宮永咲の白糸台生活   作:タマアザラシ

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まず初めに
作者は咲キャラには嫌いなキャラはおりませんむしろみんな大好きです


宮永咲と原村和①

全国高校生麻雀大会。

この大会はテレビ中継されるほど全国的にも注目されており、この舞台を経てプロとして活躍する選手も少なくない夢の舞台の一つ。

 

さらに今年は白糸台の三連覇と宮永照が率いる黄金世代の最後の年、そして宮永照と宮永咲のチャンピオン姉妹が一緒に参加する最初で最後の大会というのもあってその注目度は例年よりもはるかに高いものとなった

 

そんな中、咲と淡はのんびりと今日行われる抽選会場に向かっていた。照と菫は今日は開会式前にもテレビの取材が入っているため二人よりも早く出ており、尭深も誠子と他の部員と共に会場に向かっていた。というのも咲はいまだに取材が苦手であり、そんな咲を気にしてか照と菫が先に向かってマスコミの目を引き、その間に咲とお目付け役を任された淡が会場に入場するという寸法だ

 

「もー私もテルと一緒に取材受けたかったのに」

 

「ご、ごめんね淡ちゃん」

 

咲のお目付け役として取材を受けることができなかった淡はふくれっ面を浮かべており、咲は淡に申し訳ないと思っていたが、淡はすぐにジョーダンジョーダンといって笑い、咲に抱き着いて頬っぺたをつつくのだった

 

「サキもいい加減取材に慣れないとダメだよ、なんせテルの妹に加えて強いんだから、サキが望まなくても嫌でも注目が浴びるよ」

 

「うう」

 

「ま、このアワイちゃんが居るんだからサキへの取材は絶対少なくなるけどね」

 

淡はそう胸を張って答え、咲はそんな自信満々な淡を羨ましいと思いながらも、淡の気遣いに笑みを浮かべた

 

「フフ、でも淡ちゃんは私よりも弱いからそうならないと思うよ?」

 

「ムム、咲のくせに生意気な!!」

 

咲のからかいに淡は咲の頬っぺたを引っ張ることでやり返し、咲は引っ張られた痛みで涙目になりながらも顔は笑っており、淡も楽しそうに笑っていた

 

・・・なお、少女二人が目立つやり取りをすれば当然目立っており、周りの人々の咲と淡の存在に気づいていた

 

 

 

 

・・・そしてここに一人、ずっと咲に会いたかった人物がついに咲を見つけることができ、咲と淡の元に駆け寄るのだった

 

「あの、宮永咲さんですよね?」

 

「ふぁい?」

 

淡に頬を引っ張られながら咲は声のした方に振り向くと・・・その顔は驚きの顔へと変わっていった

 

 

 

「お久しぶりです・・・約、一年振りでしょうか?」

 

「原村・・・和さん?」

 

そう、その人物の名は原村和、去年のインターンミドルのチャンピオンであり・・・去年の秋、咲が叩き潰した人物が咲の前に立っているのだった

 

_______

 

咲と淡が騒がしかった事と和の登場で周りが一層注目が浴びるようになった咲と淡は、和とその友人を連れて会場の中の人通りが少ない場所へと向かった

 

「それでえーっと清澄高校のノドカと・・・」

 

「片岡優希だじぇ!!」

 

「ユーキは私達・・・というか咲に一体なんのよう?」

 

淡は咲を守るように前にでていた、咲の去年までの様子は淡も照から話を聞いていた。だから咲に変な言いがかりをつけられないようにこうやって前に出て守っていたのだ

 

その警戒されている様子に優希は言葉を詰まらせていたが、和はそういった事に鈍いのか気にすることなく話しかけた

 

「いえ、去年の秋ごろに宮永さんとは練習試合で知り合いましたので挨拶と・・・宮永さんにはお伝えしたいことがありました」

 

その和の様子に淡は判断が難しいので警戒を解かずにいたが、咲が淡の肩をたたいて大丈夫だよと伝え、淡はしぶしぶといった形で後ろに下がるのだった

 

「原村さん、私にお話って?」

 

「まずは宣戦布告です、去年の私は宮永さんには手も足も出ませんでした、だから私は練習を重ねて少しでもあなたに近づくように努力しました・・・・なのでここであなたに言います、もう私はあなたには負けません、個人でも、団体でも、あなたに勝って見せます」

 

和のその宣戦布告に淡はへぇっと和の評価を改めた。咲と対戦した者たちはその実力差から勝てないと諦め、咲との対戦なのに勝つ気のない麻雀しか打とうとしなかった、だが和は咲に勝つ気でいた、例え実力差があったとしても決して諦めるという気持ちを持たなかったのだ、その点を評価して和の評価が少し上がった・・・のだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから宮永さん、私を相手に今までの偶然に頼り切った麻雀なんて打てると思わないでくださいね」

 

「――――――――あ?」

 

和の本人にとっては同じ選手として『当然』のことを口にしたつもりだった・・・・だが和の言葉に咲は顔を曇らせ

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・誰が偶然に頼り切った麻雀を打ったって?」

 

淡は試合でもめったに出さない『殺気』のこもったプレッシャーを和やその後ろにいた優希にぶち当てるのだった

 

淡には許せなかった、自分の親友を、自分が認めているライバルの麻雀を実力ではなく『偶然』だといった和の言葉に淡は許せなかったのだ

 

「の、のどちゃん、それはちょっと言い過ぎだじぇ」

 

優希も淡からの殺気のこもったプレッシャーを浴びて和の発言が淡の逆鱗に触れた事に気づき和を止めようとしたが・・・残念な事に和はこういったものにはとことん鈍いのだった

