかのような怜の反応に咲は不思議でたまらなかったのだ

 

_______

 

「園城寺せんぱーい」

 

「なんや憩ちゃん、探しに来てくれたん?」

 

「来てくれたん?やないですよー、昨日は遅くまで特訓してたんですから、無理は禁物です」

 

「・・・提案してきたのは憩ちゃんやん」

 

「それはそれ、これはこれですぅ、清水谷先輩が鬼の形相で探してましたよ」

 

「そっか、後で竜華には謝っとかんとな」

 

「そうですよ、それに今はゆっくり休んで今晩も特訓の続きをしますよ」

 

「千里山の白衣の天使が恐ろしいことを言っとるなー、後輩にやられるわー」

 

「もー大げさに騒がんといてください、先輩はどこかの主人公みたいに倒れれば倒れる程強くなっとるんですから次倒れたら100巡先まで見えるかもしれませんよ」

 

「笑顔でウチが倒れるまで特訓する気やでこの子!?白衣の天使やない白衣の堕天使や!?」

 

「今更何言っとるんですか」

 

「認めよった!?」

 

「・・・そーいえばどうでした咲ちゃん?」

 

「ん?ああ、ええ子やったな、それにええフトモモしとったわ」

 

「園城寺先輩らしい感想ですね」

 

「・・・それと、感じたものは憩ちゃんよりも上やな」

 

「そうですか、まあ才能に関してはお姉さんの照さんよりも上ですしね」

 

「淡々としとるなー」

 

「事実ですから・・・それに相手が強ければ強いほどウチは燃えますからね」

 

「おー珍しく燃えとるなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから園城寺先輩も照さん相手に負けないでくださいね、最近はウチに勝ってるんですから」

 

「と言っても二、三回ぐらいしか勝ててないけどな、けどま任せとき後輩」

 




人物紹介

『千里山女子高校三年・園城寺怜』
今年から団体戦の先鋒を務める千里山のエース
昔から病弱ではあったが、ここでは憩が入学したことによる、一年間の憩の健康管理により多少はマシになっている・・・本当に多少だが
一年前に倒れてから一巡先が見えるようになり、また憩との(鬼のような)特訓により、未来視の幅を広げることができるようになった、ただしそれ相当の体力の消耗は付きまとってしまう
竜華の膝枕が最高であるが咲に膝枕をしてもらってから、咲の膝枕がクセになってしまった、その事に幼馴染の竜華はショックを受けていることに本人はまだ知らない

千里山・団体戦メンバー

先鋒・園城寺怜(三年)

次鋒・清水谷竜華(三年)

中堅・江口セーラ(三年)

副将・二条泉(一年)

大将・荒川憩(二年)

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