 

「私は当然の事を言ったまでです、嶺上開花なんてめったに出ない役に拘るなんて、そんな偶然に頼り切った麻雀に私はもう絶対に負けません」

 

そうはっきりと言ってしまった和に優希は顔を真っ青になり、淡は・・・

 

 

・・・今までにない表情のない顔を浮かべながら、それでいて重く息苦しいくなるほどのプレッシャーを全身から放つのだった

 

さすがの和のこの淡には何かを感じ取ったのか言葉を詰まらせると、淡はさっきまでの怒りがどこへやら静かな声で「そう・・・」とつぶやいて咲の手を握りながら後ろへ振り替えるのだった

 

「・・・ノドカが言いたいことがそれだけならサキと私はテルたちの元に行かせてもらうよ、ただ、これだけ言わせてもらうよ・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・そんな自分だけの世界しか知らないノドカがサキや私に勝てるなんて思わない方が身のためだよ」

 

お前では咲や私には絶対に勝てない・・・そうはっきりと言われた和は何をと言い返そうとしたができなかった・・・その怒りの感情を今でも爆発しそうな淡に和は何も言葉にすることができず、ただ二人が立ち去るのを見ることしかできなかった

 

_______

 

「ぶはぁ!?し、死ぬかと思ったじぇ!!??」

 

優希は淡たちが立ち去った瞬間に、まるで息を止めていたかのような、いや実際に淡の放つプレッシャーに飲まれて呼吸すらも忘れたためか思いっきり息を吐き、全身から吹き出ている冷や汗を気持ち悪いと感じながらその場に座り込むのだった

 

「のどちゃんもさっきのはさすがに言い過ぎだじぇ、のどちゃんも自分や副ぶちょーの麻雀を否定されたら嫌だじぇ」

 

「それは・・・・そうですよね、お二人には大変失礼な事を言ってしまいましたね」

 

優希にも注意されて、和も冷静なった瞬間に自分の発言が失礼過ぎた事に反省した

 

「・・・一体どうしたんだじぇ?のどちゃん、あの宮永咲って選手の試合を見てからちょっとおかしいじぇ」

 

「・・・なんでもありませんよ優希、ただ宮永さんの打ち方が不思議と思っただけです」

 

それだけであんな事を言うものか?と優希は親友の性格から他人に教えられてもそんなオカルトはありえませんと言うものの、相手の打ち方に関してチームメイト以外ではとやかくいう性格ではないことも知っていた。だからこそ和の先ほどの発言は優希にとっても信じられないものだった

 

「・・・・・・」

 

そんな親友の心情にも気づかず、和はじっと咲が去った姿を追うように見つめるのだった

 

 

 

 

 

 

 

「ありえませんよね・・・・あなたが、リンシャンさんなんて」

 

_______

 

「あーもう!!ムカつくムカつくムカつく!!??」

 

「淡ちゃん、あんまり物に当たったりしたら駄目だよ」

 

和たちと別れて淡は先ほどの殺気を周りにばらまきながら歩き続け、しばらくした後に我慢していたものを吐き出すように壁に何度も当たって大声を出していた

 

「大体サキはアイツの発言にムカつかなかったの!!??」

 

「私の場合は・・・まあ、少し言われなれている事もあるから」

 

咲自身は和に言われたことは中学の大会に参加していた時代から言われていた事なのであまり気にしている素振りはなかった(なお大抵の場合は咲にボロ負けしたものが大半である)

 

・・・それでも和に言われた事に少しショックでもあった

 

「それにね、普通の人から見たら原村さんの意見が正しいんだと思うよ?私や淡ちゃんの麻雀はお姉ちゃんと比べてもちょっと特別だからね」

 

「・・・なんかやけにアイツの肩を持つけど、サキはアイツと何かあるの?」

 

言われた立場である咲が和の事をフォローしている姿に淡は二人の間には何かあるのではと疑惑の眼差しを向けると、咲は少し困った顔をしながら首を横に振るのだった

 

「・・・ううん、別に何もないよ」

 

淡はサキのこの答えは嘘だとすぐに分かった、わかったがそれ以上の詮索はしないようにしたのだ

 

・・・まるで親しい友人に拒絶されたかのようなそんな顔をしていたのだから

 

________

 

宮永咲(リンシャン)と原村和(のどっち)、実はこの二人はお互いの県大会での試合を見た事でそれぞれの正体に気づきかけていたのだ

 

咲はネット麻雀でお世話になったのどっちと思わしき人物と一度会ったことがある事の驚きと出会える事への楽しみを持ったが・・・和はそうではなかった

 

和は咲の試合を見て、その打ち方が自分が教えていたリンシャンさんと被ったのだ、なので和は咲がリンシャンなのではと思ったのだが、彼女の打ち方を見ているうちにその顔が驚愕に変わっていった

 

確かに所々は自分の知るリンシャンのものであったが、その内容自体がオカルト染みたものだったのだ・・・まるで自分の教えている麻雀が間違っているとでも言われているかのような

 

だからこそ和は咲=リンシャンという仮説を否定したかった、否定しなければ自分の麻雀を否定することになるからだ

 

・・・別に咲はのどっちが教えてくれた麻雀を否定するつもりはなかった、むしろのどっちの教えに感謝している程だった、自分がこんなに強くなれた要因の一つがのどっちの教えてくれた自分の知らない麻雀の世界なのだから、しかしそれを和が知るすべはなかった

 

宮永咲(リンシャン)と原村和(のどっち)・・・二人の間にある溝は一方的に深まるだけだった

 






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